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人の映画評〈レビュー〉を笑うな

2012-04-14

hito_revi2012-04-14

『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 堕ちた末の魂の咆哮

| 07:23

北関東の寂れた町を舞台に、「ここではないどこか」を夢見ながらも飛び出しそこねた若者があがく姿を描いた『SR サイタマノラッパー』。長回しのカメラが挫折した青年/女子を追い詰め、残酷さにいたたまれない思いでいると、彼らがカメラを見返しスパークする奇跡の瞬間を見て、たまらないカタルシスを覚えるのだ。そんなリアルでヘビーな青春模様が人々の心を捉え、自主映画では異例と言える待望のシリーズ第3弾。しかしこれは……、等身大の日常から飛躍したクライム・サスペンスの趣に驚いた。

本作の主人公は、『SR1』でヒップホップ・クルーSHO-GUNGの仲間たちと別れ、『SR2』には登場もしなかったマイティだ。上京して人気ヒップホップ・クルーの極悪鳥に潜り込んだものの、パシリ扱いだったマイティに、ついにラップ・バトル出場という日の目を見るチャンスが与えられる。だが底力を見せ勝ち抜くマイティは、決勝で八百長を命じられる。音楽なんて楽しくカッコよく好きなようにやるもの。そんな思いは幻想だと嘲笑うように権力者だけが甘い汁をすする不気味なシステマティックな世界が『SR3』の舞台なのだ。

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あがけばあがくほどにマイティは社会の暗黒面に堕ちていく。犯罪に手を染め、彼を頼る恋人ともども、どこまでも……。それにしてもこれは本当に日本の光景なのだろうか。スラム化した悪夢のような光景は東南アジアかSFを思わせる。去年フィルメックスで観たベネチア映画祭銀獅子賞受賞作の中国映画『人山人海』の炭鉱までも思い出した。主人公が彷徨の末行き着く、人が人として扱われない無法地帯を。でもぬるく平和な世に暮らしていた私たちは、今丸腰で足元の不確かなこんな闇に放り出されてしまったのだ……。

エキストラを集めたことが話題になっていた野外フェスというのも、コドモたちからカネを巻き上げるために仕組まれた汚いものとして描かれていて、どこまでも裏切られる思い。だけどこんな馬鹿げた搾取の構造がまかり通っていいわけはない! マイティも絡むその栃木のフェスのオーディションに応募してきたイックとトムふたりだけのSHO-GUNG、そしてダメダメな風貌から鋭いご当地ライムを繰り出す日光のクルー・征夷大将軍が、罵倒に反抗してやりこめる正常さに胸がすく。彼らは彼らの野望と夢を持って、フェスに参加する。

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クライマックスとなる野外フェス、もちろんマイティは彼らと邂逅する。しかしもちろん『SR』で、それは苦しい自分との闘いだ。とうに捨てたはずの、もう手が届かないほどに眩しいステージ上の仲間に、マイティは必死で汚れた手を伸ばす。まだ終わってねぇ! 夜空に悲痛な虚勢を轟かせながら……。

インディペンデントで独自の道を切り開き、今メジャーも真っ向から描こうとはしない過酷な日本社会の問題に取り組んで、胸高鳴る極上エンターテインメントを作り上げた入江悠監督の挑戦にただただ感服した。2時間近い長尺、執念の長回しに前作以上に息を詰めつつ、マイティの逃亡劇の行く末を見届けてほしい。


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SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 2011年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch

監督・脚本・編集:入江悠

出演:奥野瑛太 駒木根隆介 水澤紳吾 斉藤めぐみ 北村昭博 永澤俊矢 ガンビーノ小林 美保純 ほか

配給:SPOTTED PRODUCTION

(C)2012「SR3」製作委員会

公式サイト

2012年4月14日(土)より渋谷シネクイントほか全国順次公開

2012-04-10

塚本晋也監督

塚本晋也監督作『KOTOKO』初日舞台挨拶レポート

| 02:20

鬼才・塚本晋也監督が、敬愛してやまないアーティストのCoccoを主演に作り上げた『KOTOKO』。暴力に満ちた世界で幼い我が子を育てる母親の恐怖と苦悶を、Coccoはときに儚げに、ときに荒れ狂い、全身全霊を込めて演じて、初お披露目となった昨年9月の第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門グランプリを受賞するなど高い評価を浴びていた作品です。塚本監督の映画作りにおいても、Coccoと寄り添い、自身のごくパーソナルな部分も露わにしていて、これまでにない繊細さと生々しさが感じられる新境地。話題が沸騰する中、満を持して4月7日に日本でも公開初日を迎え、塚本監督はテアトル新宿での上映全5回にて舞台挨拶を敢行。作品への思いを語ってくださいました。

