自治体法制執務雑感

2017-09-15

[]製茶条例廃止断念 21:22

知事、提出を断念 静岡県製茶条例「廃止」議案
川勝平太知事は2日、静岡茶への味付けや異物の混入などを原則禁じた静岡県製茶指導取締条例を廃止する議案について、当初予定していた県議会9月定例会への提出はできないと述べた。廃止方針が明らかになって以降、茶業界や茶産地の自治体消費者から反対意見が相次いでいた。
定例記者会見で質問に答え、「品質を落としてはならないという共通理解が県民にある。静岡茶ブランド力を上げるため、条例の精神は当然継承する」と述べた。
県によると、7月10〜28日に実施した県民意見公募パブリックコメント)には167件が寄せられた。条例廃止に反対し、存続または改正を求める意見が約8割を占めたという。茶商工業者からは「商品開発競争に勝つために廃止が妥当」という意見も一定数あったとしている。
川勝知事に代わって一時登壇した経済産業部幹部は「さまざまな意見があることが分かった。県民と意見交換しながら新しい方向を模索したい」と述べた。
条例1956年に施行された。食品衛生法で許されていても、うま味成分の添加や発色剤の使用を禁じ、香り付けのために花や果実などを混ぜたり、慶事用に金箔(きんぱく)を混入したりする際は県知事の許可が必要と規定している。
静岡新聞2017年8月3日配信

パブリックコメントが167件というのは、組織票的なものもあるとしても、かなり多い数であり、関心の高さがうかがえる。

意見の具体的な内容は確認できていないのだが、地元の茶商や生産者からの反対の声も強いようである。こうした人達は業界側の人達であるのだから、規制を必要と判断するのであれば、自主的な規制を模索してもいいと思うし、いずれにしろ、ブランド力の向上のために許可制をとるというのは健全な状態とは思えない。

2017-09-07

[]学校給食費の徴収 21:54

自治体が徴収…教員の負担軽減狙い 文科省方針
文部科学省は現在、全国の4分の3の市区町村で学校がしている給食費の徴収業務自治体が直接するよう求める方針を決めた。未納の保護者への督促や多額の現金を扱うことが教職員の心理的負担と長時間勤務の一因になっており、業務を移すことで負担を軽減する狙いがある。
文科省が昨年実施した調査では、全市区町村のうち74%で学校が給食費を徴収し、自治体が直接行うケースは23%にとどまった。学校では担任児童・生徒から現金を受け取り、事務職員や教頭に手渡すことが多い。100人に1人とされる未納者の保護者には電話などで督促し、必要があれば家庭訪問する。
全国公立小中学校事務職員研究会が一昨年にまとめた報告書によると、給食費の徴収業務を負担に感じる教員は小学校で64.2%、中学校で64.3%。一方、文科省が昨年、1週間あたりの教員の平均勤務時間を調べたところ、中学校63時間、小学校57時間で、それぞれ6割と3割が「過労死ライン」を超えた。
こうしたデータを受け、文科省は「給食費の徴収は、自治体が自らの業務として責任を負うことが望ましい」と判断し、来年度の概算要求に徴収方法のガイドラインを策定するための経費(4700万円)を計上した。
直接徴収している自治体税金に関する業務の一環として、口座引き落としや振り込み、児童手当からの天引きで対応している。引き落としや天引きは保護者の同意が必要となる。
政令市では横浜大阪福岡の3市が既に移管し、千葉市は来年4月から始める。同市は1校あたり年間190時間の負担が軽減できると試算している。
給食費を巡っては、無料にする自治体も増えており、文科省の調べでは、昨年時点で人口の少ない自治体を中心に全国61市町村に上っている。
毎日新聞2017年9月6日配信

義務教育諸学校における給食については、学校給食法で定めているが、その経費負担については、同法第11条で次のように規定している。

(経費の負担)
第11条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第16条に規定する保護者の負担とする。

