かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

熊井啓監督『海は見ていた』(2002年)


海の見える遊郭ってどこなのかな、って映画を見ながらおもいました。品川あたりかな、って。「goo映画」の解説を見たら深川でした。


深川と海……東京の地形にうといので、すぐに連想できませんでした。


深川の小さな遊郭で働く4人の遊女は、姉御肌の菊乃(清水美沙)をはじめ、みんなどこかお人よし。不幸を背負った男が舞い込むと、夢中に助けようとするお新(遠野凪子)を、みんなであたたかく援護する。


<人間は、もっとお互いを信頼して、幸せになれないだろうか>


そんな素朴な黒澤明のメッセージが伝わってきます。熊井啓監督らしい鋭い思想性はなく、最初から<幸福を願うお伽話>としてつくられているようにみえました。


それはそれでいいとしても、最後嵐で倒壊した屋根のうえではしゃぐ清水美沙の演出は、いくらメルフェンだとしても、少しやすっぽすぎないでしょうか。


★池袋「新文芸座」にて

「笑の大学」(舞台版)


星護監督の映画『笑の大学』は途中で出てしまいたくなるほど退屈でした。出演者が懸命にがんばればがんばるほど、おもしろくないんです。この狙いのずれってなんだろう、と考えてしまいました。


演劇はほとんど見たことがないのに、ringoさんが「舞台の『笑の大学』はおもしろかったですよ」というので、録画したDVDをお借りしました。


笑いには興味のない検閲官と喜劇作家が繰り広げるドラマは映画と同じ。なのに、これがとってもおもしろい!


検閲官に西村雅彦。喜劇作家に近藤芳正。西村雅彦のちょっと意地悪なキャラが検閲官にぴったりでした。役所広司では善人すぎるのかもしれません。それにしても、西村雅彦は、観客のこころを手玉にとって、笑わせたり、気をもたせたり、芝居をリードします。まったく、うまいなあ。


相手役の喜劇作家を演じたのは、映画=稲垣吾郎、舞台=近藤芳正。こちらは、はじめから勝負にならないようです。近藤芳正は、映画『ラヂオの時間』で、鈴木京香の夫役をやっていました。あの可笑しなキャラクターが大好き。この舞台でも、裏切られませんでした。


映画では全然笑えなかったのに、こちらでは笑いっぱなし。この違いは、演出なのか、役者なのか。同じ三谷幸喜作品でも受ける感じがこうも変わるとは……。