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法華狼の日記

3000-01-01 このダイアリーについて

hokke-ookami3000-01-01

日記の主な話題は、アニメやネットや歴史認識についての感想。


記事リストは以下。自作小説、へのへのもへじ、アニメや諸文化や歴史にまつわるデマ、等々。

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2017-02-22 上げたのは3日後

[]『相棒season15』第16話 ギフト

末期癌治療のため入院していた快楽殺人鬼、北一幸が停電の隙に脱走した。監視していた刑事のひとりは懇意の女性と連絡するため席を外しており、もう一方の刑事は殺されて顔を切り刻まれた。

さらに北が逮捕前にリストアップしていた女性、有村が死体となり、顔を切り刻まれて冷蔵庫で警察に送りつけられる。警察は女性の保護に全力をつくすが、杉下は異なる角度に注目する……


番組情報や冒頭では、伊丹に逮捕されたという北の因縁が語られていたが、何のエピソードだったか思い出せず。捜査が始まって陣川との因縁が語られて、ようやく前シーズンの第12話のことだったかと思い出した。

脚本も同じ真野勝成。2時間SPではそのエピソード限りの異常な犯人を出しては使い捨てて、あまり脚本家として良い印象を持っていない*1。しかし今回は最初に異常な犯人を成立させてから、じっくり謎解きを展開していったから、異常犯を主軸とした構成は同じでも印象は良い。


さて、人のために罪をおかすことに快楽をおぼえるようになった北は、ある意味では杉下に近い。だから杉下は北が快楽とは異なる目的で殺人をしている可能性を追及していく。追う側と追われる側の精神が同化していく展開は、サイコサスペンスの定石のひとつだ。

北が誰の復讐を代行していたのかという謎解きから社会的マイノリティの苦難が描かれたかと思えば、有村の行動が社会に居場所がない人間のひとつの典型だったりして、社会派的な目配せも充分*2

美しい女性の顔を傷つけるという快楽殺人の法則を敷衍して、なぜ有村が一着だけ体の線を出す服を持っていたのか、なぜ監視していた刑事の顔も切り刻まれたのかという心理的な謎解きも明解。ゴールデンタイムの刑事ドラマとしてギリギリの死体描写ともども、サイコサスペンスとしてよくできていた。

好みとしては、北が“殺す”のは監視していた刑事と有村だけにして、他の被害者は性器を切りとるくらいで殺しはしないという構図にすれば、より快楽殺人鬼なりの法則が明確になったかもしれない。


はっきり残念なのは、ほとんど伊丹が相棒としてふるまっていて、冠城に存在意義がなかったこと。普段は興味本位で杉下を活躍させようとして物語を転がしていくからこそ、杉下ですら熱心にならざるをえない事件においては出番がなくなる。思想の方向性に違いがないので、最後の説教で杉下と異なる視点から主張したりもしない。これがたとえば亀山ならば、相棒初期に体験した事件の関係もあって、良心を正しく発揮できなかった快楽殺人者の愚かしさを悲しんだかもしれない。対立する思想が劇中に存在しないので、杉下の断罪が事件のピリオド以上の意味を持たない。

陣川も今回はロンドンに研修へ行ったまま、とぼけた連絡で最後に物語を日常に回帰させるだけ。俳優のスケジュールの関係か、顔も声も出てこない。今回冒頭で日本の警察に復帰していて、いつものように有村に惚れていれば、後味が悪くなってサイコサスペンスとしての印象が強まったかもしれない。

*1『相棒season15』第10話 帰還 - 法華狼の日記

*2:便利な連絡役に使われただけの弁護士は、もっと弁護士なりの思想が見えてほしかった感はあるが。

2017-02-21

[][]国有地取得問題でゆれている瑞穂の國記念小學院の公式サイトを見て、知識つめこみ式の教育機関としてすら期待できないことを感じる

教育勅語を暗唱させていることで有名で、反医療主義差別主義で悪名高い塚本幼稚園。

自然の力のみに子供の病気をまかせようとする幼稚園 - 法華狼の日記

教育勅語賛美な幼稚園が、御都合主義的に排外主義的な陰謀論を展開していた - 法華狼の日記

同じ学校法人森友学園が私立小学校を建設するにあたって、不自然な安値を公開せず土地を購入した疑惑が追及されつつある。

学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か:朝日新聞デジタル

財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。

補助金とくみあわせると収支としては黒字にまでなっていることを、弁護士のid:nabeteru1Q78氏がYahoo!ニュース個人でまとめている。

森友学園の国有地取得の収支(渡辺輝人) - 個人 - Yahoo!ニュース

建設中の建物に対する補助金も含めると、10年後に全部払い終わった時点でも森友学園の国に対する収支がプラスになる計算です。そしてこの元利合計額が登記簿に記載されている数字に合致します。