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塚本晋也監督

塚本監督 「やっと初日を迎えられて感無量です。いつもよりも緊張しています。いつもはスタッフと自分とで一生懸命やっているんですが、今回はCoccoさんが関わってくれて全霊でやってくださったので、いつもとは違う緊張感です。今日はどうもありがとうございました」

記念すべき初回に足を運んでくれたお客さんへのお礼の後、ベネチア国際映画祭で得た感触と、海外と日本での反応の違いなど、興味深いお話をされました。

塚本監督 「グランプリを獲ったオリゾンティ部門というのは、メインのコンペが王道だとすると、横道でしょうか(笑)。潮流に逆らうと言うか、革新的な作品が上映される部門ですね。昔からいつも僕の映画は逆流部門の常連ですので、今回グランプリが獲れて本当によかったです。スタンディング・オベーションも本当にあたたかく、どうしていいのか分からなくなるぐらい長くて、劇場の方が『次の映画があるのでお開きにしてください』と僕に言いに来るほどでした。映画祭での反応で映画のその後の運命が決まったりするところがあるので、拍手を聞いたときにはすごくよかったなあと思いました。日本では、(一般の観客向けに行われた)先行上映会での反応はあたたかいなという感じだったんですけど、それ以外の試写会などでは茫然として青ざめて帰っていく方が多くて、『これは日本では失敗したかな……?』と思いましたね。でもちょっと待ってという感じがあって、数日してから素晴らしい意見が聴けたりするんです。すぐに言葉にならないというのが多かったようですね」

海外に熱狂的なファンを多く持つ塚本監督。日本ではこの『KOTOKO』で初めて塚本作品に触れ、衝撃を受ける人も多いのかもしれません。でも素直な反応も多く、上映中にしばしば笑いも起こるとのこと。

塚本監督 「ギャグは多いですからね。キートンチャップリンの時代から変わらない、古典的な、ただ転ぶとか(笑)。ただ転んでお客さんが笑うと僕も嬉しいっていう(笑)」

でもその後にはドキッとするショッキングなシーンがあったりするのです。

塚本監督 「笑いといちばん恐ろしいことがいつも紙一重のところにあるということですね」

日常に潜む異常を描く塚本ワールドは本作でも炸裂しています。そして話題は気になるCoccoとの関係へ。2004年の『ヴィタール』に楽曲を提供してもらうことから、Coccoとの映画でのコラボレーションが始まります。

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塚本監督 「僕はCoccoさんの世界が大好きだったので、『ヴィタール』のときにそれをイメージしてシナリオを書いて、Coccoさんは活動を休止していた時期だったんですけど読んでいただきたいと思って送ったら、突然歌を送ってくださったんです。とても感動して、それを旗印にして映画を作ってエンディング・ソングにさせていただいたのが最初です。Coccoさんはデビューの頃から好きで、『BULLET BALLET/バレット・バレエ』(98)という映画ではCoccoさんを念頭に置いて主人公の少女を描いていたようなところがありました。そして2010年に配信用の作品として作った『Inspired Movies』をCoccoさんが喜んでくださって、『KOTOKO』を撮るチャンスを与えていただけました。『KOTOKO』を作るにあたってはCoccoさんへのインタビューから脚本作りを始めました。何でも言ってくださいと。それをやっているうちに自分のテーマとかストーリーが固まっていくんですけど、最初は無のところから、Coccoさんから話を浴びるように聞き、だんだん物語ができていったという感じですね」

