自治体法制執務雑感

2016-05-28

[]条項ずれした条の引用と罰則 20:43

kei-zuさん経由

条文の一部に間違いが… 静岡県風営法条例、修正へ
昨年12月に制定され、今年6月23日施行の改正県風営法施行条例の条文の一部に誤りが見つかり、静岡県は修正のため今月18日開会の県議会臨時会に同条例改正案を提出することが16日、関係者への取材で分かった。
条例を所管する県警によると、条文4カ所に、引用条文の番号表記がずれる不備があった。深夜酒類飲食店の営業禁止地域に関する条文では、「2条1項1号に定める地域」と規定すべき部分が、「3条1項1号―」とされていた。
修正されないままだと「深夜の酒類飲食店営業県内全域で禁止」などと改正条例の本来の趣旨とは異なる規定になってしまうため、施行日よりも前に正しい条文に差し替える必要に迫られた。
改正条例の条文作成時、一部条項を削除したのに伴う修正を失念したのが原因という。県警担当者が改めて改正条例を精査し、誤りを見つけた。臨時会で可決されれば、当初予定通りの日程で施行される。
風営法施行条例の改正は、クラブなどダンス営業規制緩和を規定した改正風営法に伴う対応。一部規定については都道府県条例で具体的な制限を定めるとされている。
静岡新聞5月17日(火)8時8分配信

罰則に関係する規定で引用している条に条項ずれがあった際、その引用を修正していなかった事例だと思われるが、伊藤栄樹ほか『罰則のはなし(2版)』(P23〜)に同様の事例が紹介されている。

それは、元検事総長である同氏が法務省刑事局刑事課長当時、ある地方検察庁で豚の密飼養ケースを検挙した事例である。当時の「へい獣処理場等に関する法律」は第9条第1項で知事が指定する区域で豚等を飼養しようとする者は知事の許可を受けなければならないとされ、同法第10条第3号で「前条第1項に違反した者」に対しては、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金を課することとしていた。しかし、昭和37年同法の改正時に第9条と第10条の間に第9条の2が追加されたが、第10条の改正が失念されていた。この場合に同氏は、地方検察庁からの照会に、次の理由から、「前条第1項の規定に違反した者」と規定している第10条第3号の規定は、第9条第1項の許可を受けないで豚を飼養した者を処罰するのに有効と解釈することに疑問があるので、不起訴処分とするほかないと回答したとのことである。

法律の沿革をたどってみれば、第10条第3号の規定は、第9条第1項の規定に違反した者を処罰しようとした規定であることがわかってはくるものの、刑罰を課することについては、わが憲法上の大原則として、罪刑法定主義というのがある。法律の明文なしに人を処罰することはできないし、また、罰則を勝手に類推解釈したり、拡張解釈することはできない。

ちなみに、同法の主管省であった厚生省は、昭和42年になって、同省所管の全く別の法律が改正される際、その附則でこっそり改正したとのことである。

2016-05-20

[]例規の立案で間違いやすい例(41) 21:15

国土交通省組織規則の一部を改正する省令(平成26年国土交通省令第57号)
   (略)
第42条の見出し中……に改め、同条中第4項を第6項とし、第3項の次に次の2項を加える。
4・5 (略)
第42条第6項の次に次の3項を加える。
7〜9 (略)

「第42条第6項の次に次の3項を加える」の「第6項」は改正後のそれであるため、この表記が適切でないことは、もう言うまでもないが、ここは、末項への追加になるから、「第42条に次の3項を加える」で十分である。

なお、「……同条中第4項を第6項とし、同項の次に次の3項を加える」として第7項から第9項までを加え、その後で「第42条第3項の次に次の2項を加える」として第4項と第5項を加える方法もある。

2016-05-13

[]「及び」と「又は」 21:56

「及び」と「又は」の使い分けは、理屈上は明確であるが、実際には迷う場合も多い。本来であれば「及び」を使うべきところ、「又は」にしていたり、その逆のケースも多い。

では、私自身どのように考えて使い分けをしていたか、次の下水道法施行令の規定を取り上げて、少し触れてみることにする。

(公共下水道に設ける施設又は工作物その他の物件に関する技術上の基準)
第17条 法第24条第2項に規定する政令で定める技術上の基準は、次のとおりとする。
(1)  (略)
(2) 施設又は工作物その他の物件の構造は、次に掲げるところによること。
イ〜ニ (略)
ホ 流入施設建築基準法第42条に規定する道路、鉄道、軌道及び専ら道路運送車両法昭和26年法律第185号)第2条に規定する自動車又は軽車両の交通の用に供する通路以外のもので、公共下水道の開渠部分の壁の上端から2.5メートル未満の高さで当該部分に突出し、又はこれを横断するものの幅は、1.5メートルを超えないこと。
(3)〜(6) (略)

便宜上「又は」を使っている部分から触れる。「自動車又は軽車両の交通の用に供する通路」の「又は」は、いわゆる「及び・又は」の「又は」であるが、これを「及び」とすると「自動車軽車両の両方の交通に要する通路」を意味することになり、「自動車の交通の用にのみ供する通路」や「軽車両の交通の用にのみ供する道路」は除外されることになってしまうので、適切でないことは明らかだろう。仮に「及び」にしたいのであれば、「自動車の交通の用に供する通路及び軽車両の交通の用に供する通路」と書くことになる。

