元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

臨時国会召集で気になる民主党の対応

まあ、杞憂で終わればよいのだが。。。やはり気になるので、メモ書き程度に残しておこう。

本日、臨時国会が召集された。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date1&k=2008092400063
第170臨時国会が24日召集された。会期は11月30日までの68日間。与野党とも来月上旬の衆院解散を想定し、選挙準備を急いでおり、首相に指名される麻生太郎氏の判断が焦点だ。
 開会式と首相の所信表明演説は29日、各党代表質問は10月1日から3日間行われる。麻生氏は総合経済対策を盛り込んだ29日に提出予定の2008年度補正予算案の成立に意欲を示している。これに対し、事故米の不正転売問題などで「麻生政権」を追及したい民主党は、麻生氏が補正予算案の審議をせず衆院解散に打って出ることを警戒しており、冒頭から与野党の駆け引きが展開されそうだ。 (了)

この記事の中で気になるのは、

麻生氏は総合経済対策を盛り込んだ29日に提出予定の2008年度補正予算案の成立に意欲を示している。

他方、

民主党は、麻生氏が補正予算案の審議をせず衆院解散に打って出ることを警戒しており、、

僕の判断では、麻生氏は、補正予算の審議をせずに衆院解散に打って出るつもりなどこれっぽちもない。むしろ、補正予算の成立に強い意欲をもち、かつ、あくまで状況次第であるが、うまく乗り切れるのであれば、そのまま解散せずにあわよくば来年度予算成立まで政権運営を続けたいと思っているのではないか。

なぜ、民主党補正予算の審議をせずに麻生総理が解散に打って出ると思い込んでいるのか?
何か根拠があるのだろうか?

こうした判断に基づき、民主党の国対は次のような対応をとろうとしている。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092300461
民主党山岡賢次国対委員長は23日、さいたま市で講演し、次期衆院選の時期について「10月21日公示−11月2日投開票の線が極めて濃くなってきている」と述べた。11月9日投開票に関しては「同4日に(米大統領選で民主党の)オバマ氏が勝ちそうな気配だ。同5日には(収賄などの罪に問われた)守屋武昌前防衛事務次官への判決も出るから、与党にとって非常にまずい」と指摘した。
 また、山岡氏は自民党麻生太郎総裁が2008年度補正予算案の審議引き延ばしをけん制したことについて「自民党が(衆院選で)惨敗する恐れがあるから、内心では引き延ばしてくれと思っている感じがするが、その手には乗らない」と述べ、審議引き延ばしはしない考えを改めて示した。

ここで気になるのは、

自民党が(衆院選で)惨敗する恐れがあるから、内心では引き延ばしてくれと思っている感じがするが、その手には乗らない」と述べ、審議引き延ばしはしない考えを改めて示した。

という点だ。

一昨日の日記にも引用したが、報道で見る限り、麻生氏の立場は、

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/179810/
「緊急だから緊急経済対策と言っている。ぜひ通させてもらいたい。できれば衆院解散はその後だ」と述べ、補正成立に意欲を示した。

と、補正成立を強く望んでいる。


問題は次の点にある。(というか、僕が良くわからないのは次の点だ。)


仮に、補正予算が(民主党の協力で)早期成立した場合、本当に麻生総理は解散に踏み切るのか?
補正予算が早期に成立すれば、ただちに解散に踏み切るとなぜ断言できるのか?


先ほど引用した記事で民主党の山岡国対委員長は次のような観測を示している。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092300461
民主党山岡賢次国対委員長は23日、さいたま市で講演し、次期衆院選の時期について「10月21日公示−11月2日投開票の線が極めて濃くなってきている」と述べた。11月9日投開票に関しては「同4日に(米大統領選で民主党の)オバマ氏が勝ちそうな気配だ。同5日には(収賄などの罪に問われた)守屋武昌前防衛事務次官への判決も出るから、与党にとって非常にまずい」と指摘した。

11月中の解散総選挙を想定するからこういう発想になるだけではないのか?
年内の解散はないと想定すれば、オバマ勝利も守屋判決も総選挙に影響しない。

国対だけの話かと思っていたらそうでもない。臨時国会への対応をめぐって民主党内に異論はないように見受けられる。誰もが補正成立に協力すれば解散してくれると信じているかのようだ。

代表代行については、一昨日の日記に引用したとおりであるが、再度引用しておこう。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092100079
民主党菅直人代表代行は21日、NHKの討論番組に出演し、自民党麻生太郎幹事長が臨時国会で2008年度補正予算案の早期成立を目指す考えを示していることに関し、「予算を(審議)引き延ばしの材料にするのでなく、ある程度のところで決着を付けることは約束できるのではないか」と述べた。
 菅氏の発言は、衆院解散・総選挙を前に政府・与党追及の場を確保するため、審議の引き延ばしはせず、予算案の早期成立に事実上協力することに前向きの姿勢を示したものだ。 


