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ダストポップ

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2015-03-23 ポスト渋谷系にみる、音ゲー楽曲と邦楽シーンの影響関係(中半)

ポスト渋谷系にみる、音ゲー楽曲と邦楽シーンの影響関係(中半)

11:49

前回の記事に引き続き、本題の「ポスト渋谷系」と「音ゲー」の関係についてざっくり書いていこうと思います。前半後半に分けようと思ったんだけど長くなったから無理だったぜ。

繰り返すようですが私は邦楽に造詣が深い人間でもなければ、結構記憶だよりで書いたりもしています!ぜひ肩の力を抜いて、音楽を楽しむ・掘るときのヒントになるようなものはないかな〜程度に読んでみてください。



ところで今さら渋谷系について何かまとまった情報はないかとググったところ、以下の様な記事が見つかりました。

音楽だいすきクラブ 2014.6.21.「渋谷系特集#1 渋谷系はかっこいい」

http://ongakudaisukiclub.hateblo.jp/entry/2014/06/21/102110

音楽だいすきクラブでは、この回から10回に渡って渋谷系特集をしていおり、充実の内容。

第一回から「渋谷系っぽくないかっこいい渋谷系」としてオルタナティブ・ロック、グランジシューゲイザーアンビエントノイズ的な様々な曲を紹介しており、「渋谷系」が90年代の渋谷を中心としたある部分でカウンターカルチャー的な総合ムーヴメントだったことを再確認できました。逆に、「ポスト渋谷系」は最初期にあったエッジがずいぶん丸くなって、おしゃれミュージックになっているんだなという再確認でもありますね。

ポッパーや音ゲー好きの皆さんにも、アッあの曲ってこれが元ネタなんだ、的な楽曲がたくさん紹介されておりますので、ぜひチェックしてみては。


とはいえしつこいようですが、この渋谷系特集にもネオ渋谷系の流れや音ゲーコンポーザの名前はほとんど出てくることもなく、恐れ多くもそれを今回私が補強できたらなと思います。。。

きっと邦楽フリークスでも出会いづらい、音ゲー楽曲をぜひ聴いてほしい!

本題なので前回よりボリュームありますが、(そして音ゲーマーにとっては常識的な内容が多いかもしれませんが)、よければ読んで、聴いてみて下さい。




>>>>pop’n musicに流れる渋谷系の血

http://www.konami.jp/bemani/popn/

pop’n music」(以下ポップン)はそもそも「beatmania」のキッズ向け、9つのボタンを複数人で叩くことを想定して登場したことは有名である(もちろん今は一人でのプレイが常識となり、エクストリーム化している)。

ある意味で「DJごっこ」的ゲームの「beatmania」弟分として生まれたポップンは、その立場や性質から、J-POPパロディが満載の状態で登場したのであった。マスコットキャラのミミ&ニャミがパフィーをイメージして作られたというのは、あまりにも有名

しかし、忘れられていそうなのだが、実はポップンミュージックはポスト渋谷系と並走しつづけてきたといえる。以下、サウンドディレクターである杉本清隆と脇田潤を中心に紹介したい。

なお楽曲タイトルの後に表記している(ジャンル名:◯◯)というのはゲーム内でつけられているジャンル名。


(余談:ポップンでは楽曲ひとつひとつに"担当キャラ”のようなものが配される。この”担当キャラ”は作曲者の意図と関わったり関わらなかったりしながら、楽曲から受け取ったイメージからデザイナーが作り出していく。より複雑にはなるが、キャラクター自体も楽曲の文化的バックボーンを象徴することが少なくないため、注目するとより面白い。)



>>杉本清隆orangenoise shortcut)とポップンの永遠のアンセム「ポップス」

★ 「I REALLY WANT TO HURT YOU」プレイ動画

ポップン初代に収録された「I REALLY WANT TO HURT YOU」(ジャンル名:ポップス)は、ネオ渋谷系の旗手のひとりとなった、杉本清隆が参加した楽曲である。ポップンを古くから代表する曲をひとつ挙げるなら、多くのファンが選ぶ楽曲だろう。

記念すべきポップン10作目ではジャンル名「ポップスアンコール」としてアレンジが収録されており、公式も意識的ポップンアンセムと認めているかたちだ。

(ちなみに担当キャラ「リエちゃん」は初代ポップンから毎作登場している根強い人気キャラクター。「服飾系デザイン学校に在学中の18才。 渋谷系の甘い歌声にメロメロな彼女はSGIクンの大ファン。 実は80年代の美系ブリティッシュロックバンドのマニアでもある。」という初期設定はなんだか色々なものを象徴している。)


当時杉本はbeatmaniaの企画原案者・南雲玲生に誘われ「SUGI&REO」としてこの曲を制作。杉本はこの参加をきっかけにコナミ入社ポップンミュージック5作目・6作目のサウンドディレクターをも務めている。

