訓読 >>> 114秋の田の穂向(ほむき)の寄れる片寄りに君に寄りなな言痛(こちた)くありとも 115後(おく)れ居(ゐ)て恋ひつつあらずは追ひ及(し)かむ道の阿廻(くまみ)に標(しめ)結(ゆ)へわが背 116人言(ひとごと)を繁(しげ)み言痛(こちた)み己(おの)が世に未(いま)だ渡らぬ朝川(あさかは)渡る 要旨 >>> 〈114〉秋の田の実った稲穂が一方に片寄っている。私もそのようにあの人に寄り添いたい、どんなに人の噂がうるさくても。 〈115〉後に残って恋焦がれてばかりいるより、いっそのこと追い慕って行こう。私が無事に追いつけるよう、道の曲がり角に目印をつけておいてください、あなた。 〈…