東京電力は、事故原発の冷却水温度を毎日発表した方がいい

 菅首相が、東日本大震災福島原発事故から1ヶ月めの談話と記者会見を12日におこなって、色々重要な発表がなされました。
 談話の内には、「東京電力の事故原発は、徐々に安定化に向かっていて、東電に今後の見通しを示すように指示した、近い将来その見通しが公表される予定」って趣旨の話もあります。

 これ、原発事故の対策にとって、すごく重要なはず。
 政府には、東電に、国民に向けた、はっきりした公表をするように、細かく指導してほしい、と思います。


 政府は、今、長期的な健康被害を回避するために、避難指定区域の見直しをせざるを得なくなってるので、福島県の被害者の皆さんも、避難の準備対応を求められている。

 そうした折だから、被害地には、「原子炉の事故処理の見通し」と、「漏れ出してしまってる放射性物質の地域ごとの安全度」を知りたい。わかりやすい説明が求められている。
 当然ですよね。一言で「避難の準備」と言われても、1年間の避難なのか、5年間の避難なのかで、準備しなくちゃいけない事柄が違ってくるんだから。


 アタシが思うには、現状「漏れ出してしまってる放射性物質の安全度」の方は、厚生労働省文部科学省などの省庁に頼るしかないと思います。それから各種報道メディアにも頑張ってほしい。
 東京電力の方には、事故原発の安定化から核炉の解体処理までを責任もってやってもらえるよう、集中してもらわないとならない、と思うんですね。


 東京電力の発表を観てると、メディアや原発事故の被害者から「正しい情報」を求められて、及び腰になってる感じがします。
 あくまで、記者会見とかを観てて感じる印象にすぎないけれど、「1度発表しちゃって、もしなんかでズレ込んだら、いい加減なこと言ったとか、もっと怒られるんじゃないか」みたいなね、そんな印象の腰が引けてる感じを受けます。


 誤解を恐れずに書くけど、東京電力は「わからないことはわからない」とはっきり言いながら、「その代わり、今、はっきり言えることはここまで」って言った方がいい、と思います。
 それから、世間のニーズに合わせた――特に、被害地の皆さんのニーズに合わせた発表の手法に手間をかけた方がいい。

 世間から「正しい情報」を求められて、「目処はまだたってません。一所懸命やってますから、目処が立ち次第発表します」って言うのは、情報としては正しくはある。あるんだけど、訊いてる方のニーズには答えていない。


 例えば、東京電力のサイトから「福島第一原子力発電所敷地内における空気中の放射性物質の核種分析の結果について(第二十報)」のページを見ると、次のようにあります。

 平成23年4月13日、福島第一原子力発電所の敷地内において、同日に採取した空気中に含まれる放射性物質の核種分析を行った結果、別紙の通り、放射性物質が検出されたことから、本日までに分析結果をとりまとめて、原子力安全・保安院ならびに福島県へ連絡いたしました。

 今後も、同様のサンプリング調査を実施することとしております。

 つまりは、「お役所に提出している報告レポートを、一般向けにも公表させてもらってます、ごめんなさい」って、意味よね。

 それで済ませてちゃぁ、被害地の人たちは満足できないに決まってる。

 被害者の人たちのニーズは、もっとわかりやすいものを求めてるはずだし、何より目処を知りたい。「目処が立たない」なら進捗度が知りたいのよ。
 「目処がたたない」、「いついつまでって具体的には予告できない」状況があるんなら、せめて進捗をわかりやすく公表してほしいわけ。


 アタシは、東電には従来のデータ発表も続けながら、「今日の冷却水の温度は、1号炉では何度、2号炉では何度……」ってのを毎日発表して、前日と比べてどうなったか、って言うのも連日発表してほしいな。もちろん、これまでも発表してる情報に加えてね。
 きっと「目処が立たないなら、進捗度をわかりやすく知りたい」ってニーズには応える発表になると思うんですが。

 だって、現場の技術者の人には、冷却水の温度が連続して何℃になったら、割と安心とか、その類の「大まかであっても、かなりハッキリした目安」ってあるはずでしょ。


 今、東京電力のHPから見れるプレスリリースだと、原発敷地内の空気中放射線物質濃度は、12日間ほどの折れ線グラフが発表されてます。これはいい、と思うんですね。
 一方、放水口近辺の海中放射線濃度の方は、1日の間の推移しかグラフ化されていない。グラフにする意味が、一般国民の側から見るとよくわかんないグラフになってる。
 きっとお役所に提出するレポートとしては意味があるんでしょう。

 でも、世間が東電に求めてる“正しい情報”ってのは、お役所が求めてるニーズとはちょっと別なんだわ。
 事故を起こしていない間は、お役所と東電の間で、共有されてたフォーマットを満たしてれば、それで満点だったでしょうけど。
 もう事故を起こしちゃったんだから。
 世間のニーズに合わせた見せ方を工夫して、「はっきりと」伝わるように公表しないとダメ。
 そういう努力もしてください。


 例えば、日本原子力発電が運営してる、東海第二発電所のサイトだと、運転状況トレンドグラフってのを公開してる。周辺放射線監視状況もトレンドグラフで公開されてる。

 資本金では1/3弱の会社がやってる努力を、東京電力みたいな大会社ができないってのはおかしい。
 制御室の復旧がまだできてなくて、とか言ってないで、手入力でもなんでもいいから、やってほしいですね、トレンドグラフの類。


 東電だって、パンフレット作ったり、あるいは外注で作ったパンフレットを監修する部門、社内にあるんでしょ。
 その類の部門も動員して、世間の――、まず第一に被害者の方々の「ニーズに合わせたデータの見せ方」を工夫してください。


 もちろん、HPにあげたからって、原発事故被害地のみなさん全員が見れるわけではないけれど。
 それでも、オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)では見れるでしょうし、被害者の人たちの間での準備検討の役にはたつ。プリントアウトして使ってもらったっていいんだし。


 なんだかね、夏休みの自由研究のまとめ方を子供に諭してる、みたいな話になっちゃったけど。
 そんなつまんないとこで、被害地の人たちとギクシャクしたって、東電だって困るでしょ。

 内閣府も、「今後の見通しを示すように指示」したなら、発表の手法が被害地のみなさんのニーズに即した形になるよう指導してください。
 巡り巡って、避難範囲指定の問題にも関わってくると思えますし。是非。
 本当なら、そんなこと、原子力安全・保安院の管轄のはずですが、あんな機関(お役所)、信頼できませんし。是非。