はじめに
ゲームソフトは1995年3月11日発売で、11,400円と一万円越え。前年の1994年にSSとPSが発売され、翌年の1996年には64が発売と、SFC末期の作品。1999年にPSへ移植され、2008年11月20日にはDS版が発売されました。

- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: Video Game
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クロノトリガーはその後、サテラビューでソフトが配信され、サウンドノベルである「ラジカル・ドリーマーズ」はクロノ・クロスの原型となった。開発チームは、ゼノギアスとクロノ・クロスを世に送りだした後、解散している。
時を駆けるゲームで子供ながらにワクワクしたゲームです。誰しも一度はタイムマシンに思いをはせたことがあるでしょうが、その思いを元にしたようなRPGです。スクウェア作品には珍しく、DQ式のしゃべらない主人公。ゲーム中、自身の好きなタイミングでラスボスを倒すことができるマルチエンディング形式。そのマルチエンディングを楽しむために設けられたのが「つよくてニューゲーム」というシステムで、一度クリアすると*1レベルやわざ、アイテムを引き継いだ状態でプレイできる。「つよくてニューゲーム」は秀逸で、取りこぼしたアイテムや本来はひとつしか手に入らないアイテムを周回プレイで回収することができる上に、レベルも上がる。大変長い間遊べるシステムである。そのため、以降に同じようなシステムを有するゲームがスクウェア以外からも発売された。

- アーティスト: ゲーム・ミュージック,光田康典
- 出版社/メーカー: ポリスター
- 発売日: 1995/03/25
- メディア: CD
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光田康典は聖剣伝説2の菊田裕樹とは異なり、作曲を自身を表現する手段と考えているようで、そのためクロノ・トリガーではシナリオに沿った音楽を作る事で悩み、スランプになりがちだった様子がライナーノーツから窺い知れる。自身を表現するための作曲と、背景曲としてのゲーム音楽のジレンマに悩んだ結果が早めのスクウェア退社のフリー化なのかもしれない。その決断は大変良い方向に進んだと言えるだろう。
- GAMERS EDEN クロノトリガー サウンドトラック
- 全曲解説をなさっております。是非ごらんあれ。
静と動の織り成すハーモニー
ゲームを起動して先ず流れるのは、これからの冒険のはじまりを感じさせる文字通りの「予感」という曲。画面の振り子の揺れと音がシンクロし、時計を元にしたタイトル画面が流れてくる。振り子は「時」を巡る冒険が待ち構えている!と心躍らせる演出で、DS移植のトレイラーなどでも使われていました。短く、ドラムロールで盛り上がる曲ですが基本的に静かな始まりを「予感」させる曲です。この「静」なる曲である「予感」の後に、対になるかのように「動」なる「クロノ・トリガー」が流れ始める。物語が動き始まるときにかかるクロノトリガーのメインテーマである。イントロからして躍動感あふれる曲だ。激動たる時の変化を感じさせる導入部が二度繰りかせされたかと思うと、途端にゆったりと静かで、その曲調は永遠に続くかと思われる偉大なる時の流れを感じさせる。そして曲の終焉になると再度盛り上がるのですが、「クロノ・トリガー」の曲の終わりは本当にかっこいい。長い長いトンネルを抜け出した後当たり一面真っ白になったような、つまりタイムワープを感じさせる。このように、「クノロ・トリガー」は同じ曲の中に「静」と「動」の詰まったメリハリの利いた曲である。
「クロノ・トリガー」は要所要所で使われるが、この手法はFF4でも見られました。「クロノ・トリガー」はイントロのドラムロールの入り方に瞬発力があり、物語の潮流を感じさせます。クロノ達が何かを決意した際に流れ、プレイヤーもクロノ達の決意と同調しやすい演出になっている。ラヴォス戦の直前に流れるのも、いよいよ決着が着く!という盛り上がりと見事にマッチしています*2。「クロノ・トリガー」というテーマ曲が各時代の「決意」をつなぎとめているようです。
