ねこまくら

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2016-09-30 (金)

[]三上延江ノ島西浦写真館」

江ノ島西浦写真館

江ノ島西浦写真館

ビブリア古書店シリーズの三上延最新刊。廃業した江ノ島の写真館に残された未渡し写真の謎を解いて、写真を持ち主に返していくという連作短編です。いわゆる「日常の謎」ミステリですが、謎解きのための謎ではなく、キャラクタの人物像を掘り下げていくエピソードに絡めたフックとして使われているので、ミステリではない小説としても存分に味わえます。この人は小説が上手いと思う。

2016-09-29 (木)

[]蝸牛くもゴブリンスレイヤー

ゴブリンスレイヤー3 (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー3 (GA文庫)

勇者が復活した魔神を倒したりしてる、典型的な中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で、そんなこととは関係なく、遺跡だの地下水道だのでゴブリン退治をする話です。「大きな物語」に関心を示さない割り切り方と、世界の理不尽さをストレートに描く容赦のなさとが並列してるあたりが、今風な感じなんだと思う。小鬼退治に徹するプロフェッショナルな主人公と、タメを作らない淡々とした文章で、ハードボイルドな雰囲気を出してます。周りの女性キャラがみんな女の子キャラなのは、今風ですね。最近の流行りモノとかはよくわからないのだけれど、ファンタジーでも今のオンラインゲームとかよりも、ゲームブックとかテーブルトークとか、80年代頃の文化の直系の子孫という感じはします。

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー2 (GA文庫)

早々にコミカライズされてます。小説の方は、テーブルトークRPGをプレイしてる記録なんだ、とも読める構成になってますが、コミック版ではそうした仕掛けはバッサリとカットされ、ゴブリンの巣を攻略するパーティのガチンコバトルがメインとなってます。

2016-09-28 (水)

[]川村邦光「オトメの祈り」

オトメの祈り―近代女性イメージの誕生

オトメの祈り―近代女性イメージの誕生

明治大正期に形成された近代日本の少女のイメージを検証する。事例の並列にとどまって、アルケオロジーというほどのことはないけれど、当時ブームとなって刊行された少女雑誌や婦人雑誌の読者投稿欄からの引用が多数採録されているのが面白い。ヨーロッパ自然主義文学などの翻訳小説と、王朝和歌から連綿と続く花鳥風月的な日本の伝統的センスが混交して、読者の投稿文からいわゆる少女趣味のポエムの文体が成立していくのがわかります。語彙や修辞、「懐かしさ」「淋しさ」などのイメージを孕んだ、いわば「オトメ体」とでも言うべき独特の文体が成立することで、読者投稿欄にオトメによるコミュニティが成立することになるのです。オトメ体の文章が「オトメ」としてのアイデンティティをもたらすというわけです。オトメとしてのアイデンティティは年齢を超越し、六十代となっても、十代の頃そのままのオトメ体で手紙を書いている女性の例が紹介されています。それは一過性の感傷に終わらず、オトメとしての家庭観、夫婦観を形作っていったのです。オトメ体という「文体とイメージによってこの世界の”経験”は保持され伝承されるのだ」と著者は書いています。

2016-09-27 (火)

[]小川洋子・クラフトエヴィング商会

小川洋子とクラフトエヴィング商会の共著、というかコラボ?小川洋子は「妊娠カレンダー」で芥川賞をとった小説家です。クラフトエヴィング商会は、説明するのがちょっと難しい。著者紹介では、「テキストとイメージを組み合わせた独創的な作品を発表する一方、装丁デザインを多数手がける」制作ユニット、となっています。存在しない商品のカタログ、とか作ってます。本書も、川端康成とかボリス・ヴィアンとかの小説に出てくる、実際には存在しない物に関する連作短編集です。小川洋子が「バナナフィッシュの耳石がほしい」といった注文書を書き、クラフトエヴィング商会が納品書でそれを探し出した経緯を説明する、それを受けて小川洋子が受領書を書く、といった構成になってます。幻想的で、少し懐かしいような不思議な本です。

2016-09-26 (月)

[]ペネロープ・バジュー「エロイーズ」

フランスのコミックはBDと言って、美術書に近いようなものだけれど、これはもっとポップな感じ。まあ値段はそれなりにしますけれども。

読み味はむしろ日本のマンガに近いけれど、表情のコケットリーとか、やはり日本のとは違う、ヨーロッパのテイストが面白い。

主人公が記憶喪失で、「ここはどこ、私は誰」の状態でいきなり始まります。手元のバッグに入ってた手帳で、自宅の住所はすぐわかったけれど、帰ってみたら電子錠の暗証番号がわからない。と、何もわからないところから、小出しに出てくる手がかりの出し方が巧くて、読み出すと止まらない感じで引き込まれます。主人公が、かなり困った状況にも関わらず、結構のんきというか、図太いところがよい味になってるし、展開も早くて飽きさせません。

