チラ裏: 違法着うたとDL300KB制限

いわゆる違法「着うた」サイトは3G携帯電話での着うたサービスが3社出揃った頃から結構な数があって、とくに中高生には人気が高いようです。その存在は以前から広く知られながら野放しに近い状態でしたが、一昨日ついに摘発第1号が出ました。どうやら告発したのはavexのようですが、件のサイトには広告も載っていて、開設者が違法音源で収入を得ていたのが告発に至った原因かと。
そもそも国内の3G携帯ではコンテンツホルダーの嫌がる無料着うたを自作させないために、各社ごとのDRM仕様が規定されています。たとえばFOMAでいうところの「iモーション」では、着信音(or映像)として登録可能な「着モーション」として扱えるのは特殊なDRMヘッダが付加されたファイルだけで、かつメモリカードやデータケーブル経由でなく端末で直接ダウンロードする必要がありますが、ヘッダについては最初の着モーション対応機である900iシリーズの登場から程なくして、早々と解析されてしまいました。ちなみに解析に至った経緯はキャンペーン用だったかの無料着モーションサイトにPCからアクセスでき、解析に必要なDRM入りファイルが入手できたためとされていますが、マーケティング上の動機から、関係者が故意に情報を流出させた可能性もあると見ています。解析されて本当に困っているなら、新シリーズの端末を出す時点でDRMの仕様を変更し、旧シリーズ用のDRMを期限を切って段階的に廃止することも可能だったはずですし。


ところで、最近とある事情から携帯各社のコンテンツ管理や制限について調べていたのですが、「フルブラウザ」を謳う各社のPCサイト閲覧用ブラウザでも、そうでない普通の携帯ブラウザ(CHTML/WAP系)同様に読み込みページサイズや任意で(いわゆる勝手サイトを含めて)ダウンロード可能なファイルサイズに1MBとか500KBとかの制限があるのですね。中でもSBMの300KB制限が最もきついようです。
各社の3G携帯には任意にDLできる着うたや動画のサイズに制限があり、FOMAがそうだったことから300KBというのがひとつの基準になっているようです。後にFOMAでは機種によっては500KBに緩和され、HSDPA対応機種では5MBとか10MBまで拡張されました。もっともFOMAプログレッシブダウンロード(ストリーミング)では2MBまで可能でしたし、「着うたフル」のように事業者側がコントロールできる公式サイトでは、もう少し大きなファイル(1.5MBとか)でもDLさせています。
SBMのHSDPA端末は今のところスマートフォンX01HTを除けば、Samsung東芝しかないわけですが(22日にはもう少し出てくるようですが)、Samsungには従来の携帯ブラウザしかなく、初のフルブラウザ(「PCサイトブラウザ」)搭載HSDPA端末となった東芝911Tでも1ファイルあたり300KBの制限が健在のようで、残念です。他社と比べて圧倒的に劣る部分といえるでしょう。
もっとも、この300KB制限の存在こそが、端末内なら無制限のスマートフォン用「PCサイトダイレクト」との価格差なのだ、と言ってしまえばそれまでなのですが、最近のドコモ端末、中でもP903iX HIGH-SPEEDでは最大DLサイズが10MB、ストリーミングでは無制限に拡張され、しかもパケット定額料はPCサイトブラウザ(制限のある方)と同額ですからね(一方でブループラン限定とはいえ、SBMにもPCサイトダイレクトをほぼ半値近くで使わせてくれるオプションがありますし)。


先日のソフトバンクグループ決算説明会後の質疑応答でも、300KB制限についての質問が出ていました。「準備ができた時点で発表する」と答えたそうなので、解除に前向きと一応受け取ってもよいように思えます。
「300KB制限をやめてしまうと違法着うたフルが蔓延するからダメだ」という事業者を擁護するかのような書き込みが、某巨大を含む各掲示板で結構見受けられますが、実際にそのようなコメントが事業者サイドから行われたことはないはずです。現実は事業者自身がDRMクラッキングへの対策を取らず、違法着うたも今回の摘発まで野放しにしてきたわけですからね。
SBMが300KB制限を頑なに続けるのは、明らかにトラフィックコントロール目的だと思います。PCサイトダイレクト、PCサイトブラウザの正確なユーザー数は公表されていませんが、いろいろなところから漏れ聞こえている数の情報を総合する限り、前者はおそらく10万人もいないのでは、と思います。一方、後者はX01HTよりもはるかに数が出ているはずの81x/91xシリーズで「パケットし放題」(ないしは旧「デュアルパケット定額」)を契約している全員が対象となりうるわけで、両サービスが開始され、対応端末が発売された昨年10月以降400万人近くが純増したSoftBank 3Gユーザーのうち、すでに100万ユーザーを超えている可能性もあります(もちろんその全員がアクティブユーザーではないでしょうけどね)。ユーザー層もスマートフォンがやや高年齢(たぶん30〜40代)でWeb閲覧やメッセージングが主体なのに対し、81x/91xシリーズは着うた/着うたフルを好んで利用する若年層(10〜20代)が中心と思われます。
つまり、81x/91xでPCサイトブラウザを利用するユーザー層は、大容量DLについてはスマートフォンユーザーと比べてもむしろ利用意向が強い層とさえ考えられ、しかも絶対数が数倍から十数倍と多いわけです。300KB制限が緩和されれば、トラフィックに与える影響はPCサイトダイレクトの比ではないかもしれません。
ところで、NTTドコモはPCでも使える64Kパケット定額サービスを今秋からHSDPA端末限定で開始しますが、HSDPA端末に限ったのは、きちんとしたトラフィック制御ができるような仕組みが導入されているからなのでしょう。@Freed廃止に伴う代替サービスの開始に向け、それを見越して計画的に網整備を進めてきたのだろうと思います。今秋時点での網容量にも自信を持っているのでしょう。
すでにFOMAのHSDPA基地局は3大都市圏や政令市、県庁所在地での整備がほぼ一巡し、地方都市級への展開と容量の増強が図られているところですが、SBMのそれは3大都市圏を除けば未だ散発的です。そもそもSBMはエリアの面展開すら途上にあるわけですし、急激にユーザーが増え続ける中でトラフィックの増加にきちんと対応していけているのか、少々(かなり?)不安に感じているところです。