その詠み人の辞世として伝えられている歌は、そう多くはありません。臨終間際に詠んだ歌であると記されることが稀だからですし、逆に、そうした記録が残っていても、それが著名歌人の歌であればあるほど、後世の脚色である可能性も決して低くはないでしょう。 それでも、現代まで辞世として伝わっている歌に触れると、しみじみと胸を打つものを感じます。それは、私自身が相応の年齢になったからかもしれません。 在原業平(古今和歌集 巻第十六「哀傷歌」 第861番) 病して、弱くなりにける時よめる つひにゆく みちとはかねて ききしかど きのうけふとは おもはざりしを つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思…