自治体法制執務雑感

2016-06-24

[]省令で新旧対照表方式による改正 23:11

kei-zuさん経由

財務省組織規則の一部を改正する省令(平成28年財務省令第57号)
財務省組織規則(平成13年財務省令第1号)の一部を次のように改正する。
次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。
改正改正
経済財政政策調整官、企画官及び専門調査官)企画官及び専門調査官)
第1条 大臣官房に、経済財政政策調整官1人、企画官21人以内(うち1人は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。)及び専門調査官7人以内を置く。第1条 大臣官房に、企画官21人以内(うち1人は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。)及び専門調査官7人以内を置く。
 経済財政政策調整官は、命を受けて、財務省の所掌事務のうち経済財政に関する重要事項についての調整に当たる。[項を加える。]
 [略] [略]
 [略] [略]
備考 表中の[ ]の記載及び対象規定の二重傍線を付した標記部分を除く全体に付した傍線は注記である。

省令とはいえ、国がこのようなことをすると、結構衝撃ですね。その経過については、半鐘さんが記載されており、特にコメントすることもないので、kei-zuさんから振られたことの回答になるか分かりませんが、私の感想を記載することとします。

上記の改正は、改め文方式によると「見出しの改正」→「第1項の改正」→「第2項・第3項の繰下げ」→「第2項の追加」という順番で改正することになるから、それに即して表前の記述をしているということになる。特に「順次」という言葉があるが、これは「見出しの改正」→「第1項の改正」という順番で改正するということだろうし、項の繰下げは、改め文であれば第3項・第2項の順番で行うのだが、一括して行う場合もあるので、単に「改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し」としているのだろう。

このようにある程度改め文方式にも即しており、よく考えられているというのが第一印象である。しかし、これだと改正部分が複雑になれば表前の記述も複雑になることが想定され、新旧対照表方式をとるメリットが薄れるだろう。

内容で気になるのは、まず、第2項の項番号以外の部分は単なる傍線が付されているが、表前の記述にその部分の説明がないので、傍線を付さないこととするか、二重傍線を付すこととすべきだろう。

表前の記述については、「次の表により」という言葉は、「改め」、「移動し」及び「加える」のいずれにもかけたいところであるが、それが上記の文章だとしっくりしない。そうした点を修正すると、次のようになるのではないか。

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)について改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応する対象規定を掲げていないものについて、これを加える。

2016-06-17

[]例規の立案で間違いやすい例(43) 21:30

外国為替取引等の報告に関する省令の一部を改正する省令(平成26年財務省令第48号)
   (略)
第1条第1項中「次の各号に掲げる支払等の区分に応じ、当該各号に定める金額」を「3,000万円」に改め、同項第1号及び第2号を削る。

「同項第1号及び第2号を削る」は、「同項各号を削る」とすべきである。

2016-06-10

[]例規の立案で間違いやすい例(42) 21:19

社債株式等の振替に関する命令の一部を改正する命令(平成26年内閣府・法務省令第2号)
   (略)
目次中「第2章の2 受益証券発行信託の受益権の振替(第10条の2−第10条の8)」を
「第2章の2 地方債等の振替(第10条の2−第10条の11)
 第2章の3 受益証券発行信託の受益権の振替(第10条の12−第10条の18)」
に改める。
 (略)
第2章の2中第10条の8を第10条の18とし、同章中第10条の2から第10条の7までを10条ずつ繰り下げ、同章を第2章の3とし、第2章の次に次の1章を加える。

「……同章中第10条の2から第10条の7までを10条ずつ繰り下げ……」の部分は、あえて「同章中」としなくても、その前の「第2章の2中」がかかっていると考えることもできるのだが、これは条の繰下げの事例であり、改正前の第2章の2に属するかどうか疑義が生じるのは、同章の末条である改正後の第10条の18の規定だけであるから、いずれにしろ「同章中」の表記は不要である。

2016-06-03

[]「以上」「以下」を用いる場合に留意すべきこと 21:40

次の規定は、「内水面漁業の振興に関する法律」第27条の規定である。

(休業の届出)
第27条 指定養殖業の許可を受けた者(以下「許可養殖業者」という。)が農林水産省令で定める期間以上にわたって休業しようとするときは、休業期間を定め、あらかじめ農林水産大臣に届け出なければならない。

「○○以上」とか「○○以下」と書く場合には、つい上記のように書きがちだが、正確には、「……期間以上の期間」とすべきであろう。

正確に書かれている例として、例えば、次の「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」の規定がある。

