days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Man of Steel


『マン・オブ・スティール』を鑑賞しました。
公開3日目の日曜15時半からの回、IMAX 3D上映の劇場は7割以上の入りとはめでたい事です。


高度な文明を誇る惑星クリプトンは壊滅の危機に瀕していた。
科学者ジョー・エル(ラッセル・クロウ)は、生まれたばかりの我が子カル・エルを小型脱出艇に乗せて地球に打ち出す。
赤子はカンサスの農夫ジョナサン(ケヴィン・コスナー)とマーサ(ダイアン・レイン)の善良なケント夫婦に拾われてクラークと名付けられ、地球人の子として育てられる。
だがクラーク=カル・エルは人間離れしたパワーを秘めており、地球人によって恐れられ、疎外される事を心配したジョナサンによって、人前ではそのパワーを発揮しないよう、しつけられたまま成長していく。
33歳になったクラーク(ヘンリー・カヴィル)は放浪の身となって自分探しの旅を続けていた。
北極の氷の下に眠っていた巨大宇宙船により自分の正体を知った彼は、スーパーマンとしてそのパワーを人類の役に立てようとする。
だがクリプトン人の生き残りであるゾッド将軍(マイケル・シャノン)とその部下達が地球に飛来、クラークに投降するよう呼びかける。
さもないと地球を壊滅させると言うのだ。こうしてゾッドらとの激しい戦いが始まる。


話題のスーパーマン・リブート映画です。
7年前のブライアン・シンガー作品『スーパーマン リターンズ』は無かった事になっているようです。
本作の脚本はデヴィッド・S・ゴイヤー
原案はゴイヤーと、ダークナイト3部作で組んだ人気監督&製作者クリストファー・ノーラン
ゴイヤーはアメコミ映画の優秀な脚本家だし、ノーランはアメコミ・ヒーロー映画にリアリズムを持ち込んだとして、一躍大人気の映画人です。
となるとこの映画、監督が『300 <スリーハンドレッド>』のザック・スナイダーであろうとも、ダークでリアリスティックな映画になっているのは想像にた易いですね。


実際、映画は殆どユーモアも無く、遊びも無く、リアリズムで満たそうとしています。
その姿勢に好悪賛否あるのは、もうこれは仕方ないです。
で、私は好きか嫌いかと言ったら好き。
但し夢の有無でいったら、その要素はかなり少な目なのは気に掛かります。
スーパーマンは夢のヒーローの最たるもの。
そこから夢を取り、あれやこれやと意味付けして何が面白いのだ、という批判は起きて当然でしょう。
自分探しをする超人の何が面白いのだ、と。
残念ながら超人を悩める凡人に貶めた点について、私は明確に反駁する材料を持っていません。
2人の偉大な父を持つ男の物語だと納得は出来ても、だったらスーパーマンでなくても良いではないか、という批判が起きるのも予想できます。
しかもザック・スナイダーは場面場面を優れたものに監督出来ても、やはりアメコミ傑作の野心的映画化だった『ウォッチメン』のように、全体の流れを上手くコントロールは苦手のよう。
偉大な父を持つクラーク・ケントカル・エル=スーパーマンのドラマと、後半に展開される前代未聞の大都市大破壊映像釣る瓶打ちが、上手く感情レベルで結びついているとも言い難いのです。
いや、デイリー・プラネット誌の敏腕記者ロイス・レインエイミー・アダムス好演)の感情の流れも描けていないので、後半の彼女のクラークへの感情の変化にも説得力がありません。
むしろ唐突に思えます。
ゾッド将軍役マイケル・シャノンは素晴らしい役者ですがが、例えば『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』『テイク・シェルター』といった映画の方が緊張感があったのは残念でした。
むしろ1978年版で同じ役をやったテレンス・スタンプの静けさの方が怖かったです。
スナイダーの本作における作風は全体に目がぎっしり詰まった力の入ったもので、爽快感に欠けています。
スーパーマンの初飛翔場面も、もっと解放感があってしかるべきでしょう。
また、後半の大都市決戦では恐らく死者数万人規模でしょうが、そんな破壊を気にも留めないスーパーマンの描写に違和感を感じました。


そんな数多くの欠点も目に付きますが、それでも私はこの映画を支持したいです。
映画序盤における惑星クリプトンのテクノロジーや景観を含めたデザインや映像の数々は、全くもって素晴らしい。
また飛翔場面でのソニックブームの描写や、海面に立つ水柱など、超人能力の細かい描写は目から鱗が落ちた思いです。
そうか、スーパーマンが超高速で空を飛ぶとは、こういう事なのか、と。
同様にゾッド将軍らとスーパーマンの戦いは、超人同士が戦うとこんなになるという点で、説得力満点です。
スナイダーは十八番のスローモーション多用によるキメ映像を一切封印し、超高速で動く超人同士の戦いを、文字通り超高速で描き切ります。
これは凄い
。破壊破壊破壊が延々続く後半は凄まじく、大画面と大音響もあいまって、劇場で実際に体感してもらうしかないです。
全編に渡って耳目を驚かせ、楽しませてくれます。
そう、これもまた、映画らしい映画なのです。
これは是非、劇場で楽しんでもらいたいです。