同作者の、前作。ほぼ1ページで1本だから「あたしンち」とかより短い。読んでくリズムは萌え4コマに近いかな。サクサク読んでいく感じ。

(アラサーフレンチガールのさえない毎日)というサブタイ通りの内容です。

2016-09-25 (日)

[]川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」

大きな鳥にさらわれないよう

大きな鳥にさらわれないよう

はるかな遠い未来、滅びゆく人類は小さな集団に分かれ、静かに暮らしていた。ほとんど説明のないまま、詩情に溢れた短編が夜の雪のように静かに積もっていく。そんな川上弘美のSF小説です。断片的な物語を積み重ねていって、最後に壮大な未来史を浮かび上がらせる、という手法はよくありますが、日本の文芸作家が書くと、なんと話し懐かしいイメージが、しっくりきます。ふと手塚治虫の「火の鳥」とかも思い出したり。詩情に溢れた余韻を残す、といえば新井素子「チグリスとユーフラテス」を思い出します。

チグリスとユーフラテス〈上〉 (集英社文庫)

チグリスとユーフラテス〈上〉 (集英社文庫)

チグリスとユーフラテス〈下〉 (集英社文庫)

チグリスとユーフラテス〈下〉 (集英社文庫)

遥かな遠い未来、遠く離れた惑星で暮らす最後の人間の話。元祖ラノベみたいな人ですよね、と思ったら「通りすがりのレイディ」とか復刊されてるのね。

星へ行く船シリーズ2通りすがりのレイディ

流れで、人類が滅んだ後の世界を舞台にした、静かな読み味のSFということだと、北野勇作とか。

カメリ (河出文庫)

カメリ (河出文庫)

カメでアメリだからカメリ。人の消えた世界の片隅の、ヒトデナシ相手のカフェで働く模造亀の静かで不思議な日常。カメSF作家北野勇作が書き溜めた連作短編集

2016-09-24 (土)

[]朝井まかて「眩」

眩

葛飾北斎の三女お栄の物語。父の画才を受け継いだだけでなく、作画にのみ打ち込み他に頓着しない辺りも似た者父娘だったらしい。応為と号し、浮世絵に陰影の表現を持ち込んだ。真作とされる作品は極端に少ないけれど、北斎作とされる作品には彼女の手の入っているものが多く含まれているとされている。そんな彼女の二十代から六十代までの一代記。束縛を嫌う北斎というキャラクタ、残されている資料の少なさから、作家が造形できる余地が大きいこと、絵師という職業柄江戸風俗がふんだんに取り込めることから、歴史小説と時代劇の味わいを損なわずに相乗させた極上の読み物。同じく北斎父娘を描いた杉浦日向子百日紅」と合わせ読むのも佳。

2016-09-23 (金)

[]川端裕人「青い海の宇宙港」?

青い海の宇宙港 春夏篇

青い海の宇宙港 春夏篇

青い海の宇宙港 秋冬篇

青い海の宇宙港 秋冬篇

川端裕人「夏のロケット」に触発されてあさりよしとおが「なつのロケット」を書き、更にそれに触発されて書いたのが本書。小学生がロケットを打ち上げる話である。その系譜は、前史として野尻抱介ロケットガール」や、映画化もされた「ロケットボーイズ」へと辿ることができる。設定上の制約と、成し得ることのバランスで、それぞれ性質が異なるが、いずれも「自分の手でロケットを打ち上げたい!」という衝動をストレートに描く作品群である。たかだか地球の周回軌道までの話がしっかりSFになるというのは、シンプルな物理法則が宇宙を動かしているというのを実感できるからではないか。「なつのロケット」の印象的なラストシーンを本作でもリスペクトしてるけれど、いずれも宇宙を動かす物理法則に則ることで、自分もまた世界とつながっていることをストレートに示している象徴的なシーンとなっている。ただ、本作では「小学生がロケットを打ち上げる」ための設定の整合性にこだわって、著者が「川の名前」で見せたような科学少年の冒険譚としての躍動感は抑えられているように感じた。

夏のロケット (文春文庫)

