橋本健二の居酒屋考現学

2017-11-21

classingkenji2017-11-21

[]低温調理の豚モツ

飲食店で生の豚モツ刺しを提供するのが禁止されて二年が過ぎたが、これに代わって低温調理の「モツ刺」を提供する店が増えている。注文すると出てくるのは、おそらく摂氏七〇度くらいで長時間熱した、火は通っているものの、ほんのり桜色だったり、生のような光沢があったりするもの。生刺しとはまったく別物で、毎回注文しようという気にはならないけれど、次善の策としてはやむを得ない。写真は、池袋に五号店まで構えるようになった「木々家」のメニュー

食肉店には、生食できるグレードのもの販売する努力を続けて欲しい。消費者自己責任生食するのは自由だから。怖いのは、生食可能なグレードのもの提供する技術配慮が、業界から失われることである。

2017-11-07

[]三浦展『横丁の引力』

三浦展さんが東京とその周辺の横丁について論じた本である。各地の横丁を軽く案内するような本ではなく、かなりアカデミックだ。ヤミ市花街赤線近代の下層社会、建築史などについての文献を渉猟し、横丁の魅力と存在意義について、骨太に論じていく。私の『居酒屋ほろ酔い考現学』も、「横丁を社会学的に考察した本としては嚆矢」と紹介されている。

ドキリとするような指摘がある。「現代ひとつの焼け跡の時代」だというのである。「昭和が第二次大戦によって記憶されるように、平成は二つの震災原発事故によって記憶される時代である」。さらにバブル崩壊と、名だたる大企業の衰退。平成日本には一種の焼け跡が生まれたのではないか、というのである。なるほど、焼け跡には粗末な造りの小さな店が似合うのだ。

後半は、吉祥寺ハモニカ横丁再生仕掛け人手塚一郎氏が、各地の横丁関係者に対して行なったインタビューが収録されていて、これは面白いだけではなく、資料的な価値も高い。横丁愛好者、必読である。

横丁の引力 (イースト新書)

横丁の引力 (イースト新書)

2017-10-24

classingkenji2017-10-24

[]一之江「ななごう酒場

一之江での二軒目は、ここ。日本酒がいろいろありそうなので、入ってみた。注文したのは「日本酒飲み比べセット」。これは「獺祭」「田中六五」「麒麟山」「楯野川」「鍋島」「陸奥八仙」「寫楽」「久保田」「花邑」など十数種類から三盃選んで九九〇円、六杯だと一五〇〇円というもの。選んで注文すれば、なかなかコストパフォーマンスがいい。

面白いと思ったのは、串焼きの注文システムだ。ねぎま一四〇円、つくね一二〇円などと値段がついていて、基本は二本以上からの注文なのだが、一本だとそれぞれ三〇円ずつ高くなるのである。一人で入った店で、二本以上からなどと言われると困ってしまうのだが、これなら問題ないし、三〇円高という価格設定も、ちょうど納得がいく。一人客が一本単位の注文を連発すると、一人でやっている店の方がたいへんなのはわかる。他の店でも、取り入れていいのではないだろうか。(2017.9.18)

江戸川区一之江7-31-8
17:00〜23:00(日祝〜22:00)

2017-10-16

classingkenji2017-10-16

[]一之江「カネス」

この日は、行ったことのない場所へ行ってみようと、都営新宿線一之江へ。

幹線道路沿いにはマンション、小道に入るとアパートまたは一戸建住宅が続く、何の変哲もない郊外の街である。こういう場所がたくさんあるから、東京人口が多いのだ。少し散歩したあと、下町好きにはけっこう知られているこの店へ。私は、初めての訪問だ。

店に入ると、大きなコの字型カウンターがあり、その内側には大きな煮込み鍋が鎮座している。まずは、ビールと煮込みをいただく。他の客は、三人。みんなテレビの大相撲に見入っている。皆さん、相撲に詳しいらしく、登場した力士が昔はどうだったなどという話をし、おかみさんときおり口をはさむ。まったりした雰囲気が、心地よい。ハイボールも、美味しい。

一之江の駅から北へ歩いて一〇分ほど。一之江駅ができたのは一九八六年のことで、この駅がなかったら、北の新小岩、南の葛西と、それぞれ三キロ以上という場所である。だから、だんだん増えていく客は、みんななじみの客ばかり。中華そばもやっているらしく、二本の暖簾が下がるたたずまいが、なかなかよい。(2017.9.19)

江戸川区一之江6-19-6
16:30〜22:00(日祝14:00〜) 水・第3木休

2017-10-10

classingkenji2017-10-10

[]中目黒「いかり屋」

この日は、恒例の集中講義聖心女子大学へ。大学周辺には、あまり居酒屋がないことはわかっているので、電車に乗って二駅の中目黒へ向かう。一軒目は、あの名店「藤八」へ行き、絶品のしめ鯖や、名物アリラン漬けなどをいただく。満足して外へ出ると、目の前に新しい店があった。刺身の種類が多く、いい日本酒もあるようだったので、入ってみることに。

刺し盛りが九八〇円だというので注文してみる。鯛、鰯、きびなご、しめ鯖、カンパチサーモン、鮪が盛り込まれ、味もまあまあで、コスパは高いといっていい。日本酒は、越後麹屋、栄川、春鹿、雪の茅舎、真澄、初孫で、一合が越後麹屋の五〇〇円から、雪の茅舎純米吟醸の九八〇円まで、これだけあれば、まあ楽しめる。魚と日本酒が楽しめて、高くない店。近所の人はどうぞ。(2017.9.12)

目黒区上目黒3-6-1
17:00〜28:00 日祝〜24:00 無休