訓読 >>> み吉野の山の下風(あらし)の寒けくにはたや今夜(こよひ)も我(わ)が独(ひと)り寝む 要旨 >>> 吉野の山から吹き下ろす風がこんなにも肌寒いのに、もしや今夜も私はたった独りで寝るのだろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「大行天皇、吉野の宮に幸(いでま)す時の歌」とあります。「大行天皇」とは、崩じてまだ諡号が贈られていない天皇または先代の天皇のことですが、歌の排列からして文武天皇の御製とされます。大宝元年(701年)2月の吉野行幸の際の歌とみられています。とても寒い時期です。 「み吉野の」の「み」は美称。「下風」は「あらし」にあてた文字。「はたや」は、もしや、ひょっとして。旅先での寒い…