ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

所変われば見方も変わる

昨日、大阪生まれの韓国人牧師の14回コラムを偶然ネット上で見つけたので、読んでみました(『韓国キリスト教イスラムの衝突』(http://christiantoday.co.jp))。
韓国との関係では、私も院生時代に韓国人留学生と共に学ぶ機会がありましたし、韓国から来て日本で牧師をされている方を知らないわけではありません。マレーシアを含めていろいろな話を聞いてはいますが、何分、専門外であることと、韓日関係は非常に複雑でデリケートなので、これまでコメントを差し控えてきました。ただ、韓国のイスラーム事情について、日本で育った韓国人牧師が語るとなると、非常に新鮮に思われましたので、ここでかいつまんでご紹介したいと思います。(詳細は、上記を検索なさってください。)
全浩鎭牧師は1940年生まれで、アメリカと英国で神学の勉強をされ、博士号を二つお持ちだとのこと。全牧師によれば、現在、韓国人ムスリムが4万人、外国人ムスリムは9万人いて、モスクやカルチャーセンターも計50あるそうです。現在の韓国政府は、イスラーム国家への宣教を慎むよう求めているようですが、もともと、海外へ派遣される韓国人宣教師には、「お金の宣教」「訓練を受けていない」「語学や働きで準備不足」「協力ができない」「文化適応ができない」「現地文化や教会を無視している」などの諸問題が指摘されていたとのことです。
それを踏まえた上で、現在のイスラームとの問題に関しては、韓国内でのイスラーム研究者の少なさを挙げられています。また、そういう研究者は、イスラームを「愛と平和と寛容の宗教だ」と肯定的に書くようです。現在の韓国では、商業によるイスラーム布教が盛んで、「2020年までに韓国をイスラーム化」する目標を立てているようです。特に、300万人から400万人の左派をイスラーム化するようです。移民、結婚、伝道、多産がイスラームを広める手段だとの分析です。韓国人がムスリムになれば、ある職場では、給与も3倍になり、特別待遇を与えられる仕組みもあるようで、従って、イスラームのより文化的側面を強調するのだそうです。例えば、新訳コーランでは、‘Allah’に対して「ハナニム」を当てたので、教会に混乱をもたらしたというエピソードが語られていました。(ユーリ注:マレーシアの事例と逆ですね。)ちなみに、英訳コーランでは‘Allah’のままだとのこと。
全牧師が心配されているのは、韓国人クリスチャン女性がムスリム伝道の対象となって、ムスリムと結婚してしまうことでした。また、韓国人牧師などがイスラーム改宗の格好の標的になるのだそうです。
以上は韓国内部の事情ですから、こちらとしては判断保留ですが、とにかく本当に初めて知ることばかりでした。やはり、いろいろな立場からのさまざまな意見や見解を自由に表現し、また知る機会を持つことは大事なことなんだなあ、と思いました。
ただし、一言付け加えるならば、このコラムの新聞は福音派キリスト教の立場であることです。また、私の韓国人の友人知人は、「マレーシアのイスラーム」や「東南アジア」と聞いただけで、距離を置く態度をとりました。つまり、「あんなところは、好きな人ならやるけど」という傍観者的態度でした。ここから言えそうなのは、この牧師のおっしゃっていることは、韓国人全体を反映しているのではなく、あくまでキリスト教共同体内での一見解だということです。

少なくとも私にとって興味深かったのは、全牧師が「日本はイスラーム研究者が多く、もっと進んでいる」と評価されていたことです。例えば、韓国では上記のような状況ですが、日本では批判的立場、中立的立場、肯定的立場の三つがあり、きちんと見分ける力を持っているからだ、との由。特に、池内恵氏に感謝している、とのことでした。韓国の大学では、アラビア語イスラームを教えるのに中東ムスリムが教師に招かれていて、学生達も改宗するケースが多いのに対して、日本の大学では、日本人が自分でアラビア語イスラームを教え(ユーリ注:とばかりは限りませんが)、しかも批判的な視点で見ることができる研究者がいることを、とても評価されていたのです。
これは実に新鮮な見方でした。私自身、日本(私)はすっかり出遅れているとか、データがあっても発言しにくいとか、何かとやりにくさを感じていたのですが、国が変われば見方もこんなに変わるのですね!
ただし、日本の一部自由主義神学者たちは、アメリカの福音主義の神学を世界征服の神学として批判することが好きで、その点については「問題が多い」と評されていました。どこか思い当たる節があります。