オリーブオイル1本分で8歳男児が海外へ売られた一方で、うどん県の夫婦が8歳の子を4万円で売っていた
きのう(2013年5月13日)の読売新聞で、「『日本人奴隷』3人、メキシコに…安土桃山時代」という記事がでて話題になっていました。
ガスパールは豊後(大分県)生まれ。8歳だった1585年、長崎で日本人商人からポルトガル商人のペレスに、奴隷として3年契約7ペソで売られた。その後の詳細は不明だが、引き続きペレスのもとで、料理などの家事労働をしていたとみられる。当時のスペインで、高級オリーブオイル1本が8ペソだった。
8歳の人間がオリーブオイル1本分。。。
では、日本ではいくらくらいで売られていたのでしょう。
14世紀の売買された人間の値段について、国立歴史民俗博物館の研究から拾ってきました。
- 1324年 娘 2200文(2貫200文) 志ん二郎とい男が「いぬまさ」という名前の女の子を買った値段
- 1330年 童(わらし) 500文 うどん県の夫婦が自分たちの子ども(8歳)を売った値段
- 1390年 わらし 1500文(1貫500文) 千葉県にて15年の奴隷契約(年季奉公)
これがどれくらいの価値かというと、
例えば、1300年で雑色の水干(衣服)が2500文
雑色というのは、貴族や役所に仕える身分の低い下っ端。水干(すいかん)というのは下(日本国語大事典)の衣服のこと。
この服が人間よりも価値が高いという。
ただ、米に換算すると、
米1石5斗(150升)が1500文(1貫500文)で千葉の子ども一人と同じ。(讃岐の場合は、さらに3分の1)
1升を1・5キロとするとだいたい250キロ。
10キロ5000円だとすると、12万円にしかならないけど、200キロあれば家族は食べられるかなって感じでしょうか。
オリーブオイルよりは高そう。
ちなみに調べてみたら、500文で売られたうどん県の男の子は「千松」という名前です。(「讃岐賀茂神社文書」『鎌倉遺文』)
「1000文にもならないのかよ」と名前負けした自分を悲しんだことでしょうね。
それはともかく「古代・中世都市生活史(物価)データベースの検索」は、色々と分野別に物価が一覧で見ることができて、面白いですよ。
徳川家康のお値段は4000万円!
7ペソ(高級オリーブオイル1本相当)とか500文(4万円)とか、現代日本人の感覚すると悲惨すぎるお値段ですが、人身売買といえば忘れてはいけない大物がいました。
そう徳川家康さんです。
彼の場合は、大名の息子として織田家に誘拐されたので、身代金です。その値段は500貫(50万文)つまり4000万円くらい。
庶民の奴隷の1000倍というのが安いのか、高いのか、微妙です。
織田家では、このとき買い取った家康を、戦争捕虜の人質交換として今川へ送ったらしい。
そのため家康は「タダでさえ身の狭い人質生活が、さらに気まずいものになった」と後年つぶやいている。
(略)
それは自業自得な一面もある。
今川家に送られ、初めて迎えたお正月。
殿様の前に披露されることになり、家臣が集まる前に一人でちょこんと座らされた。
「あの子供、誰?」
「松平の子だってさ」
ザワザワ、ガヤガヤ。周囲に流れる居心地の悪い緊張感。これに耐えられなかったのか、家康は突然、立ち上がると、縁先に行き、立ち小便をはじめたのだ。
大物なのか、バカすなのか。
戦国時代100の大ウソ | ||||
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バテレン追放への道
ちなみに、伴天連追放令を秀吉が出したのは天正15年(1587)6月のこと。
それまで秀吉はキリスト教に寛容でした。ところが九州征伐で、九州で広がるキリスト教に脅威を覚えました。なかでも貿易港の長崎がイエズス会の教会領となっていたことに驚愕したようです。(藤井譲治『天下人の時代』吉川弘文館、81頁)
6月19日に発令された有名な追放令は5つの条文からなります。
1 日本は神の国である。キリシタンの国より邪法(キリスト教)を布教するのは、よくないことである
2 布教した教徒たちが神社仏閣を攻撃するなど前代未聞。大名や部下は領内でキリスト教を布教してはいけない
3 伴天連(宣教師)はその国際的な知識から取り立てたのに、日本の仏法を破る「犯罪者(曲事)」なので追放する
4 ただ、南蛮貿易の船は免除する
5 仏法のさまたげをしなければ、貿易の自由は保証する
という感じです。
もちろんイエズス会領はぼっしゅーと。
天下人の時代 (日本近世の歴史) | ||||
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