河上徹太郎(1902 - 1980) 知ってるから書くか、知ろうとして書くか。 河上徹太郎には、小林秀雄について語り回想したいくつもの文章がある。一冊の本にまとまったものさえある。小林秀雄とは何者かと知りたがる読書人はいつも多かったから、その人をよく知る筋へマイクが向くのは当然だ。今日出海や大岡昇平ほか、身近に接したかたがたは漏れなく、小林秀雄観を語らされている。なかでもこの人から訊きたいと、読書人ならだれしも思うのが河上徹太郎だったろう。 いっぽう小林秀雄のほうはというと、河上徹太郎についてほとんど語っていない。理由を訊ねられて、「だって河上という男を、ぼくはよく知っているもの」と応えている…