双葉社「ウォーターライン完全カタログ」

静岡模型協同組合3社によって展開される1/700スケール艦艇模型の一大シリーズ「ウォーターラインシリーズ」全製品を紹介する一冊です。フジミ脱退より20年、艦艇模型を取り巻く状況もずいぶん変化しましたが、現在でもWLSはこのジャンルを力強く支える竜骨として発展し続けています。

あ、おれいまちょっとうまいこと言ったな。それはともかく、


内容としてはタイトル通りにカタログ的なものです。艦艇模型ジャンル全てを扱う書籍は他社からも刊行されていますが、ひとつのシリーズに絞った内容はこれまで有りそうで無かったもの。もうずいぶん前にモデルアート社から出ていたように記憶していますが、あの時は外国艦載ってなかったような…(うろおぼえ)


各艦ごとの紹介ページは基本キットの素組み(メーカサンプル?)で製品の素性と実艦の戦歴を簡単に解説するもの。昨今のエッチングパーツ大量使用による逸品を見慣れた目には物足りなく映るかも知れませんが、むしろあれほどの超絶技巧を駆使しなくともキット内容だけで十分楽しめることを再確認するような観も受けます。数が並んでるだけで楽しいもんですハイ。


位置づけとして「入門者向け」というのは勿論なのですが、最近リニューアルが続いた新製品を一同に介することで改めてWLSの現状を紹介するような意味合いもあるかと思われます。むしろ昔を知ってて現在はちょっと疎いような方に向いているかも知れません。


以前は全くカバーされて無かった海上自衛隊アイテムもずいぶん出揃って来ました。類書では稀に落とされることもあるこれら現用艦艇や外国艦についても抜かりなく記述されています。


なにせ現在では「河川砲艦」までラインナップされてるWLS、なにもブルーウォーターネイビーに限ったシリーズではないのだ。


最新のアイテムばかりではなく41年を迎える長い歴史をもつシリーズの、時代ごとの勢いを感じるようなアイテムもまだまだ存命。タミヤの隼鷹は1973年の発売ですが現在でも十分通用するクオリティを持っています。


1980年にアオシマキエフ級をリリースしたのは、現在の同社アイテムに「不審船」や「領海侵犯船」がオマケで付属するのと同じく時事的な話題性を持つものなんだなと今更ながらに。タミヤの原潜クルスクもそんな性格を持つアイテムですね。


その伝で行けばいまは中国空母があってもいいのかな?でもそれは大陸メーカーに任せておけばいいのか。


巻末には作例ページもあり、キット素組と最低限のディティールアップ → 社外品パーツやエッチングを用いた上級の仕上げ → 海面(ウォーターライン)自作も含むジオラマ と、三段階でステップアップする内容です。読者方々に向いたモデリングのスタイルを、製品リストと合わせてご参考に。なお製品リストのページに関しては静岡模型協同組合プロデュースによる限定品(菊水作戦ボックスなど)は完売含めて掲載がありますが、個別メーカーによるシリーズ外の限定品(アオシマのフルハルモデルやハセガワのCH帯アイテムなど)は除外されていますのでその点ご注意ください。


単艦からはじまってシリーズをコレクションしていく上での楽しみ方としては、ヒストリカルな艦隊編成を揃えることが提唱されています。これぞまさにウォーターラインの正道的な良さですが、ここは敢えて「空母赤城と大鵬による夢の編成」でありますとか、「戦艦大和を近代化してトマホークと艦載ヘリを追加」みたいな自由な発想があってもいいよねと、そんなことを思う。


本文中には(特に実艦解説の記述で)所々に「?」と思わざるを得ない記述も有りはしますがその辺はご愛嬌ということで。しかしやっぱり「ドイツ・ナチス政権の再軍備宣言後はじめて建造された戦艦がシャルンホルスト級巡洋戦艦である」なんての見ちゃうとフジミの抜けた穴って今でも塞がりきってはいないんですねえと

あー、ドイッチュラント級装甲艦を「重巡」呼ばわりするような輩はちょっと屋上まで来い。


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