独占禁止法違反の疑いでJASRACに公正取引委員会が立ち入り検査


・音楽著作権管理、JASRAC独占の疑い・公取委が立ち入り (日経新聞
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080423AT1G2301G23042008.html


お昼のNHKニュースを見ていてビックリ。
音楽の著作権管理事業はJASRACが独占的に行っていたわけですが
2001年に著作権等管理事業法が施行され、
イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランスJRC)等が新たに参入しています。
「音楽著作権といえばJASRAC」という考えはそこで終わりを告げたはずでした。
実際、イーライセンスのサイトJRCのサイト管理楽曲を検索できますが、
意外とメジャーなアーティストもJASRAC以外の企業に委託してます。
ただし主に配信関係のみで、同じ楽曲でも演奏・放送・通信カラオケ等での使用については
相変わらずJASRACが管理、というケースがほとんどだったりするみたいですが。


今回の立ち入り検査は、放送局との包括契約についてのもののようですね。
放送局は、JASRAC包括契約を結び、一定額をまとめて支払えば
JASRAC管理楽曲を、演奏回数を考える手間もなく使い放題になります。
日経新聞の記事によれば、音楽放送事業の収入の1.5%らしい)


 歌手「私のこの曲を番組で紹介してほしいんですけど」
放送局「その曲の著作権(放送)、どこに委託してるの?」
 歌手「…イーライセンスです」
放送局「えー?JASRAC管理楽曲じゃないの? 別に金がかかるし
    申請も面倒なんだよな。じゃあウチでは流せないな」
 歌手「そそそそんなァ」


…という事態になると困るので、実際には多くのアーティストが
JASRACに委託せざるを得ない状態になっている、ということだと理解していいのかな?
放送局で流しづらいというのは致命的ですもんね。


でも包括契約は便利でもありますし、放送と同様、利用実態を正確に把握しづらい
動画投稿サイト(Yahoo!ビデオキャストとかYouTubeとか)上での使用については
包括契約でないと不便でしょう。
(※YouTubeはJRCと包括契約しています


4年前に、着うた事業について
各レコード会社に公取が立ち入ったことがありましたが
音楽業界にとっては、それ以来の衝撃ではないでしょうか。


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以下はシロウト考えであって、著作権に関する
私の無知を暴露することになりますが…。


包括契約といえばカラオケ店(カラオケボックス、カラオケ機器のある飲食店等)もそうで、
店がJASRACに支払う演奏使用料は、何回歌われたかにまったく関係なく
その店の床面積等で決められます。たまに、カラオケで歌っていて
「大好きな○○クンに印税が入るように、たくさん歌ってあげるんだー」とか、逆に
「あーまた歌っちゃった。これで誰々(作詞家・作曲家)に印税が入っちゃうよー」
とか言う人がいますが、それは実は関係ないのです。


つまり、JASRAC放送局の番組中でどの曲が何回使用されたか、
カラオケでどの曲が何回歌われたかを正確に把握できるはずもない
のに、
徴収した演奏使用料をどうやって個別の楽曲毎に分配するんだ?ということです。
もしかしたら通信カラオケの会社がJASRACに回数を申請しているかもしれませんし
何かの判断基準があるのかもしれませんが、そこは謎のままなんです。

「烏賀陽弘道氏vsオリコン」裁判 うがや氏が敗訴


http://www.ohmynews.co.jp/news/20080422/23819
http://www.news.janjan.jp/media/0804/0804225490/1.php
http://www.cyzo.com/2008/04/post_508.html


こういった報道記事は、記者の主観がかなり入るので
慎重に読む必要があるのですが、それでもやはり多くのモヤモヤが残る判決です。


U氏の怒りはもっともだと思いますし、これまでずっと
冷静な対処と論証をなさっていると思います。
言葉遣いや態度に、私の苦手なサヨク的姿勢が散見されたり
支援者がヘンテコな歌を作ったり(苦笑)と、
PRのやり方の点において肌に合わないところもありますが…。(^_^;)


結局、U氏が雑誌でコメントした「疑い」について
それが事実といかに異なるのか、企業側は何の説明もしていないように思いますし
今回、U氏が集めてきた証言を採用しなかったことで、裁判所もそこに踏み込みませんでした。
U氏だけを名誉毀損で訴え、批判記事を載せた雑誌の出版社を訴えなかったことは
「それは訴える側の自由」だそうです。_| ̄|○


訴えた企業は、それが名誉毀損というのならば、ただ「事実誤認だ!」と
ムキになって否定するのではなく、ちゃんと責任者が出てきて
「これこれこういう方法で調査・集計しているんですよ」と
胸をはってきっちり説明し、U氏の疑問を論破してほしかったです。
(裁判に勝つうえで、その必要はなかったのかもしれませんが)
協力店リストは以前から公開されており、今回裁判所にも提出されたそうですが
調査方法の実態を証明するための証拠としては不十分(あるいは見当外れ)でしょう。


それに、企業側が証人として出廷させた(07年12月)のは
U氏の取材に応対した当時の広報担当の女性(元社員)一人のみ。
外部からの問い合わせに対して、マニュアルを読んで対応することしか
できなかったであろう人物に、社の根底を揺るがしかねない裁判の
重要な証人として説明責任を負わせるとは…。
しかも判決当日に企業側の関係者は誰も出廷しなかったそうですし(しなくていいんだ?!)
今回の裁判の関係者らに、不誠実な印象を与えてしまったことは否めません。


今回の件で、これまでブラックボックスだった調査・集計方法の実態が
裁判の場で明らかになるのでは、と期待してたんですけどね。
U氏は控訴するとのことなので、引き続き経過を見守ります。


(参考)

・UGAYA TV (YouTube上でうがや氏自らが語る映像集)


・SLAPP WATCH「日本のSLAPP実例」


・My News Japanの関連記事集