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松森果林UD劇場〜聞こえない世界に移住して〜 Twitter

2016-07-01 久しぶりの一気読み!「脳が壊れた」

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久しぶりに一気読み。(一気飲みじゃないです)

「脳が壊れた」←インパクトあるタイトル。

http://www.shinchosha.co.jp/book/610673/

41歳で脳梗塞になった鈴木さんの脳が壊れていく様子を言語化したものです。


私がこの本に興味をもったのは、脳梗塞や病気そのものよりも

取材記者であった本人が、脳が壊れることによって起こる現象や経験、

その辛さを「言語化」していく部分です。

(専門用語では当事者研究とも言われます)


本人は見た目は「普通」の人と同じにまで回復したのに

高次脳機能障害という「外から見えない障害」が残ります。

この「外から見えない障害」を周囲に伝えにくいツラさというのは

聴覚障害のそれにも似ています。

環境や体調によって聞こえ方は変化し、音は聞こえても声の聞き分けはできないとか

相手の声質によって聞こえたり聞こえなかったり、

年中無休で耳鳴りがしているから、聞こえないのにうるさいとか

それによってもたらされるバリアや苦しみをを伝えるためには

「ことば」が必要になります。

でも、自分ですらも把握できない状態を言葉にするのは難しいものです。

高次脳や聴覚障害だけでなく発達障害うつ病精神疾患

内部障害など、外見で分からないあらゆる人に共通することかも。

私は8年にわたる失聴期間中、常に「今の苦しみを言葉にするとどう表現するのか」「今の耳鳴りはどんな擬音表現になるのか」

などを日記帳に書き留め言語化していました。


著者の鈴木さん、これまでの取材、執筆経験から

徹底的に自分自身を取材し、内観し、言語化していきます。

トイレの個室に現れた老紳士現象、中二病女子的症状、「妻の罵声」リハビリ、などなど

わくわく(といったら不謹慎ですが)する言葉の連続。

読んでいると、脳ミソをマッサージしてもらうような気持ちよさがあります。


『苦しみを他者に伝えられない「見えづらい苦しさ」は想像以上の孤独と

生死にかかわるリスクをもたらす』という一言に納得。

2016-06-28 「コミュニケーションが苦手」な全ての人に送る映画『Start Line』

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監督であり出演者でもある彩子さんのダメっぷりがステキ。

理路整然とした聡明な美人なのに、

怒る自分も、泣く自分も、逆ギレする自分も、カッコわるい自分も、

でっかいスクリーンにここまでさらけ出しちゃった映画ってあるだろうか。

主演今村彩子カントク、まだうら若き30代女子。

「Start Line」を観て、私は前よりもっと彼女が好きになった。


映画では、聞こえない彼女が自転車沖縄から北海道まで日本縦断する中で、

出会いを重ねコミュニケーションを繰り返す。

自ら「聞こえないこと」を伝えると、その反応は様々。

口頭で繰り返し説明する人や筆談が苦手な人がいれば、

スマホに文字を出して見せる人もいる。

話すうちに少しずつ身振りや表情が豊かになる人、

外国人と勘違いし英語で話しかける人など、

コミュニケーションのカタチやプロセスは千差万別。

そんな様子を、伴走者でありボウズのイケメン、テツさんが撮影していく。


このテツさんもまたステキ。

自転車屋さんであり空手の達人、手話もできてお酒もイケる。

しかし恋人ではなく聴覚障害専門家でもなさそう。

でも、だからこそ「聞こえない」ことを正当化しない。


印象的なシーンがある。

道中、パンクした自転車を修理している人がいても

「聞こえない私は力になれないから」と素通りした彩子さんに、

「できないって自分で決めつけている」とぴしゃり。

たとえ力になれなくても、聞こえなくても、一人より一緒の方が安心できるんだ、と。

それでも「私なんかいない方がいいと思ってしまう」と自分を卑下する彼女に、

もう一度言う。

「そんなことを君が決めてはいけない。相手に聞いてから決めて!」。テツさんファンになった瞬間だ。

その後ケンカとなり、目をそらす彩子さんに対し

怒ったテツさんが倒した自転車のカメラが二人の様子をとらえる。


「怒っていても話さないと解決しない。

あなたが目をそらしたらそこですべてが切れてしまう。

あなたが自分で世界を切っている」。


そう、音声言語での会話は目をそらしても、相手の話しは聞こえてくる。

しかし視覚言語である手話は目をそらした時点で遮断される。

コミュニケーションができないのは聞こえないせいじゃない」という

テツさんの冷静な論旨が、コミュニケーションの本質を浮かび上がらせる。


二人の様子はまるで自転車の前輪と後輪のよう。

前輪は方向を決め、速度を調整し、止まる決断をする。

一方で後輪は前に進む原動力や推進力になる。

旅のきっかけは母親の死。

聞こえない彩子さんが、社会で人とつながっていくためのあらゆることを教えてくれた存在は、

彩子さんにとって自転車の前輪であったのかもしれない。

彼女はペダルをこぎ出す。


前輪と後輪は入れ替わり、響き合い、旅を通しての出会いは300人を超えたとか。

しかし私は、テツさんとの出会いが何よりも奇跡的だったと感じる。(そんなテツさん、どんどんヤセていきますw)


