reading Rimbaud on Beethoven's birthday:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、12月16日、350日目。


Day 350: Jonas Mekas
Sunday, December 16th, 2007
10:21 min.

On Beethoven's
birthday, August,
Erica, and Rimbaud ---

ベートーヴェン
誕生日に、オーグスト、
エリカ、そしてランボー

自宅アパートでラジオから流れるベートヴェンのピアノ協奏曲(未同定)を聴きながら、メカスとオーグストとエリカの三人は、ベートーヴェンの誕生日を祝って赤ワインで乾杯する。

Collected Poems (Rimbaud, Arthur): Parallel Text Edition with Plain Prose Translations of Each Poem (Parallel Text, Penguin)

Collected Poems (Rimbaud, Arthur): Parallel Text Edition with Plain Prose Translations of Each Poem (Parallel Text, Penguin)

メカスはペンギン・クラシックスのペーパーバック版「Arthur Rimbaud/ Collected Poems」を持って来て、オーグストに手渡す。「ランボーに、マルセイユに、マルセイユの年老いた水夫たちに乾杯!そして北アフリカのアラブやマルセイユのすべての路地、小さな場所に乾杯!そういう場所は孤独で何もすることがない君を家族のように祝福してくれる。(ここで、オーグストが感嘆の声を上げる。)私もそうだった。だから、マルセイユに乾杯!そしてランボーに乾杯!」とメカス。

オーグストはランボーの詩集をエリカに手渡す。ぱらぱらと捲っていたエリカはある詩を朗唱し始める。よく聞き取れない。メカスは「ランボーが語るのは幻想じゃない、現実だ」と強い口調で言う。最後にエリカは「酔いどれ舟(The Drunken Boat)」とポツリと言う。メカスも「酔いどれ舟からだったのか」と言うが、どの一節かは確認はできなかった。

(追記・メモ)

ベートーヴェンを聴きながら、ランボーの詩のリアリティについて語るところも面白いが、港町マルセイユについて語るところがもっと面白い。路地、路地と言っていることから、おそらくパニエ地区(Quartier du Panier)のことをイメージしているのだろうと推測する。「マルセイユの旧港をひとめぐり」にこうある。

旧港の北側に位置するパニエ地区は、マルセイユの下町といった雰囲気が味わえるところです。かつて漁師たちの居住区だったパニエ地区は、昔ながらの家々が並び細い路地や階段が入り組んでいます。

ランボーは1891年11月10日にマルセイユの現存するコンセプシオン病院(l'Hopital de la Conception)で最期(享年37歳)を迎えたという事実はよく知られているが、メカスがランボーに関して、ランボーの「詩的ないしは文学的生涯」と同等に、否それ以上にマルセイユの路地的空間を賞揚しているところが新鮮で興味深い。マルセイユにとってはランボーは一人の客死した貿易商でしかなかった。
「アルチュ−ル・ランボー 地獄の一季節(年表)」にはこうある。

ジャン・ニコラ・アルチュ−ル・ランボー 37歳
仏蘭西シャルルヴィル生まれ
商人、マルセーユ通過中、1891年11月10日、午前10時死亡 全身癌腫

また、最初に入院した時の記録について、「ランボーの右足 XXVII.」にはこうある。

高級船員病室----5月20日。氏名、ランボー、アルチュール。年齢、38才(*注170)----職業、貿易商----レ・ザルデンヌ県シャルルヴィル生まれ。短期滞在。
病名:大腿部腫瘍。
医師:P・ユリエ(?)
入院登録番号:1427

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注170:この年齢記載は誤りで、ランボーは当時満36才、きっかり5ヶ月後の91年10月20日で37才になるはずだった。あるいは兵役の懸念があったために、本人特定の可能性を少しでも減らすべく、本人が年齢詐称したのだろうか?

ランボーは死んでも、マルセイユは続く。ランボーの死を小さな一記録として飲み込んでマルセイユは続く。