ゴールデンウィーク前……四月の頭くらいからずーっとストーンズにハマっていた。
フェイセズやジェフ・ベック・グループ、ロン・ウッドのソロ作品、もっといえばザ・バンドやオールマン・ブラザーズ・バンド、フリートウッド・マックのようなルーツを大切にするバンドが好きなわりに実はストーンズだけ唯一、その良さみたいなものがわからなかったのだが、だんだんと聴き方のコツみたいなものがわかってきて、それで延々と聴いていた。やっぱりとてつもなくかっこいいっす。
というわけで、今日はぼくが聴いたストーンズのアルバムの感想を書いていこうと思う。一応代表作といわれるスタジオ盤が中心だが、当然いくつか抜けてるのでそのへんはご了承いただきたい。なお、作られたときの背景、状況などの説明は藤井貴之、寺田正典両氏による『ザ・ローリング・ストーンズCDガイド』から引用した。
ファーストアルバムだが、アメリカ盤では「イングランド・ニューエスト・ヒット・メイカーズ」という副題がある。オリジナルは一曲だけであとは全部カバーなので、いまとなってはカバーアルバムとして聴いた方がいいのかもしれない。ビートルズのファースト同様、かなり荒削りの印象があり、そのへんは若々しさに溢れているが、10年前くらいの音楽とはいえ、当時としても選曲は渋かったのではないかと思われる。いや、そのへんどうなんだろう。ジョン・レノンの『ロックン・ロール』みたいな感じというか、とにかく「ロックンロール」とは何ぞや?の答えがここにある。井上陽水奥田民生の「アウトバーンの狼」や糸井重里が作ったTVゲーム『MOTHER』の音楽の元ネタあり。
『サタニック・マジェスティーズ』
ストーンズ史上いちばんの問題作といわれる。ジャケットからもわかるようにストーンズ流の『サージェント・ペハー』であり、『ペット・サウンズ』、『オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク 』の感じ。当時いかにサイケデリックが音楽界を席巻していたかがうかがえる。ぶっちゃけ、聴いてて「お前らに求めてるのはこんなんじゃねぇよ!」と何度もいいたくなるが、曲自体はどれもかっこよく、普通に良いアルバムだと思うので困る。さすがにこれがいちばんというのはないかもしれないが、めちゃくちゃ好きだよという人がいてもおかしくない感じ。
『ベガーズ・バンケット』
ストーンズのアルバムの中でも最高傑作、ロックのスタンダード/金字塔の一枚などと言われている。自分たちのルーツを見つめ、ストーンズ流に解釈した……というレビューが並ぶように実験的な要素と、ビートルズとは違うという自分たちのカラー、アメリカ南部寄りのサウンドのバランスが絶妙。やや渋いのでベスト盤しか聞いたことないという人には地味な印象もあるかも。「悪魔を憐れむ歌」はもちろんのこと「ストリート・ファイティング・マン」、「ストレイ・キャット・ブルース」のかっこよさは異常。
『レット・イット・ブリード』
ストーンズのファンはこれがいちばん好きってよく言ってる印象がある。前作『ベガーズ・バンケット』の路線を推し進めたようで、ジャケのかわいさとは裏腹にこってりんこな一枚。やってることも相当マニアック。紅しょうが入れないと食べれないほど濃いとんこつラーメンという感じ。「リヴ・ウィズ・ミー」は恐らくみんなが持ってるであろう「ローリング・ストーンズの音楽ってこんな感じ」というイメージを体現したようでめっちゃかっこいい。ただ、基本的にはある程度勉強というか、外側の知識を必要とするのではないかと思われる。裏を返せばこれを聞くとアメリカ的なルーツロックが何かを学べるということなのだが。
「ストーンズのアルバム何から聞いたらいい?」と聞かれたらこれをすすめるようにしている。まさに名盤中の名盤。アメリカ南部の音楽を探求しつくした結果、自分たちの音楽を改めて確立させたような、そんな印象を受ける。ストーンズらしさに満ち溢れ、どの曲もスキがなく、ずーっと聴いてられる感じ。二曲目がなんかエアロスミスっぽい。
『メインストリートのならず者』
