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2016-07-23 パンと猫と言葉 貸切り図書館34冊目

先日は恒例のイベント「貸切り図書館」の34回目を、ゲスト友部正人さんを迎えてお送りしました。去年に続いて2回目の出演となった友部さんですが、今回も素晴らしい歌を聴かせてくれました。

去年、ミディ時代ベスト盤、その名も「ミディの時代」をリリースされたばかりの友部さんですが、改めてその豊かなキャリアに圧倒されましたね。ライブでは40年前の曲からつい最近作った曲まで、3時間に渡ってたくさんの曲を歌ってくれました。新曲の瑞々しさもさることながら、40年前の曲が未だ古びずに心に響くというのが本当に驚きでしたね。40年もの時を経ているのに「つい昨日出来ました」みたいな新鮮な佇まいなのは世界の、人間本質を突いているからでしょうか。言葉ひとつひとつが鋭く、耳に心に刺さって来るのです。改めて本物の詩人の紡ぎ出す言葉群に感動してしまいました。以前も友部さんのライブ体験した時にギター1本の弾き語りなのに背後に壮大なオーケストラが立ち上がって来るような感覚を抱きましたが、それだけのイメージ喚起させる言葉の力があるのですね。今回は「誰も僕の絵を描けないだろう」や「夕暮れ」や「水門」などの名曲が生で聞けて嬉しかったです。また鎌倉で「鎌倉に向かう靴」も聞けたし、「くじゃくのジャック」という新しい歌キャッチーで良かったですね。「遠来」のスケール感にもぐっと引き込まれました。ランナーである友部さんは長時間歌っていても全然疲れを見せないのですね。最後まで大満足のライブでした。

そして本の紹介のくだりですが、今回は以下のラインナップでした。

小出 美樹、 井上 有紀著「かまくらパン

佐野洋子著「100万回生きたねこ」

JacobLawrence著「TheMigration Series」

金井雄二著「朝起きてぼくは」

永田和宏河野裕子著「京都うた紀行ー近現代の歌枕を訪ねて」

かまくらパン」は友部さんが持って来たものではなく、たまたまmolnに置いてあった本なのですが、偶然にもこの本の冒頭に友部さんの書いた「パン悲劇」という詩が掲載されており、折角だからとこちらも紹介してくれました。この本は鎌倉の美味しいパン屋さんを紹介するガイドブックなのですが、写真も良いし、読み物としても面白いのです。友部さんは今回その「パン悲劇」を全文朗読してくれたのですが、これがまた心に染みましたね。聞いてすぐにでもパンを買いに走りたくなりました。とても良い詩なのでぜひ読んでいただきたいです。これを読んだらご飯派のあなたパン派に転向するかもしれません。

「100万回生きたねこ」は森山未來さん主演でミュージカル化された際に作詞友部さんが担当されたそうで、稽古場に行って毎日歌詞を書いていたという思い出話を語ってくれました。その舞台用に作った曲を1曲歌ってくれたのですが、とても良い曲でしたね。その舞台、機会あれば見てみたいなあと思いました。また再演されるでしょうか。

「The Migration Series」は友部さんがニューヨーク美術館たまたま展示を見たそうで、ジェイコブ・ローレンスという画家が1900年代に起こった黒人によるアメリカ南部から北部への大移動の様子を描いた作品集なのだそうです。友部さんが紙芝居形式で内容を紹介してくれようとしたのですが少々難しかったらしく(笑)普通にぺらぺらとページをめくって絵を見せてくれました。独自タッチ面白い絵でしたね。あとで実物の本を見せてもらったのですが、表紙に何やら英語落書きがしてあり、まさか作者のサイン?と思ったら「これは俺の本だぜ」みたいなことが書いてありました。おそらくこの本の前の持ち主が書いたのでしょう。それだけ愛着があったのになぜ手元を離れて日本に流れて来たのでしょうか。おそらく黒人の大移動並みの移動がそこにあったのでしょう。古本ロマンを感じましたね。