幹事長についてはこう報道されている。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092200799
民主党鳩山由紀夫幹事長は22日午後、臨時国会での2008年度補正予算案への対応に関し「修正するとか、一部には賛成する可能性はある。だからこそしっかり議論すべきだ。われわれの考え方を入れて成立させていくやり方だってあるのではないか」と述べ、修正協議に前向きな姿勢を示した。都内で記者団の質問に答えた。


さらに、今日の報道では、こうだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092300652
民主党は24日午後、小沢一郎代表や鳩山由紀夫幹事長ら幹部が2008年度補正予算案への対応を協議する。同党は、政府が29日に提出予定の同予算案の審議を通じ、事故米の不正転売や厚生年金の標準報酬月額改ざん問題などで「麻生政権」を追及した上で、衆院解散に追い込むことを狙っている。審議に入らないままの衆院解散を避けるため、審議の引き延ばしはせず、速やかに採決に応じる方針を確認する見通しだ。 
 同党の山岡賢次国対委員長は23日のさいたま市内での講演で「自民党は(衆院選で)惨敗する恐れがあるから、内心では引き延ばしてくれと思っている感じがするが、その手には乗らない」と述べ、早期の採決に協力する姿勢を強調した。
 補正審議の予算委員会の日程について、民主党は10月6日から衆参両院で2日ずつとすることを与党に提案しており、鳩山氏は22日、政府・与党との修正協議に前向きな考えを示し、輿石東参院議員会長も「審議拒否も引き延ばしもしない」と明言している。

要するに、衆参2日ずつの修正協議を経て、補正成立に協力、そして解散というシナリオだ。


果たして、このシナリオどおりにいくだろうか?

民主党が「早期の採決に協力する」ことは、むしろ総選挙の先延ばしに協力することにならないのだろうか?

麻生氏は、次のようにも述べている。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200809/2008092000018
補正予算案が(衆院で)1日(参院で)1日で上がるなら10月26日もあり得る。ぐじゃぐじゃになって先延ばしになるかもしれない」と語った。 
 また、民主党補正予算案を衆参両院で採決した上での「話し合い解散」を提案していることに関しては、「何日も(国会の)空白が続くのは避けなければならない」と述べ、同党が補正予算成立に抵抗する場合は、成立前解散もやむを得ないとの認識を示唆した。

改めて確認しておきたいのは、次の点だ。

第一に、解散権はあくまで麻生総理の側にある。

第二に、総選挙を行えば自民党は確実に議席を減らす。

すなわち麻生政権にとって、総選挙を行うことは、今より不利な状況をつくりだすことにほかならない。
それゆえ、麻生政権にとっては、できるかぎり総選挙を先延ばしにすることが政権存続にとってリスクの少ない選択となる。

政権与党(自民党公明党)の議員にとっては事情は異なる。できるかぎり負けが少ない(議席が減らない)タイミングで解散して欲しいという圧力が存在する。

結局、総選挙のタイミングは、自公議員の圧力と麻生政権との間の妥協によって決まる。
補正成立への協力は、民主党が総選挙のタイミングの決定に影響を与えることにはつながらないのではないか。

ただ言えることは、総選挙をするしないにかかわりなく、補正の早期成立は麻生政権にとって有利であるということだ。

民主党の協力を取り付けて、補正を成立させればある程度のフリーハンドを握れると麻生氏が考えないはずはない。解散についてはそれから考えても遅くないとの判断だ。すなわち、麻生総理の中で解散日程はいまだ白紙である。

自民党細田幹事長は次のように述べている。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2008092300176
自民党細田博之幹事長は23日午前のNHK番組で、次期衆院選に関し「(麻生太郎総裁は)景気対策補正予算をまずは優先させ、その後にまた考えていくということなので、早期解散ありきで議論してはいない。野党が補正予算成立を阻止すれば、若干時間がかかることがあり得る」と述べた。当初与党内で調整してきた10月26日投開票の日程が11月以降に先送りされる可能性があるとの見方を示したものだ。

麻生総理も自民党執行部も早期解散は考えていない。

あまり気にすることもないのかもしれないが、森元首相にいたっては次のように発言している。

http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=pol_date2&k=2008092300023
森喜朗元首相は22日午前(日本時間同日夜)、麻生太郎新総裁の誕生を踏まえ、衆院解散・総選挙の時期について「新総裁に期待されるのは経済対策だ。来年度予算をつくり、可決するのがベストだ」と述べ、2009年度予算成立後が望ましいとの考えを重ねて示した。

解散総選挙は、来年度予算成立後、すなわち来年4月以降の解散でかまわないとの認識だ。

だが、普通に考えれば、当然の認識だ。

この認識に対抗するのは、与野党議員と国民からの早期の解散総選挙を求める圧力しかない。



再度改めて確認しておきたい。

第一に、解散権は麻生総理の側にある。

第二に、総選挙を行えば自民党は大幅に議席を減らす。

したがって、麻生政権は可能な限り総選挙を先延ばしにしようと試みるはずである。


国民も野党も、このことを前提に行動しなければならない。