なつのロケット

進め!なつのロケット団 1

進め!なつのロケット団 1

これは、その、あさりよしとおが、ひょんな事から本当にロケットを作ってしまうという、ほぼ実話に基づいたマンガである。日本初の完全民間主導による液体燃料ロケット開発の記録となっている。川端裕人の「青い海の宇宙港」に登場する、北海道のロケット会社というのも、これをモデルにしているのではないか。

ロケット開発の歴史と、基本的な解説については、同氏の「まんがサイエンス」が面白い。

まんがサイエンス (2) (ノーラコミックスDELUXE)

文庫 ロケットボーイズ 上 (草思社文庫)

文庫 ロケットボーイズ 下 (草思社文庫)

女子高生、リフトオフ! (ロケットガール1)

「青い海の宇宙港」にしろ野尻抱介「ロケットガール」にしろ、ロケットビジネスにおけるロケットの巨大化に対抗して、小型ロケットの利用することがコンセプトとなっていたが、現実にも小型ロケットの運用がニュースになっている。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が超小型衛星を宇宙に届けるミニロケットの1号機を12月にも打ち上げる。超小型衛星は開発期間や製造コストが手ごろで、大学や民間に需要があるが、これまでは大型衛星に「相乗り」して打ち上げてもらうしかなく、普及の足かせとなってきた。専用ロケットの登場で、利用にはずみがつきそうだ。(2016/9/23 日本経済新聞

「超小型衛星」利用にはずみ

また「青い海の宇宙港」では、超小型サイズの観測機を太陽系外に向けて飛ばすが、こちらも現実化しつつある。

英国の著名な宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士は12日、ニューヨークで記者会見し、光速の5分の1という極めて速い速度で飛ぶ小型探査機「ナノクラフト」を開発し、太陽系外の惑星や生命体を探す計画を発表した。(2016/4/13 日本経済新聞)

ホーキング博士が探査機計画

この「ナノクラフト」による小型探査機というアイデアは野尻抱介「沈黙のフライバイ」でもキイになっている。

沈黙のフライバイ

沈黙のフライバイ

27ページの短編だが、極めて壮大なイメージの広がりをもたらすファーストコンタクトテーマのSFの傑作である。観測結果から導き出される結論から想像を逞しくすることに禁欲的に振る舞い、ドラマティックな感動を盛り上げるのではなく、人間の灯した科学という小さな光を描くことで廻りに広がる闇の深さを示すかのような詩情あふれる余韻を残している。

2016-09-22 (木)

[]シャイニング/ドクター・スリープ?

新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

新装版 シャイニング (下) (文春文庫)

キューブリックの映画で、双子の女の子が不気味だとか、扉の隙間から覗いてるジャック・ニコルソンの顔がイッちゃってるとか、そんな印象が強いが、原作の怖さは少し別のところにある。映画でジャック・ニコルソンが演じたジャック・トランスは、原作でも勿論ホテルの悪霊に取り憑かれるが、彼はアルコールの依存症で禁酒中なのだ。それが再び酒を手にして、依存症が進行していく過程の内面描写が、悪霊に取り憑かれて正気を失っていく過程とダブらせて描かれている。ここは実際著者のキング自身の、アルコール中毒だった経験を元に描かれていて、ものすごく生々しい。狂気に引き込まれていく怖さ、というのが体験できる。

近作の「ドクター・スリープ」は「シャイニング」の続編だが、やはりアルコール中毒は重要な要素になっている。「シャイニング」はゴシックホラーの幽霊屋敷を現代に甦らせたモダンホラーの傑作であるが、アル中の父親のDVから生き残った母子の物語でもある。「ドクター・スリープ」は、生き残ったものの、矢張りアルコール中毒となってしまったかつての少年が、立ち直るまでの物語である。

キングの小説を支える描写について、全く別のところで類似した資質をもつ作家に思い当たった。

ゆうきまさみというマンガ家がインタビューで、(自分は)「隣の部屋に行くというような場面で、どうしても廊下を歩いてるとこを描いてしまう」と言っていた。普通はそんな文章では小学生の作文のようになるため、ドンドン省略してテンポを良くするのが基本だが、敢えて省略しないことでキャラクタの生活感、生きて存在している実感を感じさせる描写にしてしまう点が両者に共通している。