友部さんは本屋に行くとまず詩集のコーナーから見るそうで、自分でもよく詩集を買うのだそうですが、最近買った詩集ということで、金井雄二さんの「朝起きてぼくは」という詩集を次に紹介してくれました。表題の詩を朗読してくれたのですが、これがなかなか良い詩でしたね。朗読し終えたあとに「実は今日金井さんが来て下さっています」と友部さんが言うと、最前列に座っていたお客さんが立って一礼されまして。何とご本人が見に来られていたんですね。詩人同士の交流を間近に目撃してしまいました。

京都うた紀行」は歌人河野裕子さんが旦那さんである永田さんと共に京都の歌枕を訪ねて現代和歌を紹介するという京都新聞の連載をまとめたものだそうですが、この本が出版される前に河野さんは乳がんで亡くなられたそうです。薄々パートナー病気で亡くなることがわかっていながらの紀行は深く染み入るものがあったことでしょう。友部さん曰く「面白くて一気に読んでしまった」とのことで、強くお勧めされていました。やはり友部さんは詩や短歌など言葉にまつわる書物がお好きなのだなと思いましたね。

先ほどニューヨークの家を引き払って今度は仙台に部屋を借りたという友部さんですが、同じ建物内に図書館があって嬉しいという話をされていました。それこそ貸切りじゃないですが、マイ図書館みたいな感じでいつでも本の世界アプローチ出来るのは羨ましい環境だなと思いましたね。普段神奈川在住という友部さんですが、家を2つ持つというのは基地が2つあるみたいな感覚なのでしょうか。まあ全国各地旅をしている友部さんからしたらどこに住んでいても同じ地球の上という感じなのかもしれませんが。

終演後には会場でワインなど飲みながら友部さんと奥さんのユミさんとお話をさせていただいたのですが、友部さんの家でも長年猫を飼っていたとのことで、猫話でかなり盛り上がってしまいました。うちの猫写真を見せたらユミさん曰く「似た写真、うちにもあるよ!うちの子も同じような顔してたよ!」とのことで。ユミさんに後日友部家の愛猫りくちゃんの写真を送っていただいたのですが、本当にうちの子と同じアングル写真で可愛かったですね。その写真を見てこの子友部家に愛されていたんだなとしみじみ思いました。またユミさんと猫の話をしたいなと思った次第です。

貸切り図書館、次回はゲスト久住昌之さんが登場します。こちらのレポも近々アップしますのでぜひご一読下さい。ということで。f:id:fishingwithjohn:20160724024830j:image

2016-07-20 紫雨を鳴らす 貸切り図書館33冊目

もう先月の話になってしまいますが、molnにて恒例のイベント「貸切り図書館」の33回目を、ゲストテニスコーツさん、NRQさんをお迎えしてお送りしました。本当にたくさんのご来場をどうもありがとうございました。

今回NRQさんは初登場だったんですが、二胡吉田さんとベース服部さんは以前yojikとwandaのメンバーとしてすでに出演していただいてるので、セッティングからリハーサルまでスムーズに進みまして。ギター牧野さんの息子さん(小学生低学年くらいですかね)もリハから来ていたのですが、とても明るくて人懐こく、リハ中のお父さんに近寄ったり会場をうろうろしたり我々に話し掛けて来たりととても可愛かったですね。メンバーさんも良きおじさんたちといった風情で。かなり激しめのギターを弾く牧野氏に「ねーねー、お父さーん」と無邪気に話し掛ける様子に和んでしまいました。去年に続いての出演となるテニスコーツの2人はリハーサルからかなり綿密な打ち合わせをしており。2人はいつもずっと練習しているというイメージがあるのですが、今回新しい曲を試してみるらしくいつもにも増してがっつり練習している様子でしたね。リハ中にさやさんが「あ、この曲、五十嵐くんたちにもコーラスして貰おう」と急に言い出し、何故か我々も参加することになったんですが、会場にいる人やある物や空気感自分音楽に取り込んでいくのが上手だなと改めて思いました。NRQとのセッションリハも初めてだというのに自然に溶け込んでおりましたね。

そんなそれぞれのリハも終わりいざ本番が始まりまして。最初に登場のNRQ演奏は、不穏な夢の中で彷徨いながら聞く異国の歓楽街BGMといった風情で、とても素晴らしかったですね。どこの国のいつの時代音楽かわからない、美しいけどどこか恐ろしげな、懐かしいけれど未知のものであるという、何とも言えぬ魅力的なサウンドで。ライブ中も牧野氏の息子さんが「お父さーん」とステージまで行ったりお喋りしたりしていて、バンドの音の合間に子供の声が混じり、どこぞの遊園地に迷い込んだかのような不思議感覚になりましたね。