この規定だけを見ると、給食費を無料してよいのかどうか疑義があるところだが、それはともかく国が自治体給食費を直接徴収させるのであれば、給食に要する経費は、自治体が支弁する形になるだろう。そして、自治体が支弁した経費の一部に対し、他者が負担することとするのであれば、法律上の規定は、例えば、次の「難病の患者に対する医療等に関する法律」のような規定が一般的だと思われる。

難病の患者に対する医療等に関する法律
都道府県の支弁)
第30条 次に掲げる費用は、都道府県の支弁とする。
(1) 特定医療費支給に要する費用
(2) 療養生活環境整備事業に要する費用
(国の負担及び補助)
第31条 国は、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する費用のうち、同条第1号に掲げる費用の100分の50を負担する。
2 国は、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する費用のうち、同条第2号に掲げる費用の100分の50以内を補助することができる。

そうすると、学校給食法の改正が必要になってくる。文科省は、ガイドラインを策定する前にやることがあると思うのだが。

2017-09-01

[]職員定数条例 21:39

自治体における常勤職員の定数は、地方自治法第172条第3項*1等の規定により条例事項とされている。

次の条例は、某県の職員定数条例である。

○○県職員定数条例
(定義)
第1条 この条例で「職員」とは、知事議会教育委員会選挙管理委員会、人事委員会、監査委員及び労働委員会の各事務部局並びに教育委員会の所管に属する学校以外の教育機関に常時勤務する地方公務員(特別職の者並びに地方公務員法昭和25年法律第261号)第22条第2項及び地方公務員育児休業等に関する法律(平成3年法律第110号)第6条第1項の規定により臨時的に任用される者を除く。)をいう。
職員の定数)
第2条 職員の定数は、次の各号に定めるとおりとする。
(1) 知事の事務部局の職員
イ 一般職員(ロに掲げる職員を除く。) ○○人
ロ 病院事業会計で給与を支弁される職員 ○○人
(2)〜(7) (略)
2 次に掲げる職員は、前項各号の定数に含まないものとする。
(1) 休職中の職員
(2) 自己啓発等休業中の職員
(3) 配偶者同行休業中の職員
(4) 育児休業中の職員
(5) 他の地方公共団体派遣された職員
(6) 県行政の運営上職員派遣することが必要と認められる公共的団体の業務に専ら従事する職員
3 前項各号に掲げる職員復職し、又は復帰した場合において、職員数が第1項各号の定数を超えることとなるときは、その超えることとなる職員を、1年を超えない期間に限り、当該定数の外に置くことができる。
職員定数の配分)
第3条 前条第1項各号に定める職員の定数の当該事務部局等内の配分は、それぞれ知事、議長、教育委員会選挙管理委員会、人事委員会、監査委員又は労働委員会が定める。

かつて職員定数条例について条例準則があったかどうかは記憶がないが、このように第1条で職員の定義規定を置いている例が散見される。

しかし、上記の第2条第2項のような形で、一定の職員を定数外とする規定を置くのであれば、定義規定を置く意味はない。

次の条例は、他の某県の職員定数条例である。

△△県職員定数条例
(定義)
第1条 この条例職員とは、知事公営企業管理者議会選挙管理委員会、監査委員、人事委員会教育委員会教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関労働委員会及び神奈川海区漁業調整委員会の事務部局に常時勤務する地方公務員副知事教育長及び2箇月以内の期間を定めて雇ようされる者を除く。)をいう。
職員の定数)
第2条 職員の定数は、次に掲げるとおりとする。
  (表略)
2 職員のうち、他の地方公共団体派遣されている者、育児休業をしている者、休職者等であつて長期にわたり職務に従事しないものについては、任命権者が必要と認める場合に限り、前項に規定する定数の外に置くことができる。
3 前項の規定により第1項に規定する定数の外に置かれることとなつた職員が職務に復帰し、又は復職した場合において、職員の員数が同項に規定する定数を超えるときであつて、任命権者が必要と認めるときは、その定数を超える員数の職員を1年を超えない期間に限り、定数の外に置くことができる。
職員の定数の配分)
第3条 各事務部局に置かれる職員の各内部部局及び各附属機関別の定数は、前条に掲げる当該事務部局の定数の範囲内において、それぞれ知事公営企業管理者議会選挙管理委員会、監査委員、人事委員会教育委員会労働委員会又は△△海区漁業調整委員会が定める。

