自治体法制執務雑感

2017-07-21

[]分かりやすい文書功罪 21:35

文句をつけたくなる公的文書の圧倒的「わかりにくさ」
(略)
昨年出版された「やさしい日本語」(庵功雄著、岩波新書)には、わかりにくい公的文書をわかりやすくした「公的文書の書き換え」の例がいくつか出ています。その一つが、「保育園入園について」の「入園基準」を示した文書です。
公的文書では、入園基準の一つが「昼間に居宅外で労働することを常態としている場合」と書かれていました。
なんだか難しい感じがしますが、これは「昼、いつも外で働いている場合」と書き換えられています。なるほど、ずっとやさしく、わかりやすくなっています。
一読で理解できない“悪文”
次のような「県営住宅入居者募集」の文書も例としてあげられています。
入居者が60歳以上の方又は昭和31年4月1日以前に生まれた方であり、かつ、同居し又は同居しようとする親族のいずれもが60歳以上の方若しくは昭和31年4月1日以前に生まれた方又は18歳未満の方である世帯。
一読ではとても頭に入らない文書です。“悪文”といってもいいでしょう。
本書によれば、「入居者が60歳以上の方又は昭和31年4月1日以前に生まれた方」というのは、「この文書が公開された時点で53歳以上の人」を意味するそうです。したがって、元の文は、以下のようにかなり形をかえて書き換えられています。
県営住宅に住むことができるのは、次の2つの条件に合う世帯だけです。
1 申し込む人(入居者)が53歳以上である
2 いっしょに住む人の中に、18歳から53歳までの人が1人もいない
これならわかります。書き換えにあたっては、まず内容を的確に把握し、それを伝えるための書き方を考えた上で提示されていることがわかります。
毎日新聞<経済プレミア>2017年7月19日

分かりやすい文書にする重要性は言うまでもないのだが、上記の書き換えが「内容を的確に」表現したものとなっているかについては、疑問を感じる。

「昼間に居宅外で労働することを常態としている場合」を「昼、いつも外で働いている場合」に書き換えた場合、「外で」としてしまうと、屋外でないといけないような感じを受ける。

また、「昭和31年4月1日以前に生まれた」者の書き換えは、単に53歳以上としてしまうと、そのボーダーにいる人にとっては、実際に自分が対象になるのかどうかよく分からなくなってしまう。また、「親族」という言葉を無くしてしまうのも、不正確になってしまうだろう。そうすると、上記の条件の部分は、次のようにすることが考えられる。

1 入居者が○年○月○日現在で53歳以上であること。
2 同居の親族が次のいずれかであること。
(1) ○年○月○日現在で53歳以上であること。
(2) 18歳未満であること。

ところで、上記の記事は、続けて次のように記載している。

先の二つの公的文書は「なぜ読み手のことを考えてわかりやすく書かないのか」と、改めて思わざるを得ません。一般公的文書は、なにか権威をもたせようとしているのか、漢字の熟語がたくさん使われ、その分難しくなっています。さらに内容に間違いがなければいい、という考えで作成されているという印象を受けます。その最たるものが法律文書でしょう。
一般人は読んで意味がわからなければ、「すいませんが、教えてもらえないでしょうか」と、役所などに尋ねなければなりません。最初からわかりやすければ必要のないことです。
伝える相手の能力、知識はさまざまです。公的文書はもっとも多くの人を対象とするという点で、わかりやすさを追求しなければならないものです。しかし公的文書に限らず、どういう人が読むのかという想像力を働かせることは、あらゆる文書作成について必要です。その意味で、「やさしい日本語」という考え方をぜひとも学びたいものです。

上記記事の書き換えは、分かりやすさというよりも、読みやすさを重視し、正確性を犠牲にしている面があるため、これであれば役所などに問い合わせる必要がなくなるというものでもないし、かえって読み手が不正確な理解をすることで誤解を生み、トラブルとなるおそれがあるだろう。「内容に間違いがなければいい」という意識は問題があるが、公文書は、小説ではないので、間違いがない、もっと言うと正確に読めば読み間違うことがないということが大前提とならざるを得ない。

「読み手のことを考える」ということは、読み手がどのような人であるかということを考えるということだろう。例えば、上記の「県営住宅入居者募集」であれば、その読み手は県営住宅に入居を考えている者であるから、自分が入居できるかどうかという観点から読むであろう。そうした観点からすると、上記の書き換えでは、人によっては入居できるかどうかの判断に疑義が生じることになる。残念ながら、上記の書き換えは、書き手が分かりやすい文書だと思っているに過ぎないように感じる。

