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一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

日本人の生産性が低い理由

 国家財政を家計や企業会計のように考え、均衡財政を求める考え方が間違っている事を述べた。それでも8月10日に財務省が「国の借金」を1053兆円と発表するや、新聞紙上には「国民一人当たり830万円の借金」というような表現が踊る。


 MMTの原則で考えると、政府収支と民間収支、及び貿易収支は足せばゼロになる。
 1950年からの累積貿易収支は232.4兆円。

 ( 財務省貿易統計 Trade Statistics of Japan
 こうした観点から見ると、国が貿易黒字を計上し続けるという事も健全性を疑う。貿易収支が黒字という事は、国外に財を持ち出しておいて、債権(紙切れ)に替えているだけ(特に償還できそうもない米国債など)なので、貿易黒字というのは喜ばしい事ではなく、富の流出/献上にしかなっていない)

 その差は820.6兆円(上場企業の内部留保が550兆円だそうなので、非上場企業の滞留資金や個人の貯蓄などが270兆円ほどあるということだろう)

 借金だけ「国民一人当たり」で計算させて(負担を意識させておいて)
 その実、黒字については企業会計に滞留させている。(なら、国の借金についても国民と法人で、それぞれいくら負担すべきかを計算すべきだろう)


 「国の借金」を「国民一人当たり」で割って意識させるような考え方が。この2〜30年ほど続いてきたように思う。こうした歪んだ報道の在り方、考え方が「国の借金を減らすべきだ」「行政は歳出を削減するべきだ」「子どもたちに借金を背負わせないために、小さな政府を目指すべきだ」という行き過ぎた考え方になり、やがて。


 「国家財政に負担をかける障碍者など存在すべきではない」という錯誤にまで至ってしまったのだ。

 (日本はすでに世界でも有数の「小さな政府」である。 }˜^¤‘å‚«‚Ȑ­•{E¬‚³‚Ȑ­•{iOECD”‘‚Ìà­‹K–Í‚ÆŒö–±ˆõ”‹K–́j )

 それでもなお、東京都知事選挙では、都の支出を抑えるために人件費を抑制する、首長、議員の報酬を抑制する。というような言葉が踊り、こうした文脈に居る上山信一が「都政改革本部」の顧問にむかえられるというのだからウンザリする。


 国や地方の歳出に占める公務員人件費の割合などさして大きくはない。しかし、毎年その歳出の拡大を生み出しているのは社会扶助費の増大だ。公務員人件費と社会扶助費の間には桁違いの乖離がある。
 増大する社会扶助費の費用を、職員給与の削減や、ましてや首長や議員への報酬削減などで賄えるわけがない。そんな言葉は全くのまやかしだ。(まるで営業社員が売上目標の未達を、自分が買い取ることでカバーしようとするぐらいナンセンスで幼稚な言葉だ)


 国や地方財政に対する問題をポピュリスト(上山信一竹中平蔵などの曲学阿世の徒を含む)と勉強不足のメディアが歪めて国民に伝えている間に、すでに次の問題が突き付けられつつある。

 私はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、日本の第三、第四の敗北であると考えている。日本の富を故なく米国に移転する(もっと判りやすく表現すると、日本が米国に「たかられる」「カツアゲされる」)に過ぎない。

 米国内でも疑問に思われているTPPに、日本自身が前のめりになっている姿は属国の悲哀を感じずにはいられない。(この姿はまともな愛国者というものが日本から絶滅した証拠でもあるだろう)

 このTPPは日本の医療制度や保険制度を徹底的に破壊するだろう。世界でも憧憬のまなざしで見られる日本の医療制度を、世界でも有数の過酷な米国の制度に合わせようなどという発想は気が触れているとしか思えない。

 しかし、それに飽き足らないのが米国「資本主義」というものだ。

 日本の医療制度をいじる前に、その制度の弱点を利用して暴利を貪ろうという方針に変更したようにも見える。

 C型肝炎の特効薬として「ハーボニー配合錠」という薬がある。
 この薬は一錠で約8万円という高価な薬だ。

 治療にはこの薬を1日1錠、12週間投与する必要がある。12週、84日にかける8万円で、約670万円かかる。

 国の助成制度の対象になれば自己負担は2万円で済む。
 残りの約670万円(2万円程度値引いても「約670万円」には変わりがない)は保健制度が負担することになる。

 公的な医療保険から「ハーボニー配合錠」の売り上げが移転することになる。

 ちなみにこの 「ハーボニー配合錠」を販売している会社は「ギリアド・サイエンシズ」と言い、2001年まで彼のドナルド・ラムズフェルドが会長を務めていた会社だ。

 厚生労働省はこうした高額な医薬品の薬価を引き下げて抵抗している。

 ここで必要なのは薬価とはどうあるべきかという議論だろう。
 これは市場原理主義などで諮るべき問題とは思えない。

 確かに、優れた医薬品を開発したメーカーに利益を認め、次の開発を促す事は全体の利益につながる。故にそうした利益をすべて取り上げる事は適当であろうとは思わない。しかし、こうした規模に現在の医療保険制度は十分対応できない。

 日本におけるCTスキャナの台数は国際的にみてずば抜けて多い。
 Health equipment - Computed tomography (CT) scanners - OECD Data


 だから「不必要にCTスキャナーを使っている」というような批判を生んでもいる。
 しかし、それが有ることが一概に悪いとは言えない。また、こうした社会的インフラの充実は今後も日本の優位性となるだろう。(ちゃんとしたマネジメントが為されればだが)

 こうした事柄も市場原理に任せてはならない。また、「専門家」と呼ばれる一方の利益代表であるような輩(前述したような曲学阿世の徒)に議論を任せてもならない。



 さて、こうした議論を日本では十分できるものだろうか?