報道記事をいくつか読んだ後、あらためて開設予定の小学校サイトを見ていくと、予想通り「教育理念」のページで教育勅語を推し、愛国心の醸成を明言していた。

教育理念|瑞穂の國記念小學院

さらに籠池泰典氏の具体的な認識をさがしてみると、「ごあいさつ」のページで安倍昭恵氏や平沼赳夫氏*1とともに顔を出していた。

ごあいさつ|瑞穂の國記念小學院

学校一年生よりの国際英語教育に親しみながら世界の国々の人たちと友人となり、国同士が友好関係を結ぶことは世界平和に寄与するとともに、人類の文化・文明を発達進化させることとなります。

ここまでは教育に力をいれる私立小学校らしい記述で、ひっかかる表現もあるが目をつぶれる。

自らの国である日本の文化・歴史・伝統を知り、どっぷりと親しむことは日本人としてアイデンティティを形づくります。

ここまでも塚本幼稚園を知らなければ理解はできる。自国の文化や歴史を、さまざまな側面から知っていくことは悪いことではない。

しかし具体例を語るにつれて、自国中心主義に舵をきっていく。

基礎の部分さえ、きちんと要所、要所をおさせておけば、難解な高度な数学や理工学を学ぶ年代になっても、常に日本人としての誇りを忘れず、日本の為に活躍する人材となります。

数学や理工学を学んで外国で活躍する人材になっても、教育機関ならば喜んで送り出してほしいものだ。

そもそも国家へ奉仕させるために自国の歴史や文化を学ばせるものではあるまいに、と私個人としては感じるのだが。

世界で歴史・伝統・文化の一番長い國である日本。その中で積み上げてきた日本人のDNAの中に「人のために役立つ」という精神が刻み込まれていますし、世界で一番混じりっけのない純粋な民族であります。真心・誠心・正直・おもてなしの気持ちが他の国の人たちより強く深いので、人の役に立つ人材が輩出されています。世界が羨むほどノーベル賞受賞者が多い理由でもあります。日本に生まれてきてよかったと思えば、学業にも力が入るものです。

いきなり歴史教育において知識を学ぶ段階でつまづいている。伝統や文化の連続性ならば、もちろんインド中国が日本を圧倒する。

「日本人のDNA」という表現も、すでに比喩として定着しているとはいえ、ナチスドイツ等の優生主義を連想させてしまう。いや、同じ文章で「世界で一番混じりっけのない純粋な民族」という純血主義を堂々と語っているところから見て、比喩ですらないのかもしれない。

そして児童の心情として「日本に生まれてきてよかった」と想定していることが、決定的におかしい。百歩ゆずって外国人を学校から除外したいのだとしても、日本とは異なる国や地域で産まれた日本人の存在が想定できないのだろうか。

この小学校では英語を学ぶためにインターナショナルスクールを提携併設したいらしいが*2、このような価値観を表明して対等な友人になれると思っているのだろうか。


さらに「教育方針」のページを見ていくと、復古主義的な性格をあらわにし、個人の幸福ではなく国家への奉仕を求めていることが明らかになる。

教育方針|瑞穂の國記念小學院

時間軸(当時の価値観、体制)を頭に入れ、現代の価値観で物事(日本・世界)を判断せず、神道に基づく日本的倫理観を基盤に置き、近代から現代世界の動きを考察します。


学びの目的は、各人が最終的に国家有為の人材になることです。

ここまで堂々と現代の価値観を否定して、近代それも神道にもとづく価値観から考察しようと主張されては、一種の“強さ”を感じてしまう。獲得したくない部類の“強さ”だが。

