翻訳ミステリーの子供・小路幸也さんの巻 最終回(構成・杉江松恋)
小路幸也さんをお招きしての「週末招待席」もついに最終回になってしまいました。お忙しい中、時間を割いて質問に答えてくださった小路さんには心から感謝します。実はこのインタビュー、直接お会いしてのものではなくて、メールの質疑応答を会話の形に起こしたものなんです。何回もメールのやりとりをしていたので、最後の方には小路さんが昔からのメル友であるかのような錯覚をしてしまったほど。さて、今回の質問ですが……。
――そろそろ時間もなくなってきてしまいました。名残惜しいですが、最後の質問です。小路さんが最近読んでおもしろかった翻訳ミステリーを教えてください。この最近というのは、文字通りいちばん近くで、という意味でも、ここ数年のうち、という意味でも結構です。何か一冊を挙げていただければ。
小路 ううーん、作家になってからすっかり読書ペースが落ちてしまい、なかなかなので、最近、でもないんですけど(笑)、もっとも「これだ!」と唸ったのはイアン・ランキンのリーバス警部シリーズですね。読むことにスレてなおかつ年取ってしまうと、なかなか のめりこむように読むことができなくなるんですけどリーバス警部シリーズにはのっけから引き込まれました。なんでしょう。やっぱりロックだからでしょうか。
――ランキンはローリングストーンズ・マニアで自著のタイトルにも使っているくらいですし。
小路 そうそう、それで思いつきましたけど、やっぱり翻訳ミステリーには音楽が流れてくるんですよね。ロックだったりポップスだったりジャズだったりときにはアイリッシュフォークだったりイギリス民謡だったり。それも翻訳ミステリーを読む魅力のひとつだと思います。そうか、きっと僕はジャズやロックやポップスが流れてくるような日本語の物語を書きたいんですね。また思わぬ自分自身に気付きました。ありがとうございました。
――こちらこそ、本当にありがとうございます。
(プロフィール)
小路幸也 しょうじ・ゆきや
北海道旭川市生れ。札幌市の広告制作会社に14年勤務。退社後執筆活動へ。2003年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で第29回講談社メフィスト賞を受賞し、デビューを果たす。2006年、古書店を経営する大家族が主人公の『東京バンドワゴン』を発表し、ミステリー以外の読者からも注目を集めた。著書多数。北海道江別市在住。
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