自治体法制執務雑感

2017-01-13

[]天皇陛下生前退位(その2) 21:32

典範付則に特別法根拠 論点整理に併記
安倍晋三首相私的諮問機関天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は23日に公表する論点整理で、天皇陛下に限り退位を認める特別立法と並び、特別立法での例外的な退位を認める根拠規定を皇室典範の付則に書き込む案も併記する方針を固めた。野党などに典範改正による退位の制度化を求める声があることを踏まえ、特別立法に慎重な意見にも配慮する。
憲法2条は皇位継承について「国会の議決した皇室典範の定めるところにより」継承すると記している。このため特別立法での対応は憲法違反の疑いがあるとの指摘もある。典範の付則に「天皇は特別法の定めるところにより退位できる」などの規定を明記すれば、憲法違反との指摘を払拭できるという考えだ。
有識者会議専門家ヒアリングでは、保守派の学者らが制度の安定性の観点から退位反対論を主張した。特別立法での対応は、今回限りの特例として退位を認めることで反対論に配慮する。一方で、典範の付則に退位の根拠規定を設ければ、典範改正に一部着手したことになり野党など制度化を求める声にも配慮できる。
政府は、単独の特別立法で対応しても憲法違反には当たらないとの考えを示している。横畠裕介内閣法制局長官2016年9月の国会答弁で、憲法2条の趣旨について「国会の議決した皇室典範、すなわち法律で適切に定めるべきだと規定している」と述べた。現在の典範が一般法律と同じ位置づけとなっていることを踏まえた解釈をすべきだとした。このため典範の付則に根拠規定を置く対応は、法律論ではなく保守派野党の顔を立てる政治的な妥協案の側面が強い。
 (以下略)
毎日新聞2017年1月10日 配信

天皇陛下生前退位については、2016年8月26日付け記事で触れたところだが、その記事にも記載したとおり、皇室典範の附則に根拠を書くのであれば、あくまでも現在の天皇陛下に関することとして記載すべきである。

その場合、皇室典範第4条の特例として書くことになるだろうが、皇室典範には「退位」という用語はないので、次のような規定になるのではないかと思うがどうだろうか。

第4条の規定にかかわらず、別に法律で定めるところにより、皇太子徳仁親王が、別に法律で定める日に皇位継承する。

(参照条文)

皇室典範
第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。

2017-01-06

[]謹賀新年 21:35

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

[]一部改正法令改正における疑問 21:35

児童福祉法施行令の一部を改正する政令平成26年政令第357号)
附 則
 (児童福祉法施行令等の一部を改正する政令の一部改正
第14条 児童福祉法施行令等の一部を改正する政令平成26年政令第300号)の一部を次のように改正する。
  (略)
第1条中児童福祉法施行令第27条の11第1項の改正規定を次のように改める。
第27条の11第1項第1号中「 、第11号から第13号まで、第16号及び第18号」を「及び第11号から第19号まで」に改める。
第1条中児童福祉法施行令第27条の11第2項の改正規定を次のように改める。
第27条の11第2項第2号中「(第14号、第15号及び第17号を除く。)」を削る。

上記で改正している平成26年政令第300号の関係部分は、次のとおりである。

第27条の11第1項中「指定障害児入所施設」の下に「(障害児入所医療(法第24条の20第1項に規定する障害児入所医療をいう。次項及び第27条の13第2項において同じ。)を提供するものを除く。)」を加え、同項各号を次のように改める。
(1) 第25条の7第1項各号に掲げる法律
(2) 第25条の12第1項各号(第3号を除く。)に掲げる法律
第27条の11第2項中「前項に掲げるもののほか、」及び「(法第24条の20第1項に規定する障害児入所医療をいう。第27条の13第2項において同じ。)」を削り、同項各号を次のように改める。
(1) 健康保険法
(2) 第25条の7第1項各号及び第2項各号(第8号を除く。)に掲げる法律
(3) 第25条の12第1項各号(第3号を除く。)に掲げる法律