全ての時代をつなげるもうひとつの曲は「ラヴォスのテーマ」でしょう。「クロノ・トリガー」と同じく「静と動」を駆使した曲です。イントロの前半は地の底から恐怖が沸き起こってくるようで、後半は静寂が世界の崩壊を思わせる。当時の世相的にノストラダムスの大予言が本当に当たるんじゃないだろうかとトラウマになりました。イントロが終わるとガラリと切なく孤独な曲になります。世界崩壊への絶望と共に、生き残った孤独感、そして星を食い尽くすことでしか生きられないラヴォスという生命体の悲哀を表しているようです。
また、全編通して心に残る曲は「夜の底にて」。悲しいオルゴール風の曲です。悲しい場面で流れる曲で、ロボがRシリーズに欠陥の烙印を押されリンチにされるシーンでは悲哀にみちた、カエルの回想シーンでは後悔が感じられます。音色は少ないですが、シンプルであることがかえって心情を揺り動かすようです。特に印象に残っているのは原始時代において、アザーラと決着をつけた後にラヴォスが宇宙から飛来するときに流れる場面。クロノ・トリガーの原初であり、真っ暗な宇宙をラヴォスが飛び回った後に地球に衝突するシーンで流れるのですが、何故だか思い出しただけで切なくなり、涙が出てきそうです。
オルゴール曲といえば「クロノとマール〜遠い約束〜」も印象的です。中世でマールが復活した後などに流れます。記憶に残るのは、時の最果にいる老人から「クロノ・リメンバー」として送られる時。シチュエーションがシチュエーションだけにグッと来てしまいます。素朴な曲ですが、思い出を沸き立たせる曲です。エンディングの一番最後でも流れますが、毎回クロノトリガーをやり遂げたなと感じさせます。
静かなるフィールド曲
クロノ・トリガーは時をかけるゲームということで、それぞれの時代のフィールド曲がその時代を象徴しているように感じます。
「クロノ・トリガー」のアレンジ曲である「みどりの思い出」は現代のフィールド曲。元の曲である「クロノ・トリガー」とは全く逆で寂しさを感じつつ、どこかやさしさを感じる。なんだか心落ち着く曲です。とはいうものの、ゲーム中ではあまり現代のフィールドを歩かないので聞く機会があまりありません。一方、中世のフィールド曲である「風の情景」の方が聞く頻度は多いでしょう。たった一人で時を超え中世にやってきた際に聞くとやたら孤独感に苛まれます。曲の中盤は美しい旋律で霧に包まれた中世のフィールドにマッチしています。最初は孤独、次は魔物の脅威を思い起こす曲ですが、ゲームが進むにつれ、どこか「希望」を感じさせるイメージに変わっていきます。特に、フィオナが森を育てるイベントでロボが荒れ果てた大地を耕しているのを見ると「希望」が徐々に大きくなっていくようです。
「荒れ果てた世界」は曲といってよいのか疑問ですが、荒廃し希望の見えない未来を表現されていると思います。ずっと流れる風の音が寒空の下で絶望に耐えながら生きていく様を感じさせます。
原始時代は「風と空と大地のリズム」。パーカッションのみというなんとも挑戦的な曲です。しかし、無駄なものを省いた結果、原始時代の素朴さを引き出しているように思います。原始時代の曲群においては「燃えよ! ボボンガ!」の方が原始時代らしい曲です。何だかアフリカを思わせ体が勝手に動き出しそうなリズムの良い曲です。これは実は植松信夫が作曲しています。この曲以外にも協力しているのですが、「バイクチェイス」や「地下水道」などの所謂ゲームの雰囲気にあった「らしい」曲は植松信夫の曲の方が多いです。中でも「ティラン城」は大変重厚で威圧感のある曲です。出だしにオルガンを用いて雰囲気を作り出すのは植松さんらしいですね。イントロに比べるとメインは重さは無いですが、それだけ軽快な仕上がりになっています。重厚さ、軽快さと来て曲の終盤には怪しさを感じさせ敵の居城に相応しい曲です。また、バハムートラグーンの作曲を手がけた松枝賀子も「ボス・バトル1」を担当しています。男らしい曲で、編曲は植松さんが担当していおりどこかしらFFライクな曲です。
一方「ボス・バトル2」は光田さん作曲で、大変緊迫感のある曲で、ゲーム中でも強敵と戦うと際に鳴り響きます。強大なる敵を思わせる一方で軽快さも兼ね備えた曲です。例えば、グランドリオン戦など。よく覚えているのは、まさに強敵であるブラックティラン戦。その大きさもさることながら、カウントダウンと曲によりプレイヤーは焦ってしまいます。
