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2011-04-28

塩崎恭久元官房長官インタビューVOL.2 「まずは『15年後に原発停止』の工程を決める。国民全体でタブーなしの議論をする時だ」

| 21:24

磯山: 東日本大震災からの復興に向けたグランドデザインを描いてプロジェクトを進めないと日本経済が大きく落ち込むと主張されていますね。

塩崎: 震災やそれに伴う自粛ムード、電力不足の影響で、日本中で経済活動が猛烈に落ち込んでいます。このままでは巨大な「経済大津波」が日本を襲うことになりかねません。これを回避するためには国民の英知を集めたグランドデザインを描いて、実行することが重要だと思っています。

 菅直人首相も口では「復興は単に旧に復するのではなく、価値を生み出すものでなければ」と言っています。それならばどんな日本にするのか、もっと早くビジョンを示すべきです。ようやく立ち上がった復興構想会議が6月末までに意見をまとめると言っていますが、それまで何も着手できないとすると、余りにも遅過ぎます。

磯山: 復興の前提として、原子力発電所の事故が長引く中で、今後の日本のエネルギー政策をどうするのかという大きな問題が立ちふさがっています。

原発はM9.0の地震津波に耐えられるのか

塩崎: まずは、日本にある原発のデューデリジェンス(実態精査)を徹底的に行い、厳格なストレステスト(健全性検査)を実施すべきです。東京電力の福島第一原発は想定を超えるマグニチュード9.0という地震によって20メートルを超える津波が押し寄せました。同様の地震津波が起きた場合、全国の原発はどうなるのか。ストレステストの結果をきちんと示さなければ、国民はもはや政府や電力会社を信じません。

 今回、被災地に行って分かるのは建物の屋根にブルーシートがかけられている光景が少ないことです。阪神淡路大震災の後はブルーシートばかりが目立ちましたが、まったく違います。今回は地震より津波の被害が圧倒的に大きかったということです。ですから、原発についても、大津波が来たらどうなるか、という点ばかりに焦点が当てられています。しかし、リスクを考えれば、今回と同様の巨大地震原発の直下で起きるという可能性だってあるわけです。

磯山: 脱原発を促進せよ、という主張ですか?

塩崎: 私は単純な脱原発論者ではありません。自民党政権時代には、低炭素社会の実現に向けた取り組みを責任者となって取りまとめました。その中でも、万全な安全策を確保したうえで原発を推進するという方向性を示しました。温暖化の防止には二酸化炭素を出さない原発を抜きにエネルギー政策は考えられなかったのです。

 ただ、今回の大震災で、安全の前提が大きく揺らぎました。まず、すべての原発について、デューデリとストレステストをやらない限り、国民はもう原子力政策の推進を支持しないでしょう。しかし、電力供給量が絶対的に不足する中で、原発の即時廃止といった感情論だけでは問題が解決しないことも厳然たる事実です。

100ボルトの配電を200ボルトに

磯山: ストレステストの結果を受けてどう対処べきでしょう。

塩崎: まずは、10年後に原子力の比率を1割にまで低下させ、15年後には全原発を停止させることを視野に、エネルギー政策の全面的な見直しを行ってみてはどうでしょう。ストレステストの結果をベースにして、15年後の原発停止に向けたタイムスケジュールをまず決める。安全性に疑問のあるものや、老朽化が進んだものから順次止めていくのです。

 そのスケジュールを決めたうえで、エネルギーをどう確保するのか、新たなエネルギー政策について国民全体で議論をすべきではないでしょうか。原発を巡る議論をタブーにしないことが何よりも大切だと思います。

 そのうえで、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの拡充に加えて、企業のコジェネレーションの積極的な拡大などを通じて、電力事業で民間活力を最大限に生かす方法を考えるべきです。


磯山: 電力業界のあり方も問題になっています

塩崎: 今までのような10電力会社による地域独占がいいのか、今後議論になるでしょう。発電と送電、配電を分離し、新規参入を認めるなど電力事業を自由化すべきだという議論も再び必要になると思います。目先の電力不足に対応するためにも、企業がどんどんコージェネレーションで発電し、それを電力会社が積極的に買い取っていくという仕組みは確立しなければならないでしょう。

 また、50ヘルツと60ヘルツに東西に分断されている電力グリッドを完全に接続することや、世界的にも珍しい100ボルトの配電を220ボルトにすることなどもこの際、一気に進めるべきではないでしょうか。

 こうしたエネルギー政策の大転換を、国のグランドデザインのひとつの柱とすべきです。スマートグリッドと呼ばれる次世代型の送配電網の整備や、スマートシティと呼ばれる最先端の省エネルギー都市の建設を進めることで、大きな新しい投資が生まれます。そうした未来を見据えた投資をすることで、日本経済は再び活力を取り戻すと考えています。

 それでも、このままでは夏場などの電力供給量は絶対的に足らないでしょう。国民ができるだけ普通の生活をするための様々な工夫が必要になると思います。サマータイムの導入や在宅勤務の促進、夏季の長期バカンスの推奨、夏の甲子園など大規模イベントの秋への延期など思い切って意識を変えてみることです。

 イベントを自粛したり、消費を切り詰めることで節電するのでは、経済自体が縮んでしまいます。経済をダメージを与えないで、エネルギーの使い方を変える、工夫することで、むしろ経済を成長させることが大事なのです。

聞き手 磯山友幸

現代ビジネス 20110425アップ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2714

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