そもそも私たちが生きている時間軸は「現代」のはずだ。現代世界を「当時の価値観、体制」から考察するならば、それは「現代の価値観」からの考察でなくてはおかしい。おそらくは、過去への批判に反発するための理屈と、過去を現代によみがえらせたい欲望を、よく考えず同時に主張してしまったのだろう。

2017-02-20

[][]『トンマッコルへようこそ

1950年代朝鮮半島で、人民軍と韓国軍が激しい戦闘をつづけていた。そしてとある山奥の村に両軍の小部隊が迷いこみ、一触即発の状態になる。

しかし武器を向けあう兵士を横目に、村人たちはいつもどおり平和な日常をおくろうとしていた……


2006年に日本公開された韓国映画で、原作は同名の舞台劇。舞台は2016年に日本でも上演された。

舞台『トンマッコルへようこそ』上演決定。山崎彬出演! | NAPPOS UNITED Co.,Ltd.

『トンマッコルへようこそ』は2002年、ソウルで初演。

2005年には韓国で映画化され、6人に1人が見たという大ヒットになりました。

彼らが笑顔で写っているのはなぜなのか?

村人と戦時下の兵士たちの、今こそ忘れてはならない、心に染み入る物語。

ジャンルとしては戦争映画というよりも人情喜劇か*1。トンマッコルという架空の地域を舞台に、墜落した米軍パイロットと、北朝鮮と韓国の兵士たちが奇妙な同居生活をおくるという寓話だ。2時間以上かけて、シリアスな戦争をコメディで笑い飛ばしていく。

特に前半は良くて、いかにも韓国映画らしい泥臭い地上戦が必要充分に描けているからこそ、それを無視するトンマッコルの住民との対比が笑える。不規則遭遇して近接距離から銃口を向けあう両軍兵士は、緊迫感がありつつもコントと紙一重で、実際に『8時だョ!全員集合』のような顛末をむかえる。

兵士では最も善良そうな米軍パイロットが、負傷してうまく走れないからこそ危険な生物に追い回されるという、コントラストを活用した天丼ギャグもいい。韓国映画のギャグは必ずしも好きではないが、この作品は緊張と弛緩のテンポが良くて、韓国文化が前提になっていないから、けっこう素直に笑うことができた。


しかしながら、前半と後半のつながりが悪いことは難。寓話的喜劇の良さが消えて、よくある娯楽的悲劇として終わってしまった。

まず、理想郷での共同生活で和解しつつあった関係が、押しよせる戦争によって破綻する落差を見せたいまではわかる。無垢な理想郷に見えたトンマッコルの魔法が解けて、ただ状況を認識できないだけの無知な田舎と露呈した悲しさは印象的ではあった。

しかしトンマッコルに押しよせる戦争の規模が小さくて、それで魔法が解ける展開には御都合主義が感じられた。たまたま部隊の指揮官が強硬な態度をとる人格だったため、トンマッコルの平和な雰囲気を無視して行動したわけだが……それはつまり映画の前半で両軍が和解できたのも、それぞれの指揮官の人格のたまものでしかないという解釈を許してしまう。

仮に、個人の人格が戦争という状況によって塗りつぶされる寓話というなら、それはそれでもいい。しかしそれならば塗りつぶす側が個人の心情で動いているかのように見せてはなるまい。押しよせてきた部隊の指揮官が個人として穏健な態度をとっても、トンマッコルが戦争に巻きこまれていく結末は変えずにすむはずだ。

そして終盤、トンマッコルを救うための両軍部隊が行動が自己犠牲的に描かれたことも納得がいかない。中盤までに描かれた戦争との距離感からすると、両軍部隊は誰も犠牲者を出さないことを目指すべきだろうし、実際におこなわれた作戦は特に犠牲者を出さずにすみそうだ。

後半の展開はシリアスになっているはずなのに、コメディだった前半より戦闘のリアリティが欠けているのも難。劇中の状況と比べて爆発の規模が小さく、敵との距離も不自然に近すぎる。映画内容にVFX技術が追いついていないなら、もっとカメラを引いて物語の結末は暗示にとどめてもよかった。


全体としては、期待しすぎなければ悪い作品ではないが、前半で好ましく思った要素が後半で消えていったことが残念。

美しい夢想を醜い現実でぬりつぶす物語も嫌いではないが、その“現実”が“夢想”にリアリティで劣っていては効果がない。

*1:ちなみに、2016年の戦争映画ベストテン投票では、44位と意外に高順位に入っている。投票理由をざっと見た印象では、戦争映画とは異なる娯楽要素が大きいからこそ、戦争映画を好まない観客層にも響いていたおかげで票を集めたようだ。戦争映画ベストテン:結果発表 - 男の魂に火をつけろ!

