【連載:Will you? 第3回】ちょっと待て!ハイチに自衛隊を出すな!――ぼくらをとりまくこのセカイについて

今までの連載は http://d.hatena.ne.jp/Ryota1981/searchdiary?word=%2a%5b%cf%a2%ba%dc%a1%d6Will%20you%a1%a9%a1%d7%5d 

※間違いもあるかもしれないけど、緊急性が高いのでざっくり書きました!

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1:

全然話題になってないけど、これはヤバい。ヤバいよ。
●ハイチPKOに自衛隊派遣へ 復興支援に300人 http://www.asahi.com/politics/update/0125/TKY201001250316.html
ハイチ自衛隊派遣に反対=共産  http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010012700784

asahiの記事からわかる通り、わずか6日でのスピード決定だ。日本政府はPKOの参加条件として、受け入れ国の同意や停戦合意などの「PKO5原則」を設けているが、ハイチでは停戦合意はない。そして震災でさらに治安が悪化している。
それでも先進各国は我先にと支援し、アピール合戦になっちまってる面があるよ。もちろん事態の深刻さもあるけど…。
●ハイチ大地震で犠牲 中国、PKO要員8人を英雄化
http://www.asahi.com/international/update/0120/TKY201001190531.html?ref=reca
しかも日本の防衛省は、朝日新聞1月27日朝刊によればアフガン撤退にかわる新たなアメリカ貢献の意味を込めているという。自民党政権みたいなことやってんじゃねーよ!
●“だが北沢氏は、今月15日のインド洋の補給支援活動からの撤退以降、新たな国際貢献策を模索していた。ハイチは米国の「裏庭」カリブ海に位置する。難民流出などを懸念する米国は復興支援活動を積極的に進めている。普天間問題で日米関係がこじれるなか、対米貢献をアピールするうえで「渡りに船」だった。”
そもそも、ここまで被害が悪化するのは、これまでの(いわゆる)先進国側の政治的・経済的な侵略が原因だ。
シバレイさんより転載:

“で、オイラは先進国(特に米国とフランス)はハイチの人々を助けるのは、最早義務だと思ったりもする。先のメルマガにも書いたけど、地震は天災だが、あれだけ被害が大きくなったのは、人災だ。貧しさから今にも崩れそうな家屋に住んでいたことや、長年の政情不安で、政府が機能しておらず、建築基準法的なものも整備されていなかったらしい。では、貧困と政情不安の原因は何か。答えは、フランスからの独立のための賠償金支払い(!)、米国による占領と、同国の傀儡である独裁政権、さらにIMFの構造調整プログラムで貧困がさらに拡大、民衆が選んだ指導者が米海兵隊に拉致され(!!)、中央アフリカに「亡命」させられた。特に米国がそうだけど、先進国がハイチの人々を助けることは、「慈善」じゃなくて、むしろ「贖罪」に近いかと。
 というわけで、オイラのメルマガの収益、今のところ微々たるものだけど、ここからもハイチ支援にカンパしようかと思っている。
http://reishiva.jp/news/?id=4159

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2:

そしてここに、もう一つの問題がある。
そうした「そもそもの責任」を問うことなく、単に「破たん国家」扱いして、「それを救うために派兵することが国際社会の責務だ」という言い方をするのが民主党政権下での自衛隊派兵だ。去年のソマリア派兵がそのハシリだった。
同じ朝日の記事は、“新たな日本の国際協力のひな型となるのか”と言いながら、国連政務官の川端氏(大阪大学大学院)の次のことばを載せている。

“ハイチPKOは、警察の支援や一般市民の保護など、限定的ながら国連憲章第7章下の強制力を付与された「新世代のPKO」だ。このようなPKOは、紛争当事者の特定が難しい内戦が平和の主たる脅威となった冷戦後に急増した。……低迷する日本のPKO協力の転機となるかもしれない……鳩山由紀夫首相は「日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させていきたい」という。「深化」が対米依存の是正と地球規模での役割分担を意味するなら、日本は国連の多国間外交を通じた協力を避けて通れない”