音楽ユニットであるorangenoise shortcutの結成は、ポップン5に「Homesick Pt. 2&3」を提供したのがきっかけのようだ。

★sugi&reo「(fly higher than) the stars」(ジャンル名:ネオアコ

orangenoise shortcut「Homesick Pt.2&3」(ジャンル名:ソフトロック)

orangenoise shortcut feat.櫛引彩香「桜リタルダンド

orangenoise shortcut「クオンタイズ」

(中学生のころ、渋谷系のハニーボイスに慣れない友人には「えっ、ボーカル男なの!?」と驚かれるもので、ポッパーのあるあるネタだと思う。「クオンタイズ」は個人的に大好きな一曲。)



のちに脇田潤(後述)作曲・杉本清隆歌唱の楽曲「Little Rock Overture」(ジャンル名:リトルロック)が作られ、ポップンのユーザーの要望にこたえたアルバム「ポップンミュージックリクエストベスト!」ではLONGバージョンも収録されている。

このことからも「ポップン的なるものへの期待=渋谷系ギターポップへの期待」という図式が一部分にはある、と感じられる。

現行機種の「ポップンミュージックピストリア」になると流石にもう分からないが、長らく"ポップンらしさ”を支えてきたのは渋谷系の血脈だったのだろう。

惑星計画「Little Rock Overture」(ジャンル名:リトルロック




>>>>サウンドディレクターwac

脇田潤(以下wac)は早稲田大学文学部出身で、コナミスクールを経てポップン6のサウンドディレクターになるという経歴を持ち、その経歴は作曲活動に影響し続けているように見受けられる。例えば、卒論は宮沢賢治についてだったようで、現在でも宮沢賢治の作品からモチーフを得た楽曲が多々ある。

また、自らが"文学少年像"を意識したと思われる「ポップミュージック論」「面影橋」のような楽曲があることもつけ加えたい。

前回貼った記事(「渋谷系声優レーベルの話」)でも触れられているように、wacの大学時代のサークルの先輩後輩にはポスト渋谷系のひとつの代表格Cymbalsや、risetteなどのバンドがおり、ゲーム収録楽曲にたびたびその人脈が生かされているのはファンならよく知っている話。特にポスト渋谷系として名を馳せた先輩・Cymbals沖井礼二の存在は大きかったと思われる。

のちに沖井礼二はポップンへ3曲提供しており、「空への扉」(ジャンル名:グライド)公式での楽曲コメントwacは彼への憧れを惜しみなく語っている。(http://www.konami.jp/bemani/popn/music13/m_and_c/06/06_03.html

★CHARMAINE「空への扉」(ジャンル名:グライド)

(キャラクターがリエちゃんであることにも注目したい。)

★REUNION「Break on Through」(ジャンル名:ソニックブーム

また元Cymbalsボーカルの土岐麻子は、ギタドラにおいてwac作曲の「Little Prayer」のボーカルを務めている。

土岐麻子「Little Prayer」

(「少年ラジオ」作風で(後述)、ギタドラでのwac初提供曲となった。初登場にも関わらず楽曲が隠し要素化し高難易度だった、というモヤモヤに関してのアンサーが提供2曲目の「繚乱ヒットチャート」歌詞に表現されている、というウワサも。)



>>コンポーザーとしてのデビュー

先に多くの楽曲を紹介してしまったが、音ゲーでのwacが表立って登場するのは、ポップン7での「カモミール・バスルーム」(ジャンル名:スウェディッシュ)である。こちらは非常に爽やかなギターポップとなっており、ボーカルに後輩・risetteの常盤ゆうを迎えている。パワフルな歌唱と独特のハスキーボイスで、以後常盤ゆうはTOMOSUKE楽曲でも多数ボーカルを務めるなどし、BEMANIシリーズの重要な歌姫となる。

★常盤ゆう「カモミール・バスルーム」(ジャンル名:スウェディッシュ) 

リコーダーの音色も特徴的。そういえばwacは初期「笛のお兄さん」を自称していた気がする。)

risette「Tangeline」

(こちらはポップン8にもアレンジされて収録された、risetteの楽曲。)


また、ポップン7でwacは、上で紹介した「Homesick Pt.2&3」(ジャンル名:ソフトロック)のロングバージョンの編曲を隠し曲として担当している。先輩の渋谷系サウンドをここでアレンジしている、というのは、ここにおいてもバトンが渡っていくようだ。



>>音ゲーコンポーザーのオールマイティ問題

さて、ここまで渋谷系の支流に沿わせるようにして語ってきたが、音ゲーコンポーザーはゲームの性質上、短期間で実に多彩なジャンルの音楽を作曲することが少なくない。その点では、単に影響関係や文脈ありきで彼らの活動を語ることはできない。ここが、音ゲー楽曲や作曲家を語りづらくしている一つの原因でもある。彼らはゲーム制作をする「社員」でもあるから。