この条例の一定の職員を定数外とする規定(第2条第2項及び第3項)は、「できる」規定となっているので、定義規定を置くことについて、おかしいという感じはないのだが、やはりあまり意味があるとは思えない。

かつて職員定数条例について条例準則があったかどうかはよく分からないが、第1条が定義規定であっても、かつての職員定数条例には一定の職員を定数外とする規定はなかったと思うので、それなら違和感はないのだが、当該規定を置くようになると違和感を生じるようになる。

次の法律は、国の職員定数を定める法律であるが、基本的には、この法律のように書くのが適当と思う。

行政機関職員の定員に関する法律
(定員の総数の最高限度)
第1条 内閣の機関(内閣官房及び内閣法制局をいう。以下同じ。)、内閣府及び各省の所掌事務を遂行するために恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤職員の定員の総数の最高限度は、33万1,984人とする。
2 次に掲げる職員は、前項の職員に含まないものとする。
(1) 国家公務員法昭和22年法律第120号)第2条第3項第1号 、第2号及び第4号から第7号の3までに掲げる職員並びに同項第9号に掲げる職員のうち常勤職員
(2) 宮内庁長官侍従長東宮大夫、式部官長及び侍従次長
(3) 自衛官
(4) 国際平和協力隊の隊員
内閣府、各省等の定員)
第2条 内閣の機関、内閣府及び各省の前条第1項の定員は、それぞれ政令で定める。

上記の法律を参考にしていると思われるのが、次の某県の職員定数条例である。

××県職員定数条例
(目的)
第1条 この条例は、常勤一般職に属する地方公務員(以下「職員」という。)の定数を定めることを目的とする。
職員の定数)
第2条 次に掲げる機関の事務を補助する職員の定数は、当該各号に定めるところによる。
(1) 議会 66人
(2) 知事 6,730人
(3)〜(10) (略)
2 前項に定める定数のほか、次に掲げる職員の定数は、任命権者が必要と認める範囲内において定めることができる。
(1) 地方自治法昭和22年法律第67号)第252条の17第1項(第292条において準用する場合を含む。)の規定により、他の地方公共団体派遣し、又は他の地方公共団体から派遣されている職員
(2) 地方公務員法昭和25年法律第261号)第28条第2項又は職員の分限に関する条例昭和26年××県条例第51号)第2条の規定により、休職を命ぜられている職員
(3) 地方公務員法第55条の2第1項ただし書の規定により、任命権者の許可を受けて、職員団体業務に専ら従事する職員
(4) 地方公営企業等の労働関係に関する法律昭和27年法律第289号)第6条第1項ただし書の規定により、公営企業管理者の許可を受けて、労働組合業務に専ら従事する職員
(5) 地方公務員育児休業等に関する法律(平成3年法律第110号)第2条第1項の規定により、育児休業をしている職員
(6) 外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員の処遇等に関する条例昭和63年××県条例第1号)第2条第1項の規定により、外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員
(7) 公益法人等への職員派遣等に関する条例平成13年××県条例第72号)第2条第1項の規定により公益法人等に派遣される職員
(8) 職員自己啓発等休業に関する条例平成23年××県条例第10号)第2条の規定により、自己啓発等休業をしている職員
(9) 職員配偶者同行休業に関する条例平成26年××県条例第37号)第2条の規定により、配偶者同行休業をしている職員
職員の定数の配分)
第3条 前条に規定する職員の定数の当該事務部局内における配分については、法令に別段の定めがあるものの外、当該機関の長が定める。

よりオーソドックスにするのであれば、第1条は、地方自治法第172条第3項等の法律根拠規定を引いて、趣旨規定とするのだろう。

*1地方自治法第172条第3項は、「第1項の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない。」という規定である。

