「エコノミスト」2月2日号特集「次なるスーパーモデル北欧」(その1)

1. 下前さん(FB)さわやかNさん、コメント有難うございます。
「我々は生まれた時から死刑宣告されており、人生とは執行猶予中の諸々であろう」とはまさに心に沁みます。
ただ、法律の「執行猶予」は執行されずに刑期が終わるのが普通ですが、人生の宣告はいつか必ず執行されるのですね。


さわやかNさんの、ご質問の方は、私の能力ではよく分かりません。少なくとも、ことビジネスではあまり変わらないように思いますが・・・。
「文化」で捉えれば、故加藤周一の『日本文化における時間と空間』は、日本人の意識は「今・ここ」にある、と言います。
――――「日本では人々が「今・ここ」に生きているようにみえる。
その背景には、時間においては「今」に、空間においては「ここ」に集約される世界観があるだろう―――

この点は以前、ブログでも少し紹介しました。
http://d.hatena.ne.jp/ksen/20111209


2. 仮にこういう日本人の「世界観」があるとしたら、それは「文化」だけではなく、、どういう「社会」や「国」や「人間関係」を作っていくのだろう?他の国はどういう世界観で、人間と社会を作っているのだろう?
と考えています。

2月1日のブログで http://d.hatena.ne.jp/ksen/20130201
「繁栄」というキーワードによる国別比較「レガタム繁栄指数」を紹介し、
北欧4カ国、豪州やNZ, オランダやスイスが常にトップ・テンを占めることを報告しました。

今回は、また硬い内容で恐縮ですが、北欧に焦点を当てて、その「繁栄」を報告します。


すでにご存じの方も多いかもしれませんが、いま、北欧主要4カ国(デンマークフィンランドノルウェイスウェーデン)の国家運営が、「新・北欧モデル=The new Nordic model」と呼ばれて注目を浴びています。

英国の雑誌「エコノミストThe Economist)」2013年2月2日号が「次なるスーパーモデル北欧−なぜ世界は北欧諸国を見習うべきか?」と題して、15頁の特集を組みました。

この記事を私なりの理解と流れで(つまり文章を自由に分解して)、以下に要約したいと思います。


3.(1)いま例えば、
デンマークに行きつく(Getting to Denmark)」という造語がある。
オバマ米大統領の施策を指して「スウェーデン化(Swedenization)」と言う人もいる。
私たちは果たしてデンマークスウェーデンに追いつくことができるだろうか?

(2)  そして「エコノミスト」によれば、
かって、セシル・ローズ(19世紀後半の大英帝国を象徴する政治家)は、「イギリス人に生まれることは、宝くじの1等に当たるぐらい幸運なことだ」と言ったそうだ。


しかし、現在であれば、平均的な才能と資産をもって生まれるとしたら幸運は、英国に代わって「ヴァイキングになって北欧に生まれること」だろう。


(3)まず理解すべき点として、
北欧4カ国は、おそらく現在、もっとも良く統治されている国々である。
何れも格付けの最上位「トリプルA」を維持している。

例えば、経済・財政についてスェーデンを例にとると、この国の「静かな革命」は、
(1) GDP比の公的支出は1993年の67%→現在49%
(2) GDP比の公的債務残高は1993年の70%→2010年には37%
(3) 財政収支は、同期間、11%の支出増→ 0.3% の黒字へ
といった成果をあげている。


(4) しかし、評価すべき点はそれだけではなく、国民にとって住みやすい国だということ。

様々な国別統計―生産性やイノベーションのような経済指標から教育水準、格差や犯罪
および国民の幸福度のような社会指標に至るまで―でこの4カ国はトップランクを保
っている。
彼らはいま、EU諸国が見舞われている経済危機に無縁なだけでなく、アメリカが抱え
る社会的な病状にも直面していない。

しかも、彼らは、20世紀の大半を社会民主党の政権下、充実した福祉で不平等も少な
く、国民の満足度が高い国々だった。
それが、「大きな政府」の付けがまわって、1990年代には経済成長が低下し深刻な経済金融危機にも見舞われた。
なぜ、そのような危機から立ち直ることができたのか?どのような「改革」に取り組んだのか?


(5)その上、4つ合わせた人口が26百万人しかいない小国で、辺境にあって、凍りつくような冬と荒野しかないような国々が、なぜかくも成功しているのか?
かつ、その成功は、EU諸国やアメリカ・日本のような、もっと人口の多い先進国にも、教訓となるのだろうか?


3. かっての「高福祉・高負担」の北欧モデルが壁にぶつかり、いま「新・北欧モデル」として再び、改革に成功している。
優れた福祉水準はさほど落とさず(依然として世界で最も充実している)、
富裕層・企業の国外脱出をもたらした高い税は少しずつ下げ、
政府の収入と支出を減らして、かつ財政の黒字化を果たし、
国民の満足度・幸福度は高い・・・・

どうしてそんなことが可能なのか?

今回は、長くなるので、問題提起だけで終わってしまいます。