本の紹介のくだりでは各メンバー以下の本を挙げてくれました。

ギター牧野セレクト 柴田 哲孝著「下山事件完全版―最後証言 」「下山事件 暗殺者たちの夏」

NRQの「パシナ式」という曲名満州鉄道特急列車名前から取られたそうなんですが、この下山事件を追ったノンフィクションを読んでいくと犯人として満州鉄道関連の人物が浮上するそうで、そこから着想を得たのだそうです。下山事件が由来と知ってから聞くとまた違う印象を受けるものですね。ちなみに牧野氏が持って来たのは事件ベースにしたフィクション作品である下山事件 暗殺者たちの夏」でしたが、お勧めなのはドキュメント作品の「最後証言」の方なのだそうです。牧野氏の解説を聞いていたら両方とも読んでみたくなりましたね。

ベース 服部セレクト 諸星大二郎著「栞と紙魚子の生首事件

服部氏が「紹介する本は漫画なんですけど」と言うと牧野氏の息子さんが「漫画かーい!」とツッコミを入れて会場の笑いを取っておりました(笑)諸星大二郎とは実にらしいセレクトだなと思いましたね。この本を背後に飾ってその後演奏したのですが、諸星大二郎の独特なタッチバンドのサウンドに妙にマッチしていて良かったですね。

ドラム 中尾セレクト 大野裕之著 「チャップリンヒトラー

中尾氏曰く、ヒトラー演説シーンを頭に思い浮かべるとチャップリン映画独裁者」でのでたらめな演説シーンも同時に思い出されるとのことで、イメージ戦略としてチャップリンは笑いでヒトラー侵食することに成功したのではないかとこの本を読んで思ったのだそうです。チャップリンは「独裁者」を撮る上で当時ナチスナチス共鳴する国からかなりの妨害を受けたそうですが、それに屈することなく作品を作り上げたそうで。わずか4日違いで生まれた同世代で、お互いちょび髭がトレードマークとなったチャップリンヒトラーという歴史に残る2人を巡る物語ということで、これは読んでみたいなと思いましたね。

二胡 吉田セレクト 藤子・F・不二雄著「藤子・F・不二雄のまんが技法

藤子先生による漫画の描き方の指南書だそうで、吉田氏はこれを読んでその方法論を作曲にも活かしているのだそうです。それを聞いて即座に牧野から「本当に!?」とツッコミが入りましたが、吉田氏曰く最近買ったばかりなのでこれから活かそうと思ってるとのことでした。諸星先生藤子F先生という漫画家セレクトにらしさを感じてちょっとニヤリとしましたね。

そんなナイスな本セレクトをしてくれたNRQさんに続いてはテニスコーツさんの登場で。今回も2人はPAを通さない完全生音での演奏で、冒頭さやさんがお客さんに話しかけているうちにいつの間にか歌が始まり、植野さんのポロンと爪弾くギターが響くとたちまちその場の空気が純度の高い音楽で満ちるのを見て、やっぱりテニスコーツは凄いなあと感心してしまいましたね。外から聞こえる電車の走る音も風の吹く音も子供たちの声も自分音楽に取り込む力があるのです。さやさんの歌と植野さんのギターのみというシンプルな編成なのに、2人がそこで音を鳴らすとどこまでも豊かな音楽がその場に降りて来るのです。改めて素晴らしいなと思いました。途中「molnの2人にも参加してもらいます〜」とさやさんに呼び込まれ、恐縮ながら我々もコーラスで参加させていただきまして。「紫雨」と書いて「しう」というタイトルの曲で、「しうしうしうしうしう〜」と紫陽花の上に降り落ちる雨のしずくのように歌わせていただきました。6月にぴったりの曲でしたね。さやさんがMCで「五十嵐くんは大学の後輩なんだよね」という紹介をしてくれて。植野さんは「後輩がこんなに立派になって(笑)〜!」とイジってくれましたが、図らずもテニスコーツとは初めての共演と相成りました。良い記念になりました。その後も2人は「一緒に演奏して下さーい」とNRQの各メンバーを個々に呼び出し、ぶっつけ本番でのセッションを展開しておりましたが、みなさん手練の音楽家なのでどの曲も初めてとは思えない素晴らしい演奏を聞かせてくれました。