古代のフィールド音楽が「時の回廊」で良いのか分かりませんが、地上は空中都市が落ちるまで吹雪のSEしかないので。ただ、この吹雪のSEが本当に寒そうです。先の未来での風のSEもそうですが、クロノ・トリガーは風がひとつのテーマかなと。「時の回廊」はどこか異国情緒あふれる曲で空に浮かぶ不思議な魔法の王国にピッタリです。地上の吹雪とは対照的に、どこか暖かみを感じさせます。インド風の楽曲で、光田さんが様々な民族音楽に傾倒していることが分かる音楽です。民族音楽好きな私のお気に入りな曲です。
カエルと魔王
全てのキャラクターにテーマ曲があるわけではありませんが、時代を象徴するキャラクターにはそれぞれテーマ曲が用意されています。ロボやエイラ、サラなど。なかでも「カエルのテーマ」はかっこいいマーチ曲です。サントラではイントロ部分を聴く事ができますが、ゲーム中では一切流れません。これはイントロ部が入場を思わせ、イベントの途中で鳴らし始めるには都合が悪いからなのでしょう。イントロもかっこいいんですけど。口笛のようなメインは草原をかける勇者を思わせます。中世で王妃を助けた後にガルディア城からカエルが去るときに流れますが、カエルの漢らしさを象徴するようなテーマ曲です。その後、カエルを中心としたイベントの度に流れますが、印象深いのはやはりグランドリオン関連。魔岩窟をグランドリオンで真っ二つにするシーンや、サイラスの墓前で本当のグランドリオンの力を引き出し、身も心も真の勇者となったシーンなどいちいちカッコイイ。カエルなのに。グランドリオンを構えるシャキーンという効果音が思い出されます。
「カエルのテーマ」のイントロはサントラにしか収録されていませんが、他にもディスク間はゲートによるタイムワープの音が入っており、ニヤっとさせる作りになっています。また、サントラにしかない「戦い2」や「歌う山」などの曲があります。「歌う山」は美しい曲なのに残念です。何でも、用意されていたイベントそのものがカットされたんだとか。「戦い2」はバトルっぽくない音楽です。
勇者であるカエルと退治するのは魔王。魔王戦のバトルミュージックは「魔王決戦」。イントロは嵐の前の静けさのようで、風の音が戦いの序曲を際立たせます。魔王と戦うまでの演出もよく長い階段を降りると真っ暗な部屋。奥へ進むと青白い炎がクロノ達を迎える。静かなイントロが終わると一気に「動」へとなだれ込む。魔王の猛攻のような怒涛の音の応酬が終わると、徐々に落ち着いて行きますが最後の叫び声が焦りを誘います。カエルと魔王の宿命の戦いに相応しい曲です。その他にも、北の岬で魔王と戦う場合や、黒の夢のジール戦に魔王と挑むと「魔王決戦」が流れます。北の岬ではカエルとの決着、ジール戦では親との決別を想起させます。
ジール戦後は、ラヴォス戦。中身の一戦目は「世界変革の時」。イヤホンで聞くと、サラウンドが脳内を駆け巡るようです。「ラヴォスのテーマ」のイントロ部分が隋所に散りばめられつつ、曲の終盤は「クロノ・トリガー」の旋律が流れ、歴史を変える!という大きなまさに変革を思わせます。その後の「ラストバトル」は「世界変革の時」同様に、音が左右に行ったり来たりすることでプレイヤを不思議な気持ちにさせます。落ち着いた曲調のようでありながら、不安を煽る。未知なる得体の知れない脅威と戦う様を表しているようです。「世界変革の時」が「動」ならば「ラストバトル」は「静」かもしれません。
その後は晴れてエンディング。エンディングの曲群では「遥かなる時の彼方へ」が好きです。冒険が終わったという余韻を感じさせつつ、新たなる冒険の始まりを感じさせます。主旋律の部分が大好きで、ゆっくりとした曲で終わりの曲なのに心が踊ります。幸いクロノ・トリガーにはつよくてニューゲームがあるので何度でも繰り返しプレイできる。「遥かなる時の彼方へ」はアレンジバージョンもお気に入りです。クロノ・トリガーのアレンジバージョンである、ザ・ブリンク・オブ・タイムがまたすばらしいのですが、また別の機会に語りたいと思います。買った当初は良くわかりませんでしたが、年を重ねるにつれ段々と良さが分かってくるそんなスルメみたいな一枚です。