この世の彼方の海/マイクル・ムアコック
この世の彼方の海―永遠の戦士エルリック〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: マイクル・ムアコック,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
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「〈夢見る都市〉」は、メルニボネの首都イムルイルをエルリックが攻め落とす物語。悲劇的だがその悲劇的情景がやけに類型的で、これは残念というより不思議。エルリック個人にとってはクライマックス/カタストロフであろう事項を敢えて(言ってしまえば)素っ気なく扱うことで、物語の(これまた言ってしまえば)《低俗化》を避けたのだろうか。竜がやっと出て来ました。火ではなく毒液を吹くのがいいですね。
「神々の笑うとき」は、全てが記された書を求める話。「歌う城砦」は、ある辺境に異次元から変な城が進出してくる。この世界がどういったものかがわかる作品だが、流麗な筆致によって、決して説明的な無味乾燥に陥らず、心地よく、また楽しい感興を味わうことができる。
上記いずれも、エルリック自身の物語と言うにも、一つの世界を綴る物語と言うにも帯に短し襷に長し、しかしそれは決して中途半端ではない、という小説(というかシリーズ全体がこうなのか)。相変わらず魔法関係の描写が素晴らしく、立ち現れてくる多元宇宙観が良い感じだ。エルリックをはじめとする登場人物の個性豊かな気性も魅力。《何かが残る》話では今のところないが、じゅうぶん楽しみました。二月に一冊のペースで付き合うのも悪くないと思います。
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
- ヨーヨー・マ(チェロ)
- デイビッド・ジンマン(指揮)
木質の非常にいい音を出すオーケストラで、大変感心しました。ベートーヴェンは、軽やかに心地よく弾む。後ろの方の奏者まで身振りが大きく(それに編成がけっこうでかい)、舞台上の見た目もリズミカル、迫力もある。表現が一本調子だったような気がしないでもないが、オーケストラの奏楽が本当に見事なので、それだけで満足。ナチュラルホルンも素晴らしい。なおこのコンビということで期待される装飾音型は、ほぼCDどおり付与されていた。フィナーレ冒頭でいきなり弦楽四重奏になる部分は、実演だと効果絶大ですね。素敵なお遊び、楽しませていただきました。
後半……やっぱりこの曲あんまり好きじゃないからなあ。ヨーヨー・マはそれなりに聴かせましたが、繰り返すけれども曲が好みじゃないんで……。正直、管弦楽曲なのか協奏曲なのかハッキリしないのが問題だと思う。管弦楽だと割り切って、ソリスト連れて来るんじゃなく、オケの首席奏者に弾かせた方が、聴き手としても聴く上でポイントつかめて良いのではないか。……まあ今回のツアーの趣旨*1からすると、それじゃダメなわけですが。すっきりしていたのは良かったと思います。