自治体法制執務雑感

2016-08-19

[]犯罪を申告させる制度 22:02

次の規定は、「東京都暴力団排除条例」の規定である。

(勧告)
第27条 公安委員会は、第24条又は第25条の規定に違反する行為があると認める場合には、当該行為を行った者に対し、第24条又は第25条の規定に違反する行為が行われることを防止するために必要な措置をとるよう勧告をすることができる。
(適用除外)
第28条 第24条第3項又は第25条第2項の規定に違反する行為を行った者が、前条の規定により公安委員会が勧告を行う前に、公安委員会に対し、当該行為に係る事実の報告又は資料の提出を行い、かつ、将来にわたってそれぞれ違反する行為の態様に応じて第24条第3項又は第25条第2項の規定に違反する行為を行わない旨の書面を提出した場合には、前条の規定を適用しない。

この第28条の規定に関し、櫻井敬子『行政法講座2』(P106)には、次のように記載されている。

これは、行政手法としては、独占禁止法におけるリーニエンシー(課徴金減免制度)と発想を共通にするものであり、現代的な実効性確保の手段を条例レベルで工夫したものとして評価できる。東京都の「条例力」の高さを窺わせる一例といえる。

この第28条の規定の意味は、違反行為を行った者にその申告をさせることにより、その行為の発見を容易にするという意図のほか、警視庁東京都暴力団排除条例Q&A」には、「適用除外の手続が完了となった場合には、条例上の禁止行為違反として責任を問われることはありませんので、是非ともこの制度を活用して、暴力団との関係遮断を図ってください。」と記載されており、そうした行為の誘因とすることも意図しているのであろう。

しかし、法技術的には、「勧告」は所詮行政指導であり、第28条に規定しているような場合には、この規定がなくとも勧告をしなくてもいいわけであり、アナウンス効果を期待する程度のものに過ぎないのではないかと感じる。

2016-08-12

[]告示で新旧対照表方式による改正 21:58

kei-zuさん経由*1

平成28年内閣府告示第233号>*2

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改める。
改正改正
施設の名称所在地施設の名称所在地
[略] [同上]
防衛省防衛研究所戦史研究センター(史料室)東京都新宿区市ヶ谷本村町五の一防衛省防衛研究所戦史研究センター(史料室)東京都目黒区中目黒二の二の一
[略] [同上]
備考 表中の[ ]の記載は注記である。

改正が1か所であれば、表前の記述は、厳密に言えば「これに順次対応する」という文言は不要だろう。

平成28年内閣府告示第234号>

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改める。
改正改正
施設の名称所在地施設の名称所在地
[略] [同上]
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター図書室茨城県つくば市観音台三の一の三国立研究開発法人農業環境技術研究所図書館茨城県つくば市観音台三の一の三
国立研究開発法人防災科学技術研究所自然災害情報室茨城県つくば市天王台三の一国立研究開発法人防災科学技術研究所社会防災システム研究領域アウトリーチ・国際研究推進センター自然災害情報室茨城県つくば市天王台三の一
[略] [同上]
備考 表中の[ ]の記載は注記である。

これでもよいのだが、改め文方式であれば、特に「…改め」といった文言を挟むことなく、「……『国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター図書室』を『国立研究開発法人農業環境技術研究所図書館』に、『国立研究開発法人防災科学技術研究所自然災害情報室』を『国立研究開発法人防災科学技術研究所社会防災システム研究領域アウトリーチ・国際研究推進センター自然災害情報室』に改める」と一気に書くのであるから、表前の記述に「順次」という文言は不要だろう。

ただし、このように書き分けていくことによって、どんどん複雑になっていく。悩ましいところである。

*1:今回取り上げる告示については、当該記事のコメント欄における半鐘さんとkei-zuさんのやり取りで語り尽くされている感があるが、私自身のメモとして取り上げておく。

*2:一部告示にない罫線を付している箇所がある。平成28年内閣府告示第234号も同じ。

2016-08-05

[]例規の立案で間違いやすい例(44) 21:57

海岸法施行規則及び海岸保全施設の技術上の基準を定める省令の一部を改正する省令(平成26年農林水産省令国土交通省令第2号)
(海岸法施行規則の一部改正
第1条 海岸法施行規則(昭和31年農林省令・運輸省令・建設省令第1号)の一部を次のように改正する。
第1条の2を第1条の4とし、第1条中……に改め、同条を第1条の3とし、同条の前に次の2条を加える。
第1条・第1条の2 (略)
第1条の4の次に次の1条を加える。
第1条の5 (略)

第1条の4は改正後のそれであるから、「第1条の4の次に次の1条を加える」という特定の仕方は適切でないことになる。

「第1条中……に改め、同条を第1条の3とし、同条の次に次の1条を加える。」として「第1条の4」を加えた後、「第1条及び第1条の2として次の2条を加える。」として「第1条・第1条の2」を加えればよいことになる。