でもちょっと待てよ! アメリカべったりじゃないからって、こんなのに騙されちゃいけない。
92年には初のPKO派兵を認めることが国会がひっくり返るほどの大問題になったことを思いだそう。
つまり先進国の身勝手で生み出された場所へ、さらに経済的・軍事的なプレゼンスのために派兵することは、単なる「2重の侵略」になりかねないってことじゃないだろうか。そうまでして生き残っていこうとする「グローバル競争」って一体何なんだよ!?
参考:http://d.hatena.ne.jp/Ryota1981/20100103/1262456500

明治学院大学の石原俊さんは、ガザ―ソマリア―アフガンをつなげながら、現代の「対テロ戦争」と「破たん国家への支援」が結びついて、一見洗練されながら、実態はメチャクチャな侵略になっている状態をあざやかに分析している。ブッシュからオバマへ変わっても、「新しい戦争」は続いてしまっているんだ。

“今回のガザに対する殺戮と破壊は、ゲットー化された準占領地域で生き延びるために人びとが民事と軍事の境界さえ不明瞭なエコノミーを形づくってしまった(ように見える)ことへの、イスラエル国民の恐怖心を煽りつつ遂行されたのであり、グローバルな「新しい戦争」の突出として捉えるべきだろう。

“21世紀アフガンにおける「対テロ戦争」は、村々で民事部門を発達させつつ複雑な地形を利用して遊撃戦を展開する軍閥勢力に対して、米軍が場当たり的な空爆と地上軍派遣で応じるという、延々と続く殺戮と報復の連鎖を意味していることを銘記せねばならない。”

ソマリアの「海賊対策」は、アフリカの資源獲得をめぐり中国と競争関係にある欧米諸国によって2006年夏の段階から準備されていたという多国籍資本を抱える先進諸国は、自らの主権を分散化・偏在化させつつ、開発援助の対象としたアフリカ諸国と連携して、ノマド遊牧民)化する法と暴力をある程度捕捉しながら、安価な天然資源や農産物の確保にいそしんでいる。

“21世紀に入って主権の分散化と無責任は再上昇したといえるが、その状況が19世紀と異なるのは、国家と資本の関係性や主権の担い手である。……現在の「帝国」で主権の分散状況を担っているのは、国家の「汚れ仕事」を無責任に引き受ける民間軍事会社の場当たり的活動や、民事部門や多国籍資本の活動との境界が不分明なほど偏在化した正規軍の行動である。
そしてこのような主権的力は、「先進国」の人々の無知と無感覚につけ入りながら、<人間以下の存在>とみなした人々を殺し続けている。”
(『週刊読書人』09年3月13日号の「論潮」より、「主権の分散化・偏在化 ガザ―ソマリア―アフガンをつなぐもの」)


民主党がやっているのは、

“新政権で予想される海外派兵は、国連主義を基礎としつつ、紛争への介入の「手続き」「内容」「予想される効果」を基準に<事業仕分け>され実施される点にある。”
(同「論調」09年12月25日号)

というだけにすぎないんだ。

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3:

そしていつもいつも、政治家や評論家は上から目線で、実際に派兵されPTSDとかになって帰ってくることも急増してる現場の自衛隊員は無視しやがって。
そこにいる隊員たちは日本社会の貧困の若者だ。彼らが日本を「より豊かにするために」、資源確保の戦争へ参加させられていく。
ここで反戦運動は、反貧困の運動とつながってくる。国内で殺されようとしている私たちは、伸ばした手がどこまでも海を越えて行ける、越えて行かなきゃいけない、状態にある。

目を見開きたい。真実をさがしたい。現地とつながるならば、NGOが自らの意志で行くのがいいじゃないか。まずは何より個人の「助けたい、協力したい」という気持ちを表すことからじゃないかよ。
そしてぼくたちには、まずやるべきことがあるんだ。
“「先進国」の人々の無知と無感覚につけ入りながら、<人間以下の存在>とみなした人々を殺し続けている”
という自分たちの状況を変えることなんだ。
メディアから、運動から、となりにいる人と話すところからさ。