自治体法制執務雑感

2017-02-17

[]号で項目を列記する柱書にあえて「及び」を用いている例 22:17

次の規定は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令平成27年政令第1号)」第2条の規定により追加された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令」の規定である。

(三種病原体等の結核菌が耐性を有する薬剤)
第1条の4 法第6条第22項第2号の政令で定める薬剤は、第1号に掲げる薬剤及び第2号に掲げる薬剤とする。
(1) オフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシン、モキシフロキサシン又はレボフロキサシン
(2) アミカシン、カナマイシン又はカプレオマイシン

太字の部分は、通常であれば「次に掲げる薬剤とする」とするところであるが、なぜこのような書き方をしたのであろうか。

この規定が引用している「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第6条第22項第2号は、次のとおりである。

マイコバクテリウム属ツベルクローシス(別名結核菌)(イソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシンその他結核の治療に使用される薬剤として政令で定めるものに対し耐性を有するものに限る。)

つまり、上記は、第1号に掲げる薬剤のいずれかと第2号に掲げる薬剤のいずれかに耐性を有するという意味であり、政令第1条の4の柱書を「次に掲げる薬剤とする」としてしまうと、第1号に掲げる薬剤のいずれかか第2号に掲げる薬剤のいずれかに耐性を有すればよいと解釈される可能性もあるため、上記のようにしたのであろう。

しかし、列記する項目が2つ程度であったからよいが、項目が多くなっても同様な書き方をするのだろうか。

2017-02-10

[]例規の立案で間違いやすい例(50) 21:15

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令平成27年経済産業省令第3号)
 (略)
第6条第1項第6号中……に改め、「行おうとする場合」の下に「(第九号に掲げる場合を除く。)」を追加し、……同項第8号の次に次の1号を加える。
   (略)

「……を追加し」……。ケアレスミス以外の何物でもないだろう。

2017-02-03

[]法律に基づく過料条例に基づく過料―空家等特措法の規定から 21:24

北村喜宣ほか『空き家対策の事務』(P63〜)では、空家等特措法で過料を科す規定が設けられたため、既存の条例過料の規定がある場合に、それを残しておくべきかどうかについて、法の横だし的行為に対するものは、過料の規定を残しておくことが考えられるとしている。

このこと自体は格別異論がないのだが、空家等特措法では、命令違反に対しては50万円以下の過料に処することとしているのに対し、条例では5万円以下とする規定しか設けられないため(地方自治法第14条第3項)、まずそうした不均衡がある。

さらに、空家等特措法に基づく過料は、非訟事件手続法に基づき裁判所の手続が適用されるのに対し、条例に基づく過料は、自治体の長の処分によることになるという、手続の違いに対する違和感もある。

法律で規定された以上、条例の規定は不要という判断かもしれないが、条例が先行している分野であるため、例えば次の介護保険法の規定にように、条例に委任することを考えてもよかったと感じる。

第214条 市町村は、条例で、第一号被保険者が第12条第1項本文の規定による届出をしないとき(同条第2項の規定により当該第一号被保険者の属する世帯の世帯主から届出がなされたときを除く。)又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
2 市町村は、条例で、第30条第1項後段、第31条第1項後段、第33条の3第1項後段、第34条第1項後段、第35条第6項後段、第66条第1項若しくは第2項又は第68条第1項の規定により被保険者証の提出を求められてこれに応じない者に対し10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3 市町村は、条例で、被保険者、第一号被保険者の配偶者若しくは第一号被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらであった者が正当な理由なしに、第202条第1項の規定により文書その他の物件の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
4 市町村は、条例で、偽りその他不正の行為により保険料その他この法律の規定による徴収金(納付金及び第157条第1項に規定する延滞金を除く。)の徴収を免れた者に対し、その徴収を免れた金額の5倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができる。
5 地方自治法第255条の3の規定は、前各項の規定による過料の処分について準用する。

仮に条例が存しない自治体であっても、この程度の条例の制定であれば、負担もそれ程ではないのではないだろうか。

2017-01-27

[]天皇陛下生前退位(その3) 21:49

インタビュー)退位のルール 元最高裁判事東北大学名誉教授・藤田宙靖さん
(略)
憲法は『皇位は(略)国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する』と定めています。退位を認めるには典範改正が必要だという主張がありますが、私は特別法でも可能であろうと考えます。憲法がいう『皇室典範』とは一種カテゴリーであって、特別法やそれ以外の付属法令を含めたものをさすとの理解は不可能ではありません。また、そもそも今の陛下の退位という個別事例に限った立法が許されるのかとの議論もありますが、この点についても、平等原則など憲法がほかに定める規範に抵触しない限り、対象が個別的であるからといって、そのことだけから違憲だとは言えないでしょう」
「ただ、私が強調したいのは、退位を特別法によって実現しようとするのであれば、その法律は必ず、今後の天皇にも適用されうる法的ルールを定めたものでなければならないということです」
 ――なぜでしょうか。
憲法がわざわざ『皇室典範』と法律名を特定して書いている背景には、安定的な皇位継承のためには明確な法的ルールが必要であり、政治状況や社会状況に応じて、時の政権や多数派の主導による安易な代替わりがあってはならないという意味が込められていると考えるからです。皇位継承のあり方は政治にとって最もセンシティブな問題の一つです。かりに特別法が、『今上天皇は何年何月何日に退位する』といった内容の規定にとどまる場合、憲法の趣旨に反するものとして、違憲の疑いが生じると思います」
 (略)
朝日新聞デジタル2017年1月18日配信