2017-02-18

[][][]韓国映画軍艦島』を利用した歴史の否定がおこなわれつつある

世界遺産にも登録された日本近代化遺構のひとつ、長崎県の軍艦島。

そこで戦時中に労働を強いられた朝鮮人の脱出劇を描いた映画が韓国で制作されており、最近に予告編が公開された。

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実際に全体を見なければ映画として評価することは難しい。反乱的な情景の規模を見ても、娯楽活劇性を重視している印象を受ける*1

とはいえ予告を見るだけでも、少なくとも映像はさすがに現代の韓国映画らしい力を感じた。春川市に約6000平方mという広大なセットを作った情景のスケール感もなかなかだし*2、薄汚れた炭坑内の圧迫感をきちんと表現した撮影技術もすばらしい。

しかし、この映画の制作を受けて、炭鉱における労働の過酷さや強制性を否定する反応が日本で起きつつある。


まず、BLOGOSにも転載されているkibashiri氏のブログエントリ*3では、映画の内容が史実に反していると主張している。

韓国映画「軍艦島」のでたらめ大嘘を検証しておく〜いつまで日本は韓国による歴史捏造行為を放置し続けるのか? - 木走日記

娯楽作品である他国の映画の内容に文句を言うのも大人げないですが、彼らが本作を「歴史をモチーフに」して作ったとおおむね「史実」であると主張しているのでその点はしっかり反証しておきたいと考えます。

「反証」をする以前に、劇映画を評価する能力がないことをkibashiri氏は自ら明らかにしている。「歴史をモチーフに」とは、歴史を忠実に再現するという意味をもたない。

モチーフ(モチーフ)とは - コトバンク

テーマがこうした主題をどのように扱い,表現するかという作者の態度,方法とかかわり合っているのに対し,モチーフは作品を形成する個々の単位をさすことが多い。

文学・美術などで、創作の動機となった主要な思想や題材。

どの辞書を引いても、「モチーフ」とは主要でこそあれ題材のひとつにすぎない。作品を着想した素材という意味もあるため、実際に制作していくにつれてモチーフとは異なる要素もとりこんでいくことは当然ある*4

たとえば日本でも、宮崎駿監督の『風立ちぬ』は零戦設計者の堀越二郎をモチーフにしつつ、そこに堀辰雄の小説を重ねあわせている。どれほど史実にもとづこうとも、劇映画であれば史実から逸脱することは珍しくない。

映画『風立ちぬ』公式サイト

かつてkibashiri氏が従軍慰安婦問題と対照させようと「その物語が世界が認める「真実」つまり「実話」であることが、広く認められている」*5ともちあげた映画『シンドラーのリスト』も、もちろん劇映画ゆえの誇張や改変はおこなわれている*6

そもそもkibashiri氏自身も、記事を「歴史をモチーフに新たに創造するストーリー」と要約している。史実をそのまま再現した映画だとは記事を読んでも解釈できない。


そしてkibashiri氏が正しい歴史として主張する内容は、歴史学から遠く離れた明らかな虚偽ばかりだ。

映画では「日本植民地時代に、多くの朝鮮人が強制徴用された場所」として描かれていますが、まず戦時においても朝鮮人の「強制労働」や「強制徴用」の事実はまったくありません。

 当時の軍事徴用は国民徴用令に基づいており、当時の国際法上違法ではなかったのです、アメリカイギリスなど連合国側でも軍事徴用は行われていました。

徴用の強制性まで否定する意見はさすがに珍しい。法律にもとづいた国家政策であれば、それこそ「強制」の証拠といえるはずだ。さらに注意すると、強制連行とは国策動員をさす歴史用語であり、徴用だけでなく民間業者や官斡旋による労働者募集もふくまれる*7

