そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

メッセージ

http://www.message-movie.jp/
監督:ドゥニ・ビルヌーブ 脚本:エリック・ハイセラー 原作:テッド・チャン

 

プリズナーズ」「ボーダーライン」などを手がけ、2017年公開の「ブレードランナー 2049」の監督にも抜擢されたカナダの鬼才ドゥニ・ビルヌーブが、異星人とのコンタクトを描いた米作家テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を映画化したSFドラマ。
ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。
主人公ルイーズ役は「アメリカン・ハッスル」「魔法にかけられて」のエイミー・アダムス。その他、「アベンジャーズ」「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、「ラストキング・オブ・スコットランド」でオスカー受賞のフォレスト・ウィテカーが共演。(「映画.com」より)

 
ちょこっとだけ映画サイトのネット記事を見ていったんだけど、そのくらいでも見てないとやばかったw
とにかくものすごく真面目なSF映画。このSFすぎる物語を真面目に作ってるドゥニ・ビルヌーブ監督はすごい。
ぶっちゃけ、謎の宇宙船の異星人たちと会話しようとするだけの話。(もちろんストーリーはそれだけではないが)
ただ映画としてはとても面白かったんだけど、ストーリー自体は、なんと言っていいのか…原作読んでればもう少しわかるのかもしれないけど、何の前情報もないとSFすぎてツラいかも。描写も極力ソリッド。でも「表義文字には時制がない」…くらいは知ってて観るべきかも?でないと劇中でその話が出てきてもスルーしちゃうかも(スルーするとちょっと理解が追いつかなくなると思う)
最近のハリウッドの映画はすべてがバランス大事って感じで調整してくるみたいだけど、延々と文字の解読をするシークエンスや異星人とのコンタクトの繰り返しの割に展開は緊張感を保ってるとか、基地に入るときのIDもらったり健康診断したりファーストコンタクトで手が震えたり吐いちゃったりするところを省略しないのがよかった。ディテール大事。
この映画、一回観ただけだといろいろわからないところや疑問はあるんだけど、主人公のルイーズが異星人(ヘプタポッド)の文字を理解できるにしたがって全体の話の意味がわかってきて、ストーリー自体はそういう話なのかーと気がつく辺りからちょっとどんでん返しっぽかった。
そう考えると、原題の「ARRIVAL」よりは邦題の「メッセージ」のほうがしっくりくるかなあ。確かに彼らが到着したんだけど、話はそっちじゃないと思うw
あと北海道にきた宇宙船がどうなったのかは知りたかったな。せっかく日本の名前が出たと思ったのに結局は中国だし。良くも悪くもまた活躍したよ!

その辺の各国事情はおまけで、メインはヘプタポッドの表義文字を解読できるかどうか、それによって主人公の人生はどうなったのかという硬派なSFドラマで、観て面白いかどうかというより観終わって考えて意味がわかって納得する=面白いって映画かも。
あの異星人の表義文字が現れるVFXがとても美しいし、他にもたぶん文章では表しづらいものを視覚に訴えるということでは映像化の意味はとてもあると思う。その割に映画のテンポは小説のようなゆったりした味わいがあって、映画では珍しく行間を読むことを強いられる映画ではあるかなあ。
正直この映画は見終わって自分の感想が正しいのかどうか考える感じだったんだけど、映画サイトのレビューなんかをざっくり読んでみてやっといろいろ納得できた。ちなみに金曜公開の3日めだというのにパンフが売り切れてて買えなかったので余計に補完できなくて。万人向けではないと思うけどアカデミー賞ノミネート作品なんだし、パンフはそれなり用意してほしかったなあ。
以下ネタバレ。
 
 
そういや他の人のレビュー読んでて、ただのSFじゃなくて人間ドラマだったっていうの見かけたけど基本SFってセンス・オブ・ワンダーによって人間ドラマに説得力をもたせるジャンル、つまり特殊な状況設定を使ってより深く人間ドラマを描くための便利な舞台装置だと思ってるんで、ちゃんとしたSFは人間ドラマや社会問題のメタファーを含んでるものだと思いますデスよ。オモシロ楽しい空想科学だけがSFじゃないデスよ。
ってことでちょっとだけネタバレな感想をいうと、冒頭のシーンがルイーズとその娘ハンナの二人の生活からなので、最初はルイーズは娘を亡くしたトラウマを持つ女性だと思ってたんだよね。(でも途中でハンナは小さい子供じゃなくティーンくらいで亡くなってるから年齢が合わないんだけど)
ルイーズのモノローグもあれだとちょっと時制がわからない感じだし…ってのがある意味ミスリードっぽくなってるように思えたかな。
そして劇中でも語られるのは言語が違うと思考も違ってくるということで、ヘプタポッドたちが使う時制のない表義文字を理解することで思考自体も変わっていくってのはわかる。
でもじゃあ時制がない(ノンリニア)ということはどういうことなのか、その範囲は…となると映画では描写が足りなくてモヤッとする感じかな。たぶんあの文字を理解できた少数の人達だけがヘプタポッドの思考ができて物事や自分のことをノンリニアで見られるってことなんだろうけど。(ヘプタポッドたちはどうやって3000年先のことを知ったのか気になる)
でもこの映画のメッセージはそういうことではなく、自分の人生の先がわかってたとしてもその通りにするのかどうかってことで。
ルイーズがそれを迷ったかどうかははっきりとは描かれてなかった(ような気がする)けど、自分の人生がノンリニアで見られる人は否応なくその通りにするしかないんだろうし、だからルイーズはそれを選んだろう。それはたとえ悲しい結果になるとしてもその過程や経験こそが大事であって、人が生きる意味というのは幸・不幸合わせてそれを受け入れて存在していく(生きていく)ということなんだなあと。
言われてみれば何が起こるのかわからないリニアな人生ではそこに留まることは出来ないから、先がどうあれ前に進むしかないんだけど、未来がわかっててもわからなくても自分に起こる出来事を受け入れて生きていくことが人が存在する理由なのかなあと、この映画を見て改めて感じました。
そう考えると先の見えない人生を生きる勇気をもらえるってことに気づかせてくれる、いい映画だなあって気がしてきた。
相方が原作買うって言ってるからそのうち読むかも。