引っ越し
師匠邸が取り壊されることになった。師匠邸の建っている土地は借り物の土地で、貸し主が土地を必要になったため、貸し主と師匠一家の話し合いの結果、家を取り壊すことになったという。
私はかなり自分の荷物を師匠邸に入れていたので、慌ただしく荷造りに取りかかる。何しろ二日後には取り壊し作業が始まるというのだから、急がなければならない。全部をまとめるのは無理かも? という考えが浮かぶ度、本やCDや洋服が瓦礫に混じって無惨に捨てられていくイメージが脳裏をよぎる。それは嫌過ぎるので、急がなければ。
しかし、とも私は考える。私はもう少し師匠邸にいられると思っていた。この建物も建てられてからまだ3年くらいしか建っていないのに取り壊されるのだ。こんなことになるなんて、誰も予想しなかった。人生何があるかわからんなあと、悲しいような、でも悲しい自分を少し離れたところで醒めて見ているような、そんな感じ。
荷造りが慌ただしくて、感傷に耽ってばかりもいられなかった。何しろ荷を詰める段ボールが全然足りないのだ。どうやって段ボールを集めるか思案にくれているところで目が覚めた。
時間的な切迫感が強くてなかなかしんどい夢だった。
長崎よいとこ 一度はおいで
「九州伝承遺産シンポジウム2005」を聞くために朝もはよから特急で長崎へ。眠いのは辛かったけど『白いかもめ』に乗れて大はしゃぎ。はしゃぎすぎて電車の中であまり寝られなかった……(←馬鹿)。JR九州の特急は「特別急行ばい!」という贅沢感があっていいっす。あとは九州新幹線と気持ち悪いソニック*1に乗ったら大体満足なんだが。
まずは浦上天主堂へ
先日ヤフーニュースで見た「原爆のマリア像」が公開されているというので見に行った。3年くらい前に長崎に行った時は気づかなかったのだが、原爆資料館の近くにあったんですね。あの時は原爆資料館で3時間くらい過ごしたせいで、高台の中華料理屋で海と夜景見ながら食事しても、「ああ、この方向に原爆の火は広がっていったのねええ」としか思えなくて、全然観光気分になれなかったことを思い出した。
さて、浦上天主堂。何も調べずにいきなり向かったので、現役の教会のはずだし、ミサとか行われてて関係者以外は入れないんじゃ?と最寄り駅に着いてから心配になったのだが、ちゃんと入れた。どうも数時間後に結婚式か何かがある様子で、準備で忙しそうだったが。ただし、入れるのは最後部だけで、遠〜くからしかキリスト像は見られない。私は教会に行ったのはほぼ生まれて初めてなので、教会の物々しい荘厳な雰囲気が新鮮でそれなりに面白かったが。
マリア像は、本堂(というのか?)の脇の小聖堂に置かれていた。この小聖堂は今年完成したのだそうで、まだ真新しくピカピカで、マリア像となんだかちぐはぐな感じ。もう少し落ち着いた環境で見たかったのだが……まあ新しい建物は仕方がないですな。
人は死に、物は壊れる
いよいよ「九州伝承遺産シンポジウム2005」へ。「軍艦島を世界遺産にしようの会」というNPOが中心となって、その他九州の産業遺産の保存グループをとりまとめて行うことになったシンポジウムらしい。参加者は中高年の男性がほとんどで、工学部や建築関係の人が中心となっているっぽい。単なる廃墟好きの私が参加するのはすげえ場違いなんでは? とびびりながら参加。以下、知ったことや思ったこと。
- 会全体について
- 軍艦島の建物の実測を行ったという先生、遺産保存の専門の先生、志免のコンクリート立坑保存運動の議員さんの話はわかりやすく、面白かった。
- シンポジウム前の各地の「産業遺産紹介」一人持ち時間5分というのはいくら何でも短すぎやしないか? 廃墟写真がばんばん見られて楽しかったんで私がいいんだが、発表者は色々言いたいことがあったのではないかと思う。
- 専門性の高い会なのかと思えば、いやに素人くさい見づらいスライドが出たり、一般向けにしては客層にミーハーっぽいのやおばちゃんがいないし(私ぐらいだ)、どういう客層を狙ってこのシンポジウムを開いたんだろう?と首を傾げたくなるような感じがあった。
- シンポジウムのコーディネーターが、直前の発言者の発言とは全然違う話題を他の人に振ったり、自分の質問の中で既に答えを出しているような質問を振ったりしていて気になった。自分が司会をする時に同じことをしていないか注意しようと思った。
- 他の人達は皆発表時間を守ろうとして気を遣っているのがありありだったのに、コーディネーターが、自身の思いを語るためだけに終了時刻を10分延長していて引いた。自分の立場をわかってなかったんだろうか。それとも内輪の知り合いばかりのシンポジウムだから、時間を延ばしたっていーや、って感じだったんですかね。
- 軍艦島のこと
- その他知ったこと
- その他思ったこと
- 「軍艦島を世界遺産にしようの会」主宰者の話を聞いていると、「元島民として、島の施設が崩壊していくのを見るのは辛く、何とかして崩壊を防ぎたい。そのための手段としての世界遺産登録」と考えているように感じた。「軍艦島」は島全体を対象としてこそ唯一無比の価値があると思っているのだが、島全体の維持保存はあまりにも費用がかかり過ぎる。また、どのような姿で保存するのかも軍艦島の場合結構重要な問題だろう。2005年の廃墟の姿? それとも30年前の無人島になる直前の姿? それとも? 今のままでは軍艦島の施設は崩壊していくばかりだろうけど、私はそれでもいいと思う。形ある物はやがて朽ちるのだから。島を意図的に荒らしたり施設を汚したりする者が出ないように*3見守っていければ私はそれでいい。でも、私がそう思うのは、「廃墟としての軍艦島」に魅せられているところが出発点になっているからで、主宰者や元住民達の思いとは異なるからそんな風に言えるのかもしれないけど。
- 「東京遺産」*4でとられていた手法は、この集まりでは使われてなくて、結構有効活用できるのでは?と思った。特に志免。
- 九州各地の遺産をの歴史的繋がりを明らかにし、結んでいくのはそれなりに価値があるが、地元や近距離内での繋がりをコツコツ掘り起こす方が、教育のためにはもっと価値があるのでは?と思った。産業遺産の多くは知られていないし、遠くの知らん建造物のことを言われてもイメージが湧かないから面白く無いと思うんですよ。志免で最初に石炭が見つかったのはどこか? とか、志免町内をどんな風に炭坑鉄道が走っていたか? 炭坑近くの住民はどんな風に炭坑を見ていたか? とかを知ったら、1つの建物を中心に、どんどん話が広がっていくと思う。
- 嬉々として「立坑に昇ったんですか!」、無念そうに「残せなかったんですよ……」等々出席者同士でやりとりしているところを見ると、基本的には出席者皆「その建物が大好き」な人達で、何とかして残したいが為にあれこれ理屈をつけている人達なのだなと思った。勝手に同志(ココロの廃墟仲間)と認定。
ついに
あちこちで散々探していた「はみだしっ子」全13巻を長崎でようやく入手。すごくすごく嬉しいのだけど、やばい。
- 作者: 三原順
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1996/03/01
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