個人的には、「『皇室典範』と法律名を特定して書いている背景には、安定的な皇位継承のためには明確な法的ルールが必要であり」云々という部分は、必然的にそうなるとは思えないのだが、いずれにしろ今後の天皇にも適用されうる法的ルールを定めるのであれば、特別法という選択肢はなく、皇室典範改正という形になるのではないだろうか。

(関連記事)

2017-01-20

[]法律の制定を受けて条例改正する場合の留意事項〜空家等特措法の場合 22:01

北村喜宣ほか『空き家対策の実務』は、いわゆる空家等特措法の解説の外、法の制定を受けて、既存の空家対策に係る条例をどのように改正すべきかといった点についても触れており、法制執務的に興味深い記述が多い。今後、そうした事項を幾つか取り上げていきたいと思うが、今回は、法律の制定を受けて改正した京都市条例の目的規定について取り上げる。

京都市条例の目的規定の改正に係る新旧対照表は、次のとおりである。

改正改正
(目的)
第1条 この条例は、空き家の増加が防災上、防犯上又は生活環境若しくは景観保全上多くの問題を生じさせ、さらには地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっていることに鑑み、空き家の発生の予防、活用及び適正な管理並びに跡地の活用(以下「空き家等の活用等」という。)に関し必要な事項を定めることにより、空き家の活用等を総合的に推進し、もって安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化、まちづくりの活動の促進及び地域の良好な景観保全に寄与することを目的とする。
(目的)
第1条 この条例は、空き家等の増加が防災上、防犯上又は生活環境若しくは景観保全上多くの問題を生じさせ、さらには地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっていることに鑑み、空き家等の発生の予防、活用及び適正な管理並びに跡地の活用(以下「空き家等の活用等」という。)並びに空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という。)の施行に関し必要な事項を定めることにより、空き家等の活用等を総合的に推進し、もって安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化、まちづくりの活動の促進及び地域の良好な景観保全に寄与することを目的とする。

この条例は、法律の制定を受けて、自主条例と法施行条例の両方の意味合いを持つものとなったのだが、空家等特措法は、防犯目的を含んでいないし、地域コミュニティの活性化も相手にしていないので、これらを条例制定の背景とすることは厳密に言うと適切でないことになる。さらに、そもそも法施行条例において、「……に鑑み、……空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という。)の施行に関し必要な事項を定めることにより……」とするのは違和感がある。

また、法律の規定と整合を図るため、「空き家」を「空き家等」に改正しているが、その「空き家等」には、空き家の敷地を含んでいるため、そもそも敷地と地域コミュニティの活力云々は関係がないため、「空き家等の増加が……地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっている……」とするのも今一つしっくりこない。

これらを解決するためには、原案を活かすのであれば、まず次のようにすることが思い付く。

この条例は、空き家の増加が防災上、防犯上又は生活環境若しくは景観保全上多くの問題を生じさせ、さらには地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっていることに鑑み、空き家の発生の予防、活用及び適正な管理並びに跡地の活用(以下「空き家等の活用等」という。)に関し必要な事項を定めるとともに、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という。)の施行に関し必要な事項を定めることにより、空き家等の活用等を総合的に推進し、もって安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化、まちづくりの活動の促進及び地域の良好な景観保全に寄与することを目的とする。

つまり、「……鑑み、……定めるとともに……」で文章を一旦切ってしまおうとする発想である。

しかし、このようにしても「空き家等の発生の予防、活用及び適正な管理並びに跡地の活用」と「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行」は並列ではなく、後者は前者に含まれるので、いまいちということになる。

これを解決するには、例えば次のようにすることが考えられる。

この条例は、空き家の増加が防災上、防犯上又は生活環境若しくは景観保全上多くの問題を生じさせ、さらには地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっているため、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という。)の適切な執行その他の措置を講ずる必要があることに鑑み、法の施行その他の空き家の発生の予防、活用及び適正な管理並びに跡地の活用(以下「空き家等の活用等」という。)に関し必要な事項を定めることにより、空き家等の活用等を総合的に推進し、もって安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化、まちづくりの活動の促進及び地域の良好な景観保全に寄与することを目的とする。

ところで、以前私は、自主条例と法施行条例の両方の意味合いを持つ条例の審査を行ったときの目的規定を、「この条例は、○○法の規定に基づき○○に関し必要な事項を定めるとともに、……を定めることにより、……を図り、もって……を目的とする」といった構文にしたことがある。

そうした構文にすればすっきりすると思うが、そこまで改正するという判断はなかなかしずらいだろう。