「……突出し、又はこれを横断するもの」の「又は」も同様で、これを「及び」とすると、「突出し、かつ、これを横断するもの」といった意味になってしまう。これも「及び」にするのであれば、「……突出するもの及び当該部分を横断するもの」と書くことになる。

これに対し、「及び」を使っている部分は、「流入施設」、「道路」、「鉄道」、「軌道」、「自動車又は軽車両の交通の用に供する通路」が「以外のもの」に係っているのであり、これら5つのものを除外する意であるから、「及び」とすることになる。しかし、「又は」としても、適切とは言い難いが、上記のように意味が変わってしまうことはない。

つまり、「及び」と「又は」に迷ったら「又は」にした方が無難であることが多いことになる。

2016-05-06

[]書き振りが気になる規定の例(10) 21:50

次の規定は、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」第7条の規定である。

登録申請
第7条 前条の登録(第15条、第16条、第17条第2項及び第3項並びに第22条第1項第1号ニを除き、以下単に「登録」という。)を受けようとする生産者団体は、農林水産省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を農林水産大臣に提出しなければならない。
(1) 生産者団体の名称及び住所並びに代表者(法人でない生産者団体にあっては、その代表者又は管理人)の氏名
(2) 当該農林水産物等の区分
(3) 当該農林水産物等の名称
(4) 当該農林水産物等の生産地
(5) 当該農林水産物等の特性
(6) 当該農林水産物等の生産の方法
(7) 第2号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等を特定するために必要な事項
(8) 第2号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等について農林水産省令で定める事項
(9) 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める事項
2・3 (略)

この規定を受けた省令の規定は、次の「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律施行規則」第6条の規定である。

申請書の記載事項等)
第6条 法第7条第1項第7号の農林水産物等を特定するために必要な事項は、次に掲げる事項とする。
(1) 申請農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
(2) 申請農林水産物等がその生産地において生産されてきた実績
2 法第7条第1項第8号の農林水産省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
(1) 申請農林水産物等の名称について法第13条第1項第4号ロの該当の有無
(2) 申請農林水産物等の名称について法第13条第1項第4号ロに該当する場合には、次に掲げる事項
イ〜ト (略)
3 法第7条第1項第9号の農林水産省令で定める事項は、同条第2項の規定により申請書に添付すべき書類の目録とする。
4 (略)

この申請書の記載事項に係る省令への委任は、法第7条第1項第7号から第9号までに区分けしており、一見すると具体的な委任の仕方であり、好ましい書き方にも見えるが、省令の規定を見ると同項第7号と同項第8号を分けて書いた意味がよく分からないし、結局のところ同項第9号の規定があるので、ここまでこだわって書く意味がどれほどあるのか疑問が無くもない。

農林水産物等に関することも委任するのだということを明示して同項第7号から第9号までをまとめて書くのであれば、「前各号に掲げるもののほか……」とすることができないので、「その他」が重なるが、第7号として次のように書くことができるのではないだろうか。

その他当該農林水産物等その他の事項*1について農林水産省令で定める事項

*1:「その他当該農林水産物等を特定するために必要な事項その他の事項」としてもよいだろう。

2016-04-28

[]認定制度〜参考になる例規(5) 22:25

愛媛県は、「愛媛県道路愛護奨励規則」により、道路愛護思想の普及等を行う団体を「道路愛護団体」として認定し、その活動に対し助成等を行うこととしているが、その主な規定は、次のとおりである。

(目的)
第1条 この規則は、道路を県民の盛りあがる郷土愛の精神に基いて愛護し、道路の損傷防止と修理保全に努めることを奨励し、もつて円滑な道路交通の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この規則で「道路愛護団体」とは、概ね次の事業を行うことを目的とする団体であつて、この規則により知事認定したものをいう。
(1) 道路愛護思想の普及
(2) 路面の補修
(3) 側溝のしゆんせつ
(4) 路面雑草の除去
(5) 道路の整理
(6) その他道路の維持及び軽易な修繕
(結成の届出)
第3条 道路愛護団体を結成しようとするときは、代表者はその旨を様式第1号により、知事に届け出なければならない。
認定
第4条 知事は、前条の届出をした団体が道路愛護団体として適当であると認定したときは、様式第2号による認定書を交付する。
(軽易な修繕)
第6条 道路愛護団体の行う国道及び県道の軽易な修繕については、道路法昭和27年法律第180号)第24条の規定による道路管理者の承認を受けたものとみなす。
事業計画等の報告)
第7条 道路愛護団体は、当該年度の事業計画及び前年度の事業実施状況を、毎年4月30日までに様式第3号により、知事に報告しなければならない。
事業実施通知)
第8条 道路愛護団体は、第2条第2号から第6号までに掲げる事業を実施しようとするときは、その旨をあらかじめ様式第4号により知事に通知しなければならない。
助成金
第9条 知事は必要と認めるときは道路愛護団体に対し、予算の範囲内において助成金を交付することがある。

このように一定の行為を民間で行うことを奨励するための認定制度を規則で定めることは、規則の活用という点でも意味があるものと思われる。