杉本清隆はDJ SIMONやサインモンマン名義で、ヒーローもののパロディ楽曲や実験的な楽曲などを提供しており、プレイ中にオブジェの落下速度が変わる通称”ソフラン”システムの発案者でもあるし、wacにいたっては専任コンポーザとしての活動歴の長さもあり、テクノサウンドからシューゲイザーファンクからピアノ独奏曲民族音楽からネタモノまで目まぐるしき七色の作曲を手掛けている。名義もころころ変わるため、ゲームの新作が稼働するときには「作曲者当てゲーム」状態になることも。

主要コンポーザーオーケストラ風音楽から打ち込みのハードコアまでを手がけるというのは結構当たり前になりつつあり、作曲者としてはよくあることかもしれないが、「音楽シュミレーションゲーム」というパロディベースの土壌ならではの側面もあり、アーティストとして一般に紹介するのはちと難しさがある。

★サイモンマン「西新宿清掃局」(ジャンル名:パーカッシヴ)

(杉本のサイモンマン名義の実験的な楽曲。ポップン5収録で、中盤の加速地帯(ソフラン)は音ゲー史上に残る。)

★ギラギラメガネ団「ポップミュージック論」(ジャンル名:メガネロック

wac全面的に邦ロック色を出した最初の作品ともいえる、根強い人気を持つ歌謡ロック的ナンバー。担当キャラ「ナカジ」はいかにも文学少年的フェチズムに満ちたデザイン。ナンバーガールアジカンなどを意識したサウンドといえる。歌唱やギターで協力しているのは大学サークルの後輩バンド「ギラギラ」とのこと。)

青野りえ「garden」

(beatmaniaIIDX12 HAPPY SKY収録。まさにCymbalsアメリカの女王」などを彷彿とさせるジャジーな楽曲。歌唱の青野りえは大学サークル同期とのこと。)



>>語り継がれるボス曲「ニエンテ」

ゲーム内で名義をあまりに多用するwacであるが、そのなかのひとつ「少年ラジオ」名義はそもそもbeatmania IIDX9thに収録された「moon_child」においてであった。ノイズサウンドとエレクトリックピアノをかけあわせた幻想的なサウンドが特徴の楽曲に用いられるようである。

★少年ラジオ「moon_child」


wacはこの「少年ラジオ」名義の中で、(そしてある意味仕事の多忙さの中で)ひとつの代表的な楽曲を作り出した。

終末的な世界観を疾走感あるシンフォニックなサウンド、ノイズや高速のピアノ演奏などと共に表し、常盤ゆうのパワフルな歌唱が切なさを高めていく、「neu」(ジャンル名:ニエンテ)である。

★少年ラジオ「neu」(ジャンル名:ニエンテ)

ポップン15 ADVENTURE内イベント(「わくわく探検隊」2007年夏)のラスボスとして登場したこの楽曲は、そのインパクトと難しさ、楽曲の"崇高な感じ"から、多くのユーザーの記憶にのこり、いまなお人気のwac曲のひとつ。

その人気から、wac自身も「neu」のバリエーションとも思える楽曲をいくつか作曲しており、ユーザーにも「wac風のアレンジ」として真似られるようにまでなっている。

プログレ的な編拍子、ノイズ、「ドドドドド!」というリズムと高速で演奏されるピアノ・ギターなどが、「ボスっぽさ」に利用される芸風は、現在のサウンドディレクターPON氏を始め多くのクリエイターにも受け継がれているように思える。

OSTER Project「sigisigカオスアレンジ」

音ゲー曲「sigisig」の同人アレンジ。2:28頃からいかにも「neu」風な展開が。OSTER Projectは後述のBMS・ボカロPの活動を経て現在では本家IIDXにも楽曲提供をするようになった作曲家のひとり。)

★少年ラジオ「uen」(ジャンル名:リナシタ)

(「neu」の逆再生をベースに新たな曲として作られた。アルバム「音楽」では「uen」を曲の中に組み合わせた再生時間12分超の「neu」も収録されている。)

★PON+wac「創世ノート」(ジャンル名:クリエイター

(現在ポップンでサウンドディレクターを務めるPONとの合作。歌唱はPON。)




ネオ渋谷系から遠くにきてしまったようにも思えるが、以上の楽曲を踏まえながら、「neu」に影響されていった、日本の音楽シーンで活躍しつつある何人かのボカロPについて書いて、ポスト渋谷系に戻ってこようと思う。BEMANIシリーズのコンポーザー、舟木智介ことTOMOSUKE村井聖夜とALTについてもおさえておきたい。

しかし冒頭に貼った渋谷系特集を色々聴いていると、なんだか少年ラジオのキラキラノイズな作風も下地に渋谷系があるような気がしてきてしまったり、またしても「渋谷系って結局…」という気分に苛まれてしまいそうですね。。w


最後に僕がもっとも好きな曲のひとつを紹介しておわります。

★yu_tokiwa.djw merge scl.gtr「murmur twins (guitar pop ver.)」


>>次回の記事

※2015年4月7日、リンクの修正。

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