自治体法制執務雑感

2016-07-22

[]「同法」とできないだろうか 22:38

会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第91号)
水産業協同組合法の一部改正に伴う経過措置)
第80条 この法律の施行の際現に前条の規定による改正前の水産業協同組合法以下この項において「旧水協法」という。)第34条第11項(旧水協法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。)に規定する者に該当する者を監事に選任している水産業協同組合(漁業生産組合を除く。)の監事については、この法律の施行後最初に終了する事業年度に関する通常総会の終結の時までは、前条の規定による改正後の水産業協同組合法以下この項において「新水協法」という。)第34条第11項(新水協法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 (略)

上記規定では、法律略称が2か所置かれているが、2か所ともその略称を用いているのは、1か所だけである。そのため、これを「同法」と置き換えることができないかどうかであるが、いずれも括弧書きの中で用いられているため、括弧書きがある場合の「同法」の用法(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』P190参照)、つまり、「同法」が指している法律が何であるか疑義を生じるかどうかによって決めればよいであろう。

そうすると、まず「旧水協法第92条第3項……」の部分は、その直前に法律名を引用している部分は1か所であるから、「同法」としても疑義が生じることはなく、したがって、「旧水協法」という略称は、必要ない。

次に「新水協法第92条第3項……」の部分であるが、これは括弧内で使われているので、「同法」とした場合、直前の括弧内の法律名を指すことになるのではないかと考えられなくもないが、これは疑義が生じる例として挙げられるその逆の場合とは違うので、ここも「同法」として問題はないだろう。

したがって、上記の規定は、2か所とも略称を置く必要はないということになる。

2016-07-15

[]公表制度を用いる意義に関するメモ 21:53

平成28年1月に公布された「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」は、ヘイトスピーチが行われた事実を公表することとしているが、この公表制度について、宇那木正寛「自治体職員のための政策法務入門第20回」『自治体法務研究NO.45』(P104)には次のように記載されており、公表制度を用いる際の考え方として参考になることがあると思われるので、ここにメモしておく。

こうしたこの公表制度は、一般的には、制裁的な手法であると解されるでしょうが、見方を変えると、ヘイトスピーチは、社会的に是認されるものではないということを、被害者に代わって大阪市という公的主体が宣言するという手法であるとも解されます。すなわち、ヘイトスピーチを刑罰法規をもって社会から完全に排除しようとするのではなく、大阪市という公的主体自らが公表という言論措置によって、ヘイトスピーチ非難するという教育的、啓発的効果も兼ね備えた手法であるということができます。

2016-07-08

[]「同改正規定」はどこまで同じなのか 21:19

次の「次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律(平成26年法律第28号)」附則第17条は、一部改正法令改正した規定である。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正
第17条 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律平成25年法律第28号)の一部を次のように改正する。
   (略)
第19条のうち、住民基本台帳法別表第2の5の項の次に次のように加える改正規定(同表の5の7の項に係る部分に限る。)中……に改め、改正規定(同表の5の8の項に係る部分に限る。)中……に改め、改正規定(同表の5の9の項に係る部分に限る。)中……に改める。

上記の規定は、「同改正規定」という文言を2か所用いているが、「同改正規定」とすると、「(同表の5の7の項に係る部分に限る。)」の部分も読み込んでしまうことになるのではないだろうか。

「同改正規定」とするのであれば、「……改正規定(……に係る部分に限る。)」とはせずに、「……改正規定のうち……中」とすべきではないだろうか。実際、次の「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第66号)」第196条のような規定もある。

株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律の一部改正
第196条 株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律平成16年法律第88号)の一部を次のように改正する。
第1条のうち、社債等の振替に関する法律目次の改正規定中……に改め、第6章の次に6章を加える改正規定のうち第226条第1項中……に改め、同改正規定のうち第227条第1項中……に改め、同改正規定のうち第227条第2項中……に改め、同改正規定のうち第228条第1項の表を次のように改める。
 (表略)

そうすると、上記の平成26年法律第28号附則第17条は、次のようになるだろう。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正
第17条 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律平成25年法律第28号)の一部を次のように改正する。
   (略)
第19条のうち、住民基本台帳法別表第2の5の項の次に次のように加える改正規定のうち同表の5の7の項中……に改め、同改正規定のうち同表の5の8の項中……に改め、同改正規定のうち同表の5の9の項中……に改める。

半鐘半鐘 2016/07/23 16:16 お題の疑義については同意するところです。なのですが、代案については異見を述べてみましたので、御覧ください。
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-1019.html
どうなのでしょうね。