当時に違法でなかったことも、それだけで強制であったことの反証にはならない。奴隷制が合法であった時代ならば奴隷は何も強制されていなかったかというと、そのようなはずはない。

終戦時には日本人労働者不足により朝鮮人、中国人の割合が増えていたようですが、いずれにしても「朝鮮人だけが強制労働」を強いられた史実はまったくないのです。

映画内容をつたえる記事を読んでも、強制労働の対象が朝鮮人に限定されていると解釈できる記述は見当たらない。

 戦時中そのような悲劇はこの島では起こっていない、

 戦後も半島出身者は日本人と仲良く同じ島で働き続けた事実から、当たり前ですが普通に考えればわかる単純な事実です。

労働環境が良くなった戦後の、あくまで同じ炭鉱夫として同じ目線だったという日本人の証言は、おそらく主観的には事実だろう。しかし戦時中に朝鮮人炭鉱夫が過酷な環境におかれたことの反証にはなりえない。

戦後日本は進駐した米軍を好意的に受けいれ、ダグラス・マッカーサーを歓迎すらしたことを知らないのだろうか。東京大空襲において民間人の犠牲を作戦におりこんだカーチス・ルメイに対して日本政府が表彰までおこなったことを知らないのだろうか。たかだか戦後に復讐されなかっただけで南京事件を否認する河村たかしメソッド*8と、kibashiri氏の主張に大差はない。

以前にも紹介したが*9、現実には「軍艦島を世界遺産にする会」の公式サイトにおいてすら、日本で発行された資料集やノンフィクションをひきながら炭鉱夫の過酷な状況を説明している。

端島での強制労働について

社史の記述では、昭和16年12月における端島の在籍労働者数1826名中、坑内夫は1420名とあり、坑内夫の殆どが朝鮮人に置き換えられたと考えれば少なくとも1000名は朝鮮人強制労働者であったと考えられます。

 彼らの入坑は二交代制、1日12時間以上、採炭現場への往復時間を入れると十数時間も拘束られる極限的な重労働であったということです。三交代制になったのは戦後になってからのことです。

端島の岸壁の桟橋に残る石造りの門は一生出られない「地獄門」であり、崎戸島も「鬼ヶ島」といわれ、高島は「白骨島」、3つの島は「1に高島、2に端島、3で崎戸の鬼ヶ島」と言われ、その存在は人々からおそれられた。

そう、kibashiri氏が反発している映画『軍艦島』の描写は、おおむね日本の歴史学で認められている範囲に基盤をおいているのだ。


前後するが、kibashiri氏のブログエントリには、産経新聞による映画『軍艦島』批判記事も紹介され、鄭大均氏の主張をとりあげている。それは未成年の炭鉱夫はいなかったという驚愕の内容だ。

【歴史戦】「軍艦島は地獄島…」韓国映画・絵本が強制徴用の少年炭鉱員を捏造 憤る元島民たち「嘘を暴く」(1/5ページ) - 産経ニュース

首都大学東京名誉教授、鄭大均はシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」の時事論考で「戦時期の日本の炭鉱にあどけない『朝鮮人少年坑夫』など存在しなかったことは関係者なら誰でも知っている」と批判した。

たしかに勤労動員の対象には年齢制限があったが、それは未成年もふくまれるものだった。戦時中に動員範囲を広げたことは、学徒動員という言葉で聞きおぼえがある人も少なくないだろう。

法政大学大原社研_決戦態勢下の労働統制〔日本労働年鑑 特集版 太平洋戦争下の労働者状態015〕

一九四四年二月からは、これまで技能者登録と青壮年国民登録に分かれていた国民登録を一元化し、その拡充整備をはかった。国民職業能力申告令のこの画期的な改正によって、年齢範囲は、男子は一二歳以上六〇歳未満、女子は一二歳以上四〇歳未満(配偶者なきもの)に大拡張され、適用除外者は、特殊申告令の適用を受けるもののほか国民学校在学者および配偶者ある女子などに限られた。この結果、従来適用除外を認められていた技能者・国民労務手帳受有者・徴用中の者・中等学校以上の学校在学者も申告を要することになった。

