文藝春秋の新刊 2008・1 「宝船」 ©大高郁子

土鈴でしょ、わたしの職場では正月1日の朝、縁起物というか干支の土鈴を先着で配ります。まあほとんど何の役にも立たぬ動物のオブジェでしょ。でもこんな七福神ってけっこうな細工物で、無料で配れはしない─となると、こういうのお金を出して購入するんでしょうかね。昨年1月は招き猫でこんな風な和風の背景色ではなかったか。
─いや、そうなんだよね、先月かぼちゃの時もわたし意地悪にぐだぐだいったような気がするのです。無機質で色使いに気をつけていればいいよ─とかクライアントとの会話であったりもするのかな?

文藝春秋新刊案内チラシ07年12月はこちらにあります

 集英社文庫 2008年1月チラシの紹介

集英社 新刊案内 vol.1 2008

注目の一冊 吉田秀和 永遠の故郷─夜 

堀江敏幸氏と対談する吉田秀和
集英社文庫 1月の新刊 18日発売
北方謙三
水滸伝 十六 馳驟の章

金原ひとみ
AMEBIC アミービッグ

姜尚中
在日

森博嗣
工作少年の日々

池永陽
ゆらゆら橋から

中島たい子
漢方小説 第28回すばる文学賞受賞作

阿刀田高
黒い回廊 阿刀田高傑作短編集

関川夏央
現代短歌 そのこころみ

岡野あつこ
ちょっと待ってその離婚! 幸せはどちらの側に?

中島らも
頭の中がカユいんだ

ローリー・キング 布施由紀子=訳
捜査官ケイト 過去からの挨拶


集英社文庫 すばる文学賞小説すばる新人賞受賞作フェア

単行本 新書等新刊案内
第6回 開高健ノンフィクション賞締切迫る

 集英社文庫 07.12月刊 桐野夏生 I'm sorry,mama. アイム ソーリー、ママ

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

「びっくり人間大集合!」みたいなでだしからの展開に驚き呆れ「どうしよう、怖いよお」って嬉しい期待感につつまれちまった読書体験の始まりだったのだけれど、中途(APAの社長みたいなおばさんが出た)以降、物語は悪い意味での「悪夢」みたいで収拾がどんどんつかなくなったみたい。仕方なしに主人公を脅迫的に隅田川で溺死させ無理やりの大団円みたいで拍子抜けな読書体験でした。
APAの女社長宅に取り入ったアイ子という設定は大正解なのだから、あのあと開店早々の新規ホテルでの恐るべきスラップスティックをみたかったなあと慨嘆しても始まらないけど。
《1》で焼き殺される福祉ババアと年の離れた元孤児の夫婦。《2》では養育家庭のなれの果てのジジイがリュウマチで寝たきりの古女房の衣装で女装ごっこ。そして《3》でようやくアイ子の心理が描かれ、《4》で彼女の壊れた神経があらわになる…んだが、それ以降が紙芝居か。アイ子の母が誰だって淫売屋の土地の権利がどうだって、読者にそれらの切迫は伝わらず呆気にとられたままの後半だった。

…モンスター・ペアレンツなら、身近にもいる。夜中にゴミを出す主婦、明け方に騒音を撒き散らすオバさんもまた私たちの隣人である。そういう連中に対しても、内心で「死ねばいい」と思っている。誰だって瞬間的に殺意を抱いたことくらいある。ただ、自分には守るべき家族や体面もあるから、殺意を抱いた瞬間に、鼻で笑い、寛容さを取り戻すのである。…
 「I'm sorry,mama. アイム ソーリー、ママ」解説 島田雅彦 より

たがの外れたこんな時代を、切り取る術だけ桐野夏生は巧みになって、もしかしたらそんな表層を描くことを義務感だと勘違いして、彼女は物語をおろそかにしてはいないか?そんなもの戸梶圭太に任せ、時代を捉えた重厚な小説を書いてほしいです。