2016-07-01

[]高齢者給与抑制措置 21:09

次の規定は、平成22年法律第53号により規定された「一般職職員の給与に関する法律」附則第8項の規定である。

8 平成30年3月31日までの間、職員(次の表の俸給表欄に掲げる俸給表の適用を受ける職員(再任用職員を除く。)のうち、その職務の級が次の表の職務の級欄に掲げる職務の級以上である者であつてその号俸がその職務の級における最低の号俸でないものに限る。以下この項及び次項において「特定職員」という。)に対する次に掲げる給与の支給に当たつては、当該特定職員が55歳に達した日後における最初の4月1日(特定職員以外の者が55歳に達した日後における最初の4月1日後に特定職員となつた場合にあつては、特定職員となつた日)以後、次の各号に掲げる給与の額から、それぞれ当該各号に定める額に相当する額を減ずる。
(1) 俸給月額 当該特定職員の俸給月額(当該特定職員が附則第6項の規定の適用を受ける者である場合にあつては、同項本文の規定により半額を減ぜられた俸給月額。以下同じ。)に100分の1.5を乗じて得た額(当該特定職員の俸給月額に100分の98.5を乗じて得た額が、当該特定職員の属する職務の級における最低の号俸の俸給月額(当該特定職員が同項の規定の適用を受ける者である場合にあつては、当該最低の号俸の俸給月額からその半額を減じた額。以下この号及び次号において同じ。)に達しない場合(以下この項、附則第10項及び第11項において「最低号俸に達しない場合」という。)にあつては、当該特定職員の俸給月額から当該特定職員の属する職務の級における最低の号俸の俸給月額を減じた額(以下この項及び附則第10項において「俸給月額減額基礎額」という。))
(2)〜(8) (略)
俸給表職務の級
行政職俸給表(一)6級
専門行政職俸給表4級
税務職俸給表6級
公安職俸給表(一)7級
公安職俸給表(二)6級
海事職俸給表(一)6級
教育職俸給表(一)4級
研究職俸給表5級
医療職俸給表(二)6級
医療職俸給表(三)6級
福祉職俸給表5級
専門スタッフ職俸給表1級

この規定の原型は、平成22年11月30日に公布された平成22年法律第53号により規定されているが、これは、平成22年の人事院勧告で、高齢層、特に50歳台後半層の官民の給与差が拡大している傾向にあることを踏まえ、その給与抑制措置を講ずることとされたことを受けて規定されたものである。

自治体において、この規定にならって措置を講ずることとした場合、基本的には幹部職員であっても給与抑制措置の対象となるが、国家公務員の場合、指定職俸給表(「一般職職員の給与に関する法律」別表第11)が適用される職員、つまり本省であれば概ね審議官級以上の職員は、給与抑制措置が講じられることはない。

これは、指定職俸給表の適用される職員は、民間で言えば役員ということであり、それも一つの考え方ではあろう。

しかし、高橋洋一『官愚の国』(P99)によると、第一次安倍政権福田政権における公務員制度改革において、事務次官が「私も一労働者でございます」と宣ったとのことである。この矛盾をどう言ったらいいのだろうか。

2016-06-24

[]省令で新旧対照表方式による改正 23:11

kei-zuさん経由

財務省組織規則の一部を改正する省令(平成28年財務省令第57号)
財務省組織規則(平成13年財務省令第1号)の一部を次のように改正する。
次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。
改正改正
経済財政政策調整官、企画官及び専門調査官)企画官及び専門調査官)
第1条 大臣官房に、経済財政政策調整官1人、企画官21人以内(うち1人は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。)及び専門調査官7人以内を置く。第1条 大臣官房に、企画官21人以内(うち1人は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。)及び専門調査官7人以内を置く。
 経済財政政策調整官は、命を受けて、財務省の所掌事務のうち経済財政に関する重要事項についての調整に当たる。[項を加える。]
 [略] [略]
 [略] [略]
備考 表中の[ ]の記載及び対象規定の二重傍線を付した標記部分を除く全体に付した傍線は注記である。

省令とはいえ、国がこのようなことをすると、結構衝撃ですね。その経過については、半鐘さんが記載されており、特にコメントすることもないので、kei-zuさんから振られたことの回答になるか分かりませんが、私の感想を記載することとします。

上記の改正は、改め文方式によると「見出しの改正」→「第1項の改正」→「第2項・第3項の繰下げ」→「第2項の追加」という順番で改正することになるから、それに即して表前の記述をしているということになる。特に「順次」という言葉があるが、これは「見出しの改正」→「第1項の改正」という順番で改正するということだろうし、項の繰下げは、改め文であれば第3項・第2項の順番で行うのだが、一括して行う場合もあるので、単に「改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し」としているのだろう。

このようにある程度改め文方式にも即しており、よく考えられているというのが第一印象である。しかし、これだと改正部分が複雑になれば表前の記述も複雑になることが想定され、新旧対照表方式をとるメリットが薄れるだろう。

内容で気になるのは、まず、第2項の項番号以外の部分は単なる傍線が付されているが、表前の記述にその部分の説明がないので、傍線を付さないこととするか、二重傍線を付すこととすべきだろう。

表前の記述については、「次の表により」という言葉は、「改め」、「移動し」及び「加える」のいずれにもかけたいところであるが、それが上記の文章だとしっくりしない。そうした点を修正すると、次のようになるのではないか。

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)について改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応する対象規定を掲げていないものについて、これを加える。