自治体法制執務雑感

2016-09-23

[]例規の立案で間違いやすい例(46) 20:54

外国為替取引等の報告に関する省令の一部を改正する省令平成26年財務省令第48号)
   (略)
第1条第1項中「次の各号に掲げる支払等の区分に応じ、当該各号に定める金額」を「3千万円」に改め、同項第1号及び第2号を削る。

これは、各号の全てを削るのだから、「同項各号を削る」で足りるだろう。

2016-09-16

[]各号列記事項の並べ方 22:36

次の規定は、都市計画法第10条の3の規定である。

(遊休土地転換利用促進地区)
第10条の3 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる条件に該当する土地の区域について、遊休土地転換利用促進地区を定めることができる。
(1) 当該区域内の土地が、相当期間にわたり住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の用途に供されていないことその他の政令で定める要件に該当していること。
(2) 当該区域内の土地が前号の要件に該当していることが、当該区域及びその周辺の地域における計画的な土地利用の増進を図る上で著しく支障となつていること。
(3) 当該区域内の土地の有効かつ適切な利用を促進することが、当該都市の機能の増進に寄与すること。
(4) おおむね5千平方メートル以上の規模の区域であること。
(5) 当該区域が市街化区域内にあること。
2 (略)

この規定について、碓井光明教授は、『都市行政法精義?』(P128)に、次のように記載している。

法律の定め方には、一定のルールがあるのかも知れないが、なぜ(5)(第10条の3第1項第5号のことである)*1を冒頭に掲げないのか、立法技術に疎い筆者には疑問の点である。

各号列記する事項をどのような順番で並べるかについては、一般的なルールのようなものはなく、その規定なりの考え方によっていると思うが、都市計画法第10条の3第1項の規定については、実質的な要件を先に書きたかったということではないかと感じる。

なお、私は、同項第5号の要件は、各号で書くのでなく、同項の柱書きで「……次に掲げる条件に該当する土地の区域(市街化区域内にあるものに限る。)について……」と書いてもいいのではないかと思う。

*1:筆者注記

2016-09-09

[]例規の立案で間違いやすい例(45) 21:57

次の命令は、第10条の2から第10条の8までの条文で構成されている第2章の2について、当該条文を第10条の12から第10条の18までに繰り下げ、同章を第2章の3とする改正である。

社債株式等の振替に関する命令の一部を改正する命令(平成26年内閣府令・法務省令第2号)
   (略)
第2章の2中第10条の8を第10条の18とし、同章中第10条の2から第10条の7までを10条ずつ繰り下げ、同章を第2章の3とし、第2章の次に次の1章を加える。
   (略)

上記の改正の場合、第2章の2(改正後の第2章の3)に属するかどうか疑義が生じるのは、改正後の第10条の18であり、他の条文は、その疑義は生じないと考えていいだろう。つまり、「第2章の2中第10条の8を第10条の18とし、第10条の2から第10条の7までを10条ずつ繰り下げ、……」で足りる。

上記のように考えなくても、「第2章の2中」が「第10条の2から第10条の7まで10条ずつ繰り下げ」にかかると考えることも可能である。

2016-09-02

[]地方事務所の所掌事務が設置条例の規定事項とされていない理由 21:48

自治体が事務を分掌するため行政機関を設置する場合には、条例を制定する必要があるが(地方自治法第155条第1項、第156条第1項)、当該条例で定める事項は、位置、名称及び所管区域であり(地方自治法第155条第2項、第156条第2項)、所掌事務は、当該事項とされていない。しかし、事務を分掌するから行政機関を設置するのだから、その設置条例には当然当該事務を規定すべきであるが、そうされていないのはなぜだろうか。この点について、今回は地方自治法第155条の規定による地方事務所について取り上げてみることにする。

地方事務所は、1942年(昭和17年)7月、戦争遂行のための戦時動員に係る行政を扱うために開庁したものであり(森邊成一「地方事務所の設置と再編―郡制廃止後の郡域行政問題」『広島法学23巻4号』(P55))、国主導で設置されたものである。そして、地方事務所の所掌事務は、各府県の訓令で「地方事務所処務規程」を定め、同じく訓令の「地方事務所長処務規程」又は「地方事務所長代決事項」によっていた(森邊・前掲論文(P56〜))。

戦後、地方事務所は、条例で設置できることとされたが、従前の地方事務所は、地方自治法第155条第1項の条例で設けたものとみなされ(旧地方自治法施行規程第13条)、あえて条例を制定する必要がなかった。こうした規定を置くのであれば、その所掌事務は、戦前とは同一ではあり得ないため、条例の規定事項とはできないだろう。しかし、現在は、同政令の規定が削除されているため、当然、その所掌事務は、その設置条例に規定することとすべきではないだろうか。

2016-08-26

[]天皇陛下生前退位 21:33

washitaさん経由

天皇生前退位 制度化は「憲法改正が必要」
天皇陛下生前退位をめぐり、内閣法制局などが、将来にわたって生前退位を可能にするためには、「憲法改正が必要」と指摘していることが新たに分かった。
天皇陛下のお言葉について安倍首相は「重く受け止める」と表明したが、政府憲法との整合性をいかに保つか、難題に直面している。政府関係者によると、憲法法律との整合性をチェックする内閣法制局などは、生前退位を将来にわたって可能にするためには「憲法改正が必要」と指摘しているという。
これは憲法第1条で天皇地位日本国民の総意に基づくと定めていて、天皇の意思で退位することはこれに抵触するという理由。
一方、生前退位を今の天皇陛下にだけに限定するのであれば、特例法の制定で対応が可能だと説明しているという。政府は来月にも有識者会議を設置し、特例法の立法を軸に議論を進める考え。
日テレNEWS24 2016年8月22日配信

インターネットにおける議論を拝見すると、天皇陛下生前退位を制度化することについては、皇室典範改正すれば可能という見解をよく見かける。しかし、必ずそう言えるものではなく、憲法改正が必要とする論理は、現在の国民の総意は、あくまでも現在の天皇陛下生前退位であって、一般的に制度化することは、まだ国民の総意ではないということなのではないだろうか。

ちなみに特例法とする場合、憲法第2条が「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とされているため、法律ではできないのではないかという議論もあり、私はこの見解に賛成である。なぜなら、皇室典範も法形式上は法律であるのだが、憲法上「皇室典範」という用語憲法第2条・第5条)と「法律」という用語憲法第4条第2項)を書き分けているからである。皇室典範の制定附則に現在の天皇陛下生前退位に関する規定を加える形とするのが適切ではないだろうか。