技術部。

 先月くらいだったか、F氏と会った時に県都で行われる「ニコニコ技術部」なるイベントを教えてもらっていた。ニコ動で「作ってみた」系の動画を投稿しているユーザが、リアルで製作物を持ち寄る展示会を巡回開催しているらしい。
 日曜日は午後から空いたので、F氏に同行を願い見学に。
 
 会場となった公園に行ってみると、ヲタとは無縁そうなカップルや子供連れの家族で溢れていた。ややアウェイっぽいよなぁと感じながらそれらしい建物に近づくと、入り口にヲタ臭を漂わせるピンク地ののぼりが掲げられている。

 「ニコニコ技術部」ここか…。
 入り口には、そこから先へ進もうとしない客が数名たむろしている。様子を伺うと、ニコニコ生中継のカメラが入場者にインタビューしている最中だ。その脇をすり抜けて入場。

 意外と展示は少なかったが、俺も若い頃に技術とネタがあれば作ってみたかったと羨望する「作品」が並んでいた。
 一見すると「どう動作するか」どころか「何のための存在なのか」すら不明な展示も多いが、ちゃんと製作者が説明してくれるので安心である。
 iPadの画面をセンサで読みランプの明滅を同期させる謎の装置。

 何が謎かって一体いつ使う装置なのか。

 回路とバッテリを埋め込み机上を這う奇妙なMINTIAケースを量産するリアル岡部。
 銀粘土で作られた工芸品。

 一番気に入ったのは1〜2cmほどの大きさしかない精巧なダンボー。材料費だけなら5〜6,000円だそうだがコミケでしか売らないとのこと。ガッカリ。
 価格を展示者に尋ねていた時、その額を俺の隣で見学していた綺麗なお姉さんが「なーんだ等身大ダンボーの方が高いですよ!」と話しかけてきた。展示者への言葉か自分への言葉か分からず黙っていると、お姉さんは無視されたと思ったようで踵を返して立ち去ってしまった。いやコミュ障ですいません。
 高校生くらいだろうか、ジャンクの半壊したニンテンドーDSをこれまたジャンクらしいNEC製の企業向けタブレットPC機に直結して大画面化したシロモノを展示している。

 職場で同じシリーズの同じシーズンに発売されているのに、グレードによって本体と液晶パネルのフレキケーブルが違うばかりに液晶故障で共食い整備ができず泣いている俺はこの人に弟子入りすべきかもしれない。
 出品物で最も面白かったのは、市販のVRグラスとXBOX360用のKinectを組み合わせて、グラス内に初音ミクのCGをリアルタイムで投影するシステムだ。VRグラスの傾きセンサとKinectで検出する利用者の視線と立ち位置情報を元に、まるで現実に初音ミクがいるようにうまく合成して見せている。

 たしか少し前に、表示だけでなく利用者のアクションにリアルタイムに反応できる初音ミクニコニコ動画で公開されていたような覚えがあるが、その簡易版といったところか。Kinectの制限のためだろうがミクの出現可能範囲に複数の人間が存在すると、ミクの表示位置を確定できず表示がバグるがこれはご愛嬌。
 ニコニコ生中継のカメラが製作者に順次インタビューを続けており、そのニコ生での模様は場内のスクリーンにも当然コメント付きで流れている。
 そのインタビューが一巡したところで、スクリーンがいきなりパワポのプレゼン画面に切り替わった。何の発表が始まったのかと思いきや、金沢大が開発した「黄砂に混じっていた謎の菌で新型の納豆作ってみた」話だった。

 これも一週間ほど前にテレビ金沢だったかがニュースに取り上げていたのを見た覚えがある。石川県上空をチャーター機で飛び回り、ひたすらサンプリングした黄砂のチリの中から、特に珠洲上空で採取したサンプルから分離した菌で作った納豆が食えたので「そらなっとう」と命名して発売したというではないか。
 待て待て!黄砂って日本では誰も報道しないが、中国のロプノール核実験場から直接飛んでくる核汚染物質だろうが。分離培養した菌だから直接影響はないにしても、ただでさえ環境汚染が壮絶な中国から飛んでくるチリをよく食用に使う気になったものだ…。その発想はなかった。確かに。
 地産地消の好例だと思うがどうして市販していないのだろう?という謎は簡単に解かれた。開発者は自分が属する金大のブランドを使いたかったが大学当局より学外でのライセンス使用料を要求されて、対価を払えず学内の生協でのみ限定販売しているのだそうだ。

 講演後に若干数がサンプル配布されたので1個ゲット。
 しかし食べるのには勇気がいるな。