苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

集団的自衛権―いったい何のために?

6月の通信小海、やっと書きあがりました。第一面と二面.少しペンを入れました。
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 国会で、安全保障関連法案が論じられている。内容は、集団的自衛権行使を具体化するための法整備つまり米国その他の同盟国が他国と戦争になったとき、日本がその「他国」と争っていなくても世界中どこにでも行って、同盟国に加担するための法整備である。疑問点を挙げたい。
 まず、集団的自衛権は国連が認める正当な権利だといわれるが、その正当性は怪しい。過去、米国はリビアグレナダイラクパナマなどに先制攻撃(侵略)をしてきた。ベトナム戦争は米軍がトンキン湾で先制攻撃を受けて始まったとされたが、それは米国の謀略だったことが公文書公開であきらかになっている。国会である野党議員は、政府に「これらの戦争が先制攻撃であり国連憲章の否定する侵略にあたると認定するか?」と質問したが、首相も外相も言を左右して応えようとしなかった。過去に米国が行った侵略戦争をさえ、そうだと認定できない政府が、今まさに行われている戦争について、「それは先制攻撃ですから、協力いたしません。」という態度を取れるとは到底考えられない。
 また、首相は隣国の脅威を声高に主張し、そのため集団的自衛権行使が必要だという。隣国の脅威は事実だろう。だが、そうした脅威はいまに始まったことではなく、冷戦時代からずっとあったし、今よりも緊迫度は高かったかもしれな。だが、これまで個別的自衛権で対応してきたのである。自衛のためなら、従来の個別的自衛権行使の法制に手直しをすれば十分だという専門家の意見も多く聞かれる。
 そこで、首相は日本周辺だけでは安全保障は不十分だという根拠として、しきりに「日本に来る石油の八割が通るホルムズ海峡の機雷掃海の責任がある」と言う。だが、輸入相手国第一のサウジアラビア(33%)も第二位のUAE(21.8%)も、海峡を迂回して石油を運ぶパイプラインを持っている。これにホルムズ海峡経由でない石油20%を加えれば、七十五パーセント確保できる。備蓄も半年分ある。しかも、発電燃料の四割を占める天然ガス輸入についてはホルムズ海峡を使う必要はゼロである。こんな実情なのに、「燃料枯渇は国家存立の危機」だからホルムズ海峡の機雷掃海のため集団的自衛権を行使するなどということが可能なら、なんだかんだといって、いつでもどこでも可能となってしまう。
 地球の裏側までも米国の戦争につきあって自衛隊員を派遣し、武器・弾薬・兵員を運ぶなら、自衛隊員の生命のリスクが高まることは避けがたい。イラク戦争でも、「非戦闘地域」の駐屯地に何発もミサイルは撃ち込まれた。現地と帰還後の自衛隊員自殺者は五十四名に上る。ちなみに米国では、アフガン・イラク帰還兵は年間八千名、毎日二十二名が自殺している。殺人機械化する訓練を受け、戦地でのあまりに悲惨な体験をして、心を病み、帰還後も家庭にも社会にも適応できず、生きてゆけなくなるのである。遠い戦地の悲惨は国内に跳ね返ってくる。
 国防のためなら個別的自衛権行使で済み、エネルギー輸入の問題もないのに、政府はなぜ若者にこれほどまでの犠牲を強いて、集団的自衛権行使に踏み切りたいのだろうか?目的不明、意味不明である。
 外務官僚はイラク戦争で「カネは出しても血は流さない」と侮辱されたことがトラウマになっているからだとある本で読んだ。私は、むしろ血を流さないで平和を作ろうという憲法を誇りとすべきだと思う。また、首相は列強と肩を並べて戦争をしていたかつての「美しい国」「一等国」復活のため、また「国連常任理事国」の肩書きを得るために、であろうか。言いにくいことだが、恐らく彼らの虚栄心が集団的自衛権行使の動機のように見えてならない。もう一つ理由があるとすれば、武器製造業界の利益のためだろうか。
 集団的自衛権行使は憲法9条違反である。憲法九条第一項は「武力による威嚇又は武力の行使」を放棄すると定めている。昨年七月、首相は内閣法制局長官の首を挿げ替えて、無理やり「集団的自衛権行使は合憲」と言わせ、閣議決定を出した。ゆえに、この決定に基づく安全保障関連法はすべて違憲である。
 わたしたちは、神の摂理のもとで、この戦火の絶えない悲しみの世界のなかで、戦争放棄をさだめた憲法をもつ国に生を享けた。世界のどこにでも出かけ他国の戦争に加担するための集団的自衛権行使に私たちは反対すべきであると思う。

「彼らはその剣を鋤に、その槍をかまに打ち直し、国は国に向かって剣を挙げず、二度と戦いのことを習わない。」イザヤ二章四節


 ちなみに、安全保障関連法案については内閣府HPをどうぞ。とてもややこしいです。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html