平成26年政令第300号における第27条の11第1項の改正規定と同条第2項の改正規定が別の段落になっているため、平成26年政令第357号は上記のような改正規定としたのであろうが、平成26年政令第357号による改正後のそれぞれの改正規定を見ると、通常であれば別の段落とはせずに、一文で書くべき内容である。

したがって、平成26年政令第357号は、次のようにすべきではないだろうか。

第1条中児童福祉法施行令第27条の11第1項の改正規定及び同条第2項の改正規定を次のように改める。
第27条の11第1項第1号中「、第11号から第13号まで、第16号及び第18号」を「及び第11号から第19号まで」に改め、同条第2項第2号中「(第14号、第15号及び第17号を除く。)」を削る。

2016-12-29

[]論理的な文章 15:12

最近、マスコミ関係者が執筆する書籍で、その論理が気になる文章を2つ程目にしたので、それを取り上げる。

1つ目は、少し前に出版された書籍になるが、日本経済新聞社編集の『官僚 軋む巨大権力』であり、同書(P403〜)には、1950年代後半、できるだけ多くの乗客を乗せるため街中を猛スピードで疾走する「神風タクシー」が社会問題となったことについて、次のように記載している。

58年1月30日には、東大赤門前で東大工学部4年生で東大サッカー部主将を務める五十嵐洋文さんがタクシーにはねられた。運転手が急スピードで前のバスを追い越そうとしてハンドルを切り損ねたのが原因だった。当時の新聞はこの事故を詳しく報じ、社会的な神風タクシー追放ムードを高めるのに一役買っている。
何が神風タクシーを生んだのだろうか。55年が大きな転換点だった。7月、運輸省は不況下の運賃値下げ競争に苦しんでいたタクシー業界の要望を入れ、主要都市での新規免許・増車をストップする自動車局長通達を出している。現在のタクシー行政の柱である同一地域・同一運賃制度の導入が文書で正式に示されたのも同じ月だった。
こうした規制強化の結果、値下げ競争に苦しんでいたタクシー業界は一息ついたが、景気が回復するにつれ急増する需要に供給が追いつかない事態が生じた。運賃は一定なので、収入増を図るためには多くの顧客をこなす必要がある。これが厳しいノルマを生み、無謀なタクシーを街にあふれさせた。
運輸省は58年6月、世論に押される形で無謀運転の原因とみられたノルマの禁止や仮眠施設の設置を義務付ける自動車運送事業等運輸規則の一部改正を公布施行した。規制政策の失敗が生んだ不都合を新たな規制強化で乗り切ろうとしたわけだが、「本質的な解決策にはならなかった」(一橋大学の山内弘隆助教授)。
神風タクシー問題が鎮静化したのは、59年9月に運輸省個人タクシー営業を認可し、需要に見合った供給が生まれてから。規制当局にとって皮肉なことに、問題解決の決め手となったのは規制緩和だったわけだ。

上記の文章では、神風タクシーを生んだ原因は、需要に供給が追い付かない状況で、運賃が一定だから、収入増を図るため厳しいノルマを生んだこととしている。結果として、運輸省個人タクシー営業の認可を始めた時期に問題が鎮静化したことから、一見正しい分析をしているように思えるが、この文章では、需要に見合った供給が生まれると、経営者はことさら収入増を図ろうとしなくなるということを言わなければ論理的とは言えないだろう。運輸省は、ノルマの禁止の外、仮眠施設の設置を義務付けたのであるから、当時問題となっていた行為は、暴走行為だけではなかったのではないだろうか。それなのに、その暴走行為だけを取り上げているため、このような文章になっているのではないかと感じる。

2つ目は、産経新聞論説委員阿比留瑠比氏の著書『偏向ざんまい GHQの魔法が解けない人たち』であり、同書(P44〜)には、昨年成立した安保法制に関し、次のように記載している。

