17冊目 『その日の吉良上野介』

その日の吉良上野介 (角川文庫)
作者: 池宮彰一郎
出版社/メーカー: 角川書店
発売日: 2004/06
メディア: 文庫

忠臣蔵」に関わったそれぞれの立場の人物から見たエピソードをまためた短編集ですが、詳しい人もそうでない人も楽しめる作りとなっています。
実は「忠臣蔵」自体、小説で読む気がしなくて、テレビ時代劇で見たか、ネットで斜め読みしかしていないような気がしますね。


だから「吉良上野介義央(きら-こうずけのすけ-よしひさ)は吝嗇で欲深な意地悪爺ぃで、浅野内匠頭長矩(あさの-たくみのかみ-ながのり)は馴れない仕事を自分なりに一生懸命頑張ったのに吉良爺ぃの陰湿ないじめを受け、ノイローゼにまで追い込まれた可哀想な殿様。大石内蔵助良雄以下赤穂義士達は主君の無念を晴らした天晴れ忠君烈士」などと言う大げさですが、そんな世間の評価を全部とは言わなくても70%くらいはそうなんじゃないかと思いこんでいたんです。交通事故で言うどっちが悪いか、吉良:浅野=7:3くらい。


今なお「かずさのすけ」と言えば織田信長、「しんのすけ」と言えばクレヨンしんちゃん(笑)、そして「こうずけのすけ」と言えば、昔見た時代劇で、何か白い服着て無様に邸内を逃げ回る吉良爺ぃの姿が強烈にインプットされていたんですね。いやはや風呂のドアのサッシに発生したカビの如く頑固に消えない記憶です。


ところがですよ、奥さん(誰がや)。上記の「吉良上野介義央は〜追い込まれた可哀想な殿様。」あたりが実は大石内蔵助が仕掛けた宣伝だったりしたらどうします?屋敷が外郭とは言えども江戸城内では手が出しにくいので、城外におびき出すように努めた謀略だったとか。
それは別にしても、浅野内匠頭のお役目は18年ぶりとは言えど2回目で、最初の時はわざわざ担当じゃない吉良上野介に頼み込んで(家老による仲介ですが)、懇切丁寧に教えてもらったとか。
実は18年ぶりというのがキーで、本作の中で吉良自身による述懐で、18年の歳月を経て儀式の様式の中で変更されたことがいくつもあり、思わぬスケジュールの狂いによってきちんと浅野に指導できなかった。そんな過誤の積み重ねが、浅野の吉良に対する思い違いをさせたのではないかと言わせています。実際に刃傷沙汰のきっかけとなった賄賂の茶器についても、従来の解釈と全く違っている。あと浅野内匠頭の癇癖については、作者は他の短編でも触れていますね。


まぁ、他にも大事件に発展した影には、そんなすれ違い・思い違いによるものがいくつも有りえるのではないかと、思わせるようなお話しでした。

書籍注文

ゆっくり本屋をめぐっている時間が無いので、本やタウンで注文しちゃいました。

もっと買いたかったのだけれど、来月早々に飲み会がいくつか控えていることを思い出し、泣く泣く4冊で「完了」のボタンを押した私でした。