●平成18(行ケ)10546 審決取消請求事件 特許権「図書保管管理装置」

   本日は、『平成18(行ケ)10546 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「図書保管管理装置」平成19年11月14日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071114151217.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、最高裁判決を引用して、特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」とは、公衆により閲覧・複写できる状態で十分であると判示した点で、参考になる事案とか思います。



 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 三村量一)は、



『2 付言


 甲1仕様書が本件特許の優先日前に頒布された刊行物と認められることについて,補足して述べる。


 審決は,最高裁昭和55年7月4日判決・民集34巻4号570頁を参照しつつ,甲1仕様書について,「その原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され,かつ,その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される状況が整っていたということが推認でき,このような状況にあれば公衆からの要求をまってその都度原本から複写することができたということが推認できるから……少なくとも当該仕様書が州建築部に提出された日より以降の1989年3月22日に,いいかえれば,本件特許出願の優先日(1993年7月20日)前の時点で頒布された刊行物であったということができる 。」(審決書18頁25行〜33行)と認定するとともに,「『頒布された刊行物』とは必ずしも現実に(例えば,具体的な第三者に対して)頒布されていた事実の存在が要件となるものではない」(審決書19頁13行〜14行 )と説示している。これによれば,審決は,甲1仕様書それ自体が,公衆により閲覧・複写できる状態に置かれた時点をもって,特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」に該当するに至った旨認定判断したものと解される。


 甲1の1ないし甲3の3及び弁論の全趣旨によれば,(i)甲1仕様書は,カリフォルニア州立大学ノースリッジ校において,本件特許の優先日(平成5年7月20日)前である平成元年(1989年)3月22日の時点において,公衆が閲覧可能な状態で保管され,また,希望者は,1セット当たり100ドルの保証金の預託することにより,甲1仕様書の貸出を受けることができたこと,(ii)甲1仕様書は,昭和63年(1988年)8月25日前に,同州の州建築部(州建築事務所,アーキテクトの事務所)に提出され,遅くとも平成元年(1989年)3月22日の時点において,同建築部(同建築事務所,アーキテクトの事務所)において,公衆が閲覧可能な状態で保管され,かつ,希望者はその写しを入手することができたこと,(iii)甲1の3(甲2の3 ,3の3も同じ 。)は,上記州建築部(州建築事務所,アーキテクトの事務所)に提出された甲1仕様書の写しであることが,それぞれ認められるところ,これらの事実によれば,甲1仕様書は,遅くとも1989年3月22日までに,公衆の閲覧に供することを目的として複数セット用意され,かつ,公衆がその複写物を入手することができるようになっていたということができる。


 そうすると,甲1仕様書は,同一内容のものが複数セット用意されていたのであるから,それぞれを複製物ということができ,また,公衆による閲覧が可能な状態に置かれていたのであるから, これを特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」であるとした審決の認定判断は,相当というべきである(最高裁昭和61年7月17日判決・民集40巻5号961頁参照。)


3 結論


 上記検討したところによれば,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,原告は縷々主張するが,いずれも理由がない。また,審決に,これを取り消すべきそのほかの誤りがあるとも認められない。


 なお,原告は,本訴を提起した上,平成19年3月23日に,本件特許に係る明細書を訂正する訂正審判(訂正2007−390036号事件) を請求し,特許法181条2項により審決を取り消す旨の決定を求めているが,当裁判所は,当該訂正審判に係る訂正の内容に照らせば,本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効にすることについて,特許無効審判においてさらに審理させることが相当であるとは認められないと判断した。


 よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、判決文を参照してください。


 追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成19(ネ)10013 損害賠償等請求控訴事件 特許権 民事訴訟「紙おむつ」平成19年11月14日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071114152945.pdf
●『平成18(行ケ)10546 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「図書保管管理装置」平成19年11月14日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071114151217.pdf
●『平成18(行ケ)10504 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「遊技機」平成19年11月14日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071114142525.pdf


 追伸2;<気になった記事>

●『オランダとドイツの裁判所,NokiaによるQualcommの欧州特許失効の申し立てを棄却』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071115/287307/
●『オランダ裁判所、ノキアクアルコム特許訴訟を棄却』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20361116,00.htm
●『ソニー、蘭NXPと合弁−非接触IC事業で世界標準化狙う』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071115-00000020-nkn-ind
●『東京電力vs.東京ガス エネルギー間競争激化 遠隔操作サービスにも拡大』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071114-00000032-fsi-ind