最後になぜ今Coccoと、「今」の時代を見据えたようなこの映画を撮ったのか、ということについて語ってくださいました。

塚本監督 「ずっとCoccoさんを撮りたいというのもあったし、『Inspired Movies』で巡り合って、今ならできるということだったんですけど、その『今』というのがちょうど今このときの『今』ではなければできないというものになったんです。そのときの自分の状況とCoccoさんの状況がうまく合わさり、それからとても恐ろしいことですけど震災が起こってしまって、そういういろんなことが全部映画のエッセンスとなっています。脚本を書いたのは震災の前なんですけど、戦争状態がある日突然来るという危機感がいつもあったので、そうすると戦争に行くのは自分の子供たちの世代ですから、その恐怖があって。それは実はCoccoさんのお話を聞きながら浮かんだ自分のテーマだったのですが、震災があったことで、周りのお母さんたちが子供を守ろうとする姿にとても鬼気迫るものを感じて、これがCoccoさん演じる琴子ととても重なって見えたので実感を込めて作れましたし、また、今作る必要が絶対あるなと思いました。一瞬の中でできた映画なんですけど、出来上がった感触は、自分の映画の中でも普遍性のある映画になったと思っています。また、Coccoさんの強い後押しもありました。Coccoさんは震災の後に折り鶴を自分のお部屋で作り続けていたんですけど、それを映画に取り入れ、スタッフもみんなCoccoさんに習って作りました。折り鶴はまさにCoccoさんの祈りのシンボルなのです』

こうして塚本監督のとても穏やかなお人柄が感じられるアット・ホームな舞台挨拶は終了しました。この日は上映の合間にもロビーの片隅に立ち、映画で壮絶な体験をしてきたばかりのお客さんとのコミュニケーションを楽しんでいたのだそう。“鬼才監督”の怖いイメージはなく、映画に注ぐ愛情の深さをただただ感じました。


★and more……★

Cocco最新エッセイ『コトコノコ』(幻冬舎刊)出版記念「コトコノコ展 〜アーティストCoccoによる映画『KOTOKO』の世界を体感しよう〜」がただ今開催中です!

4月7日(土)〜4月15日(日) ※4月10日(火)は休み

ギャラリーアイリヤード 渋谷区神宮前4-25-7-301

入場無料

・私が取材した塚本晋也監督インタビューがINTROにアップされています。この舞台挨拶でも語られていたCoccoとの関係などについて、より詳しくお伺いしています。実は監督にとって『KOTOKO』での取材第1号だったとのこと。ぜひお読みください。

INTRO|塚本晋也監督インタビュー:映画「KOTOKO」について【1/3】【2/3】【3/3】

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KOTOKO  2011年/日本/カラー/DCP/FullHD/5.1ch/91分/PG12

監督:塚本晋也 脚本:塚本晋也 原案:Cocco 音楽:Cocco 出演:Cocco塚本晋也

製作:海獣シアター 配給:マコトヤ  ©2011 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

公式サイト

2011-12-26

3.11 日常

わたなべりんたろう監督作『3.11 日常』初日トークショー

| 00:45

映画ライターのわたなべりんたろうさんが初監督したドキュメンタリー映画『3.11 日常』が、12月24日より池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開されています。東日本大震災以降感じた「何かしなければ」との切実な思いから小出裕章助教への取材を敢行し、ネットで資金調達を行う「クラウドファンディング」を利用して作り上げた作品です。出演はほかに水野美紀さん(女優)、中川敬さん(ミュージシャン)、高橋健太郎さん(音楽プロデューサー)、経済産業省前でハンストを行った若者たち。原発や被災地支援に関わる人々のお話は、日本人が目をそむけるべきではない重い事実を見せながらも、より深い「生きる」ということについてのメッセージをそれぞれ伝え、とても勇気付けてくれる作品になっています。

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小泉宗仁さん、わたなべりんたろう監督、関口詩織さん

初日の24日の上映終了後には、わたなべ監督と、ハンスト参加者のおひとりである関口詩織さん、撮影の小泉宗仁さんによるトークショーが行われました。

まずはわたなべ監督からの挨拶。

わたなべ監督「今日は来てくださってありがとうございます。クリスマス・イヴに公開というのは、(動員が)やっぱり厳しかったですね。それは分かっていたんですけど、でもどうしても年内に公開したかったんです。今日観ていただいたみなさんにはぜひ周りの方々に伝えていただきたいと思います」