最近になって『レット・イット・ブリード』と『スティッキー・フィンガーズ』に収録されなかった曲を採用したアルバムだということを知った。タイトルには「代表作に選ばれなかった曲たち」という意味もあるのかもしれない。なので、南部っぽいこってりんこな土着的な香りとストーンズらしさに満ちあふれた曲が渾然一体になってる印象。正直ストーンズのアルバムではこれがいちばん好きだし、そういう人も多いのではないかと思う。ややマテリアルな曲もいくつかあるが、それも含めてアルバムの世界観を作ってる感じ。
『山羊の頭のスープ』
これまた問題作といわれてる一枚。南部の音楽を追求しつくして飽きたのか、らしい楽曲は二曲だけで、プログレ、ソウル、ファンク、ブルースが展開されるヴァラエティに富んだ一作。全体的にけだるく、散漫な印象もなくはないがトラックがカッコいいので最後まで聴けてしまう。ちなみにジェットのクリス・セクターはこれをオールタイムベストの一枚にあげている。意外。
『It's Only Rock'n Rol』
個人的にはストーンズの中で好きなアルバムの一枚。とにかく文句の付けようがないくらいかっこいい。このレベルで「ストーンズの名盤」扱いされてないのが不思議……確かに他はこれよりもさらに一線を画すという感じではあるが……とにかくシンプルなのが特徴で、かなりわかりやすく、そして潔い。重くなく軽いのでさらっと聴けてしまう感じはあるかも。やれ南部がどうしたとか、レイドバックされたふんちゃらみたいなのもないので入門編としてもおすすめ。ファンクとかあるし。ロン・ウッドがレコーディングに参加。
『ブラック・アンド・ブルー』
ファンクにレゲエにジャスと多彩だが、個々の完成度が異常でストレートなロックンロールナンバーも多く『山羊の頭』ほどとっ散らかってる印象はない。音質もモコっとしておらずクリアな感じで普通にかっこいい。「ホットスタッフ」と「クレイジーママ」が特にお気に入り。
『女たち』
パンクに影響されたらしく、テンポの速い曲があって妙に新鮮に聞こえる。しかもロックンロールの奏法/アレンジでやってるからパンクの始祖と言われてるドクターフィールグッドのサウンドみたいになってておもしろい。シンプルでまとまりもあるし、ファンに人気なのも頷ける。ジャケもおしゃれでかっこいいが、発売されたあとに問題になったらしい。
『エモーショナル・レスキュー』
ZAZEN BOYSの向井秀徳がストーンズのファンクナンバーがすごく好きだと言っていたがこれを聴いてなるほどと。それこそ『ZAZEN BOYS III』とか好きな人にはおすすめ。ちょいアーバン。『女たち』からの流れを汲む速い曲、らしい曲もあるが、ストーンズとはこれだ!みたいなのを想像すると肩すかしを喰らうだろう。逆にいえば、それほど振り幅が広い実験作であるといえる。
『アンダー・カヴァー』
この前のアルバム『刺青の男』を聴いてないのだが、どうもこれまた未発表だった曲を集めたアルバムらしく、基本的には『ブラック・アンド・ブルー』からの流れを汲む変態的な一枚。説明のしようがない80年代感、ディスコ、レゲエっぽい曲、パンクっぽい曲が並ぶ。ストーンズを聴き尽くしてきて選ぶ一枚という感じかなー。かっこいいんだけどね。
『ブリッジズ・トゥ・バビロン』
90年代に入りオアシスやオーシャンカラーシーンなど、ロックンロールリバイバル気運みたいなものが高まるなか、放たれた一枚。驚くほどかっこいい。というか若々しい。
『ア・ビガー・バン』
2005年に発売されたアルバムだが、代表作と言われてるアルバム群に引けをとらない超大傑作。ストーンズで好きなアルバムは?と聞かれたら間違いなくあげる一枚。とにかく若々しく、こんなかっこいいアルバムを作られたらみんな困るんじゃないかと思うほど。16曲も収録されているが、それほどまでにエネルギッシュで熱がとにかくすごい。ファンクやレゲエなど、今までに見せた実験的路線な曲も入ってるが、全部ストーンズのサウンドとして成立させることに成功したんじゃないかと思わせるほど。
というわけで、ストーンズ新規ながらもなんとなく思ったことを書いてみた。ぼくみたいにストーンズって名前聴くけどちゃんと聴いたことないなー「サティスファクション」しかハッキリわからないなーという人の参考になれば幸いである。

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