忘れないと誓ったぼくがいた(平山瑞穂/新潮社)★★★☆

忘れないと誓ったぼくがいた
『ラス・マンチャス通信』で2004年度ファンタジーノベル大賞を受賞した著者の、二作目にあたるのが本書。個人的には初挑戦。

主人公のタカシは受験を控えて勉強にいそしむ真面目な高校生。眼鏡ショップで知り合った女の子と、意外な再会を果たすが、彼女はとてもつかみ所がなくて……。

ネタバレになるので詳しくは書けないけど、<記憶>をめぐるファンタジー小説です。<記憶>をめぐるファンタジー小説といえばクリストファー・プリーストの『魔法』が思い出されるが、ストーリーを全然覚えてなくて自分の過去の日記を読み返してみたが、そこにも「ネタバレになるので」とあらすじがなく…。人のためにネタバレを気にするより、自分の記憶能力を気遣ったほうがいいのではないかと思った。


それはさておき。ちょっと薄味ではあるけど、なかなかいい物語だった。ひとひねりしたセカチューと言えなくもないが。けなしてるわけじゃありませんよ。そのひねりこそが小説にとって大事なものだから。それにそれぞれのエピソードが鮮やかで、読み進めるにつれ引き込まれていく感じ。中盤の、彼女がタカシに真相を打ち明けるフランス料理店のシーンなんて、印象的だし。


個人的には、このくらいの長さの物語なら、もうちょっと要素を入れてほしいと思ったけど、ある意味読者を選ばないこのくらいの薄さのほうがウケはいいのかなという気もする。今後に期待です。

2006年本屋大賞が決定しましたね

http://www.excite.co.jp/book/news/00101144237447.html
「東京タワー」でしたか。「ナラタージュ」が来るのではないかと踏んでいた私の予想は大ハズレ。
ちなみに順位は

1位『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン~』 リリー・フランキー/扶桑社  279点
2位『サウスバウンド』 奥田英朗/角川書店 196.5点
3位『死神の精度』 伊坂幸太郎/文藝春秋 190点
4位『容疑者Xの献身東野圭吾/文藝春秋 184.5点
5位『その日のまえに重松清/文藝春秋 179.5点
6位『ナラタージュ島本理生/角川書店 162点
7位『告白』 町田康/中央公論新社 152.5点
8位『ベルカ、吠えないのか?』 古川日出男/文藝春秋 152点
9位『県庁の星』桂望実/小学館 141点
10位『さくら』西加奈子/小学館 135点
11位『魔王』伊坂幸太郎/講談社 103点

ぶっちぎりってかんじですね。やっぱり伊坂幸太郎、二作合わせれば一位なのに。
ネタ元のエキサイトニュースでも指摘してあったけど、ちょっと違和感が残る結果。

本屋大賞は、「売場からベストセラーを作ろう!」の声から作られ、投票権は書店員にしかない。一次投票で上位10作を選出し、次の二次で大賞が決まる。過去の大賞は、04年に小川洋子博士の愛した数式』。05年には恩田陸夜のピクニック』が選ばれた。
『東京タワー』は、すでに100万部を突破しているベストセラーなので、この賞のコンセプトからして、意外な結果ともいえる。

まぁ人数が多くなればそれだけ、人気投票みたいになっちゃうんだろうなぁ。今回の投票人数はは368人だったとのこと。参加資格がアルバイト店員まで含まれてる割には、意外に少ないかも。まぁ人数が増えればさらに『東京タワー』的なものに票が集まるんでしょうけど。いや『東京タワー』は好きですよ? でもわたしが投票する立場だったら「とりあえず売れてる作品は除外!」って決め込むだろうから。あ、でも他の文学賞はとれないからせめて本屋大賞を!っていう気持ちもあるのかなぁ。ま、それだけ愛されてる小説ってことなんでしょうね。逆に『容疑者X〜』や『その日のまえに』とかが大賞だともっとつまんないし、『告白』や『ベルカ〜』がとっちゃうのもやっぱ変な気がするしね(個人的には大賞あげたいですが)。
しかしまぁ、今回はドラマ化も決まったリリー・フランキー私小説が受賞作ということもあってか、ヤフーやエキサイトでもトップニュース扱いで驚いた。普通のポータルサイトでニュースとして取り上げられるなんて、直木賞芥川賞以外の文学賞としては初めてなのでは? もっと色んな人に知ってもらえるといいですねぇ。