日が暮れるのが早くなった。 絢菜はふた吸いばかり吸った煙草を灰皿へ落とし込み、駆け足のところを早々、赤信号に止められた。それで手持無沙汰に、そんなことをあらためて思った。 目の前の交差点では帰宅時間とも相まって、乗用車やバス、タクシーなどの前照灯が、信号機に合わせ、多様なエンジン音と共に目まぐるしく行き交った。また、正面に見える郵便局では、しきりに郵便の赤いバイクが出入りしている。 郵便局の道なりに行き当たる踏切は、警音を鳴らし続けていた。その向こうでは夜空が、まだ微かに紅色を残している。冷たく強い風が吹いた。絢菜は紫のマフラーを襟もとで強く抑えた。 交差点の先、踏切までの道には、郵便局に続き…