ジオメディアは既存のビジネスモデルを超えられるか

昨日の熱がまだ冷めず、とにかく今日中になんか書かなきゃみたいな感覚で書いたので、議論というよりレポート的な感じで呼んでください。

位置情報メディアに関するイベント「第5回ジオメディアサミット」が4/2に開かれた。
http://atnd.org/events/3748

その最初の講演は、TechWave編集長の湯川氏の「グローバルサービスと Geomedia」。シリコンバレーで位置情報がいまどうなっているかを、非常に密度の濃い内容でまとめてくださったものだ。位置情報メディアは、日本では「位置ゲー」に代表されるように、独自の非常に先進的な進化を遂げてきた。一方、シリコンバレーではベンチャーキャピタルからの日本からすると桁違いの資金を受け、サービスとしてはまだまだな状況から、大規模な試行錯誤が始まっている。

海外の事例としては、以下のようなものがあげられていた。まずはベンチャー系。

  • おなじみのfoursquare。Check inを流行させ、政治家の利用も始まっている。
  • yelp。どうやら最近はいまいち。
  • Rally Up。foursquareのプライバシー設定をよりきめ細かにし、SNS的な使い方を可能に。
  • placecast。各ブランドにアカウントがあり、それをfollowするとクーポンが手に入る。
  • LunchWalla。「友達と」「飯を食いに行く」ことをユースケースとして、友達を呼んでから、飯屋を選んで投票するところまでを1サービスで完結。

一方、ジオメディアにはソーシャルメディアと二人三脚で歩いてきた側面もあるので、大手ソーシャルメディア、もしくはプラットフォームが何をしているか。

  • FaceBookソーシャルグラフを積極的に活用し、LunchWallaなどでの人間関係の足がかりを提供。「緯度経度ではなく場所Place」。
  • Apple。広告「iAd」を提供予定。「位置情報=地図ビジネス」。
  • twitter。ビジネスモデルを「位置情報とモバイル」とする。まだ位置情報を提供する人が少ないのがネック。広告プラットフォームを提供予定。
  • Googleモバイル広告「AdMob」を提供。Google Mapsに新しいレイヤー。

私は、とりあえずこれくらいの事例があれば、海外のジオメディアを語る前提になると思う。しかし、ちょっと引っかかる部分があった。それは、「どう収益を上げているか」さらに、「どういう活用をしているか」が、広告ばかりだったということだ。「ジオメディアはメディアなんだから、広告モデルは普通なんじゃないの?」という意見もある。確かにその通り。しかし、ジオメディアにはもう少し何かできるんじゃないかと思うのもある。

というのも、ジオメディアは今の「ウェブサービス」の枠を超えているからだ。ウェブサービスは、基本的に、人と画面が対面しているものだ。家でウェブサービスを使えば、ひきこもってるのと実質変わらないし、外で使っても、自分とウェブの閉じた空間が作られる。だから、ビジネスで使うにはにはECか広告しかなかった。しかしジオメディアは違う。そこには人のリアルな行動と、それをとりまく空間がある。画面に囲い込もうとしても、どうしても外に出てしまうのだ。外には、当然広告や店だけがあるわけでもないし、購買や閲覧だけをしているわけではない。

ジオメディアサミット本編の最後のLTでも興味深い指摘があった。ロカボ上田氏の「ジオメディアは革命だ!〜空間を飼いならせ!〜」だ。その中で、「ジオメディアは、空間を飼いならすことの始まりで、パラダイムシフトだ」という発言があった。時間を例にとると、産業革命前はhour単位で扱われていた時間が、second単位に変わったことで、社会が大きく変わった。それと同じことが、空間でも起こるということだ。個人的には、それと同時に、時間と空間のコラボレーションが起こるのも興味深いと思う。

だとしたら、ジオメディアは人の普段の行動全般を記録し、情報を提供することになる。購買という限られた活動だけがジオメディアの可能性ではない。というか、ウェブの中心だったECや広告の枠を超えて考えている連中がシリコンバレーにいるかもしれない。と思って、会場で「広告モデル以外のビジネスモデルの事例はないか」と質問をしてみた。どうやら、まだそういうプレイヤーはいないようだ。

一方、会場やustreamからのtwitterへの書き込みでは、いろいろな意見が得られた。
http://togetter.com/li/12383

これをまとめてみる。

  • コロプラのような、旅行へ誘導するモデル
  • アイテム課金
  • 地図を売る
  • 地図基盤、プラットフォーム、地図と連動したプロダクト、車、カーナビとか
  • 位置情報付きの電子書籍、歴史書など
  • 不動産

このうち、最初の2つはこれから誰かがやってくれるだろうし、既存のウェブや広告から見てやりやすい。メインストリームに十分なると思う。真ん中の2つも、伝統的な位置情報ビジネスを、ソーシャルと結びつけたら面白いかも。不動産も、マッシュアップサービスの先駆者、craigslistの例もあり、今いる場所の近くの物件を探すというのは有望だ。下手したら、外で「この町は雰囲気がいいな」と思った瞬間に物件の情報を得られるのだ(これも広告ともいえる)。

個人的に一番興味を持ったのが、位置情報連動電子書籍。ベタな例では、旅行雑誌などを電子化する際に位置情報をつけるというのは需要があると思う。それだけじゃなくて、位置がいろいろ出てくる小説を誰かに書いてもらって、それを元に、動きながら小説を読んでいくみたいな、ARGに近いアプローチも可能だろう。この点については、アイデアをどんどん出して、何かやってみたい。

あまりまとめられないうちに即席で結論を出すと、ジオメディアは今までのいろいろなものを、位置情報を前提とした形で変えていくと思う。また、その数だけビジネスモデルの数があると思う。