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わたなべりんたろう監督

女子大生の詩織さんは、ちょっと緊張の面持ち。監督から「詩織ちゃんはさっき映画を観ていて恥ずかしかったということですが」と水を向けられます。

詩織さん「(スクリーンが)大き過ぎます! でもハンストのことを映画で取り上げていただいてありがとうございました。この映画のいいところは、震災後考えた人や、前から考えていた人、いろんな人を映していますが、それぞれの人が自分の好きなことをやっていいんだと分かるところだと思います」

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関口詩織さん

と、映画にはあらためて感銘を受けた様子でした。また、詩織さんはハンスト後も「原発」都民投票など、様々な活動を積極的にしているそうです。

詩織さん「都民投票は今いちばん熱いですよ! 事務局も楽しいので、ぜひ遊びに来てください。あとは今マスク・プロジェクトというのをやっています。効果はもう少し調べなければならないんですけど、手縫いですごく可愛いマスクを作って、福島にどうしても住まなければならない人たちのために送るというものです。都民投票でもいいし、震災に関することじゃなくてもいいと思うので、自分がピンと来るものをやっていけばいいと思います」

撮影の小泉さんは、わたなべ監督と一緒に4月に被災地ボランティアに行った仲間のひとりです。

小泉さん3.11で、人がいろいろ考えることは多くなったと思うんですが、そこから行動することは難しいと思います。この映画は行動した人たちの物語なので、観る人のヒントになればと思います」

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小泉宗仁さん

また、小泉さんは現在園子温監督の新作の撮影に入っているとのこと。こちらも震災を題材とした作品で、避難所のシーンのエキストラを大募集しているそうですので、興味のある方はぜひご応募ください! 詳細はコチラ→ 園子温監督最新作のブログ

終演後のロビーでは、詩織さんは都民投票の、小泉さんエキストラ募集のチラシをそれぞれ配っていました。自分のやるべきことをやりながら、人と繋がって力を出し合う姿がすがすがしく、わたなべ監督のまわりにいい人たちが集まってできた映画なのだなと思いました。


★and more……★

・INTROに私が取材したわたなべ監督インタビューが掲載されています。撮影の経緯や映画への想い、クラウドファンディングについてなども語っていただきました。

INTRO|わたなべりんたろう (監督)インタビュー:映画『3.11 日常』について【1/4】【2/4】【3/4】【4/4】

・12月23日に行われた『3.11 日常』前夜祭ではFRYING DUTCHMANが「humanERROR」を熱唱! ぜひご覧ください!

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3.11 日常』 2011年/日本/HD/79分

監督:わたなべりんたろう

出演:小出裕章 水野美紀 中川敬ソウル・フラワー・ユニオン) 高橋健太郎 関口詩織 岡本直也 山本雅昭 米原幹太

公式サイト

2011年12月24日(土)〜30(日)、池袋シネマ・ロサにて限定一週間レイトショー上映!

2011-11-08

hito_revi2011-11-08

「SPOTTED701/VOL.18」発売中!

| 23:58

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映画や音楽などインディーズ・カルチャー情報を満載した不定期ミニコミ誌の「SPOTTED701」(発行・スポッテッドプロダクションズ)最新号が発売中です。今回はPDF版にての配本。ボリュームはそのままで雑誌が700円だったところ250円と、とてもお得になっています!

取り上げられているのは、『SR サイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者』、『電人ザボーガー』、『劇場版 神聖かまってちゃん』、『トーキョードリフター』、『UNDERWATER LOVE-おんなの河童』、『サウダーヂ』、『監督失格』などなど。注目の話題作・問題作の熱い記事が詰まっています。

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私がおもしろく読んだのは俳優の川瀬陽太さんによる「極私的『サウダーヂ』記」。力強い文章で綴られたスリリングな撮影の舞台裏に、何度でもこの傑作映画を観返したくなります。

そして私も『UNDERWATER LOVE-おんなの河童』クロスレビューを執筆してます! ピンク映画ながら乙女心をときめかせるちょっと怪奇なファンタジーの魅力を女性4人で分析してます。ぜひお読みください!!

「SPOTTED701/VOL.18」購入はこちらから!