 甚だ疑問だ。「日本人はまともに政治の話ができるのか」まったく怪しい。
 (少なくとも、一橋大学と慶応大学には失望する以外ない)

 (追記:
 慶応らしい政治家とは? 竹中平蔵が語る - NAVER まとめ  )


 例えば、「日本は労働生産性が低い」という議論がある。
 この公益財団法人日本生産性本部の資料によれば日本の労働生産性OECD加盟国中21位であるという。
 http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2015_press.pdf


 スペインや、金融危機で騒がれたギリシャより日本は「労働生産性が低い」というのである。

 さて、こうした分析を受けてどういった議論が起こるか。
 「非効率なホワイトカラーの働き方」「勤勉さだけでは改善できない日本の低い労働生産性」「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」ちょっと Google に 「日本人の生産性」という言葉を入れただけでこうした文章がヒットする。
 そして内容を見てみればやれ「労働の生産性を上げよ」だの「日本人は意欲に欠ける」だの「縦社会で非効率」だのといったどうでも良いような話ばかりだ。

 まるで戦中、竹やりを持ってB−29に対峙させた旧軍部を想起させる。

 挙句の果ては「解雇を自由化すべきだ」ときたもんだ。(確かに解雇を自由化すれば後述する理由から「生産性」は上がるかもしれないが、社会はそれによって毀損されるだろう)


 労働生産性の式なんて至極簡単だ。

        労働生産性 = 付加価値 / 従業員数

 OECDでは、1人1時間当たりの付加価値と、従業員数で計算している。

 もし企業の解雇を自由化すればこの分母の従業員数が限界まで下がる、それによって労働生産性は押し上げられる。スペインやギリシャの生産性が高いのは、雇用が壊滅的であるからという観測もあるようだ。雇用を今以上に流動的にすれば計算の上では労働生産性は上がるように見えるが、果たしてそれで全体的な総量は上がるのだろうか?下がるのではないだろうか。さらに、そうした流動性は付加価値にもマイナスの影響を与えるのではないだろうか。(市場に付加価値を認めさせるものは商品の希少性や優位性であって、それは商品に込められたナレッジベース(知の集約)でもある。頭の数が減れば、どうしても「知の集約」は毀損される)

 ところでこの付加価値をもう少し子細に検討してみよう。
 付加価値とは。

        付加価値 = 売上高 − 外部購入費用

 と定義される。

 この付加価値には人件費、賃貸料、租税公課減価償却費、営業利益等(及び知的財産権の使用料等)からなる。

 ・・・つまり、「人件費」を上げれば付加価値は上げざるを得ず、労働生産性もおのずと引き上げられる。OECDの資料にある、日本よりも労働生産性の高い国々は軒並み人件費が高い。逆に言えば日本におけるこの人件費の引き下げ傾向。(さらに、企業の過剰な価格競争)が、日本の労働生産性を毀損させているのだ。(アルバイトを違法にこき使って、一皿100円だの280円だのといった廉価販売を続ける外食産業など、こうした合成の誤謬のさいたるものだ。そんな企業の経営者をありがたがって国会議員候補に迎え入れる政党も正気を失っているとしか思えない。人物を見る目が無さすぎる。)

 「ホワイトカラーが非効率」だの「意欲に欠ける」だのと阿呆な能書きを垂れる前に、経営者に経営者無能の証であるプライスレースから降りさせて、労働分配率を高めさせ、人件費を引上げることを提案した方が労働生産性の向上には直接的に寄与するだろう。


 アジア・オセアニア各国の賃金比較(三菱東京UFJ銀行)

 という資料がある。

 これを見るとまだ日本の労働賃金は高い水準にあるように思えるが、香港やシンガポールの伸長を見るとこれがいつまで続くか不明だ。更に過去10年の上昇率を見ると、日本のマイナス値が際立っている。

 こうした賃金の下落が付加価値を引き下げ、結果として労働生産性を低く見せているに過ぎない。

 こんな簡単な理路を解せず、精神論をありがたがる。「竹やり経済学者」は要らないし、そんな言葉に引き摺られているようでは、国民の間にまともな議論が成立するとは思えない。

 さて、ここであえて問おう。なぜ議員報酬は半減しなければならなかったの?
 800万円でなければならないの?

 さあ、誰か説明して見せろ!


日本人の労働生産性の低さは従業員の働き方とは関係ないことを証明しよう@小倉さんは考えた