キングはホラー作家で、悪霊やモンスター等怖いモノの描写も得意だが、その真骨頂は怖がる心理描写にある。対象が幽霊であろうが殺人鬼であろうが、はたまたガンだとか、旧悪の露見だとか、或いは真っ暗な山道でも妄想でも、「怖がる心理」というのは共通している。その心理描写が、キングの手にかかると、本当に怖い。生活感のある、リアリティをもって描写された人物が居て、なぜそれを怖がるかという背景が語られるので説得力がある上に、迫真の筆致で心理描写が綴られる。怖い話を突き詰めて、そもそも恐怖とはなにか、という命題に突き当たった。キングの小説は人の感じる恐怖そのものを描いている。「ドクター・スリープ」も非日常的な脅威との対決がメインプロットとなっており、読者を引っ張っていく原動力となっているが、小説はその対決が決着した後に、アルコール中毒に関わる個人的な精神的危機の克服という形でクライマックスを迎える、

ドクター・スリープ 下

「ドクター・スリープ」の一つ前に発表した長編が「11/22/63」。

11/22/63 上

11/22/63 上

11/22/63 下

タイトルはケネディ暗殺の日付である。田舎の安食堂の物置にある「過去に通じる穴」を通って50年前のアメリカに行き、ケネディ暗殺を阻止する、という話。穴を通って行く先は常に同じ時間・同じ場所で、暗殺阻止のためには5年ほど過去のアメリカで暮らさないといけない。ただまずいことがあれば、一旦現代に戻れば、また最初からやり直しができる。何度も試行錯誤して、トラブルを要領よく回避する方途を探るあたりは、ゲームのようでもあり、「ループもの」の趣向でもある。ゼロデイまでの期間の物語は、ケネディ暗殺の謎を探るミステリでもあり、キングの迫真の筆力で、ケータイもなくGoogleもないけど、ガソリンは安くてどこかのんびりした過去の生活がたっぷりと堪能できるカントリー小説でもある。だが、本作は何よりも、過去の改変テーマに挑むSFであり、キング的な結末へと向かっていく。初期長編の一つ「デッドゾーン」は、予知能力によって知った未来の破局を回避するために孤独な戦いを続ける主人公を描いたが、それと対になる作品と言える。

デッド・ゾーン〈上〉 (新潮文庫)

デッド・ゾーン〈下〉 (新潮文庫)

2016-09-21 (水)

[]ミスター・メルセデス?

サイコパスの大量殺人犯と元刑事の対決を描いたスティーブン・キングのミステリ。丹念な日常描写を圧倒的な筆力で読ませ、読者をぐいぐい引っ張っていく読み味はいつもの通りながら、ホラーっぽい描写も非日常的なシーンもでてこない。銃の乱射や爆弾テロにいきなり巻き込まれかねない日常そのものが恐怖を孕んでいる現実を反映したのだろうか。登場人物もなんとなしポップなキャラ付けで、また少し作風変わったかと思ったら、同じキャラでシリーズ化したらしい。ちょうど今日が誕生日で69歳になったはずだけど、攻めまくってますね。本作の前に「11/22/63」「ドクター・スリープ」と初期長編と対になるような長編を出した後だし、一つの転回点となるのかも。

ミスター・メルセデス 下

2016-09-20 (火)

[]昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中(10)<完> (KCx)

昭和元禄落語心中(10)<完> (KCx)

ただひたすら芸を磨き、自分の話芸は一代限りと言い切る落語家八代目有楽亭八雲の一代記。だから「落語心中」。と言っても、物語は八雲の弟子与太郎を中心とした現代編と、八代目八雲を襲名する以前の菊比古と兄弟子である助六の物語である回想編とが組み合わさっている。ストイックに高座に向かう菊比古にとって落語は自分のためのもの。一方兄弟子の助六は常に客に寄り添い、時代に合わせて自在に変わっていく客のための落語にこだわる。対照的な二人は良きライバルであり、親友でもあった。落語会を背負う名人となる二人だったが、助六は事故で死んでしまう。一人残された菊比古は、襲名して八代目八雲となり、孤高の名人となっていく。そこに素人の怖いもの知らずで強引に弟子入りしたチンピラが、やがて助六の芸を知り、惹かれていく。これは八雲と助六をめぐる因果の物語であり、芸人譚の傑作であり、屈指の落語マンガである。落語の芸風の違いによる演じ分けや、継承される芸風が物語の肝となっているが、マンガの表現としてしっかりと描写されている。全体の構成も見事で、全10巻できっちり完結している。長くも短くもなく、最近では本当に珍しい。アニメ化もされたが、こちらも名人の落語の表現では原作に負けていない。高座シーンにたっぷり時間をとって、ベテラン声優の芸を堪能させてくれる。

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(2) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(3) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(5) (ITANコミックス)

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昭和元禄落語心中(9) (ITANコミックス)