久留里

名前の響きがとても素敵な久留里(くるり)。
千葉県は木更津辺りまではもう都会ですが、JR久留里線に乗っていくと、みるみる景色が変わってくるのがわかります。久留里線は単線で本数も少なく、何しろ東京駅から高速バスに乗った方が早い。
久留里という地名の由来には諸説ありますが、そのうちの一つが「阿久留里王(あくるおう)」という豪族の名前からとった、という説。どうやら阿久留王は実在した人物のようで、ヤマトタケルに滅ぼされて「鬼」にされたようです。君津市鹿野山が本拠地で、付近に「鬼塚」「鬼泪山」「血染川」といった地名が残っています。阿久留王の胴体を埋めた「阿久留王塚」、頭部を埋めた「お八つが塚」もあります。長野県安曇野の「魏石鬼八面大王」もそうですが、当時は頭部と胴体を切断して鎮魂したんですね。
こういった「鬼」がいた土地は、古くからの信仰が残っていることが多く、久留里神社は、非常に興味深い。日本の信仰の歴史とその魅力は、神仏混淆神仏習合のダイナミズムにあると思います。明治政府による神仏分離令(+廃仏毀釈)によって、その跡はだいぶ消えてしまっているのですが、ときどき、その跡がまだ残っている場所があります。ここがそこ。
長野駅からの野沢温泉のような、遠すぎず近すぎずの絶妙の距離、しかも東京から普通乗車券で来れる。名水の評判と数多く残る井戸。ちょっとしたハイキングに最適な久留里城。阿久留里王という古代ロマン伝説。何よりもその名前の響き。などなど、観光地としての条件を備えた久留里ですが、唯一、それらを台無しにしてしまっているのが、城下町の家並みの通りに、国道を通してしまったこと。古い街並みは「旧道」になって、主要道路から少し外れる場合が多いのですが、ここは、びゅんびゅん車が通るので、雰囲気が台無し。一本外すだけで観光地としてのバリューが全く違っていたはずなのに。残念。

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