2017-08-26

[]「又は」「若しくは」 22:14

「又は」と「若しくは」の使い方については、あえて説明する必要はないと思うが、実際に使用する場合には、どちらを使うべきか悩むときもあり、法律政令のレベルでも誤っている例もまれに存するところである。

次の規定は、「所得税法施行令の一部を改正する政令平成27年政令第141号)」により追加された所得税法施行令第266条の3の規定である。

(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)
第266条の3 (略)
2〜5 (略)
6 法第137条の3第1項に規定する贈与納税猶予分の所得税額若しくは同条第2項に規定する相続等納税猶予分の所得税又はこれらの金額の合計額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
7〜17 (略)

なぜ「その全額」と表記しているのかよく分からないが、これは、その前の「合計額」を指していると思われる。そうすると、太字の「又は」は、「若しくは」とすべきだろう。

また、次の規定は、「所得税法等の一部を改正する法律平成28年法律第15号)」第8条の規定により追加された「外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律」第34条の規定である。

個人住民税に係る特別過誤納金の支給
第34条 (略)
2 (略)
3 道府県知事は、特別過誤納金、不申告加算金過誤納相当額若しくは重加算金過誤納相当額の支払をし、又は充当(地方税法第十七条の二第一項から第三項までの規定による充当をいう。以下この条において同じ。)をする場合には、次の各号に掲げる特別過誤納金、不申告加算金過誤納相当額又は重加算金過誤納相当額の区分に従い当該各号に定める日の翌日から特別過誤納金、不申告加算金過誤納相当額又は重加算金過誤納相当額の支払決定の日又は充当の日までの期間の日数に応じ、その金額に年七・三パーセントの割合(各年の同法附則第三条の二第一項に規定する特例基準割合(以下この項及び第十一項において「特例基準割合」という。)が年七・三パーセントの割合に満たない場合には、その年中においては、当該特例基準割合に年一パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年七・三パーセントの割合を超える場合には、年七・三パーセントの割合))を乗じて計算した金額(第五項及び第六項において「加算金」という。)をその支払をし、又は充当をすべき金額に加算しなければならない。
 (各号略)
4〜16 (略)

太字の「特別過誤納金、不申告加算金過誤納相当額若しくは重加算金過誤納相当額」は、その後ろの「充当」にもかかっていると思うので、この「若しくは」は「又は」とすべきである。

2017-08-18

[]追記 22:01

2017年8月10日付け記事「規則で権利義務に関する事項を定めることの可否」に追記しました。

[]政令でこんな改正が…… 22:01

地方税法施行令等の一部を改正する等の政令平成28年政令第133号)
地方税法施行令の一部改正
第1条 地方税法施行令昭和25年政令第245号)の一部を次のように改正する。
附則第11条第32項を同条第33項とし、同条第16項から第31項までを1項ずつ繰り下げ、同条第15項を次のように改める。
15 (略)
附則第11条第15項を同条第16項とし、同条第4項から第14項までを1項ずつ繰り下げ、同条第3項の次に次の1項を加える。
4 (略)

全部改正した第15項は、結局第16項にしているのだから、当然、次のようにすべきである。

附則第11条第32項を同条第33項とし、同条第16項から第31項までを1項ずつ繰り下げ、同条第15項を削り、同条第14項を同条第15項とし、同項の次に次の1項を加える。
16 (略)
附則第11条第13項を同条第14項とし、同条第4項から第12項までを1項ずつ繰り下げ、同条第3項の次に次の一項を加える。
4 (略)

政令でこうした事例が出てくるのを見ると、法律政令のレベルでも新旧対照表方式がとられるようになるのかもしれないと感じる。

シェイミシェイミ 2017/08/22 12:38 「同条第15項を削り、」が抜けてしまいましたね。

hoti-akhoti-ak 2017/08/22 21:41 御指摘ありがとうございました。修正させていただきました。