2017-07-13

[]公党の代表の二重国籍問題 21:18

蓮舫代表の戸籍公表宣言民進党分裂のカウントダウンが始まった!? 有田芳生氏vs原口一博氏…あの山口二郎法政大教授も参戦
民進党蓮舫代表が台湾籍と日本国籍の「二重国籍」問題をめぐり日本国籍選択宣言をした証明として戸籍謄本を公開する意向を示したことが、党内外で波紋を広げている。蓮舫氏の判断には「排外主義に屈する」などと反発があがり、謄本の公開を求めた同僚議員を攻撃する動きすら出ているのだ。首相を目指す野党第一党の党首が国籍説明責任を果たすのは当然だが、公開の是非をめぐり党内の分裂が顕在化する皮肉な事態となっている。
戸籍を公開せよとツイッターで書いた民進党国会議員は誰だ。黙せずに『うん』とか『すん』とか言えよ。安倍晋三政権が窮地にある局面で、『敵』に塩を送っている」
民進党有田芳生参院議員は11日のツイッターで、公開を促した同僚議員批判した。有田氏は「公表を求めることは、社会的・歴史的な『いじめ』で間違っている。長年にわたる被差別部落問題などの闘いへの逆行だ」とも書き込んだ。
有田氏の念頭には、ツイッター国籍問題解決を求めた原口一博総務相今井雅人衆院議員があったとみられる。原口氏は9日、「どの国に生まれたかはどうしようもないこと。しかし公人」と書き込んだ。今井氏も「この問題をうやむやにしてきたから、党はピリッとしない」と指摘した。
そもそも今回蓮舫氏が決断したのは、これまで国籍問題の説明が二転三転したうえ、事実関係説明公的書類抜きの記者会見だったことも踏まえ、首相を目指す立場の公人として国民の信頼性を取り戻すための第一歩だったはずだ。
原口氏は12日、早速ツイッターで有田氏らに反論し「蓮舫氏は説明責任を徹底するために決断したのだと思う。議員が果たさなければならないことと一般の方と混同して議論している人も見られる」と指摘した。
議論は場外戦にも発展した。山口二郎法政大教授は11日のツイッターで「これは絶対に譲ってはならない一線だ。公的な活動、発言をするときに、自分は真正な日本人であることをいちいち挙証しなければならないなんて全体主義国家だ」と公開の判断を批判した。
これに対し、二重国籍問題を追及してきた徳島文理大の八幡和郎教授は11日のフェイスブックで「生まれてから現在に至るまでの国籍の異動について正確な情報を公開せずに、政治家であることを許す国が世界中にあるとは思わない」と反論した。
産経ニュース2017年7月12日配信

上記の問題を、法的にどのように考えるべきなのか、法律の規定を確認してみることにする。

国会議員は、日本国民であることが必要であるが(公職選挙法第10条第1項、国会法第109条)、日本国民であることの要件は、国籍法が定めている。ちなみに、国籍法の第1条と第2条の規定は、次のとおりである。

(この法律の目的)
第1条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第2条 子は、次の場合には、日本国民とする。
(1) 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
(2) 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
(3) 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

一般的に日本国民であることの要件は、日本国籍を有することと考えられていると思うが、国籍法上、そのことを明記した規定はない。法律全体の趣旨からそのように考えることになるのだろう。

ところで、蓮舫氏の国籍に関わる問題は、上記記事のとおり二重国籍問題と言われているが、二重国籍の者について、国籍法は次の規定を置いている。

国籍選択
第14条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍選択しなければならない。
2 日本の国籍選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍選択し、かつ、外国の国籍放棄する旨の宣言(以下「選択宣言」という。)をすることによつてする。
第15条  法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第1項に定める期限内に日本の国籍選択をしないものに対して、書面により、国籍選択をすべきことを催告することができる。
2 (略)
3 前2項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつてその期間内に日本の国籍選択をすることができない場合において、その選択をすることができるに至つた時から2週間以内にこれをしたときは、この限りでない。
第16条  選択宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
2〜5 (略)

国籍法第14条第1項の表現からすると、二重国籍の者も、日本国籍を有しているのであれば日本人であることに疑いはない。

そうすると、首相となる者の国籍がどうであるべきかということは議論があるところかもしれないが、我が国議院内閣制をとる以上、それも国会議論すべきことであって、ましてや上記記事の「首相を目指す野党第一党の党首が国籍説明責任を果たすのは当然」という記述はどうかと感じるところである。

