ーOOO-ショコラ工場の秘密 … シングルモルト&ショコラ マリアージュ講座
さてさて、先日参加してきたサントリーさんの「大人のためのシングルモルト&ショコラ マリアージュ講座」のレポートの続きです。
前回書いたカカオの歴史のお話に続いて、今回はカカオの栽培についてです。
カカオの栽培
カカオの樹は1年中花を咲かせています。
写真の左側、カカオの樹に小さな花が咲いているのが見えますか?
カカオの花の色は白、ピンク、ばら色、黄色、赤などのパステル調。そして大きさは3センチほどで、香りはありません。
カカオの樹の幹から直接花が咲くのが特徴で、写真右のように、枝からだけでなく幹から直接ラグビーボールのようなカカオの実がなっています
花が咲いてから収穫までは約半年、収穫期は年2回あります。
カカオの実のことをカカオポッドといいます。長さが20センチほどです。
厚さ1センチほどの堅い殻を割ってみると、パルプと呼ばれる甘くて白い果肉が出てきます。
カカオの種子であるカカオ豆は、このパルプの中に包まれています。
カカオ豆はパルプと一緒に発酵されます。
この発酵の段階でカカオ豆の中の成分が変化し、独特の甘い香りが熟成されるのです。
バナナがふんだんに採れる西アフリカなどでは、バナナの葉をかぶせて発酵させる方法が主流です。中南米などでは木箱を使って発酵させています。
約1週間たってパルプがどろどろに溶けてなくなったところで、カカオ豆を取り出します。
パルプを洗い流して取り出したばかりのカカオ豆は、水分の含有量が40%ほどあります。
カカオ豆にカビが生えないように、水分が5〜6%になるまで天日干しで乾燥します。
乾燥したカカオ豆は、ジュートと呼ばれる麻袋に重さ60キロ単位で詰められ、出荷されていきます。
ここまでがカカオの栽培農家の仕事です。
チョコレート工場の仕事
チョコレート工場では、選別したカカオ豆を焙煎します。
そして種皮を取ったものを粉砕します。得られた胚乳部をカカオニブと呼びます。
さらにこれを、すりつぶしてペースト状にします。こうして得られたモノが「カカオマス」です。
また、このカカオマスから油を絞ったものがココアパウダーになります。私たちがココアとして飲んでいるのはこの部分です。
絞った油は「カカオバター」と呼ばれます。カカオ豆はたいへん油を含んでいて、カカオ豆の55%の成分がカカオバターなのです。
チョコレートを作るときは「カカオマス」「カカオバター」、そして砂糖とミルク成分が配合されます。
これらの配合によって、ブラックチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートが作り分けられていきます。その違いは以下の通りです。
カカオマス | カカオバター | 砂糖 | ミルク成分 | |
---|---|---|---|---|
ブラックチョコレート | ○ | ○ | ○ | × |
ミルクチョコレート | ○ | ○ | ○ | ○ |
ホワイトチョコレート | × | ○ | ○ | ○ |
カカオマスとカカオバターを味わってみる!
ここで私たちは、カカオマスとカカオバターを味わってみることになりました。
写真のお皿の左から順に、カカオ豆、カカオマス、カカオバターです。
カカオ豆は苦くてパサパサしていた…というお話は昨日書きました。
真ん中のカカオマスですが、これは最近はやりのカカオ成分が99%のブラックチョコそのものですね。「苦い!」を超えて、渋い感じさえします。ほんの少量をなめるようにしていただくと、ゆっくりと味が口の中に広がっていくので味わう余裕が出てきます。
さて、右はじの真っ白なのがカカオバターです。
口の中に入れると、何の味も香りも感じられません。単に油、なのでしょうか?
イベント当日は苦い苦いカカオマスの直後に味わったので、繊細な味はわかりませんでした。そこで、持って帰ってきたモノをあらためていま味わってみました。
噛まずにカカオバターの固さを感じていると、口の中の温度でゆっくりと溶けていきます。ほとんど無臭なんだけど、ちょっとココアのような匂いが。そして完全に溶けると、下にからまりつくような甘さを感じます。砂糖のモノとも違う、油の持つ甘さです。これがいわゆる「コク」でしょうか?
ここで話はそれますが、わたしは先日、スターバックスのコーヒーセミナーで「コク」を体験してきました。無脂肪のミルクと普通のミルクを飲み比べると、無脂肪のミルクはスッキリとしていて、普通のミルクは舌にからまりつくような甘さを感じました。この違いが「コク」である、ということでした。
カカオバターは無味無臭のようですが、ショコラにコクを出す大事な要素の一つなのです。
カカオマスにはポリフェノールなどの健康によい成分が豊富に含まれています。カカオバターにはこれらの成分は含まれていません。健康のことを考えれば、ブラックチョコレートを、それもカカオバター成分の少ないものを食べるべきと言えるでしょう。
カカオバターにはコクがあります。ホワイトチョコレートの濃厚な甘さは、砂糖の甘み、ミルクの甘みだけでなく、カカオバターの持つコクからも引き出されているんですね。
次回予告!
カカオマス、カカオバターの配合比だけでなくカカオ豆の産地や品種の組み合わせによって、ショコラの味は大きく変わってきます。
さて、カカオ豆にはどんな品種があるんでしょうか?
そして、ホントはサントリーさんのシングルモルトウイスキーのセミナーの話なのに、ちっともウイスキーの話に入らないんだけど、どうなっているのか?
そこいらへんの話はまた次回以降と言うことで、気長にお待ちください。