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2012年05月13日 本当にスマートフォン戦争の勝敗はついたのか? このエントリーを含むブックマーク

スマートフォン戦争の勝敗はついたのか - My Life After MIT Sloan

について。

まず、ここには Google の利益は載っていません。PC業界の利益を分析するのに、MSIntel の利益を無視して、PC製品メーカーだけを分析するのは正しくないでしょう。その意味で、垂直統合戦略をとる Apple を過大評価している可能性があります。

ただ、仮に Google の利益を考慮したとしても、やはり Apple の利益のほうが Google の利益よりも大きいです。また、Android がそのままでは使い物にならない品質であるとか、Android 陣営は利益率を犠牲にして、市場シェアを取っているというのも概ね正しいと思います。

しかしながら、それでも Android は急速にシェアを伸ばしています。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ae/World-Wide-Smartphone-Market-Share.png

Google は制限なく Android OS を公開し、端末メーカーに完全競争に近いレッドオーシャンでの競争をさせるのが戦略であると考えられます*1Android 陣営の利益の総額が少なくなるのは、Google の狙い通りで戦略が上手くいっている証拠であるとも言えます。

では、Google はなぜ無料で Android OS を公開するのか? 欲しいのは、Androidインストールドベースでしょう。Google Play Store*2 での収益や、他サービスとの相乗効果(範囲の経済)はインストールドベースからもたらされます。端末メーカーは基本的には端末販売時にだけ利益を計上できますが、インストールドベースはその積み重ね(積分値)です。

GoogleApple を(利益で)逆転できるかどうかは、Google が獲得しつつある巨大なインストールドベース*3を今後いかに活用できるか? にかかっていると思われます。まだ勝負はこれからで、これからが面白いところではないでしょうか?


*1MSIntel の戦略と類似していると思います。

*2:旧Android Market

*3:ただし、先進国では相対的に iPhone が強く、途上国では相対的に Android が強い(一例)ので、インストールドベースの数では Google だが、質では Apple が勝る、という見方もあると思います。もしくは、Android はローエンド破壊型イノベーションの条件を満たしている、という見方もできると思います。

2011年12月08日 収入の少ない人ほど、松井候補に投票? このエントリーを含むブックマーク

2011年の大阪府知事選挙で、「大阪維新の会」の松井一郎候補が当選しましたが、松井候補の市町村別の得票率と平均所得は逆相関、つまり所得の低い市町村ほど松井候補の得票率が高かったことが、わかりました。

「収入の少ない人ほど、松井候補に投票」:2011大阪府知事選の検証 - 進化する大人たちへ

という分析がありました。これを、もう少し別の角度から分析をしてみたいと思います。


知事選各候補の市町村毎の得票率を計算して見ていたら、ある事に気づきました。松井候補は主に南部で得票率が高く、北部で得票率が高くないように見える、ということです。どうやら、得票率と地域性に関係があるように見えます。

大阪では、「豊中箕面吹田といった北部は所得が多く、逆に泉佐野貝塚のような南部では所得が低い」というイメージがあります。となると、松井候補の得票率と、市町村毎の平均所得との間に、関係があるかもしれません。そこで、検証してみる事にしました。

「収入の少ない人ほど、松井候補に投票」:2011大阪府知事選の検証 - 進化する大人たちへ

所得と得票率の相関は、R^2 = 0.1578 で、t検定は1%有意ですから、関係はあるといえるでしょう。ただし、そもそも地域性それ自体が最も重要である可能性が高い気もします。なぜなら、松井候補の地元の八尾市は松井候補の得票率が2位、逆に倉田候補の地元の池田市では松井候補の得票率がワースト2位だからです。要するに、候補者の地元が有利であったということです。

f:id:LibrePDM:20111208171637p:image:w240

そこで、各自治体市町村役場の場所から、(池田市役所からの距離)−(八尾市役所からの距離)を求めて*1、それと松井候補の得票率の相関を見てみました。その結果、R^2 = 0.3538 で、t検定は0.1%有意となりました。つまり、所得より自治体の位置のほうが得票率との相関が強いことがわかります。

f:id:LibrePDM:20111208171636p:image:w240

よって、「収入の少ない人ほど、松井候補に投票」しているように見えるのは、

  • 候補者の地元近辺において得票率が高くなること
  • 池田市近辺(大阪府北部)は八尾市近辺(南部)より平均所得が高い*2こと

から導き出された「擬似相関」であり、「収入の少ない人ほど、松井候補に投票」ということ自体には因果関係は薄いと見るのが妥当ではないかと思われます。


Rで計算した結果を以下に載せます。


R version 2.13.0 (2011-04-13)
Copyright (C) 2011 The R Foundation for Statistical Computing
ISBN 3-900051-07-0
Platform: x86_64-pc-mingw32/x64 (64-bit)