また、「生まれてから現在に至るまでの国籍の異動について正確な情報を公開せずに、政治家であることを許す国が世界中にあるとは思わない」という意見については、立法的な措置により解決すべきことだろう。

2017-07-07

[]例規の立案で間違いやすい例(56) 21:16

独立行政法人通則法の一部を改正する法律等の施行に伴う国土交通省関係省令の整備に関する省令平成27年国土交通省令第19号)
独立行政法人都市再生機構に関する省令の一部改正
第23条 独立行政法人都市再生機構に関する省令平成16年国土交通省令第70号)の一部を次のように改正する。
  (略)
第9条第3項中「第12条において」を「以下」に改め、第12条の次に次の1条を加える。
事業報告書の作成)
第12条の2 (略)

追加する条が第9条の次の条ではなく、第12条の次の条なので、第12条の2を加える改め文は、第9条の改め文とは別にすべきだろう。

2017-06-30

[]プロバイダーに対する規制 21:30

ヘイトに実名開示義務」条例改正提案へ
大阪市の吉村洋文市長は28日、特定の民族や人種への差別をあおるヘイトスピーチの抑止策として、インターネット上の動画投稿者の実名取得に向け、市条例改正案を来年2月議会に提案したい考えを明らかにした。有識者の審査会の意見を踏まえ、ヘイトスピーチ認定した投稿者の氏名の開示義務をプロバイダーに課し、氏名公表に向けた方法を検討する。通信の秘密との兼ね合いがあるが「違法なヘイトスピーチ不特定多数に知らしめる人の氏名を保護する必要はない」と述べ、条例の実効性を高める狙いを強調した。
全国で唯一のヘイトスピーチ抑止条例の完全施行から7月1日で1年になるのを前に、毎日新聞のインタビューに応じた。
条例では、ヘイトスピーチの行為者は氏名・団体名を公表できる。条例に基づき投稿動画4件をヘイトスピーチ認定したが、いずれも個人情報保護や通信の秘密との兼ね合いで実名は特定できず、投稿者名での公表にとどまった。吉村市長は、憲法が保障する表現の自由の重要性を前提としながら「ネット社会自由は行き過ぎている。投稿者名の公表でも意義はあると思うが、不十分。一つしかない氏名の公表が、抑止効果と拡散防止措置につながる」と述べた。
審査会の意見を踏まえて今年秋以降に改正条例の骨子案を固め、パブリックコメントなどを経て来年2月議会に提案したい意向憲法上の制約などから審査会が開示義務の実現は無理と判断した場合、国に対応策を要請する考えも示した。
毎日新聞2017年6月29日配信

通信の秘密等の兼ね合いもあると思うが、条例による規制の可否という観点からすると、私は、プロバイダーに対する規制は、「地域における事務」と言うには難しい面があるのではないかと感じている。

2017-06-23

[]様式の目次 21:40

地方公務員等共済組合法施行規程等の一部を改正する命令(平成27年内閣府令・総務省令・文部科学省令第2号)
地方公務員等共済組合法施行規程の一部改正
第1条 地方公務員等共済組合法施行規程(昭和37年総理府令・文部省令・自治省令第1号)の一部を次のように改正する。
  (略)
別紙様式目次を次のように改める。
目次
別紙様式第1号 事業計画
別紙様式第2号〜別紙様式第9号 (略)
別紙様式第10号 削除
別紙様式第11号 削除
別紙様式第12号 削除
別紙様式第13号 削除
別紙様式第14号 組合員証
別紙様式第15号 削除
別紙様式第16号〜別紙様式第20号の2 (略)
別紙様式第21号 削除
別紙様式第21号の2〜別紙様式第28号 (略)
別紙様式第29号 削除
別紙様式第30号 削除
別紙様式第31号・別紙様式第32号 (略)
別紙様式第33号 削除
別紙様式第34号 削除
別紙様式第35号〜別紙様式第47号の2 (略)
  (略)
別紙様式第10号から別紙様式第13号までを削る。
別紙様式第15号を削る。
別紙様式第21号を削る。
別紙様式第29号及び別紙様式第30号を削る。
別紙様式第33号及び別紙様式第34号を削る。

地方公務員等共済組合法施行規程は、様式に目次を付している珍しい省令である。

それはともかく、様式の削りは、目次からすると形骸残し削除とする意図だと思うので、改め文は、「別紙様式第○号を削る。」とはせずに、「別紙様式第○号を次のように改める。」とし、改行して「別紙様式第○号 削除」とすべきだろう。

さらに、複数の様式をまとめて削除するのであれば、目次も「別紙様式第○号及び別紙様式第×号 削除」とすれば足りるだろう。