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新自由主義

社会

新自由主義

しんじゆうしゅぎ

キーワード自由主義」も参照のこと。

20世紀に入ってから、伝統的自由主義に対する修正の動きが明確になる。これが「福祉国家」とよばれる動きであり、年金失業手当、医療保険最低賃金等の社会保障・福祉政策を充実させていった。他方、経済政策においてはケインズ主義に基づく国家の介入が正当化されてきた。例えばアメリカルーズベルトFDR政権は、従来の「自由主義」的経済運営を修正し、ソーシャルセキュリティー制度の創設、連邦政府の大規模公共事業による景気回復を図った。

このような高福祉・政府経済介入、いわば「大きな政府」路線は、1970年代の為替自由化、オイルショック、それに伴う高インフレ、高失業によって修正を余儀なくされる。特に、第二次世界大戦を期に世界の覇権を失い衰退一方であったイギリスベトナム戦争で疲弊した上にカーター政権経済政策が失敗しインフレに見舞われたアメリカにおいては、福祉国家に代わって経済を回復させる新たな政策パラダイムが求められていた。

ここで登場するのが「新自由主義」であり、具体的にはアメリカ合衆国レーガン政権による「レーガノミクス」、イギリスサッチャー政権による「サッチャリズム」であった。

新自由主義においては、経済への政府の介入を縮小し(所謂「小さな政府」)、規制緩和等を通じて従来政府が担っていた機能を市場に任せることが行われる。ケインズ主義は需要を政府がコントロールする「総需要管理政策」を指向するのに対し、新自由主義かにおいては供給サイドの活性化を目指す「サプライサイド政策」が採られる。この場合、減税により資金を民間に回し、規制緩和政府部門の民営化等の手段によって民間経済を活性化させる方策が指向される。

日本においては、80年代の中曽根政権下、電電公社国鉄民営化等の手段により「行政改革」が進められた。新自由主義的政策ではあるものの、むしろ個別公営企業の経営問題と言えなくもない。英米とは異なり、オイルショックからも比較的早期に立ち直り、貿易黒字も伸び続けるなど経済運営は順調であり、失業率も高まらなかったことから、福祉国家路線は本格的には修正されなかった。日本において「小さな政府」路線が真剣に検討され始めるのは、バブルが崩壊し経済がなかなか回復せず、一方政治家官僚の腐敗によって政府への信頼感が低下し、少子高齢化が誰の目にも明らかになった90年代のことであった。

市場は弱肉強食の世界なので、新自由主義によって強者と弱者への二極分解が進むことも否定できない。


また、下記のような見解もある。

別の著者による「新自由主義」への対論的補足

「否定できない」どころか、それこそ新自由主義の根本問題として現在突きつけられている問題である。

というのも、従来の自由主義が信条や表現の自由などを重視し、いわゆる「国家による強制からの自由」を強調するのに対し、新自由主義はそのような精神的自由にはあまり関心を持たず、経済的自由競争を重視し、ときに、それを絶対視するからである(市場至上主義)。そこから、社会福祉や教育など従来公共部門が担ってきたものを民間へと移し、「小さな政府」を作り、民活による効率やサービスの向上を主張することになる。市場は弱肉強食の世界なので、新自由主義によって強者と弱者への二極分解が進み、また、「効率やサービス向上」のかけ声の下で安全が軽視されることにもなる。このことは、この間のJR西日本東日本の事故やニューオーリンズ災害がよく示している。

その他に、「小さな政府」を唄いながらも、構造的に弱者と「負け組」を生み出すことから、国内の治安維持と途上国の秩序維持のために、巨大な警察・刑務所・軍隊、莫大な警察・軍事費を必要とし(「大きな警察・軍隊」)、頻繁に国内の不満分子の弾圧や海外派兵を繰り返すことにもなる。また、災害対策など安全への経費が削られ、災害人災として巨大化することから、かえって政府の財政負担が増え、「小さな政府」の理想とはかけ離れることにもなる。ただし、日本政府災害支援の公共性を極度に限定して、復興のための財政負担を極力抑え、これを自己責任にまかせるという,アメリカですらしないような極端な新自由主義棄民政策をとっている。

なお、別の論者は日本で福祉国家政策が展開されたかのように語るが、日本では本当には福祉国家政策などとられたことはない。かつて多くの企業や一部の自治体で企業福祉、自治体福祉のようなものは行われたが、日本政府はそれに一部追随するような政策を対抗上とっただけで、責任ある福祉国家政策を策定し実施したことはない。

総じて、新自由主義は現在アメリカや日本で猛威を揮っている思想であるが、その一方で、上に述べたような大きな矛盾と問題点を抱える思想と見るべきである。


新自由主義の復権 - 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書)

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