2011-10-18

hito_revi2011-10-18

『アジアの純真』初日舞台挨拶レポート

| 03:24

極東の片隅で出会った在日朝鮮人の少女と日本人の少年が、クソみたいな世の中を変えるため、毒ガスを手に旅に出る……。アートで尖った青春映画の意欲作であるにも関わらず、民族という難しい問題を扱ったため2年以上も公開の目処が立たなかった『アジアの純真』が、10月15日に新宿K's cinemaでついに公開されました。初日舞台挨拶には主演の韓英恵さんと笠井しげさん、脚本の井上淳一さん、そして片嶋一貴監督が登壇し、短い時間ながらも作品や映画界に対して熱い思いをぶつけてくださいました。

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左から 井上淳一さん、笠井しげさん、韓英恵さん、片嶋一貴監督

この日はあいにくの雨でしたが、話題作ということで満席となる盛況ぶり。韓さんは足を運んでくれたお客さんにお礼を言い、「この作品に出演したことで心境など何か変わりましたか?」という質問に答えました。

韓さん「自分自身にまっすぐに向き合うことができました。自分はハーフで22歳に国籍を決めなくちゃいけないんですが、まだ決めていないんです。昔からの人間関係とかにもうまくいかないところがあって逃げてきたんですけれども、この作品に出会って自分にまっすぐ向き合えるようになりました」

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韓英恵さん

ボルドーのフェミニンなワンピースがとても似合っていた韓さん。そのお隣の笠井さんもジャケットをラフに着こなし爽やかなイケメンぶりでした。映画では内向的な高校生役を演じた笠井さんに、「2009年に撮影されてから2年半を経て公開されることについて、どのように考えていますか?」との質問が。

笠井さん「待ちに待っていたので『やっと来たな』と思いますね。観直してみると顔だとかお芝居だとかが全然違っていて、みなさんはこの後観ると思うんですけど、別人ですよね(笑)。そこを楽しんでもらえるといいかなと思います。よろしくお願いします!」

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笠井しげさん

この作品は公開には時間がかかりましたが、海外の数々の映画祭に出品され、特にパリシネマ映画祭やロッテルダム国際映画祭などヨーロッパで高評価を受けていました。何ヵ所か行っている脚本の井上さんが、映画祭での反響について語りました。

井上さん「多くの国内映画祭と映画館に断られてきたので、外国に行ってどういう評判なんだろうと思っていました。ただ、賛否両論と言われますけど、ティーチインが上映後にある場合、向こうの人はダメな場合は参加せず出てしまうので、残った人の意見は大変好意的でした。ロッテルダムでの上映後、おばさんが近寄ってきて「ビューティフル・フィルムだった!」と言ってくれたのが一番印象に残っています。ちょっと感動しましたね。だから帰ってきて、まさかネットで賛否両論と言うか否だけが起こっているとは思わなかったので、それに驚いた次第です」

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井上淳一さん

そんな井上さんの言葉を受けて、「なんで○○映画祭はこの映画を断ったんじゃい!」と語調を荒げる片嶋監督。窮屈な日本の映画界に思うところがあり、ご自身が代表を務める映像制作会社の自主製作映画としてこの作品を撮ったそうです。

片嶋監督「大きな映画は当然お金がかかるものだし、この手の小さい規模でこういう内容のものはなかなかできにくいと思うんですが、あまりにも同じようなモノばかりできると面白くないんで、ドッグシュガーの中で“ドッグシュガーアヴァンギャルド”というレーベルを作ろうみたいな話になりまして。自分たちのお金で自分たちのやりたいものを作り、配給まで自分たちでやろうというプロジェクトなんですけど、その第1弾としてこの作品を作りました。今度若松(孝二)さんに来ていただいて“自分の金で映画を作れ!”っていうテーマでトークショーをやるんですけど、師匠筋の若松さんがやってきたことがすごく参考になり、やってよかったと思いました。日本映画にとって一番大事なものは多様性なので、いろんな映画を作れる環境、そして観れる環境がちゃんとできていったらいいなと思います」

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片嶋一貴監督

最後に韓さんが作品への思いを語ってくれました。

韓さん「この映画はネットで書かれているように反日映画とかではなくて、私は青春映画として、ロード・ムーヴィーとして観ています。しげがさっき言ったように、2年前のピュアで穢れがなかった大人じゃない自分のすべてをここに刻みました。十代最後の思い出の映画として、最後が『アジアの純真』で本当によかったなと思っています」