Rは、自由なソフトウェアであり、「完全に無保証」です。 
一定の条件に従えば、自由にこれを再配布することができます。 
配布条件の詳細に関しては、'license()'あるいは'licence()'と入力してください。 

Rは多くの貢献者による共同プロジェクトです。 
詳しくは'contributors()'と入力してください。 
また、RやRのパッケージを出版物で引用する際の形式については 
'citation()'と入力してください。 

'demo()'と入力すればデモをみることができます。 
'help()'とすればオンラインヘルプが出ます。 
'help.start()'でHTMLブラウザによるヘルプがみられます。 
'q()'と入力すればRを終了します。 

> matsuivoting<-c(64.1,61.2,61,60.9,60.5,60.4,60.1,60,59.7,59.3,59.2,59.1,58.7,58.7,58.7,58.7,58.6,58.5,58.5,57,56.8,56.6,56.4,56,56,55.6,55.6,55.3,55.1,55,54.8,54.6,53.6,53,52.8,52.5,51.9,51.9,51.3,51.2,49.8,35.6,33.5)
> income<-c(320,350,332,349,340,335,325,364,347,349,359,318,332,321,333,387,323,311,364,332,398,323,373,384,335,380,359,369,351,332,372,358,389,373,380,339,421,420,356,464,418,403,332)
> summary(lm(matsuivoting~income))

Call:
lm(formula = matsuivoting ~ income)

Residuals:
     Min       1Q   Median       3Q      Max 
-24.0829  -1.1936   0.4059   3.0643   5.6962 

Coefficients:
            Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
(Intercept) 80.29594    8.88834   9.034 2.65e-11 ***
income      -0.06841    0.02468  -2.772  0.00834 ** 
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 

Residual standard error: 5.343 on 41 degrees of freedom
Multiple R-squared: 0.1578,     Adjusted R-squared: 0.1373 
F-statistic: 7.683 on 1 and 41 DF,  p-value: 0.008345 

> northlat<-c(34.406847,34.626863,34.437662,34.359582,34.504279,34.366004,34.737695,34.520717,34.579305,34.73994,34.483526,34.487092,34.67933,34.316977,34.460634,34.458084,34.712015,34.73915,34.401282,34.577879,34.503795,34.777356,34.81434,34.518681,34.766092,34.816338,34.566226,34.491636,34.558034,34.393774,34.574277,34.846158,34.787943,34.883924,34.499527,34.657518,34.759452,34.781265,34.464587,34.82693,34.937174,34.821705,34.97255)
> eastlon<-c(135.327337,135.600978,135.358452,135.23967,135.410464,135.273339,135.563904,135.442452,135.628642,135.639533,135.423557,135.401323,135.601012,135.142139,135.370829,135.564226,135.623659,135.586893,135.355785,135.55185,135.555693,135.561817,135.650658,135.647661,135.6281,135.568505,135.482556,135.629699,135.606212,135.291174,135.597474,135.617272,135.679953,135.66297,135.597128,135.497547,135.51686,135.469739,135.622537,135.470463,135.450524,135.428444,135.414274)
> distance<-sqrt((northlat-34.821705)^2+(eastlon-135.428444)^2)-sqrt((northlat-34.626863)^2+(eastlon-135.600978)^2)
> summary(lm(matsuivoting~distance))

Call:
lm(formula = matsuivoting ~ distance)

Residuals:
    Min      1Q  Median      3Q     Max 
-14.486  -2.043   1.339   2.937   8.312 

Coefficients:
            Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
(Intercept)  53.9217     0.8126  66.356  < 2e-16 ***
distance     24.5910     5.1905   4.738  2.6e-05 ***
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 

Residual standard error: 4.68 on 41 degrees of freedom
Multiple R-squared: 0.3538,     Adjusted R-squared: 0.338 
F-statistic: 22.45 on 1 and 41 DF,  p-value: 2.597e-05 

> summary(lm(income~distance))

Call:
lm(formula = income ~ distance)

