首相発言に専門家から疑問の声 同盟の強化、他国の攻撃誘発 - 東京新聞(2015年5月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015051690065901.html
http://megalodon.jp/2015-0516-1034-01/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015051690065901.html


安倍晋三首相は、15日の国会答弁や安全保障関連法案を閣議決定した後の記者会見で、法案が成立すれば日米同盟が強化され、抑止力が高まるとの持論を繰り返した。「米国の戦争に巻き込まれることは絶対ない」とまで言い切ったが、専門家からは疑問の声が上がっている。 (後藤孝好、中根政人)
首相は十五日の衆院本会議で、安保法案について「日米同盟を強化し、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能にすることで、抑止力を一層高めることができる。日本が攻撃を受けるリスクは一層なくなる」と答弁。十四日の記者会見と同様、安保法案の意義を強調した。
だが、琉球法科大学院の高良鉄美教授(憲法学)は首相の発言に「一方的な見方だ。隣国にとって、日本が軍事力を高めることは脅威に映り、軍拡競争の口実になる」と指摘。「軍事力に頼りすぎるのではなく、外交努力による抑止力を強化すべきだ」と訴える。
首相が言うように、米国の戦争に巻き込まれないのか。
高良氏は「これまで憲法九条の制約で米国の要請を断ってきたが(法案が成立すれば)集団的自衛権を行使でき、拒否する理由がなくなる。米国の戦闘に巻き込まれるのが現実だ」と否定。「自衛隊湾岸戦争イラク戦争のような戦闘に参加しない根拠は、十分に説明されていない」とも指摘した。
軍事評論家の前田哲男氏も「集団的自衛権を解禁すること自体、巻き込まれる可能性を自然と高める。米軍の戦闘も後方支援するとしていて、巻き込まれないどころか主体的に関わろうとしている」と強調した。
法案について、首相は武力行使に厳格な歯止めを定めたとも話している。
しかし、高良氏は「密接な関係国から『集団的自衛権で助けて』と言われれば、政府は自衛隊を派遣する方向になる。歯止めは機能しない」と述べた。
また前田氏は、日米同盟強化は抑止力を高めるとの首相の説明について「対抗する国々の警戒感が高まり、先制攻撃を誘発する可能性がある」として、かえって危険だと指摘した。
首相が会見の冒頭で、七十年前の不戦の誓いを守り続けると宣言したことにも、「一種のだましの技術だ。戦争を手伝う国家になるのに、なぜ不戦の誓いをするのか」と疑問を示した。
首相は、後方支援で危険が生じれば活動を中止・退避するとも述べたが、前田氏は「紛争地域では、戦闘の現場が刻々と変わる。判断が遅れた場合、即座に戦争に関わってしまうことになる」と、首相の説明通りになることは難しいとの考えを示した。

首相「殉職自衛隊員1800人いる」 「戦死者」への批判かわす狙い - 北海道新聞(2015年5月16日)

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0134402.html
http://megalodon.jp/2015-0516-1015-58/dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0134402.html

殉職者の大半は任務中の事故によるもので、戦闘に巻き込まれて亡くなった隊員は、過去1人もいない。隊員に「戦死者」が出かねないとの批判をかわす狙いとみられるが、性質の違う数字を挙げる首相の論法に、専門家は「論理のすり替えだ」と批判している。

大阪での熱い論戦 住民投票の現場から(保坂展人世田谷区長) - Huffington(2015年5月13日)

http://www.huffingtonpost.jp/nobuto-hosaka/osaka_b_7266278.html

世田谷区は、1991年(平成3年)から地域行政制度を発足させています。区内の人口11万〜24万人の範囲ごとに5つの総合支所を置いています。各総合支所には、子育て支援や介護・福祉・まちづくり等の区民生活にとって必要な機能と窓口を置いて、それぞれに約200〜350人の職員がいます。さらに、区民の生活領域に近い27地区に細分化した「出張所・まちづくりセンター」を運営しています。

今回の住民投票で賛否が問われるのは、「大阪市を解体して5つの特別区を設置すること」ですが、暮らしの現場から見ると、現在大阪市内にある24の行政区が5つの特別区に統合されるという側面をもっています。一方で世田谷区は、区内で分権をすすめ、各総合支所に予算と権限を移そう、27の出張所・まちづくりセンターに防災や福祉の身近な相談の窓口を設置して「地域包括ケアの世田谷モデル」をつくろうとしています。

88万人という県レベルにも匹敵する規模の自治体で、そもそも区役所本庁だけですべてを切り回そうとしても、ていねいな仕事やサービスは行き届きません。人口11万から24万人の地域ごとに総合支所を置き、さらに生活の場に近い人口平均約3万人の出張所・まちづくりセンターに、防災コミュニティづくりや身近な福祉の相談の窓口をつくろうとしている世田谷区で、もし「総合支所を統合して1ヶ所の本庁へ」という提案が出てきたとしたら、住民サービスの密度は粗くなり、水準は下がります。

住民サービスの質が維持されるのか、低下するのか。災害時の危機管理や地域の対応力は維持されるのか、分解するのか。そこが、大阪市民にとっては、いちばん大きな関心事ではないでしょうか。

20日間という運動期間がある住民投票では、すでに多くの大阪市民が期日前投票に出かけているようです。東京の特別区には区長公選さえ奪われた苦難の歴史があり、自治権拡充を交渉と運動で勝ち取ってきました。それでもなお多くの課題を残していることは、誰もが認めるところです。

大阪市は、特別区よりはるかに多くの権限をもっている政令市です。人口270万のその大阪市を一度壊してしまえば、元には戻せません。

東京の特別区の課題と現状について2週続けて書きました。大阪市民の間で起きている住民投票の賛否の議論には、これからの全国の自治体が直面する分権や自治のあり方について有益な課題がたくさん出ています。