ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

音楽小話

ヴァイオリンと言えば、最近、神尾真由子さんがチャイコフスキー・コンクールで優勝されましたね。おめでとうございます。神尾さんのお名前は随分前から知っていましたが、まだ演奏を直接聞いたことはありません。いずれ機会があれば、ということですね。それにしても、ザハール・ブロン門下はすごいですね。樫本大進庄司紗矢香川久保賜紀木嶋真優神尾真由子さんなどなど…。コンクールに入賞しそうな人しか弟子にとらないなどと噂されているのは、ブロン先生のことでしたっけ?

BBCフィルハーモニック管弦楽団との競演(?)で、神尾さんのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(2004年の映像)をテレビ録画で見ました。

髪型は一昔前のサラ・チャンそっくりで、奏法は庄司紗矢香さんによく似ていて、演奏中の表情は昔のチョン・キョンファにやや近く、体格は小菅優さんに類似して豊満型、演奏後の顔は若き日の辻久子さん似か、といった感じでした。衣装は真っ赤なドレスで背中にリボンがついていて、裾が大きく広がる華やかなものでした。どちらかというと、ピアニスト用のドレスみたい...演奏を見ていて、「この人の先生は一体誰だろう?」と思わせることがありますが、今回もブロン楽派というのはこういうタイプなのか、という印象でした。丁寧な弾き方で充分歌っていましたが、個人的には、あまり好きにはなれなかったです。チャイコン優勝でもその後が大変ですし、人気が持続するかどうかは、結局のところ、人柄や人生哲学や審美的要素に左右されるところが大きいですもんね、これぐらいのレベルになると…。どうもBBC楽団の方は、やる気のなさそうな感じでしたので、何かちょっとね、という気もしました。

そうではあっても、とにかく、最近の日本人女性ヴァイオリニストの大躍進には、目を見張るものがあります。
若手では庄司紗矢香さん。もう4回もコンサートに行きましたが、彼女の場合、毎回新鮮さがあるから楽しいのです。知的で、イタリアの歌心とロシアの深い感情表現に長けていて、性格や物の考え方にもどこかおもしろいところがあるので…。他の専門家の方も指摘されていますが、演奏会で見る度に成長の度合いが明らか、というタイプなのです。

それから、五嶋みどりさんのNHK』の録画を、繰り返し楽しんでいます。ちょっと休憩したい時、部分的にでも見ると元気が出てきます。5年前の撮影だそうですが、先々月末に再放送されました。何度見ても、みどりさんと同時代に生きている幸せを感謝したい気分になります。

みどりさんに関してですが、1996年2月に、名古屋の実家でNHK五嶋みどりの世界』を見たことがあります。その頃よりずっと人格的に統合され、日本語もなめらかになり、人々との交流にも自信が出てこられたようで、とてもうれしく思っています。『世界』の時は25歳ぐらいだったかと思いますが、コンサートの直前や合間に、一人で編み物をしたり、ニューヨークの地下鉄に乗り込むやいなや子どもの絵本を読んだり(龍君のため?)、日本語と英語が混じったたどたどしい話し方で、どこか孤独と孤高の陰を感じさせ、痛々しい印象を持ちました。演奏そのものも、すごい迫力は伝わってくるのですが、私の精神年齢をはるかに上回っていて、とてもついていけなかったというのが正直なところです。ですから、なんだかみどりさんを見せ物みたいにしているようで、30歳以前のみどりさんの演奏会には、一度たりとも行きたいとは思いませんでした。

1990年から92年までのMIT留学中、主人はみどりさんのボストン・シンフォニーとの共演/協演を生演奏で見た/聴いたそうです。同じ大学に留学していた仲間の一人が大のクラシック好きで、ゲネプロから見に行ってメモまで几帳面にとるほどで、何もわからない主人をご親切にもよく誘ってくれたのだそうです。「だけど、なんかまだちっちゃい子が、ものすごいテクニックで難しい曲を軽々と弾きこなしていた、という印象だった」。一体何の曲だったんでしょう?うらやましいです。だけど、「ちっちゃい子」って、その頃のみどりさん、もう19歳前後でしたよ。もったいないような機会なのに、「曲?忘れた。というか、知らない曲だった」「パンフレットは残ってないの?」「どこいったかなぁ」なんて調子。お気楽ですね。

そんなこともあって、2005年の年明け早々、大阪のザ・シンフォニーホールで、みどりさんとロバート・マクドナルドさんがリサイタルを開いてくださった時には、二人でS席を陣取り、じっくりと鑑賞してきました。「いやぁ、今日のはよかった。みどりちゃん、大人になって訴える演奏になってきたね。昔は、とにかくテクニックで圧倒される感じで、曲を楽しむ間もなかったな。やっぱり、拒食症を克服して、大学にも行って、人間的に余裕が出て来たんだよ、前に比べて」と主人。

私もしっかり、長蛇の列に加わり、お二人からそれぞれサインをいただいてきました。「ホームページ、いつも拝見しています」とみどりさんに声をかけると、サインの手を止めてさっと顔を上げ、握手してくださいました。びっくりするほど小さな手だったのですが、今でも感触を思い出せるほど、大切な一生の思い出です。マクドナルドさんも、愛想良く柔らかい雰囲気で応対してくださいました。(ベートーヴェンソナタ「春」って、あんなにみずみずしい音色の曲だったの、初めて知りました)と思ったぐらい、それまで聴いた演奏家の奏法とは、まるっきり違っていました。


ところで、今日は主人の誕生日です。ここまで人生よく頑張りました。これからも、末長く元気でいてね。ユーリより。