Residuals:
    Min      1Q  Median      3Q     Max 
-51.795 -24.821   3.204  20.957  83.777 

Coefficients:
            Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
(Intercept)  364.568      5.537  65.838   <2e-16 ***
distance     -79.657     35.370  -2.252   0.0297 *  
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 

Residual standard error: 31.89 on 41 degrees of freedom
Multiple R-squared: 0.1101,     Adjusted R-squared: 0.08838 
F-statistic: 5.072 on 1 and 41 DF,  p-value: 0.02973 

*1http://www.geocoding.jp/で各市役所の緯度・経度を調べ、距離を得ています。緯度または経度が1離れている距離を1としています。池田市役所と八尾市役所の中点は0、そこから池田市役所に近づくにつれマイナスに、八尾市役所に近づくにつれプラスになります。

*2:距離と所得の相関を見てみると、R^2 = 0.1101 で、t検定は5%有意

2011年11月09日 都道府県の幸福度を測定するには このエントリーを含むブックマーク

日本で一番幸せな都道府県は??法政大学が研究発表 - 市ケ谷経済新聞

こんな記事がありました。正直、結果を見て直感的に「そうかなあ?」と疑問を持った人も多いのではないかと思います。

昔になりますが、1996年にNHKが「全国県民意識調査」という調査を行っています。一次資料はすぐ手に入らなかったので、「県民性の統計学」という新書から孫引きしています。「いまの生活に満足していますか?」という問いに「非常に満足している」と答えた人の割合*1と、今回の調査結果を比較してみます。結果は下記の通り。


f:id:LibrePDM:20111110004801p:image


これは、どう見ても無相関、ですね。

15年でそれほど幸福度が大幅に変わるとも思えないので、これは測定の問題が大きいと思います。法政大学の調査は客観的な指標を用いており、「全国県民意識調査」はその名の通り住民の主観的な意識をアンケート調査しています。

GNH(Gross National Happiness)の議論とも重なりますが、この手の「幸福度」というものは測定が非常に難しいということでしょう。


P.S. 元ファイルを Google Docs で公開しています。ご自由にお使いください。 https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0AvX_VWJn25JmdGhtNEQtTHAtUTk0d3dCOHV1d2lxOEE


*1:この本にはそれしか載っていないのです。ほんとうは「やや満足」とかも加味したいのですが。

2011年10月08日 R.Stallman の Steve Jobs に対するコメントの日本語訳 このエントリーを含むブックマーク

2011: July - October Political Notes - Richard Stallman より引用して翻訳

Steve Jobs, the pioneer of the computer as a jail made cool, designed to sever fools from their freedom, has died.

愚か者共を自由から切り離すように設計された、牢獄としてのコンピュータをクールにした開拓者である Steve Jobs が死んだ。


As Chicago Mayor Harold Washington said of the corrupt former Mayor Daley, "I'm not glad he's dead, but I'm glad he's gone." Nobody deserves to have to die - not Jobs, not Mr. Bill, not even people guilty of bigger evils than theirs. But we all deserve the end of Jobs' malign influence on people's computing.

シカゴ市長の Harold Washington が、汚職にまみれた前の市長の Daley について「彼が死んだことで私は嬉しくはない。ただ、彼がいなくなったことで私は嬉しい」と言ったように、死ぬ程の罪を負う者は存在しない。Jobs であっても、Bill (Gates) であっても、彼らよりもっと巨大な罪を犯した人であってもそれは同じだ。だがしかし、私たちはみんな Jobs の人々のコンピューティングに及ぼした邪悪な影響を終える資格を持つ。


Unfortunately, that influence continues despite his absence. We can only hope his successors, as they attempt to carry on his legacy, will be less effective.

不幸にも、その影響は彼がいなくなっても続いている。私たちにできることは、彼の遺志を引き継ごうとする後継者が、より小さな影響力しか持たないように望むことだけだ。



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2011年05月16日 正しい「正しい日経新聞の読み方」の読み方 このエントリーを含むブックマーク