もちろん日本の歴史学において、未成年の朝鮮人炭鉱夫がいたことは当然視されている。

たとえばNHK戦争証言アーカイブスでも、動員時に未成年だった元朝鮮人炭鉱夫の存在が記録されている。

イ・ウンシクさん|証言|NHK 戦争証言アーカイブス

チェ・オナムさん|証言|NHK 戦争証言アーカイブス

ここでイ・ウンシク氏などは逃亡して捕まった経験も証言している。

偶然、港に出たのですが右も左も分かりません。仕方なく、船に乗せてくれと言うと、韓国へ行く船はないと言われました。そこで さらに逃げるうちに捕まりました。憲兵からは逃れられません。彼らに捕まって私は引き戻されました。それから 言うまでもなくさんざん殴られて、ひどい目に遭いました。あのときは、もう死ぬのを覚悟で抵抗すべきでしたが、殴られて力も出ませんでした。何日も死ぬほど殴られて起き上がれませんでしたが、治ったらまた働かされました。

もうひとりの証言者チェ・オナム氏の兄は逃亡に成功したという。

そして軍艦島においても、規模は別として映画に描かれるような脱出劇が試みられていた。失敗して流れついたと思われる死体を供養する碑も対岸に建立されている。

南越名海難者無縁仏之碑

昭和20年頃、海岸に漂着した死体5、6体を川辺近くに埋葬した。朝鮮人であるか否かについては不明であるが端島 炭鉱の労務者ではないかと思う」という旧高浜村助役の証言がある。

 1986年(昭和61年)6月28日、長崎在日朝鮮人の人権を守る会 代表 岡正治(故人)氏の立会でその発掘が行われた。その結果、 4体の遺体が確認された。収容された遺体は火葬され、南越名海難者無縁仏之碑の下に改葬された。

(長崎在日朝鮮人の人権を守る会資料集「原爆と朝鮮人」参照)

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思うに、こうした史実にもとづく映画は、韓国よりも前に日本で作られるべきだった。何よりも日本が向きあうべき歴史だからだ。

もちろん過去にまったくないわけではない。たとえばアニメ映画『ライヤンツーリーのうた』などは長期間逃亡していた強制連行被害者を題材としていた。

ライヤンツーリーのうた – 虫プロダクション株式会社|アニメーション製作と作品版権管理

しかし現在、日本が過去に向きあえなくなりつつあるからこそ、あらためて作るべき意義はあるだろう。難しい題材だからこそ、良作であれば注目をあびやすいはずだ。

*1:なお、炭鉱夫の抵抗運動そのものは大小さまざま存在しており、軍艦島でも1944年8月にガス事故をきっかけとして約100人の中国人が入坑拒否をしたという。no title 主として日本人が働いていた1897年には700人規模の入坑拒否運動もあったという。さまざまな軍艦島 - 軍艦島を世界遺産にする会 公式 WEB

*2:こちらの記事を機械翻訳した。http://www.kado.net/news/articleView.html?idxno=798343

*3韓国映画「軍艦島」のでたらめ大嘘を検証しておく?いつまで日本は韓国による歴史捏造行為を放置し続けるのか? (1/2)

*4:予告映像の最後にあるロウソクを灯した場面は、現代の韓国におけるロウソクデモを重ねあわせているような印象を受ける。

*5韓国が『シンドラーのリスト』のような慰安婦映画を作れない本当の理由 - 木走日記

*6:kibashiri氏のように加害者側の見解を採用するならば、収容所の所長による娯楽的な殺人を当時の愛人は否認した。『ホロコーストを生きのびて〜シンドラーとユダヤ人 真実の物語〜』 - 法華狼の日記 さらにIMDBには、意図しない複数のミスまで列挙されている。Schindler’s List (1993) - IMDb

*7:外村大氏の研究室サイトがくわしい。朝鮮人強制連行  外村大研究室

*8河村たかしメソッドとは - Apes! Not Monkeys! はてな別館

*9炭鉱に朝鮮人差別がなかったという産経記事が、方城炭鉱の事務員の証言を使っていて、見えている景色のちがいに頭をかかえた - 法華狼の日記