じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

藤舎貴生さんのCD「幸魂奇魂」

先日6月13日、JTアートホール室内楽シリーズ「宮本文昭プロデュースV 〜口語体による邦楽『古事記』の誕生─古典と現代〜」にお伺いしました。宮本文昭さんがプロデュースするこのシリーズとしては初めて邦楽が紹介されたそうです。詳しくは、貴生さんの公式ブログ(◆)をどうぞ。

演奏を終えた藤舎貴生さんをロビーで撮影。
まずは、古典曲「吉原雀」「舌出し三番叟」、そして先日弊財団より発売となった松本隆さん作詞、藤舎貴生さん作曲・プロデュースによるCD《幸魂奇魂》より、「天の岩屋戸」「沼河比売」「八俣の大蛇」、アンコールで「幸魂奇魂」が演奏されました。生演奏の大迫力…という感じでしょうか、コンサートはスタンディングオベーションで終わりました。(邦楽の演奏会では、めずらしい!デス)

こちらが、CD《幸魂奇魂》(◆)です。
舞台には、書家の岡村千登勢さんによる書で、松本隆さんが作詞した詞が書かれて飾られていました。書の中には次の言葉も。
幸魂奇魂守給幸給
ちりぢりの魂を光の糸でつなぎ結んで
本CD《幸魂奇魂》は、作詞家の松本隆さんが「古事記」を現代の口語を使って書き下ろし、いくつかの有名なエピソードをモチーフとして構成されています。「幸魂 奇魂(さきみたま くしみたま)」という言葉は、国土に幸せをもたらす魂という意味だそうです。(幸魂奇魂に関するブログ◆)演奏会には松本隆さんもいらしていて、この言葉への思いをお話しされていました。
話は少しそれますが、「古事記」のことを良く知らなかった…と思い、本を一冊購入してみました。『あらすじで読み説く古事記神話』三浦佑之さん著(文藝春秋)。

昨日購入したので、斜め読みですが…、まずは「イザナキとイザナミ」のお話しから始まるのですね。CDでは1曲目「国造り」がその内容となっています。「古事記」は、私たちの知る物語の原型と考えられるお話しが、数々あるそうです。「〜しているとき、決して私を見ないでください」という場面は「鶴の恩返し」にありましたが、この1曲目にも、イザナキとイザナミによる同様のシーンがあります。市川染五郎さんと若村麻由美さんによる朗読で物語は展開し、覗かれたイザナミの怒りは地謡により表現されています。
3曲目の「天の岩屋戸(あめのいわやと)」は、アマテラスをなんとかして岩屋から引き出そうとして大騒ぎになった高天の原(たかまのはら)の様子が、長唄三味線やお囃子でにぎやかに演出されています。
「八俣の大蛇(やまたのおろち)」。この大蛇=ヲロチですが、実は島根県を流れる「斐伊川(ひいかわ)」の川の姿がモデルになっているそうです。貴生さんはCD4曲目「八俣の大蛇」を、アニメ、マジンガーZの主題歌のイメージで作曲されたそうです。(あっ、本当だ。…笑)
そしてヤチホコ(オホクニヌシ)が、ヌナカワヒメに求婚する物語、CD7曲目「沼河比売(ぬなかわひめ)」では、貴生さんご自身がファンだという古賀政男さんと美空ひばりさんの曲の雰囲気を取り入れて作曲されたそうです。(またまた本当だ。…笑)「沼河」は現在の新潟県糸魚市を流れる「姫川」と考えられるそうですが、姫川の支流の谷は、縄文時代以降、硬玉翡翠(ヒスイ)の東アジア唯一の原産地であったことが明らかになってきているそうです。「ヌ(石の玉)+ナ(〜の)+カハ(川)」という意味だという姫の名前は、古代人の文化を紐解く興味深い名前ですね。
と、どんどん長くなってしまいますので、是非CDをお聴きいただき、古事記の世界を訪ねていただきたく思います。

(制作担当:うなぎ)