アンベードカルと佐々井秀嶺

 インド独立の立役者というとネルーガンジーが著名だが、もう一人大人物がいる。アンベードカルだ。インド固有の大矛盾の一つであるカースト制の解決を一大目標として一身を捧げた人物だ。
 彼自身、不可触賤民出身でありながら、不眠不休の努力で米英で法律学の学位を修め、1926年にはボンベイ州議会議員となり、独立後もネルーと協力して憲法起草委員長などを歴任している。
 今日までも大きな遺産となっているのはインドにおいて仏教再興の礎を築いたことだ。
 1935年にカースト制に固執するヒンドゥー教を放棄し、1956年には50万ともいわれる大衆とともに仏教帰依を宣言した。その年の12月に65歳でアンベードカルはその生涯を閉じる。

 インド仏教再興に向けてアンベードカルの遺志を継ぎ、大きな貢献をなした人物が佐々井秀嶺だ。
 真言宗智山派出身の一介の岡山県出身の僧侶が、1億ともいわれるインド仏教界の中枢となっているのは一大景観であろう。彼はアンベードカルを菩薩と呼び、現代の苦悩するインド人民を救済するために求生したブッダの使者とする。
 そして、あくまでもインドの固有性を尊重しインド人民のための宣教活動に終始した。
 必ずしも順風満帆の道のりでここまで来たわけではないだろうが、記憶に値する人物であろうし、インドとアジアの歴史にその名が刻まれることになろう。
 その彼も今年は80歳後半になろうとしている。




 アンベードカルは自力で独学しブッダの独自な解釈を行っている。佐々井秀嶺もクセのあるあとがきを書いている。

ブッダとそのダンマ (光文社新書)

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