そして本の紹介のくだりでは以下の本を挙げてくれました。

さやさんセレクト 遠藤水城著「陸の果て、自己への配慮

内容は「かつて太宰治袋小路と呼んだ竜飛岬を出発し、まだ震災の爪痕が残る真冬の東北海岸沿いをひたすら徒歩で南へ下った筆者が、風雪に晒され、恐怖と孤独感に苛まれながらもノートに綴った63日間の記録。」とのことで、キュレーターである著者が震災直後に青森から南相馬の線量の高い地域までひたすら歩いたというリアルな記録なのだそうです。私はこの本の存在を知りませんでしたが、内容を知って俄然読んでみたくなりましたね。さやさんはこの本をきっかけにして出来たという曲を歌ってくれました。言葉に影響を受けたのだそうです。

植野さんセレクト 寺内タケシ著「テケテケ伝」

エレキギター草分け的存在寺内タケシ氏の自伝本です。植野さん曰く「今読んでいる途中」とのことでしたが、もの凄く面白いのだそうで。これは私も昔読んだのですが、テラさんの波瀾万丈な人生は確かに面白かったですね。エピソードちょっと盛ってないか?というようなツッコミどころも含めですが(笑)。この本の紹介の後に「ギター」というタイトルの曲を演奏してくれました。思えば植野さんも今や世界的なギタリストですしね。

アンコールではNRQメンバー全員とテニスコーツで完全即興セッション演奏してくれたのですが、これがまた美しかったですね。植野さんのアルペジオとさやさんのコーラスと、二胡旋律エレキフィードバック音とたゆたうようなリズムとが混ざり合っていて。このまま会場を飛び出し線路を越えて夜空へと溶けて行くのではないかと思いながらその調べに耳を傾けてうっとりしてしまいました。素晴らしかったです。

がっつりと共演するのは初めてだという今回の2組でしたが、良い組み合わせだったのではないかと思います。それぞれ違うアプローチ牧野氏の息子さんをあやす植野さんとさやさんの姿も印象的でした(笑)音楽が鳴らされる会場に子供がいる光景は良いものですね。

次回の貸切り図書館友部正人さんがゲストに登場です。こちらのレポも後に上げますのでぜひご一読下さい。ということで。

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2016-07-07 みずいろの夜の科学

先日は恵比寿にて行われた山田稔明氏のレコ発ライブ「夜の科学vol.49-pale blue days」に、私も夜の科学オーケストラの一員として出演させていただきました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。

山田から「今年もアルバムを出すんだよ」と聞いて「え、曲あるの?」と心配していた私でしたが、過去未発表曲集になると知ってなるほどと合点がいき。と言うのも彼が去年発表した自伝小説「猫と五つ目の季節」には彼の若き日のまさに青春と呼ぶべき季節が描かれており、今回の新譜に収められた楽曲群はまさにその小説の季節の中で書かれたものが多く、発表する流れとしては最適なのかもしれないと思ったのです。おそらく物語を回想するうちに埋もれていた過去曲も同時に発掘され、改めて聞いてみたら「あれ、意外に良いじゃん」と再評価に至り発表する気になったのではないかと勝手に踏んでいるのですが、ファンの方にとってはおかげでそれを聞けるのだから喜ばしいことでありましょう。小説を読んだ後で聞くとサントラ的な感じで音楽で追体験出来る内容と言えるかもしれません。小説や猫をきっかけに入った方は勿論、古くからファンの方もレア音源集として楽しめる好内容となっております。ぜひお手に取ってみては如何でしょうか。(などと宣伝しつつ。)

今回はそんな新譜「pale/みずいろ時代」のレコ発ライブということで、主に収録曲を中心に演奏しまして。音源と同じバンドアレンジの初披露と相成りました。今回アルバムでアレンジを主導した鍵盤の真里さんがライブでもバンドをぐいぐい引っ張ってくれて、とても熱のある演奏になったように思います

