ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)(レイ・ブラッドベリ/創元SF文庫)★★★★

ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)
ブラッドベリ初挑戦です。この短編集はヤングアダルト向けらしく、初めて読むには良かったかも。
一番面白かったのが「霜と炎」。
きっかり8日間で早送りのように成長し老い、そして人生を終える世界に生まれた少年・シム。めぐるましく短い人生を生きることだけで精一杯ななかで、普通の人たちからは離れてこの狂った世界を元に戻そうと研究を続ける科学者たちのもとにシムは向かった…。
短すぎるタイムリミットによる緊張感と蓄積された深い絶望のなかで、頼りなく細い光がシムを照らす。夢中で読んでしまった。
いかにもSFらしいものもあれば、「宇宙船」や「いちご色の窓」のようなあたたかい家族小説もあり、表題作や「駆けまわる夏の足音」のようにノスタルジーたっぷりな少年小説もあって、ブラッドベリという作家の世界の広さを感じた。描写も美しいしね。とくに「いちご色の窓」の冒頭の色ガラス越しの世界が描かれるあたりはしびれました。

ママの狙撃銃(荻原浩/双葉社)★★★★

ママの狙撃銃
荻原浩の作品はちょっと久しぶり。というか前作の『あの日にドライブ』を途中で放り投げただけで、それまでのは全部読んでるんですけどね。でもここ最近わたし的にずっとアタリがなくて、これも読もうか読むまいか悩んだ。
で、失礼承知で言いたい。
荻原浩、久々の傑作です。

福田曜子はふたりの子を持つ主婦。
夫の考平は中堅企業のサラリーマン。
ふたりは、ごくふつうの恋をし、ごくふつうの結婚をしました。
ただひとつ違っていたのは……。

タイトルがタイトルだけにこれはネタバレではないと踏んで言っちゃうと、ママ、もとスナイパーなんです。プロの暗殺者であった祖父にたたき込まれた習慣は今も抜けないままではあるが、すべては過去のことと割り切って平凡な専業主婦として生きる曜子。ところがある昼下がりにかかってきた一本の電話が、彼女を一気に過去へ引き戻す…。

設定がたまらないよね。庭いじりしてるところに<依頼>の電話がかかってくるんですよ? 家族のシーンがかなり丹念に描かれてるだけに、そのギャップの激しさにぐいぐい引き込まれてしまう。
<主婦>と<暗殺者>…自分の中にあるまったく正反対な一面の間で揺れる苦しみと、ただならない緊張の糸が物語の隅々まで行き渡って、でも重苦しくはないんだよね。
この意外な爽快感は、これまで隠されてきた<本当の曜子>のキャラのおかげかも。あまりでしゃばらないけど芯は強い女…なんていうと単なる男の妄想だけど、その芯の強さはそこらへんの男が束になってかかって来てもかなわない強さなんだから。祖父からもらった自分を守るための強さは、いつしか愛するものを守るための強さになった。そして強さを知ってるからこそ優しくなれる。そんな曜子がカッコいい。
娘のクラスメイトに対してはちょっとやり過ぎだろ…と突っ込みたくもなるが、まぁこれも母性あふれる行動ってことで(イヤでもちょっと怖すぎだけどね)。ま、そのシーンはさておき、後半に様々なほころびを見せる家族に対する曜子の<心の強さ>がこれまた頼もしい。家族の弱さを受けとめ、そして再び前を向かせるために尻を叩く。母は強し。こんだけの度量を持った女はなかなかいませんよ。

…というわけでサスペンス性に富んだ、ちょっと物騒な家族小説だ。ここ最近の荻原作品ではピカイチ、トータルでもかなり上位に食い込む作品。ドキドキハラハラ&心があったかくなるという、ジャンルミックス的な荻原ワールドを久々に堪能させていただきました。

男と女、本の好みはどれだけ違うのか?アンケート

id:seiitiさんのブログから飛んでいきました。なんか楽しそう。
http://dokusyataisyo.jugem.jp/?eid=284
80冊から10冊を選ぶ、というアンケートなのですが、
その80冊は

えーっと、まず、ここ最近の本屋大賞上位10作品、芥川賞直木賞受賞作、
ここで行った2005年新刊本ベストのエントリ作品(抜粋)、
その他皆が読んでそうな、代表っぽい作品、一部私の趣味、

らしいです。
2005年新刊本とはいえ文庫本も含まれているので、かなり迷ってしまいます。

で、選んだのはこちら。

夜のピクニック恩田陸
「風味絶佳」山田詠美
「魔王」伊坂幸太郎
博士の愛した数式小川洋子
「逃亡くそたわけ」絲山秋子
「沼地のある森を抜けて」梨木香歩
「告白」町田康
「ポーの話」いしいしんじ
「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男
煙か土か食い物舞城王太郎

基本は単行本新刊を中心に選びました。文庫本は舞城だけですね。その文庫本1枠も、舞城vs乙一vs川上弘美の(脳内)激戦でしたから。記憶力悪いので、文庫と単行本では現時点に残ってるインパクトが段違いなんですよね…。
男と女の読書傾向の溝はかなり深いと以前から踏んでいたので、この結果はちょっと楽しみです。