新刊紹介:「経済」9月号

 「経済」9月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは9月号を読んでください)

■巻頭言「大学政策の転換」
(内容要約)
民主党政権の大学政策は自公政権と変わらない、大幅な交付金削減では大学の運営は困難となり日本の科学技術の将来が危ういとして批判。政策の転換を主張。

■世界と日本
【「原油流出事故とBP」(荻村武)】
(内容要約)
 メキシコ湾で起きた原油流出事故について原因を究明し、再発防止策をとること、BPにしっかりと責任を取らせることが必要である。

【「欧州が先導する「銀行税」」(宮前忠夫)】
(内容要約)
 欧州各国では銀行の金融投機に税をかけ、税収を金融危機に充当しようという銀行税の試みが広がっている。

【「中台経済協力協定の締結」(平井潤一)】
(内容要約)
 中台間で経済協力協定が締結された。この背景には、両者の経済が世界的な金融危機のあおりを受け苦しいことがある。
 こうした相互依存の進展は、台湾危機を喧伝し、軍拡を進めようとする勢力(JSFみたいな軍オタとか)への反論として評価できる。
 ただし台湾国内には安い中国産製品が流入したら、農業や軽工業(繊維産業など)で大量の失業者が生まれるという声もある。こうした声にどれだけ配慮できるかが今後の課題(ただし、こうした声を反映し、当初案に比べ、締結した協定は中国側がかなり譲歩しているようだが)。
 なお、反対デモは基本的に経済的な反対(失業者が出たらどうする!)が主で、産経さんが望んでいるようなタイプの反対(台湾即時独立系)は傍流のようだ。

■特集「福祉現場のワーキングプア
(内容要約)
 個別紹介は能力的に無理なのでしません。
 基本的に全ての論文に共通していることは、
 「福祉現場は低賃金の3K職場(きつい、汚い、危険)*1である」(もちろん福祉の現場特有の事情もあるが、基本的には日本では労働者の権利保護が弱いという大前提がある)
 「小泉構造改革もあり福祉の労働でも非正規が増えている」
 「このままでは福祉の労働は崩壊するだろう」
 「しかし、新自由主義の蔓延もあり、福祉に金を使おうと言う主張があまり国民に支持されないという悲惨な状況にある」(特にこの点を無茶苦茶な「公務員叩き」とからめて論じているのが城塚論文。城塚氏は新自由主義支持の根は深く簡単には克服できないとしてかなり悲観的だ)
といったことである。

【「福祉職場ですすむ貧困問題」(浅井春夫)】
【「低所得層の広がりと福祉労働者」(金澤誠一)】
【「福祉の「市場化」と福祉労働」(横山寿一)】
【「公務の市場化と官製ワーキングプア」(城塚健之)】
【「高齢者=貧困化・格差のなかの低所得高齢者」(矢部広明)】
【「高齢者=介護保険10年。介護現場のワーキングプア」(野村智)】
【「障害者=障害者施策と職員の状態」(多田薫)】
【「保育=子どもの放課後と学童保育の貧困問題」(真田祐)】
【「保育=レポート・横浜市にみる無認可保育所の実態」(柳沢健二)】

■特集「どうする日本の雇用」(2)
【「派遣・非正規雇用から人間らしい雇用へ」(脇田滋)】
(内容要約)
・脇田氏は労働法学者。
・派遣労働は雇用が不安定な低賃金労働であり、その規制を強める必要があると主張。
 具体的には
「同一労働同一待遇の原則の法制化」(正社員も派遣も同一労働ならば原則、賃金などの待遇は同じであるべき)
「現行の専門26業務の抜本的改正」(制定当初はともかく現状では26業務は専門性があると言い難いため)
「登録型派遣の原則禁止」などである。

■「世界経済を支配する巨大企業の研究(上)―「生産と資本の集積・集中」の新たな段階」(友寄英隆)
(内容要約)
世界経済を支配する巨大企業の多くはアメリカの企業だが、最近中国の企業が力をつけている。中国企業の今後の動向が注目される。

■「金融商品のノルマ販売を規制―労働者・金融被害者のたたかいと国会論戦」(田中均
(内容要約)
金融商品(株式、投資信託、変額年金保険など)のノルマ販売(ノルマが達成できなければ減給などの不利益処分を科す)を労働者イジメと批判。
また、ノルマを達成するため、詐欺的な販売が行われる危険があるとして規制の必要性を主張。
・表題となっている「労働者・金融被害者のたたかい」として、裁判闘争や団体交渉などを紹介。「国会論戦」として、大門実紀史参院議員の国会質問を紹介。

■コラム「財政危機の真実」
(内容要約)
 カナダで開かれたG20では2013年までに各国とも財政赤字を半減させることで合意したが日本はその対象外となった。対象外になったことには「日本の国債の95%が国内保有で相対的にリスクが低いため無理して半減する必要はない」と言う正当な理由があったのだが、日本のマスコミは「産経:「例外扱い」は恥ずかしい」(http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100630/fnc1006300341001-n1.htm)などと、デタラメな報道(「日本の財政状況が酷くて半減は到底不可能だからお目こぼしされたんだよ!。恥ずかしいよ!。もう消費税増税するしかないな!」等)に終始した。彼らはバカなのか、それとも消費税増税を正当化するためあえてデマ報道をしているのか。呆れざるを得ない。

(参考)
 他にも探せばあるかも知れないが目についたのを紹介。以前、このお二人をdisってるので少し気が重いが(いや、言いがかりをつけた覚えはないですけどね)

「kojitakenの日記:日本政府は誰から借金をしているのか」
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20100629/1277767216

「Munchener Brucke:財政再建至上主義で暴走するマスコミ〜黒幕は財務省でも米国でもない」
http://d.hatena.ne.jp/kechack/20100628/p1

*1:ウィキペディアに寄ればKに「給料が安い」「休暇が取れない」「健康(心)が破壊される」「雇用が不安定」「結婚できない」「過労」など別のものをあてる場合もあるようだ。