そんな真里さんですが、先月愛車に乗って鎌倉に遊びに来た際に我が家にもちょいと立ち寄ってくれまして。もうすでに遅い時間だったし何やらお酒を飲みたそうにしていたので「もう飲んじゃったらどうですか。ウチに泊まって行けば良いんだし」と何気なく言ったら、その直後「あら、そう?いいの?!」とプシュービールの缶を開けたので「あ、本当に泊まるんだ!」と内心ちょっと戸惑ったものの結局明け方4時くらいまでご陽気にワインなど飲んでしまい、次の日は次の日で真里さんの車で葉山までドライブを敢行し、海岸沿いの道を走りながら初夏の風を浴びるというトレンディドラマみたいな1日半を過ごしたのですが、そんなメンバー間の青春物語ライブ前に展開されたのも「みずいろ時代」というアルバムの成せる技なのではと思ったりしたのですがどうなのでしょうか。(違うでしょうか。)

今回私は前回に続きエビちゃんの代わりにベース担当したのですが、イトケンさんとがっつりリズム隊組むのは初めてで何だか新鮮でしたね。新譜の曲は演奏していてどれも印象深かったのですが、コーラスの綾香ちゃんが上京したての頃に山田氏が課題曲として渡したという「セレナーデ」が心に響きましたね。これは当時山田氏が思い悩んでた時期に書いた曲だそうで、それを上京したてで不安だった綾香ちゃんが歌詞自分気持ちを重ねて歌ったのかなあなどと勝手想像して「嗚呼、美しき師弟関係なり」としみじみしてしまった次第です。近藤さんのアレンジによるコード感が美しい「モノクロームからの「月あかりのナイトスイミング」〜「光の葡萄」では先日の真里さんとのドライブ中に見た海に映る夜のライトを思い出したりなどしつつ。後半の「my favorite things」〜「太陽満月から「calendar song」への畳み掛けには思わず私も血が滾り熱くなってしまいました。私の中のロッカー(荷物入れる方じゃないやつ)が「イエーイ!」などと雄叫びを上げておりました。勿論心の中で。

中盤「幸せの風が吹くさ」という曲では録音に参加したベーシストの方のイトケン氏がゲストとしてベースを弾くとのことで、私は楽屋に引っ込むはずだったんですが、「五十嵐くんステージにいればいいじゃん」となり、その後「ただ立ってるのも何だから小物やればいいじゃん」となり、結局本番ではタンバリンを叩くことになり。ただぬぼ〜と棒立ちで黙々とタンバリンを叩いても「タンバリンに何かしらの遺恨を残した幽霊」みたいに見えるし、本番ではリズムに身を任せ我が人生史上最高にノリノリで動きながら叩いたのですが、結果的タンバリンに何某の遺恨を残すことになってしまったのは如何なる所以でしょうか。終演後知り合いの方々に「どうでした?」と聞いたらみな「タンバリン、ノリノリでしたね〜(笑)」や「いやー、タンバリン(笑)」などと主にタンバリン関連の感想ばかり出て来て、出て来るのは良いとして文末に「(笑)」という、ネットで言うところの「www」みたいな意図せぬ笑いを生み出している現象が見受けられ、折角のかっこいいファンクチューンに面白さを足してしまったのではないかと後悔の念に駆られたのですが、そこはまあ私の内に幸せの風が吹いた結果だから理解していただき、前向きに捉えるしかないなと思った次第ですけどね。今後みなさんの心の検索窓に「五十嵐 」と入れると「五十嵐 タンバリンさらには「五十嵐 タンバリン www」という関連ワードが足される気がしてならないのですが、そこは甘んじて受け入れなければと思っているところです。ベーシストの方のイトケン氏とは共通の知り合いも多く前々からお互い認識していたんですが、ちゃんと話すのは初めてでご挨拶出来て良かったです。

終演後は水色のジャケットCDが飛ぶように売れて行き。この日のドレスコードは水色ということで会場全体が水色に染まって夏を感じましたね。みなさん帰ってCD再生しこの日のライブを反芻し楽しむと思うのですが、五十嵐タンバリン記憶だけは淡い感じに薄めていただけると幸いと思った次第です。それこそ水色の向こう側に。