彩子さんは監督でもある。だから旅が終わっても編集作業がある。

自分で(どちらかというと)ダメな自分の姿を直視し、

つなぎ合わせる作業。想像したがこれはキツイ。

それでも「できない自分」を全部出す。

「旅であったことを隠して映画を作るのは、協力してくれた方々に失礼だから」と。

そこには脚色も偽りもない。彩子さんの誠実さが伝わる。

だから見ていて清々しい風が吹く。


「そうだ、コミュニケーションってこうだよね」と。ためらう背中を押してくれる。


『Start Line(スタートライン)』は、2016年9月から東京名古屋大阪の映画館で公開予定。

最新情報は、Facebookページか公式サイトで。

http://studioaya.com/startline/

マスコミ関係者は試写会情報をチェックの上、nishi@regard-films.com(配給担当者)まで。

2016-06-27 7/23新潟市聴覚障がい者教養講座にて講演します

新潟市にて講演会があります。

誰でも無料で参加できますので、ぜひお越しくださいませ。

お待ちしております。


以下案内文----

主に聴覚障がいをお持ちの方に対し、

社会参加に必要な知識を得るための一助として、講演会を開催します。

今回は、ユニバーサルデザインアドバイザーエッセイストとしてご活躍されている松森果林氏を講師にお招きし、

「聞こえる世界と聞こえない世界をユニバーサルデザインでつなぐ」をテーマに、

ご自身の体験や活動をもとに、

誰にとっても親しみやすく、わかりやすいお話をしていただきます。

聞こえる世界と聞こえない世界の違いを知り、豊かなコミュニケーションを楽しんでみませんか?

http://www.city.niigata.lg.jp/iryo/shofuku/oshirase/h28kyoyokoza_zenki.html

2016年7月23日(土曜)午後2時から4時まで

※受付開始 午後1時半から

新潟市総合福祉会館 5階 大集会

新潟市中央区八千代1-3-1)

■定員100名(どなたでも参加できます)

※事前申し込み不要。直接会場へお越しください

※手話通訳・要約筆記あり

■問い合わせ先

新潟市障がい福祉課管理係

電話:025-226-1237

FAX:025-223-1500

E-Mail:shogai.wl@city.niigata.lg.jp

2016-06-20 二週連続アモーレ♡

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二週間続けての結婚パーティ。

言語も特性も多様な人の集まりでダイバーシティ

懐かしい再会も多く、同窓会のような賑わい。

愛が沢山つまったバルーンがぷかりぷかりと。

幸せな未来に何度カンパイしたことか。

アモーレたくさん浴びてきました!

2016-06-16 私たちのヒーロー

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「五歳の小春、人が大好きで会ってから五分ほど大はしゃぎしますから覚悟して!」

事前に聞いていましたが、想像を超える熱烈大歓迎。

すんごい勢いで飛びつかれ、舐められ、あっという間に押し倒されました。

「ゴールデンドゥードル」といって

ゴールデンレトリーバーとスタンダードプードルの初代ミックス、

オーストラリア発祥の新種のワンちゃんだとか。可愛い♡


小春ちゃんからの洗礼を受けた後は気持ちの良いテラス席で乾杯。

私たちの恩師、大沼直紀先生のご自宅です。

奥様お手製のお料理が並び、私たちのためにあけてくれたワインは芳醇で美味。

大学時代からの友人とともになんて幸せな時間。


大学時代に大沼先生から学んだ「聴覚障害学」は、

聴覚障害医学的、生理的な視点からとらえ

聴覚障害の教育や歴史、言語、補聴器の扱いを学びました。

聴覚を失ったばかりの私にとって、

耳の構造や音の伝達の仕組みなどを知ることは

「自分が失った音」を客観的にとらえ

障害と向き合うこと」につながりました。


聴力検査を受ける機械「オージオメーター」の扱いを学び

自分で自分の聴力検査をしたとき、私の世界は大きく変わりました。

なぜならば

本当の自分の聞こえなさと向き合うことができたからです。


それまで私にとって「聞こえないのは悪いこと」で

「周りには隠しておきたいこと」でした。

だから、聞こえにくくなって以来、小学校、中学校、高校と毎年聴力検査をするときにはユウウツ。

「早くボタンを押さなくちゃ!」

「でも聞こえないのにすぐ押したらウソになる、五秒待ってから押そう。」

などとボタンを持つ右手は汗びっしょり。

もはや、聴力なんて関係なく、

ただ聞こえないことを悟られないようにやり過ごすのに必死の聴力検査。


しかし「聴覚障害学」の中では、自分の聴力検査は自分でします。

自分のことは自分が良く分かるからです。

自分の耳が反応するところまで、

自分の手で少しずつボリュームを上げ下げして徹底的に調べることができるのです。


印刷されたオージオグラム(聴力検査の結果)を見て

「私はこんなに聞こえなかったんだ」と納得しました。

「これが私の聴力であり、自分そのものなんだ」と。

聴覚障害の受容や、聞こえない自分を作り上げていくことができる授業、

私にとっては大きな価値ある授業だったのです。

その後、大沼先生は筑波技術大学学長となり

東京大学先端科学技術研究センター客員教授を経て

現在は、同センターで福島智研究室アドバイザーをされたり

聞こえの教育相談クリニックなども。

http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/research/people/staff-ohnuma_naoki_ja.html



大沼先生は、初めてお会いした時から今も変わらず私たちのヒーロー。

笑いあり涙ありで、話題は尽きず、

いつのまにか隣家のワンちゃんも一緒に遊んでいたり。


帰りの駅のホームで

「先生という存在って「希望」だね〜」などと余韻を楽しんでいたら、

乗る予定の電車を見送ってしまいました。

目の前に電車が来てるのに何で気付かないの?!とじたばたする私たちは卒業して20年。