「今は穢れてるってこと?」と途中で笠井さんに突っ込まれて「そんなことはないんですけど!」と苦笑いする場面もありましたが、スクリーンの中で走り、叫び、睨み付ける野性的な美しさは、多分この世代特有のものだという気が大いにします。キャストもスタッフも渾身の力を込めた力作、ぜひ多くの人に観ていただきたいと思います。

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笠井さん、韓さん


★and more……★

・K's cinema公開中は連日トークショーが予定されています。現在決まっているスケジュールは次のとおりです。豪華なのでお見逃しなく!

10月15日(土) 17時からの回上映前/21時10分からの回上映前 初日舞台挨拶韓英恵、笠井しげ、井上淳一(脚本)、片嶋一貴監督

10月16日(日) 21時10分からの回上映後 荒井晴彦(脚本家)×寺脇研(映画評論家)  トークテーマ:「映画芸術」出張版!

10月17日(月) 21時10分からの回上映後 足立正生映画監督)×雨宮処凛(作家・社会運動家  トークテーマ:政治と青春

10月18日(火) 21時10分からの回上映後 若松孝二映画監督)×片嶋一貴監督×井上淳一  トークテーマ:中高年の為のインディペンデント映画講座〜自分の金で映画を作れ!〜

10月19日(水) 21時10分からの回上映後 内田春菊漫画家)×韓英恵   トークテーマ:闘わない男、闘う女

10月20日(木) 21時10分からの回上映後 蜷川実花初監督作品「Cheap Trip」(韓英恵主演)劇場初公開!

10月21日(金) 21時10分からの回上映後 瀬々敬久映画監督)×鍋島淳裕(カメラマン)×片嶋一貴監督  トークテーマ:商業映画とインデペンデント映画

10月22日(土) 上映後 PANTA(ミュージシャン)×白井良明(ミュージシャン)×片嶋一貴監督   トークテーマ:音楽や映画におけるパンク精神

10月23日(日)〜24(月) 上映後 蜷川実花初監督作品「Cheap Trip」(韓英恵主演)劇場初公開!

10月25日(火) 上映後 青山真治映画監督)×片嶋一貴監督×井上淳一  トークテーマ:海外映画祭で日本映画はどう観られているか

10月26日(水) 上映後 韓英恵×笠井しげ   トークテーマ:メイキング・オブ PURE ASIA「寒くて辛くて大変でした」

10月27日(木) 上映後 黒田耕平×丸尾丸一郎×川田希×澤純子   トークテーマ:メイキング・オブ PURE ASIA 「撮影秘話全部しゃべっちゃいますっ!」

10月28日(金) 上映前 韓英恵、笠井しげ、井上淳一、片嶋一貴監督による舞台挨拶


・私が取材した韓英恵さんインタビュー記事がINTROにアップされています。この作品に出会って、それまでスルーしてきた自らのルーツに向き合い、18年間の人生を刻み付けたという作品への思いを語っていただきました。ぜひお読みください。

INTRO|韓英恵インタビュー:映画「アジアの純真」について【1/3】【2/3】【3/3】


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アジアの純真』 2009年/35mm/108分/白黒

10月15日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー!

11月5日よりシネマスコーレ(名古屋)

11月中旬より第七藝術劇場(大阪) 他、全国順次公開!

出演:韓 英 恵,笠井しげ,黒田耕平,丸尾丸一郎,川田 希,澤 純子,パク・ソヒ,白井良明ムーンライダース),若松孝二

エグゼクティブプロデューサー:小曽根太,石川始 プロデューサー:木滝和幸,門馬直人 ラインプロデューサー:安藤光造

撮影:鍋島淳裕 照明:堀口 健 録音:臼井 勝 美術:佐々木記貴 音楽:ken sato

編集:福田浩平 VFX:柳 隆 助監督:茶谷和行 スケジューラー:江良 圭

配給:ドッグシュガームービーズ 企画・制作プロダクション:ドッグシュガー

製作:ドッグシュガー,ロード・トゥ・シャングリラ,HIP

脚本:井上淳一 監督:片嶋一貴 (C)2009 PURE ASIAN PROJECT

公式サイト