そんな水色のレコ発ライブを経て山田稔明「pale/みずいろ時代」が発売になりました。ぜひよろしくお願いしますということで。

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2016-06-14 お米が繋ぐ演奏会

先日はmolnにて「風待雲の演奏会」と題し、HARCOくんのライブを催しました。彼には定期的にmolnでライブをして貰っているのですが、毎回異なる試みをしてくれていて、今回も今後の新たな展開を感じさせるようなステージングを見せてくれました。

そもそも今回のライブ陶芸家アセビマコトさんの作品展の一環として企画されまして。アセビさんは今回、お米農家山崎さんのお米を原料とした釉薬を使った器を販売し、その売上げの一部を昨年鬼怒川の水害に遭われた山崎さん一家寄付するというチャリティー企画も兼ねていたのですが、そこに以前から山崎さんと交流のあるHARCOくんにもライブで参加して貰い、やはり売上げの一部を寄付するという形で共に乗っていただいたのでした。我々もアセビさん夫妻もHARCOくんも水害直後の山崎さんの田んぼで一緒に稲刈りと片付けを手伝ったという縁があり、その時の面子が揃ったイベントとなりました。お米が繋げた演奏会とでも言うべきでしょうか。

HARCOくんは少し前に自分企画フェスを終えたばかりで、今回は区切りがついたタイミングでのライブだったそうで。そのフェスで共演したGOMES THE HITMAN空気公団カバー曲を披露してくれたのですが、これがとても良かったですね。原曲の良さが伝わるとても丁寧な歌唱で。歌い手としての魅力を遺憾なく発揮しておりました。

セットは新旧取り混ぜた内容で、今回は普段まりやらない曲や変わったバージョンなんかも多く、新鮮で楽しめましたね。何と人前では初だというウクレレ弾き語りなんかも披露してくれました。リハの時に立って弾いていたら漫談ぽくなってしまったそうで(笑)、座って弾いておりましたが、慣れない楽器への真剣眼差しと音のほんわかしたユルさのギャップが妙に良かったですね。カーペンターズカバーが素敵でした。

あと今回は「親子のシルエット」という新曲も初披露してくれたのですが、これが素晴らしかったですね。父親になった彼の優しく温かい家族への眼差しが感じられる名曲で、私的には矢野顕子さんの歌に宿る母性に近いものを感じました。(彼の場合父性と言えば良いのでしょうか。)子供が出来て作風が変わったという発言をしていましたが、特に歌詞の面でまた表現の幅が広がったような印象を受けましたね。この曲を聞いて早くも次作が楽しみになりました。

あと今回新たな試みとしてジングルワークショップという企画もあり。これはその場でCMソングなどの短いジングルを作ってその場でレコーディングするというもので、今回は「お米農家やまざき」を題材に作成しまして。まずは核となるメロディーを歌い(歌詞は勿論「お米農家やまざき」です)、そこにリズムを足したり、お米を炊く音を乗せたり、田んぼカエルの鳴く音を乗せたりとリアルタイムで音を作って行くのですね。冒頭に語りなんかも入り(彼は普段ナレーション仕事もしているのでその魅力を遺憾なく発揮しておりました)、15秒、30秒、60秒とバージョンを増やしながらあっという間にCMソングは完成しまして。会場で聞いていた山崎さん家族は「一生の思い出です〜」と感激しておりましたね。まあプロに目の前でCMソングを作って貰う機会などそうそうないですからね。お客さんもその過程に興味津々の様子でした。私もすっかり「おこめのうか〜、やまーざき!」というフレーズが頭にこびりついてしまいました。

そんな企画を挟みつつ、楽しいトークなども挟みつつたくさん歌ってくれて、2時間ステージも終わりまして。この日は遠方から来られたお客さんもいらしたようで、ありがたかったですね。みなさんには山崎さんへの募金などもしていただきました。

終演後に山崎さん一家と久々にお話したのですが、復興の見通しも立ちそうとのことで、前向きな話を聞けたのが良かったです。HARCOくんもCMソングを作った甲斐があったというものでしょう。アセビさんの器も連日大人気だったそうで、とても良い企画となりました。ご来場いただいた方々、本当にありがとうございました。お米が縁で斯様な演奏会を催すことが出来ました。

帰りは「おこめのうか〜、やまーざき!」という出来たてのCMソングを口ずさみながら家路に着いたのは言うまでもありません。近い将来本当にCMが出来たら面白いですけどね。f:id:fishingwithjohn:20160615185606j:image