LilacLog さんのblogを読ませていただきました。

http://blog.goo.ne.jp/mit_sloan/e/bfa3c758e46d24ca37b97d6ad063cdc9

最初に断っておきますが、論旨には私は賛成です。私のこれから書くことはちょっとした補足と思ってください。

日経新聞を批判的に読むこと自体は、私も大賛成です。ただ、私は、新社会人や学生の方は、15〜20分でざっと全体を読むのではなく、疑問に思った記事を30分くらいかけて「なぜ」「なぜ」と考えながら、一次資料にも当たりながら突き詰めていくことをおすすめします。


blog には、「雨」「傘」の例として、このような記述があります。

記事には、ホンダ三菱自動車が手元資金積み増し企業例として載っている。別の日の記事を思い出すと、自動車企業は、一部の部品の調達が間に合わず、生産が遅れているという話があった。ということは、ほとんどの部品については調達を継続してるから資金は出て行くのに、ある一部の部品が間に合わずに製品は出荷できず、お金が入ってこない、となることを想定しているのではないか。

日経新聞の「雨」「傘」を素直に信じてはいけないのと同様、この記述も素直に信じてはいけません。ほんとうかな? と突き詰めていくことが特に初学者には必要です。

では、一次資料に当たる、すなわちホンダの2011年3月末決算を見てみましょう。

f:id:LibrePDM:20110516130957p:image

本田技研工業?(7267)2011年3月期決算短信 より引用)

確かに「現金および現金同等物」は増えていますが、「たな卸資産」は減っています。また、「自動車会社は、一個流しや後工程引取で先進的な取り組みをしている」という一般知識と組み合わせると、生産が遅れているのに調達を継続というのはおかしいかな? と考えることもできるかと思います。

その後の鉄鋼業に関する記述についても、

例えば、自社が今のところ上流からの影響は少ない鉄鋼メーカーだったとする。自動車業界がこんな状況だと、今は出荷は順調だけど、そのうち多くの部分で需要が止まるかもしれない、と「雨」のストーリーを作っていくわけである。

とありますが、これも「鉄鋼生産(特に高炉)はフレキシブルに生産量を調整できない」という一般知識や、他の報道と組み合わせると、

「今は出荷が落ち込んでいるが生産は落としていないため在庫が積み上がりつつある。需要回復や復興需要が読みにくいので、様子を見て、場合によっては減産を考える」

と考えることもできるかと思います。


「傘」に関する記述も同じです。

むしろ一般的には、市況変化が大きな業界で、資金回収が不安定になる可能性が高い企業が、キャッシュがショートしないように手元資金を多く持つ傾向が高い。例えばGoogleがそうだし、米国のバイオベンチャーもその傾向が強い。手元資金を成長につなげろ、といいたい気持ちは非常にわかるが、ちょっと飛びすぎ感がある。

実際に一次資料に当たってみると、Google の現金および現金同等物の直近の残高は、売上の 14.1 ヶ月分になります*1

それに比べて、「市況変化が大きな業界」として工作機械と比べてみます。工作機械は、不況時には受注が前年比6割減になるほどの、代表的な市況産業です。

工作機械メーカーの直近決算を調べてみると、牧野フライスで売上の4.62ヶ月分*2森精機で売上の0.74ヶ月分*3です。

これと、Google が他社の買収に食指を動かしているという報道、そして Google の売上が急に前年比6割減になることは工作機械よりは考えづらいかな、という一般知識を総合して考えると、むしろ Google の手元資金の厚みは、むしろ日経の主張する「豊富な資金力で戦略投資に踏み切る」ためのものと考えることもできるかと思います。


と、なんか批判めいた書き方になってしまいましたが、批判をする気は毛頭ありません。実際、多忙な経営者や売れっ子コンサルタントには、一次資料まで細かく当たるような時間はありません。いわゆる「限定合理性」の中で、「ヒューリスティクス」に基づいた意志決定が要求されます。

時間をかければより妥当な結論にたどり着くのは当たり前ですし、私の考察にも批判は多々あり得ると思います。

だからこそ、新社会人や学生の方は、最初は「なぜ」「なぜ」と常に考えながら、一次資料にも当たりながら突き詰めて考えていくことをおすすめします。そうすることにより、ヒューリスティクスが磨かれていき、それでいつの日かやっと、15〜20分で全体を、かつ批判的に読めるようになるのではないかと思います。



*1http://finance.yahoo.com/q/ks?s=GOOG

*2http://www.makino.co.jp/jp/ir/pdf/201104.pdf

*3http://www.moriseiki.com/japanese/ir/announce/pdf/fy2010_4shihanki_kessan.pdf 他社より少ない理由は、コミットメントライン契約のためと思われます。コミットライン契約の未実行分 38,750百万円を現金同等物とみなして分子に加えると、4.60ヶ月とほぼ牧野フライスと同水準になります。