……憲法学者である小林節慶大名誉教授は6月の衆院平和安全法制特別委員会で、学者の立場を次のように説明している。
「(われわれは)ただ条文の客観的意味はこうなんだという神学論争を言い伝える立場にいる」 「神学でいくとまずいんだ、ではもとから変えていこうと政治家が判断することはあると思う」
「われわれは字面に拘泥するのが仕事で、それが現実の政治家の必要とぶつかったら、それはそちらで調整してください。われわれに決定権があるなんてさらさら思っていない」
もっともな話であり、率直な表明だと感じる。問題は、学者の「神学論争」を神の啓示であるかのように絶対視し、それに逆らうことは一切まかりならんとばかりに報じてきたメディアや、政治家として現実に向き合う責務を放棄して学者の意見に頼った一部野党議員の方にあるのだろう。
6月の衆院憲法調査会に出席した3人の憲法学者が、そろって安保関連法案憲法違反だとの意見を示した後の国会の論戦や多くのメディアの論調は、今振り返っても異様だった。
日本の外の世界でのさまざまな動きや厳しい現実には目をつむり、ひたすら内向きで不毛な異端審問のような様相を呈していた。

上記の文章は、結局、学者が何を言おうと、実際に起こっている問題に対処するためには何をやってもいいのだと言っていることになる。少なくとも、著者が言う「現実」を具体的に説明した上で、安保法制を違憲とする意見に対する法律論的な反論をしてもらわないと、論理も何もなく、単なる見解の相違と言っているのに過ぎないことになる。

2016-12-22

[]年齢における「以下」 21:49

「以下」と「未満」の説明の際に年齢を用いていることが多いと思うが、例えば18歳以下という場合、18歳に達してから1月を経過した人は、これに含まれるだろうか。

通常、このような人の年齢は、あくまでも「18歳」であって、「18歳1月」とは言わない。「年齢のとなえ方に関する法律」でも、その第1項で「この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律明治35年法律第50号)の規定により算定した年数(1年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない」とされている。

しかし、佐藤達夫「未満の波紋」『法律のミステーク』(P13〜)には、ある保険の約款に「年齢6年以上60年以下」という記載があり、この「60年以下」というのは、ちょうど満60歳に達した人までを含む意味で、満60歳の誕生日を過ぎた人までを含むつもりはなかったという記述がある。

そして、同随筆(前掲書P16〜)は、次のように記載している。

このように年齢の問題に関しては“以下”と“未満”の差異について少くとも疑問のあることは確かであるから、“何歳以下”というのはできるだけ避けた方が賢明であろう。私の知つている範囲の立法例では、年齢に関する限りすべて“以上”と“未満”を使い、“以下”を用いたものはないように思うが、それもこういう理由から来ているものと察せられる。

ちなみに、現在の法律における用例を調べてみると、8法律12件において年齢に「以下」が用いられている。しかし、年齢に関し「以下」を用いるのは避けた方が無難ということであろう。

2016-12-16

[]例規の立案で間違いやすい例(49) 21:44

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行規則の一部を改正する省令平成26年環境省令第17号)
 (略)
第11条第1項を削り、同条第2項中……を加え、同項を同条第1項とし、同条第4項中……に改め、同項第2号ハを次のように改める。
ハ (略)
第11条第4項第2号に次のように加える。
ニ・ホ (略)
第11条第4項を同条第8項とし、同条第3項を次のように改め、同項を同条第4項とする。
4 (略)
第11条第1項の次に次の2項を加える。
2・3 (略)
第11条第4項の次に次の3項を加える。
5〜7 (略)
第11条に次の1項を加える。
9 (略)

ここまでくると、よくこんな改め文を書けるなと別の意味で感心してしまう。要は、4項からなる条文のうち、残す必要があるのは、第2項と第4項だけで、改正後はそれぞれ第1項と第8項になるということである。

実際には、次のような改め文となる。

第11条第1項を削り、同条第2項中……を加え、同項を同条第1項とし、同項の次に次の1項を加える。
2 (略)
第11条第3項を次のように改める。
3 (略)
第11条第4項中……に改め、同項第2号ハを次のように改める。
ハ (略)
第11条第4項第2号に次のように加える。
ニ・ホ (略)
第11条第4項を同条第8項とし、同条第3項の次に次の3条を加える。
4〜7 (略)
第11条に次の1項を加える。
9 (略)