(定義)
第2条 この法律において「預託等取引契約」とは、次に掲げる契約をいう。
(1) 当事者の一方が相手方に対して、内閣府令で定める期間以上の期間にわたり政令で定める物品(以下「特定商品」という。)の預託(預託を受けた特定商品の返還に代えて金銭その他これに代替する物品を給付する場合を含む。)を受けること(信託の引受けに該当するものを除く。)及び当該預託に関し財産上の利益を供与することを約し、又は特定商品の預託を受けること(信託の引受けに該当するものを除く。)及び当該内閣府令で定める期間以上の期間の経過後一定の価格(一定の方法により定められる価格を含む。)により当該特定商品を買い取ることを約し、相手方がこれに応じて当該特定商品を預託することを約する契約
(2) 当事者の一方が相手方に対して、施設の利用に関する権利であつて政令で定めるもの(以下「施設利用権」という。)を前号の内閣府令で定める期間以上の期間管理すること(信託によるものを除き、当該期間の経過後当該施設利用権に代えて金銭その他これに代替する物品を給付する場合を含む。)及び当該管理に関し財産上の利益を供与することを約し、又は施設利用権を管理すること(信託によるものを除く。)及び当該内閣府令で定める期間以上の期間の経過後一定の価格(一定の方法により定められる価格を含む。)により当該施設利用権を買い取ることを約し、相手方がこれに応じて当該施設利用権を管理させることを約する契約
2〜4 (略)

2016-05-28

[]条項ずれした条の引用と罰則 20:43

kei-zuさん経由

条文の一部に間違いが… 静岡県風営法条例、修正へ
昨年12月に制定され、今年6月23日施行の改正風営法施行条例の条文の一部に誤りが見つかり、静岡県は修正のため今月18日開会の県議会臨時会に同条例改正案を提出することが16日、関係者への取材で分かった。
条例を所管する県警によると、条文4カ所に、引用条文の番号表記がずれる不備があった。深夜酒類飲食店の営業禁止地域に関する条文では、「2条1項1号に定める地域」と規定すべき部分が、「3条1項1号―」とされていた。
修正されないままだと「深夜の酒類飲食店営業県内全域で禁止」などと改正条例の本来の趣旨とは異なる規定になってしまうため、施行日よりも前に正しい条文に差し替える必要に迫られた。
改正条例の条文作成時、一部条項を削除したのに伴う修正を失念したのが原因という。県警担当者が改めて改正条例を精査し、誤りを見つけた。臨時会で可決されれば、当初予定通りの日程で施行される。
風営法施行条例改正は、クラブなどダンス営業規制緩和を規定した改正風営法に伴う対応。一部規定については都道府県条例で具体的な制限を定めるとされている。
静岡新聞5月17日(火)8時8分配信

罰則に関係する規定で引用している条に条項ずれがあった際、その引用を修正していなかった事例だと思われるが、伊藤栄樹ほか『罰則のはなし(2版)』(P23〜)に同様の事例が紹介されている。

それは、元検事総長である同氏が法務省刑事局刑事課長当時、ある地方検察庁で豚の密飼養ケースを検挙した事例である。当時の「へい獣処理場等に関する法律」は第9条第1項で知事が指定する区域で豚等を飼養しようとする者は知事の許可を受けなければならないとされ、同法第10条第3号で「前条第1項に違反した者」に対しては、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金を課することとしていた。しかし、昭和37年同法改正時に第9条と第10条の間に第9条の2が追加されたが、第10条の改正が失念されていた。この場合に同氏は、地方検察庁からの照会に、次の理由から、「前条第1項の規定に違反した者」と規定している第10条第3号の規定は、第9条第1項の許可を受けないで豚を飼養した者を処罰するのに有効と解釈することに疑問があるので、不起訴処分とするほかないと回答したとのことである。

法律の沿革をたどってみれば、第10条第3号の規定は、第9条第1項の規定に違反した者を処罰しようとした規定であることがわかってはくるものの、刑罰を課することについては、わが憲法上の大原則として、罪刑法定主義というのがある。法律の明文なしに人を処罰することはできないし、また、罰則を勝手に類推解釈したり、拡張解釈することはできない。

ちなみに、同法の主管省であった厚生省は、昭和42年になって、同省所管の全く別の法律改正される際、その附則でこっそり改正したとのことである。