先に「第1条・第1条の2」を加えるのであれば、「第1条の4」の追加は、「第2条の前に次の1条を加える。」とすることになろう。

2016-07-30

[]「改正規定」の一部を特定する「うち」 19:49

2016年7月8日付け記事「『同改正規定』はどこまで同じなのか」に対し、半鐘さんから次のような意見をいただきました。

……「うち」を使う対象は、複数の規定の群れ、なのではないかと思っています。
「等改正」や「整備法」では、一の条≒改正法ですので、大体の場合、改正規定が複数あります。改正規定が一つの場合でも、改正の柱書があるので、規定は複数です。
そうした仮説からすると、実例の「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律の一部改正」における「第6章の次に6章を加える改正規定」は、複数の規定から成るので、「うち」を使うところと言えますが、検討例の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正」における「次のように加える改正規定」は、一応、一つの改正規定なので、「うち」を使わないところなのではないかと思います。そのため、かっこ書で分けることによったのではないか、と思うわけです。

私が上記記事で記載した結論は、単純に半鐘さんが追記されているように、「中」と「うち」の関係を、「及び・並びに」あるいは「又は・若しくは」の関係と同じように考えてのものです。私は、一部改正で用いられているやり方については、それがルールだと割り切って考えることが多く、そこで用いられている文言の意味もあまり深く考えないのですが、「うち」という語句の意味を考えた場合、気持ち悪さを指摘されるとおっしゃるとおりだと言わざるを得ません。

厳密に考えると、「……改正規定のうちA中」とした場合、「A」は改正規定でなければいけないわけで、その意味では、平成18年法律第66号も平成26年法律第28号の代替案も改正規定でないことは同様だと思います。また、「A」の部分が「規定」でもいいと考えるのであれば、平成26年法律第28号の代替案も、表の項を一規定と考えることも可能だと思います。

私は、たとえ1つの改正規定であっても、複数のそれが組み合わされたものと考えることもできるように思います。つまり、平成26年法律第28号も表に複数の項を加える改正であるため、例えば1項から成るある条に2項を加える場合、改正規定は1つの「第○条に次の2項を加える」というものであるが、分解すると第2項を加える改正規定と第3項を加える改正規定が組み合わさったものと考えることができると思いますので、表の項の場合も同様に考えてよいように思います。

あとは、平成26年法律第28号、あるいは平成18年法律第66号の立案に当たり、どれだけ精緻に検討されたかということになりますが、改正規定の引用は、案外ラフなところがありますので、所詮その程度のことなのかもしれませんが。

半鐘半鐘 2016/07/31 21:21 いろいろとお騒がせしました。m(_ _)m
さて、一の改正規定も分解しうるのではないか、という点については、確かに、移動し・加える改正規定などについて分解される例があるので、なくもないかな、という気はします。私自身は分解しないほうが好みですが、規定の書かれ方にも移り変わりがありますし、あまりこだわるべきではないのかもしれません。今後ともよろしくお願いします。

hoti-akhoti-ak 2016/08/01 21:05 コメントありがとうございます。
意見をいただくと、いろいろと気付くことがあり、刺激になります。
今後ともよろしくお願いします。

2016-07-22

[]「同法」とできないだろうか 22:38

会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第91号)
水産業協同組合法の一部改正に伴う経過措置)
第80条 この法律の施行の際現に前条の規定による改正前の水産業協同組合法以下この項において「旧水協法」という。)第34条第11項(旧水協法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。)に規定する者に該当する者を監事に選任している水産業協同組合(漁業生産組合を除く。)の監事については、この法律の施行後最初に終了する事業年度に関する通常総会の終結の時までは、前条の規定による改正後の水産業協同組合法以下この項において「新水協法」という。)第34条第11項(新水協法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 (略)

上記規定では、法律略称が2か所置かれているが、2か所ともその略称を用いているのは、1か所だけである。そのため、これを「同法」と置き換えることができないかどうかであるが、いずれも括弧書きの中で用いられているため、括弧書きがある場合の「同法」の用法(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』P190参照)、つまり、「同法」が指している法律が何であるか疑義を生じるかどうかによって決めればよいであろう。

そうすると、まず「旧水協法第92条第3項……」の部分は、その直前に法律名を引用している部分は1か所であるから、「同法」としても疑義が生じることはなく、したがって、「旧水協法」という略称は、必要ない。

次に「新水協法第92条第3項……」の部分であるが、これは括弧内で使われているので、「同法」とした場合、直前の括弧内の法律名を指すことになるのではないかと考えられなくもないが、これは疑義が生じる例として挙げられるその逆の場合とは違うので、ここも「同法」として問題はないだろう。

したがって、上記の規定は、2か所とも略称を置く必要はないということになる。