2016-06-13 レコードと焼き鳥の夕べ

先日、高橋徹也から「これから鎌倉に行くのですが食事でもどうですか」というお誘いがあり、それは是非にと落ち合う事になったのですが、というのもタカテツさんの去年リリースされたアルバムの推薦コメントを我々も書かせていただいたのでそのお礼も兼ねてとのことらしく、何とも律儀な人だなあと感心しながら待っていると果たしてタカテツさんは「こんにちは!」と風のように颯爽と現れ。

現れるなりタカテツさんは「これ、お礼です!」とレコード袋を渡してくれて、中を見るとSibylle Baierというシンガーレコードで。これはタカテツさんが数日前にツイッターで紹介していたレコードで、それを見て気に入った私が「これ良いですね!」などと言っていたらそれをプレゼントしてくれたのであり。何とも男前行為であることよと思ったのですが、さらに見るともう1枚入っており。取り出してみるとタカテツさんの98年リリースファーストアルバム「夜に生きるもの」のアナログ盤なのであり。これは当時プロモオンリー限定数プレスされたというレアアイテムで、こんな貴重なものをいただけるとはと驚き、思わず「ひゃっほい」という歓喜の声を上げてしまった私なのですが、レコードというのは手にするとなぜにかくも嬉しいものなのでしょうか。この「夜に生きるもの」はジャケも中の歌詞カードも素晴らしいデザインで(裏面が懐かしのカセットテープインデックス仕様!)、ついその場でじっくり眺めてうっとりしてしまった私です。タカテツさんの気遣いには本当に感謝です。

そんなタカテツさんと食事前に鶴岡八幡宮散策したのですが、昼間の夏のような暑さも去り、プール帰りの気怠さを含んだかのような夕方時間帯は何だかとても心地良かったですね。観光客も少ない時間ですし。紫陽花も鮮やかに其処彼処に咲いていました。一応お参りもしたのですが、お賽銭を入れて二礼二拍一礼という所作タカテツさんは侍のようにきりっとしていて、絵になる人だなーと感心してしまった次第です。

その後タカテツさんのリクエストで以前一緒に行った焼き鳥屋を再訪したのですが、人気店ゆえ行列が出来ており。仕方なく並んだのですが、焼き鳥を待ちながらあれこれ世間話をするのも何だか心地良く。タカテツさんは新しいギターを買ったばかりで(買った直後に「ギターを買ってしまいました。果たして買って良かったのかスタバで自問自答しています」という謎の報告メールが届いたんですが)、楽器の話やレコードの話などしつつ待っているとようやく店内に入れまして。タカテツさんは入る直前に「よし、俺今日は酒を飲もう!」と驚きの飲酒宣言をしたので、打ち上げホットコーヒーを飲むでお馴染みのタカテツさんが珍しいこともあるものだと思い「大丈夫ですか?」と聞くと「最近よくノンアルコールビールを飲んでいるんですよ」とのことで。そしてビールを注文して乾杯したのですが、タカテツさんはビールをひとくち飲むと「うん!ノンアルコールビールと同じ味だ!美味い!」と言うので「タカテツさん、それ逆ですよ。ノンアルコールビールビールの味に寄せてるんですよ」と教えたのですが、これはちあきなおみを見て「コロッケに似てる!」と言う逆転現象みたいなものなのでしょうか。(違うでしょうか。)

その後ようやく焼き鳥が出て来て、美味い美味いと口々に言いながらみなで食べまして。タカテツさんは焼き鳥を食べる所作も侍のようでキリッとしておりましたね。そこで食べて飲んで喋って、鎌倉ナイトを存分に楽しんでしまいました。タカテツさんもすっかりこの店を気に入ってくれたようで良かったです。そしてアフター焼き鳥は別なお店でコーヒーなど飲み(ここに来てようやく定番ホットコーヒー)、ひと息ついた後、「じゃっ!」と言ってまた風のように颯爽と去って行きました。素晴らしいレコード夕方八幡宮散歩焼き鳥の思い出をそっと残して。

そんな風のようなタカテツさんですが、8月にまたmolnでライブをしてくれる予定です。そちらもぜひよろしくお願いしますということで。

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